陸上競技会の再開(インポッシブル・ゲーム):ノルウェーチームがケニアチームを破りヤコブ・インゲブリクトセンが2000mで欧州最高記録、カーステン・ワーホルムが300mHで世界最高記録をマーク

競技種目が普段行われない距離であったり、参加選手が絞られていたり、手作りの観客だったりと、普段の陸上競技会の姿はそこになかった。しかし、ノルウェーのオスロで木曜日にオフィシャルの陸上競技会が開催された。この3ヶ月間、コロナ渦で楽しみにしていた大会観戦ができなかった陸上ファンにとっては喜ばしい安堵感があった。

インポッシブル・ゲーム:伝統的なビスレット・ゲーム(オスロDL)は今年に限って大会の趣旨を変え(無観客の縮小開催かつエキシビジョン種目の実施)、カーステン・ワーホルムが300mHで世界最高記録を樹立。

競技会場が別々で、国境を越えてのバーチャル対決となった男子棒高跳では、モンド・デュプランティスルノー・ラビレニを破った。また、世界的なパンデミックによるトレーニングへの影響を感じさせない、今なお注目すべき非凡な才能を持つ19歳のヤコブ・インゲブリクトセンが2000mで4:50.01という信じられないような欧州最高記録をマークした。

*オスロDL:リザルト

男子2000m:ヤコブ・インゲブリクトセンが欧州最高記録をマークしてノルウェーチームを勝利に導く

印象的なレース運びで19歳のヤコブ・インゲブリクトセンが4:50.01で走り、スティーブ・クラム(イギリス)が保持していた2000mの欧州最高記録の4:51.39を更新した。

(ノルウェーの2選手がペーサーを務めた)

形式上、このレースは1つの“バーチャルレース”であった。インゲブリクトセン兄弟はノルウェーのオスロで走り、ティモシー・チェリヨットエリジャ・マナンゴイエドウィン・メリーらはケニアのナイロビの競技場で走った。しかし、これらは気象条件などあらゆる条件に差がある2つの全く異なるレースであることがレース中にわかり始め、最終的な結果は以下の諸条件をもとに考慮されるべきである。

インゲブリクトセン兄弟がウェーブライト(点滅式電子ペーサー)と2人のペーサーを同時に駆使して気温23℃(曇り)の条件で競技していたのに対して、チェリヨットたちは、気温17℃の雨でウェーブライトのテクノロジーはそこに無く、標高1,768mのニャヨスタジアムでのレースだった。

ケニアチームのペーサーを務めたティモシー・セインが、1周目を54.57という超ハイペースで引っ張ったことも彼らにとって不利になった。ケニアチームは2周目(60.99)で大きくペースを落とし、この時点でマナンゴイはすでに離れており、チーム対抗のバーチャルレースの勝敗は事実上そこで決着がついていた。

一方のインゲブリクトセン兄弟は、正確にペースを刻むウェーブライトの恩恵を受けて1周目を58.91で通過。1200m地点ではチェリヨットが2:57.15、ヤコブが2:57.60と、ほぼタイムで通過した。

ペースを維持するヤコブとヘンリクを尻目に、このレースの45分前に1000mでノルウェー最高記録をマークしたフィリップが失速し始めていた。ヤコブとヘンリクは1200-1600mの1周を59:31でカバーしたが、ケニアチームの先頭のチェリヨットはここで61.59と大幅にペースを落としてしまいケニアチームの望みは絶たれた。

1600mを3:55.85で通過したヤコブは信じられないほど余裕のあるスムーズな走りでペースを上げた。その時チェリヨットは1600mを4:01.04で通過し、その後方でメリーとマナンゴイが苦しんでいた。

ヤコブはみるみるペースを上げて兄のヘンリクとの差を広げ始め、最後の1周を54.16でまとめて4:50.01の好記録を叩き出した。

ヘンリク(4:53.72)とフィリップ(4:56.91)が続いてフィニッシュし、ノルウェーチームがケニアチームに快勝。ケニアチームはチェリヨット(5:03.05)がトップで、メリーが5:13.12が2番目、マナンゴイは5:18.63でフィニッシュした(2019年のドーハ世界選手権ケニア選考会で破れて以降は足首の疲労骨折でシーズンを終えた彼は、まだ完全に復調していないと思われる)。

【レース結果(オスロ)

11NOR ヤコブ・インゲブリクトセン4:50.01欧州最高記録
22NOR ヘンリク・インゲブリクトセン4:53.72
33NOR フィリップ・インゲブリクトセン4:56.91
DNF4NOR NORDÅS Narve Gilje
DNF5NOR SVELA Per

【レース結果(ナイロビ)】

11KEN ティモシー・チェリヨット5:03.05
24KEN エドウィン・メリー5:13.12
32KEN エリジャ・マナンゴイ5:18.63
DNF3KEN KETER Vincent Kibet
DNF5KEN SEIN Timothy

信じられない走りをみせたヤコブ・インゲブリクトセン

コロナ渦でのトレーニングの中断を考えると、今回の大会に出場する選手たちがどれだけ調子を整えているのか、という疑問があった。例えば、インゲブリクトセン兄弟は、毎年恒例のフラッグスタッフ合宿(ユージンDLのための事前合宿)を行うことができなかった。

しかし、このままDLシーズンが8月14日のモナコDLで本格的に開幕することができれば、またいくつかの好記録を見ることができるだろう。今回、フィリップが1000mで2:16をマークした後に、ヤコブは2000mで4:50.01という驚異的な記録を出して兄の快挙に続いた。

2000mという種目は普段開催されなり種目ということで、今回のヤコブの記録の価値を簡単に理解するのが難しいかもしれないが、4:50.01はかなりの好記録である。

ヤコブは2000mでノア・ヌゲニ(シドニー五輪1500m金メダリスト)の1歩前に出た。ヌゲニは1999年7月30日にストックホルムで2000mを4:50.08で走ったが、彼はその3週間後に1マイルを3:43.40(世界歴代2位)で走っている。

世界陸連のスコアリングテーブルによると、2000mの4:50.01は1500mの3:30.71、3000mの7:30.72に相当する(今回のレースは彼の今年のトラック初戦である)。ヤコブは今回のレースで1600mを3:55.85で通過してラスト1周を54.16でまとめた。

今、その走りができる選手は多くない。ヤコブは現在、2000mの世界歴代7位にランクインしている(屋外のみでは6位)。

【男子2000m世界歴代7傑】

記録選手場所日時
14:44.79ヒシャム・エルゲルージベルリン9/7/99
24:46.88Ali Saidi-Siefストラスブール6/19/01
34:47.88Noureddine Morceliパリ7/3/95
44:48.69Venuset Niyongaboニース7/12/95
54:48.74John Kibowenヘヒテル8/1/98
64:49.99(室内)ケネニサ・ベケレバーミンガム2/17/07
74:50.04ヤコブ・インゲブリクトセンオスロ6/11/20

今回のエキシビジョンマッチで気になるのは、ウェーブライトがどれだけノルウェーチームに追い風になったのかということである。ケニアチームのようなレース序盤のオーバーペースを防ぐことに効果があったと思われる。

男子300mH:ワーホルムが世界最高記録を更新

400mH世界王者のカーステン・ワーホルムは、クリス・ローリンソンの屋外最高記録の34.48を破ることを目標に、この単独の“レース”に出場した。ローリンソンの400mHの自己記録の48.14は、ワーホルムの自己記録の46.92よりも遅いので、問題はワーホルムのトレーニング状況がどうなのか、ということだった。

ワーホルムはその疑問を払拭し、スタートから豪快なストライドで駆け抜け、33.78でタイマーを止めた。

(「スタート前のワーホルム」を見る「観客席のワーホルム」)

ちなみに、ワーホルムは昨年、46.92を出したレースでも33.8で300mを通過している。

男子1000m:フィリップ・インゲブリクトセンがノルウェー最高記録を更新

この種目は純粋に記録への挑戦が焦点であり、1996年アトランタ五輪男子800m金メダリストのヴェービョルン・ロダールの1000mのノルウェー記録更新を目指すフィリップ・インゲブリクトセンが出場した。2人のペーサー(フィリップの後ろにも走者がいたが)とウェーブライトのアシストを受けて、フィリップは600mを1:21.20で通過した。

彼は最後の1周でわずかにペースを落としたものの、最終的にはロダルの記録を0.32上回る2:16.46のノルウェー最高記録でフィニッシュした。

このレースは通常のレースよりも速かったのだろうか?

速く走る方法の1つに、ペーサーを集めて良いペース戦略でレースを進め、彼らのアシストを受けながらベストを尽くすことにある。

フィリップには2人のペーサーがおり、さらにウェーブライトテクノロジーを使用した。1人の選手のためだけにペーサーを起用することはこれまでにも記録への挑戦時に行われてきたが、それは通常、世界記録への挑戦時に限ったものである。

エドワード・チェセレクヨミフ・ケジェルチャが近年のボストン大学での室内競技会での1マイルで好記録を狙うためにその戦略がとられた(その時はウェーブライトは使用されていない)。

今日のレースでフィリップはラスト200mで前に追いかける選手がいなかったが、それでも彼はウェーブライトの光を目指して(前に目標がありながらも)1レーンの最短距離が走れるという利点があった。

(ナイスペースだった!500mと800mまでペーサーが引っ張ってくれて、しかも最初の100mで10人ぐらいのポジション取りをしなくてもよかった!)

レースの中で先行する選手を追いかける場合と、個人のために用意されたペーサーに引っ張ってもらって位置取利などロスなくレースを進めていく場合と、どちらが有利なのだろうか?まだ結論は出ていないが、フィリップが使用したのは後者のアプローチだった。

ウェーブライトのテクノロジーはよく機能した

他に競り合う選手がいない中で、フィリップのペースを意識させるために、第1レーンの内側で光る点滅式電子ペーサーのウェーブライトのテクノロジーが非常に役に立った。

それでも、少しわかりずらかったのが、フィリップがレース中に点滅していくグリーンライトよりも前方に1度も出れなかったので、ペースが落ちているように見えたことである。

実はこのグリーンライトの帯の1番前ではなく、1番後ろが従来のノルウェー記録のペースを示していたのだ。そういったこと事前に明確になれば、今後の記録挑戦時の参考となるかもしれない。

男子25000m:ソンドレ・モーエンが欧州最高記録を更新

ノルウェーのソンドレ・モーエン(自己記録:ハーフ59:48 / マラソン2:05:48)は、25000mを1:12:46.5で走り、21年間塗り替えられていなかった欧州記録を1分以上も更新した。これはハーフマラソン61:24ペース(2:54/km)で25000mを走破したことになる。

レッツラン記事

https://www.letsrun.com/news/2020/06/jakob-ingebrigtsen-karsten-warholm-break-records-as-track-field-returns-at-impossible-games/

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