東京五輪の2021年への延期から考える6つの大きなポイント

火曜日、IOCと東京2020組織委員会は、これまで不透明だったことを正式に発表した。2020年7月24日から8月9日に開催予定だった東京五輪が新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の影響を受けて「2020年以降かつ2021年夏までの期間」に延期される。

この発表は、今回の夏季五輪を目指すアスリートにとって、レーススケジュールの不確実性という悩みを和らげるが、同時に多くの新しい問いを生み出した。以下に6つのポイントを並べる。

過去2週間に世界でどれだけCOVID-19が流行して、世の中が急速に変化したことを考えると、以下のポイントについて断定するまではしばらく時間がかかりそうだ。しかし、これらは陸上競技の大会が再開された時に考えなければならない事柄である。

東京五輪延期はEugene 2021にとって何を意味するか?

陸上競技の世界選手権は通常、五輪と同年に開催されることはないので、Eugene 2021(ユージン世界選手権)は開催日程を変更する必要がある。

そのポイントは「いつ行われるか?」である。

通常、世界陸連(旧IAAF)は2年おきに屋外の世界選手権を開催しており、4年間に3回屋外の世界大会が開催されるスケジュールである(世界選手権 → 五輪 → 世界選手権 → 屋外の世界大会がないシーズン)。

今回の東京五輪延期は、そのナンセンスなスケジュールが変更される絶好の機会である。

我々の提案は:2021年ユージン世界選手権を2022年に延期すること。そうなれば、2021年からの5年間は

・2021年(東京五輪)
・2022年(ユージン世界選手権)
・2023年(ブダペスト世界選手権)
・2024年(パリ五輪)
・2025年(世界選手権:開催地未定)

と屋外の世界大会が5年連続で開催される可能性がある。

このプランは毎年五輪が開催されるわけではないが、すでに世界陸連はユージン世界選手権のホストと連絡を取り合っており「2022年の日付を含む代替案を既に検討している」と公式発表している。

東京五輪マラソン全米選考会が開催されたが再度行う必要はあるか?

これは簡単な問いである。答えはノー。

全米陸連はすでにマラソンの全米選考会を開催しており、男女上位3人ずつを全米代表として選考した。 東京五輪は2021年に開催されるが、2020年2月29日の全米選考会に時間と労力を費やしたすべての人、特に東京五輪出場の資格を獲得した男女合計6人の選手にとって、選考会をもう1度行うことは不公平だと感じるだろう。それに、今回の選考会で4位だったディズ・リンデンでさえ、選考会を再度行うことを望んでいない。彼女は今回の選考会の結果を尊重して、次に向かっている。

五輪延期は非ナイキ選手にとって追い風になるかもしれない

ナイキのシューズテクノロジーに関する話題は、昨年の陸上長距離界では1番盛り上がった話題だった。東京五輪の1年間の延期は、ナイキ以外のメーカーがヴェイパーフライ / アルファフライのテクノロジーに追いつくためにより多くの時間を与える。また、世界陸連がシューズの新レギュレーションを運用するにあたってその※試用期間としても機能するため、五輪1年延期は非ナイキ選手にとって追い風になるかもしれない。

(※)レギュレーションが適宜変更される可能性を含んでいる

東京五輪の参加標準は2019年1月1日(マラソン、10000m、混成種目、競歩、リレー)および2019年5月1日(その他すべての種目)以降の記録が有効であるが、東京五輪1年延期によってこの資格期間を調整する必要があるか?

我々の意見では、ノー。

東京五輪の参加標準記録は、これまでの屋外の世界大会で最も厳しい水準であることから、2019年または2020年の室内シーズンで突破された記録は、たとえそれらの一部が2021年の東京五輪の2年前の記録であったとしても尊重されるべきである。

世界陸連が今後に調整すべきなのは、世界ランキングの制度が参加標準記録突破者とのバランスを前提として、2021年の東京五輪でどのように適合するかである。

世界陸連は2019年3月に、※五輪の出場資格のシステムの抜本的な変更を行っていることを発表した(参加標準記録 → 参加標準記録 + 世界ランキング)。

(※)レッツランジャパン記事:IAAFが2020年東京五輪の参加標準記録を発表:世界ランキング制度の導入と運用について

東京五輪の参加標準記録は、世界陸連が新しい世界ランキング制度を運用できるように、その水準が引き上げられた。

「この出場資格のシステム変更のプロセスは、各種目で参加標準記録突破者がターゲットナンバーに対して約50%、世界ランキング制度から残りの50%を達成するように設計されている」

と、世界陸連は発表している。

今回の問題は、ほとんどの選手にとって、過去12か月の記録が世界ランキングに反映されるということである(10000m、マラソン、混成種目の選手は過去18か月間の記録が反映される)。しかし、2020年シーズンの多くの競技会が中止・延期された場合、2021年版の世界ランキングは多くの選手がまた1からポイントを獲得しなければならないだろう。

世界陸連はこの問題について認識しており、火曜日に2020年のトラックシーズンにおいて「できる限りのこと」を行うと発表した。

「世界陸連は2020年のトラックシーズンにおいて競技会を維持するためにできる限りのことを行う。大会の開催日が延期になることもあるが、選手は安全なときに、すべての地域の競技会にアクセスできる」

さらに、世界陸連は

「IOCと協力して、五輪の出場資格のプロセスにおける現在のレビューを参考にして、選手が自分のポジションを把握できるように、五輪の出場資格のプロセスの変更をできるだけ速やかにリリースする」

と、発表した。

東京五輪1年延期の恩恵を最も受ける / 受けない選手は誰か?

故障などでレースから遠ざかっていた選手は、東京五輪1年延期の恩恵を受けるだろう

例えば、ロンドン、リオ五輪男子800m金メダリストのデイビッド・ルディシャはどうだろうか。彼は長い期間の故障と個人的な問題に苦しんだ後、男子800mでは前例のない3個目の五輪金メダル獲得を目指して再始動しようと試みている(ルディシャは2017年7月からレースに出場していない)。

しかし、現在は全盛期の体重よりも太く、彼が32歳で迎える2021年東京五輪はベテランの年齢に差し掛かるが、 彼は元の形を取り戻すための復帰期間を多く持つことになる。

前回のリオ五輪で世界記録を樹立した2人の選手、男子400mのウェイド・バンニーキルク(43.03)と女子10000mのアルマズ・アヤナ(29:17.45)も、2017年に故障をしてから大きなレースに復帰していないため、東京五輪延期の恩恵を受ける可能性がある。

バンニーキルクは2017年11月以来、南アフリカ以外の大会には出場していない。その他にも、19歳の時に100mで9.84を記録した現在24歳のトレイボン・ブロメル(男子100mU20世界記録保持者)も、復帰に向きて着々と動き出している。

一方で、東京五輪1年延期の恩恵を受けない選手は、

a:現時点で最高の状態にある選手
b:キャリアの最終にある年齢を重ねたベテラン選手

もしあなたがドーハ世界選手権男子800m金メダリストのドナヴァン・ブレイジャーであれば、東京五輪が2021年に延期する可能性があると知っていても今年に東京五輪があったことを望んでいただろう。

COVID-19は世界中でスポーツを中止・延期に追いやっているが、引退の時が刻一刻と近づいている選手にとってはどうだろうか。

ケネニサ・ベケレは、2021年東京五輪では39歳であり、それは彼の最後の屋外トラックの世界大会のメダルから12年後となる。

エリウド・キプチョゲもまた1つ歳を重ねる(公式には36歳になる)ため、ナイキのシューズテクノロジーによって他のメーカーに差をつけている現在のアドバンテージが少し減る可能性がある。

五輪で4回金メダルを獲得しているモー・ファラーは、今年の東京五輪で37歳にして史上最高齢での男子10000m決勝のスタートラインに立つ予定だったが、来年には38歳になる。

そして、アリソン・フェリックス(来年35歳)やニック・ウィリス(来年38歳)のように最後の五輪として出場を目指している選手は、さらに1年間競技生活を延長するだろうか。それとも、来年を待たずしての現役引退を決断するだろうか。

今回の五輪延期で考えるべきもう1つの興味深い点は、五輪延期が選手たちに与える経済的な影響である。ほとんどのスポンサー契約はオリンピックイヤーに終了するように設計されていると言われているからだ。

この件に関してある代理人に連絡して、それが事実であるかどうかを確認したが、返信は以下のとおり。

「ほとんどの契約(スポンサー契約)は(オリンピックイヤーの)今年で終わる…しかし、ほぼすべての契約には6か月間の※ “Right To First Refusal”(第一優先権)の期間が与えられている。そのため、五輪に出場の見込みがある / 出場を目指すほとんどの選手は、少なくとも1年間の契約延長を選ぶだろう」

(※)Right To First Refusal:第一優先権、RTFRとも略される。英文の契約書におけるこのRTFRとは「契約を更新する際は、契約者が契約更新 / 競合他社に移る前にそれまで契約していたスポンサーに自らオファーを出さなければならない」という条項で、スポンサーシップ契約などでは一般的なもの。

トラックの全米選考会はどうなるか?新しいヘイワードフィールドで観戦するには来年まで待つ必要があるか?

当初、2020年のトラックの東京五輪全米選考会は、ユージンの新しいヘイワードフィールドで6月19〜28日に開催される予定だったが、五輪延期を受けてそれが開催される可能性はほとんどない。

2020年の屋外でのトラックシーズンにおいて競技会の中止や延期の影響を考えると、選手はこの当初の全米選考会が行われる6月中旬まで、ほとんどレースに出場することができないことが主な理由にある。

さらに、全米陸連が今週初めに東京五輪の延期を要請した際に挙げた主な理由の1つとして、COVID-19の検疫中にトレーニングをしなければいけないことで、選手が過度のストレスを受けることを危惧していることがあった。

我々が望むアイデアの1つは:全米選考会を通常の全米選手権として行い、それを2020年8月または9月まで延期して、会場は変わらずヘイワードフィールドで行う。

そこでの上位者は東京五輪の代表には選出されないだろうが(2021年に全米選考会が開催されるだろう)、もし我々が2020年の屋外のトラックシーズンで競技をできるのであれば、それはすべてのアメリカの選手が真新しいスタジアム(新ヘイワードフィールド)で行われる楽しみな大会となるだろう。

このアイデアは五輪の舞台に完全に取って代わるものではないが、悪くない代替案である。

もちろん、それは新ヘイワードフィールドの工期完了して、競技場が使用できるか否かにかかっている。ユージンのこの新競技場は、5月16〜17日のPac-12地区大学選手権でお披露目される予定だったが、その大会は中止となった。

その次に予定されていたのは、5月28〜30日のオレゴン州高校選手権だったが、新ヘイワードフィールドの工事がCOVID-19の影響で遅れていることから、その影響もあって大会の延期が決定している(COVID-19は競技場の建設スケジュールの遅れにも影響を与えている)。

つまり、現時点ではプリクラシック(=ユージンDL:6月6〜7日)が新ヘイワードフィールドで開催される最初の大会であることを意味している。ただし、この大会が中止・延期された場合、または競技場の工事が期間内に完了しなかった場合も、中止や延期、会場の変更などの可能性がある。

現時点で、新ヘイワードフィールドが最初の大会をいつ開催するかは誰にもわからない。

 

レッツラン記事

6 Big Questions in the Wake of IOC’s Decision to Postpone Olympics to 2021

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