ナイキの靴を履くために契約を断るか?アルファフライよりもVFネクスト%を好む選手もいる?靴が五輪マラソン全米選考会に与える影響

プロ契約を選択するか、ヴェイパーフライを選択するか

シューズメーカーとの契約を交わしている選手は基本的にはそのメーカーのシューズを履く義務があるが、スポンサーを持たない選手にはその制限がない(ミズノがスポンサードするアトランタトラッククラブのマット・マクドナルドウィルカーソン・ギヴンなどの一部の選手は、全米選考会でVFを履くことをミズノから許可されていることは注目に値する)。

予想通り、圧倒的多数のアマチュアランナー(スポンサー無し)がVFを履くことを選択した。昨年のカリフォルニアインターナショナルマラソン(CIM)のレースの模様を見たことのある人は、それを思い出すかもしれない。

ジェイク・ライリー(2019年シカゴマラソンで2:10:36のアメリカ人トップ)、ジェレル・モック(シカゴで2:10:37でアメリカ人2位)、リード・フィッシャー(2020年ヒューストンハーフで61:37でアメリカ人2位)などの選手はスポンサーを持っていないが、VFを履いて良い結果を残した。

それぞれの選手が「プロ契約を選択するか、ヴェイパーフライを選択するか」という現実的な選択に直面している。彼らは金銭的なサポートのためにスポンサーを求めることもできるが、VFを履くために、それまでと変わらずスポンサーを持たないまま全米選考会に出場することもできる。

ライリーはスポンサーを持たなないまま全米選考会に出場する。

(補足:日本ではサブテンに近い記録を出せば実業団選手になることが可能である。そこでは収入が保証され、シューズを自由に選択できる。しかし、アメリカではサブテンに近い記録を出してもナイキと契約を結ぶことは難しい)

「いくつかのシューズメーカーとプロ契約の話があった」

と、ライリーのコーチであるリー・トゥループは話す。

「今年はオリンピックイヤー。もし、今年がそうでなかったら、最高の条件を提示したメーカーとプロ契約を交わすことだろう。しかし、今年はオリンピックイヤーであり、全米選考会のスタートラインに立つ選手の大半(ナイキ契約選手+大半のアマチュア選手)がアルファフライ、VFネクスト%を履くだろうから、このタイミングでのプロ契約に関しては難しい」

「(仮にライリーが全米代表になり)東京五輪の1か月や2か月前にジェイク(ライリー)がナイキ以外のメーカーとの契約があるという状態を避けたいし、仮に上位8人が全員ナイキのシューズで、彼が他のメーカーのシューズを履いていた、というジレンマを抱えたくない。自分が彼の立場だったらどう思うだろうか?今後の彼の競技人生においてそのような問いとずっと向き合うことにならないようにしたい」

シカゴマラソンでライリーと1秒差だったモックは、アディダスがスポンサードするBoston Athletic Association(BAA)のエリートチームと、シカゴの後に契約を結んだ。しかし、問題が1つだけある。この月曜日の時点で、モックはアディダスのアディゼロプロを受け取ることができていない。

モックのコーチであるアート・シーマーズによれば、アディダスは全米選考会までにモックにアディゼロプロを提供しようと試みているが、コロナウイルスによる中国の工場の閉鎖が影響しているという。そして、シーマーズは「シューズが結果への貢献度に関係する」という考えを好まないが、全米選考会の場合は「そうなるかもしれない」と心配している。

「アディダスがVFに対抗できるスーパーシューズを持っていれば、モックは安心してスタートラインに立つことができる」

と、シーマーズは話す。

「今は、シューズによって大きな差が生じるようだ…」

ヒューストンハーフでアメリカ人2位のフィッシャーに関しては、彼の代理人のジョッシュ・コックスが、彼がスポンサー契約に同意し、数日中にその契約内容が発表されるだろうと話した。全米選考会で彼がどのシューズを履くかはまだわからないが、フィッシャーがナイキと契約しなくてもVFを履く可能性がある。

「メーカーは選手との契約で全米選考会までの期間を考慮していた。しかし、実のところリード(フィッシャー)はそのメーカーのプロトタイプを受け取ることができていない。プロトタイプが受け取れるかどうかを今待っている状態」

明らかなのは、VFが陸上競技を変えたことである。それは、ロードレースだけでなく、メーカーとの契約交渉の現場においても。

「我々は全く異なる時代に身を置いている」

と、コックスは話す。

「あるオファーがあり、それは選手にとってとても重要なオファー。それでも、ある選手はVFを履くことができるようにと契約書にサインをしなかった」

7人のコーチによる回答:全米選考会は公平な競争の場といえるのか?

今回、全米選考会に出場する有力選手のコーチである計7人に、シューズの性能差が囁かれるなかで、全米選考会は公平な競争の場であるかどうかについて尋ねた。 各コーチの回答は以下の通りである。

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エド・アイストーン(ブリガムヤング大・ヘッドコーチ)
【今回出場する指導選手:男子2名】
・ジャレッド・ウォード(サッカニー)
・コナー・マクミラン(アディダス)

面白い質問だ。ミリー(マクミラン)はVFを高く評価していて、彼は実際に去年のニューヨークシティマラソンで着用している。彼はNYCの後にアディダスと契約して、218日の練習ではアディダスのシューズを履いていた。私は彼に

「ミリーはどう思う?アディダスのシューズにはVFと同じマジックがあるか?」

と聞いた。そして、彼は

「そうだね、コーチ、同じ魔法がある」

と言った。

そしてウォーディ(ウォード)は今サッカニーのシューズを履いているが、それはサッカニー版のVFである。正直に言えば、彼は前回の全米選考会とリオ五輪で、VFに対抗したとはいえないサッカニーのシューズで走った。リオ五輪で彼に先着した選手で何人がアドバンテージのあるシューズを履いていただろうか。少なくとも3人はいた。そしてウォードはそのシューズを履いていなかった。

でも、サッカニーのシューズはそれから進化を遂げている。それによって、彼がレースが公平な場所になるということを期待していることを私は好んでいる。BYUのバイオメカニクスの教授であるイアン・ハンター教授の元でのVF4%の研究もさることながら、ウォードやサッカニーは独自開発で独自のシューズを完成させた。

ベン・ロザリオ(HOKA NAZ Elite・コーチ)
【今回出場する指導選手:男女6名】
・スコット・ファウブル(ホカ)
・ケリン・テイラー(ホカ)など

我々の選手が全米選考会で履くシューズは、本当に良くて新しいシューズ。 ホカは全米選考会の週にそのシューズの内容を明らかにするだろう。 我々も試してみたが、本当に気に入っている。 これまでのホカのシューズも良かったが、今では新しいシューズがさらに気に入っている。 だから、我々はこれまでよりも良いパフォーマンスを目指せる。それが今回私が最も関心を持っていることだ。

リー・トゥループ(チームボルダー・コーチ)
【今回出場する指導選手:男子1名】
・ジェイク・ライリー(スポンサーなし)

過去23年での世界中のランニング愛好者によるシューズ論争の状況を考えると、公平であるとは言い難い。40mmの厚さ規定を作った世界陸連のレギュレーションに対して、アルファフライが39.5mmというところをみても、この一連の流れには肯定的な意見よりも否定的な意見が占めている。

私にとって残念なことは、4年に1度、アメリカで行われるマラソンで1番重要な大会である全米選考会 – 3つしかない全米代表への切符を勝ち取るために出場するこの大会で、アルファフライとVFネクストが話題の中心にある。それは大会の状態を変えてしまった。

トム・シュワルツ(ティンマンエリート・コーチ)
【今回出場する指導選手:男子2名】
・ブロガン・オースティン(スポンサーなし)
・リード・フィッシャー

(全米選考会は公平な競争の場であるかどうか)
はい、絶対に。 そうでないと考えることは、VFに対して否定的な立場にいることを意味するが、最近自分は考えを改めた。 陸上競技が進歩していることを考えれば、私はその進歩に肯定的である。

そして時々、世界陸連はレギュレーションの変更に消極的であるか、変更を行うスピード感が乏しい。これはあらゆるスポーツで起こること。私はそれについて心配する必要はなく、選手を指導し、彼らに良いレース計画を立て、彼らの能力を最大限に発揮するようにするだけ、という見解である。

そして、彼らが他の誰かが持っているアドバンテージのあるシューズを持つことができないなら、それを超えることをモチベーションとしていけば良い。苦しいこと(逆境)を乗り越えて、成功を手繰り寄せるしかないんだ。

レイ・トレイシー(プロヴィデンス大・ヘッドコーチ)
【今回出場する指導選手:女子2名】
・モリー・ハドル(サッカニー)
・エミリー・シッソン(ニューバランス)

Huddle_MollyFV-Houston18

(全米選考会は公平な競争の場であるかどうか)
そうでないことは明らかであるし、間違いないことである。今、どんなロードレースでも見ていても、誰もがVFを履いている。 したがって、これまでのロードレースとは異った次元の影響をもたらしている。

このシューズについてはたくさん話すことができるし、それを履く選手がアドバンテージを受けていると考えるのが普通だろう。

それと同時に選手自身が置かれている立場で何がベストなのか、それを追求するだけである。それが私がモリーやエミリーに話していることである。

選手は自分の置かれた状況でベストを尽くすだけ。ただ、それだけ。その考えは変えない。

ライアン・ホール(ハーフマラソン全米記録保持者)
【今回出場する指導選手:女子1名】
・サラ・ホール(アシックス)

時々それについて考えるし、サラはアシックスだけど自信を持ち始めている。他のメーカーもシューズ開発で自信を取り戻してナイキとの差を埋めてきているから、それについてはあまり心配しなくなった。

正直に言えば、自分はSNSにも投稿した通り、シューズ論争の渦の中にいたけど自分を見失ってはいけない。自分の今の仕事はサラを良い状態でスタートラインに立たせてあげることであり、シューズメーカーや陸連やその他の人々に心配をかけてはいけない。

この問題に対してリラックスすることができた。自分の選手が不利にあると考えてしまえば、それについて簡単にがんじがらめになってしまう。何かそういう話題が持ち上がると、人々はそれは公平ではないと言い始め、何かしなきゃいけないとなる。しかし、結局のところ公平かどうかは自分にはわからない。私は、サラのシューズをテストしている研究室にはいなかったし、それが完全に公正であるかどうかを知らなくても大丈夫だ。

ウォルト・ドレン(ミシガン州立大・ヘッドコーチ)
【今回出場する指導選手:女子1名】
・ディズリー・リンデン(ブルックス)

自分がコントロールできないことは心配する必要はない。そして、彼女(リンデン)も同じように感じていると思う。

 

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