世界陸連のセバスチャン・コー会長の未来の考え:ダイヤモンドリーグにおいての200m、3000mSC、三段跳、円盤投の削減について

【サマリー:記事の要約】
・DLは観客数減少で2020年から14 → 13大会に減らす方針だったが、2019年シーズンの観客数微増とワンダとの大型契約から一転して15大会開催に変更

・過去3年間DLファイナルは、ブリュッセルDLとチューリヒDLで男女各8種目(2大会で合計32競技)開催。2020年はチューリヒDLで男女各12種目(合計24競技)開催

・2021年にアメリカでは初の世界選手権が開催されるが、2つ目のDL候補の屋外大会は現在ない。WAは将来的にアメリカで2つ目のDLを開催したい

・テレビ放送の2時間 → 90分間への変更はWA(世界陸連)の意向ではなく、DLの各大会ディレクター(DLの株主)たちの希望によるもの

・DLの運営において「放映権料」が大きな収益源である

・DLは2020年シーズン終了後に一定の評価基準によって再評価され、大会数や開催種目の数を再調整する


2017年6月18日日曜日の午後、ストックホルムDL(DNガラン)がいつものように開催されていた。ケニアのティモシー・チェリヨットは、男子1500mでシーズン最高記録の3:30.77で優勝。そのレースには当時16歳のヤコブ・インゲブリクトセンも出場していた(3:39.92)。

カナダのアンドレ・ドグラスが追い風+4.8のハリケーンレースの男子100mを9.69で制し、女子走高跳のマリヤ・ラシツケネと男子走幅跳のルヴォ・マニョンガが順当に優勝。女子円盤投ではクロアチアのサンドラ・ペルコビッチの公式戦17連勝がかかっていたが、キューバのヤイメ・ペレスが番狂わせを起こして優勝した。

セバスチャン・コーは、このいずれの競技も見ていなかった。その代わりに彼は北海(North Sea)を渡って、ロンドンで行われたクリケットのICCチャンピオンズトロフィー(ICC Champions Trophy 2017)の決勝戦を観戦していた(パキスタンがインドを破って優勝)。

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2016年世界室内選手権でのコー会長 ©2016 IAAF

DLの結果はIAAF会長でDLのチェアマンであるコー会長に競技終了後に通知されたが、彼はストックホルムにいるだったし、少なくともテレビ観戦をすべきだった。

コー会長の言い分は?

「どこにいても、DLのテレビ放送があったなら、私はテレビ観戦していただろう」

と、彼は話した。

テレビの生放送の欠如は、コー会長がトラックの競技会に対して抱いていた不満の1つであった。ストックホルムDLでは、スウェーデンのオリンピックスタジアムの14,000席が空席で、観戦者は減少していた。また、大会ディレクターが、現在の関係性より過去の関係性を重視して選手を選出している現状も目の当たりにしてきた。

“ダイヤモンドリーグとはそもそも何なのか?”ということをコー会長は説明しようと試みてきたが、それすらできなくなっていた。

「“リーグ”ではなくなった」

と、DLのチェアマンとして、そして陸上競技の長年のファンとしてコー会長は語った。そして、コー会長のフラストレーションは溜まる一方だった。

2018年のシーズン前、コー会長はDLの各大会のディレクターたちに課題を与えた。

“ダイヤモンドリーグを改善させよ”と。

「1つのすごく明確な根本の方針から始めた。手を胸に当てた時に、DLというものが真に最高の大会である、と自負できなければならないということである。3つか4つの大会においてはそういえたとしても、それ以外の大会は最高な大会とはいえないだろう」

そして、彼らはいくつかの改善案を模索した。

2015〜2017年の3年間のオスロDLの観客数は14,000人 → 13,000人 → 10,240人と年を追うごとに減少していったが、この2年間は満員の15,400人が入った。そして、パリDLもこの2年で観客数が14,568人 → 16,175と11%増加した。

「パリDLはすごく悪い方向へと進んでいた。それまでの大規模のスタジアムから、小規模のスタジアムでの開催に変更されたものの、そこでも満員ではなかった」

DLは7年間メインスポンサーがいない状態が続いたが、中国のコングロマリット(複合企業)であるワンダ(Wanda Group・大連万達グループ)と10年の大型契約を締結。ワンダはワールド・トライアスロン・コーポレーション(アイアンマン世界選手権を開催)と、※コンペティターグループのオーナー企業である。

(※)コンペティターグループ(Competitor Group, Inc.):米国のスポーツマーケティング・出版・イベント会社。陸上長距離のロードレースシリーズの「ロックンロールマラソンシリーズ」を世界で開催。ランニング雑誌のコンペティターやウイメンズランニング、トライアスロンマガジンを出版。

IAAF(現在はWA)は今年の9月25日に、ワンダとの10年契約を

「陸上界において最大の商業的パートナーシップ」

と、IAAFの記事で紹介した。

しかし他のエリアでは、DLは苦戦し続けている。2018、2019年と満員でなかったパリDLは、2015年にアレヴァ(Areva)がメインスポンサーを降りてから、大会のメインスポンサーがいない状態が続いている。パリDLとオスロDLは観客数は近年増加したが、ロンドンDLの観客数はこの4年連続で減少している。

DLがレッツランに提供した、2010〜2019年のDL各大会観客数のデータは以下である。

【DL:2010〜2019年の各大会観客数】

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(↑クリックで詳細参照可能)

【備考】
① 右の%はスタジアムの最大収容者数に対する実際の動員率
② ロンドン、ローザンヌは2016年から観客数が年々下降
③ パリDLは2016年にスタジアムの半分も観客が埋まらなかったので翌年から小規模のスタジアムに会場変更したがこの3年は満員でない

【2019年DL】
① 観客3万人以上の大会:上海、ローマ、ブリュッセル
② 満員の大会:オスロ、チューリヒ、ユージン(スタンフォード大で開催)
③ 2019年DLの1大会あたりの平均観客数20,732人はこの10年で最も低い数値

アメリカでは2015年シーズンの開催をもって、2016年には※ニューヨークDL(アディダスGP)の開催は無くなった。また、アメリカでは2019年開催のDL14大会のうち、DLファイナルを含む5回の大会はテレビの生放送が無かった。

(※)ニューヨークDL:2005年にリーボックGPとして大会が始まり、その後アディダスGPに名称変更。2015年までDL開催されたが、2016年にDLから降格(代わりにラバトDLが新設)。アディダスGPはその後Adidas Boost Bostton Gamesに名称を変えて、ボストンでトラック+ストリート陸上形式で国際大会を開催。

Embed from Getty Images

11月にコー会長はダイヤモンドリーグの未来と、今後のスポーツ界に関する彼のビジョンについて我々と45分間話し合った。

彼のもくろみの1つは、陸上競技におけるアメリカでの地位を上げることにある。コー会長は今後10年間で、2021年ユージン世界選手権や2028年ロサンゼルス五輪がアメリカで開催されることについて、

「(アメリカで)やるべきことがたくさんある」

ということを概ね認めた。とはいえ、彼はプリクラシック(ユージンDL)に加えて、アメリカで2つ目のDL開催を心待ちにしているが、その候補となる大会がほとんど無いのが今の現状である。

「コンチネンタルツアー(DLの下部サーキット)に加入したい大会を見つけることはほとんど不可能であることがわかった」

コー会長はそう話す。

「このスポーツにとって良い兆しではない… アメリカは陸上競技の強豪にも関わらず、少し特殊な位置付けにある」

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