史上最強の選手が復活:ケネニサ・ベケレが世界歴代2位の2:01:41でベルリンマラソンを制す

史上最もスリリングで驚くべきマラソンパフォーマンスの1つとして、エチオピアのケネニサ・ベケレは今日のレースで、彼が地球上で最高の長距離選手であることを証明してみせた。35km地点では同じエチオピアのビルハヌ・レゲセに13秒差をつけられていたが、そこから追い上げをみせ2:01:41という驚くべき記録で優勝を果たした。それは、エリウド・キプチョゲの世界記録にあと“たった2秒”という大記録だった。

ベケレがこのレースで復活を果たしたのは、彼のマラソンのキャリアをうまく表現しているといえる。ベケレはトラックとクロスカントリーで右に出るものがいないほどの結果を出した(3つのオリンピック金メダル、現在もまだ破られていない5000mと10000mの世界記録、11回の世界クロスカントリー選手権のタイトル)。

しかし、ベケレはマラソンでのキャリアに関しては、それらと同じようにハイレベルかつコンスタントに結果を残すことがなかなかできなかった。今回のベルリンマラソン前では、1年5ヶ月前の2018年ロンドンを最後にマラソンを完走さえしていなかった。直近6回のマラソンのうち、4回は途中棄権か欠場をしていた。37歳にして、しかもマラソンでは優勝から3年も遠ざかり、ベケレのキャリアはついに堕ちたかにみえた。

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ベケレは彼のキャリアで何度かは終盤に差し切るというレースをみせている。ハイレ・ゲブレセラシエモー・ファラーとの三つ巴となった2013年グレートノースラン、そして、ウィルソン・キプサングとのマッチレースになった2016年ベルリンマラソン。しかし、彼がこれほどの速さで走ったレースは今回だけではなく、彼はこれまでのキャリアで印象的な勝利を積み重ねてきたので、今日のレースがナンバーワンとは言い切れないだろう。

しかしながら、彼が37歳にして2:01:41という記録、そして“復活”という事実をもって、今日のレースが彼のキャリアではナンバーワンのレースだった、と思うファンもいるかもしれない。

レース展開

何か特別なことが怒るかもしれないという予兆は最初の10kmで起こった。ペーサーは28:58で通過し、これは1年前のキプチョゲの通過記録よりも2秒速かった。しかし、キプチョゲの世界記録では大きなネガティブラップ(61:06 / 60:33)であったことを考えると、この入りの10kmで興奮するのは少しタイミングが早かった。

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©︎2019 Steffen Hartz

しかし、そのペースは中間点まで維持され、ペーサーと5人の選手の先頭集団は61:05で中間点を通過し、そのペースは昨年よりも1秒速かった。先頭集団には2019年の東京マラソン優勝のレゲセに加えて、エチオピアのシセイ・レマ(自己記録2:04:08)と、レウル・ゲブルセラシエ(昨年のドバイで初マラソン2:04:02)、ケニアのジョナサン・コリル(自己記録2:06:51)が含まれていた。中間点を過ぎてからもそのうちの誰かがペースを上げようと試みていて、後半の21kmはペースアップが起こった。

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彼らは20〜25kmを14:30で走り、 25kmを1:12:30(2:02:21ペース)で通過し、そこでゲブルセラシエが離れ、その後にコリルも離れたため、勝負は3人のエチオピア人の三つ巴となった。

レゲセは最初の仕掛けをした。30km手前の給水地点でペースアップをして、30〜31kmを2:48でカバー。ベケレはそこで離れ、しばらくしてからレマも離れてしまう。

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34km手前ではベケレは計測車の後ろに隠れて3位

35km地点で、なぜレマベケレが30kmで離れたかが明らかになった。レゲセは30〜35kmを14:09(1:59:24マラソンペース)という早い段階でのスパート。35kmで2番手を走るベケレとの差は13秒になっていた。しかし、ベケレレゲセに引き離されたもののペースを落としておらず、ベケレも30〜35kmを14:25(35kmまでで1番速い5kmのラップ)でカバーした。

次の5kmでレースが決まった。レゲセがペースダウンしていた時、ベケレはその動きに磨きをかけ、その差を急に詰めていた。38kmの手前で彼はレゲセに追いつき、勝利へと向かった。ベケレは35〜40kmを14:15でカバーし、昨年のキプチョゲの40km通過よりも2秒速い1:55:30で40kmを通過した。そこで突然、世界記録更新の可能性が出てきた。

そして、ベケレはそれを知っていた。 彼がマラソンのキャリアで故障と戦っていたとき、彼のモチベーションとなったのは、マラソンの世界記録への追求と、5000m、10000m、およびマラソンで世界記録を同時に持つという前代未聞の探求心だった。

キプチョゲが昨年のベルリンで前人未到の2:01:39を出して新しい領域に入ったかと思った1年後、ベケレは歴史と戦いその記録は破られるかと思われた。ベケレは歯を食いしばり、頭を左右に振って時計を何度も見た。世界記録は破られてもおかしくなかった。

彼はブランデンブルク門の先でラストスパートをかけ、また新たな世界記録を求めて最後に全力を振り絞った。しかし、世界記録は出なかった。ベケレは最後の2.195kmを6:11でカバーしたが、それは昨年のキプチョゲの最後の2.195kmよりも4秒遅く、フィニッシュタイムは2:01:41だった。

レゲセは世界歴代3位の2:02:48で2位に入り(2位の記録としては最速)、レマは2:03:36で3位に入った。キプチョゲベケレ以外で歴史上最もマラソンを速く走った選手(レゲセ)よりも67秒速いベケレのフィニッシュだったが、世界記録には届かなかった。しかし、今日の彼の記録は注目に値する記録であり、ベケレの自己記録は現在5000m12:37、10000m26:17、マラソン2:01:41である。

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ベケレのこの3年のマラソン成績
2016年9月:ベルリン優勝(2:03:03)※当時世界歴代2位
2017年1月:ドバイ途中棄権
2017年4月:ロンドン2位(2:05:57)
2017年9月:ベルリン途中棄権
2018年4月:ロンドン6位(2:08:53)
2018年10月:アムステルダム途中棄権
2019年3月:東京マラソン欠場
2019年9月:ベルリン優勝(2:01:41)※世界歴代2位

信じられないほど素晴らしい結果となった

今日のベケレはとても素晴らしく、キプチョゲはこの5年間で素晴らしい成績を残し続けてきているが、ここで我々は誰もが認識しているがあまり話題に出さない事柄について話をしなければいけない。ナイキのヴェイパーフライのシューズについてだ。

このシューズが2017年に発売された時(何人かのナイキの選手は2016年にすでにプロトタイプを履いてレースを走っていた)、ナイキはランニングエコノミーの4%の改善を声高々に宣伝していた。その宣伝文句を信じるか信じないかは人それぞれである(ニューヨーク・タイムズのアナリストは、1%の改善だと指摘した。キプチョゲは2016年ロンドンで初めて使用して2015年ベルリンよりも1.2%速く走った)。

しかし、ヴェイパーフライを履いた選手たちが、これまでのどの選手たちよりも速く走っているという事実は否定することができない。男子マラソン歴代5番目までのパフォーマンスは全てこの1年間に記録されたものであり、それら全てがヴェイパーフライを履いてのものだった。

歴代順位 選手 記録 レース ヴェイパー使用
1 エリウド・
キプチョゲ
2:01:39 2018年ベルリン
2 ケネニサ・
ベケレ
2:01:41 2019年ベルリン
3 エリウド・
キプチョゲ
2:02:37 2019年ベルリン
4 ビルハヌ・
レゲセ
2:02:48 2019年ロンドン
5 モジネット・
ゲレメウ
2:02:55 2019年ロンドン

2020年東京オリンピックでベケレvs.キプチョゲが実現するか

2016年、ケネニサ・ベケレはリオオリンピックのマラソンのエチオピア代表の選考で落選したことに関して不満があっただろうが、その年の秋のベルリンマラソンでは2:03:03で優勝したことを考えれば、ベケレがオリンピック選考に対してイライラしていた意味もわかる。

リオオリンピックではキプチョゲが金メダルを獲得していた。今日のレースを見て、長距離の全ての距離でGOAT(史上最強)であるベケレ、そしてマラソン界のGOATであるキプチョゲが、オリンピックタイトルを狙って東京オリンピックで対戦するということを考える必要がでてきた。

それは、我々が本当に見たい対戦になることは間違いないが、気をつけなければならないことがある。ベケレはコンディションを整えて常に調子を維持する必要がある。キプチョゲは鉄の男で大きな故障をしたこともなければ、まるで時計のように正確に年に2度のマラソンを走る。そして、マラソンを走れば、いつも優勝するのはキプチョゲである。

ベケレはというと?そうでもない。ベルリン以前の2回のマラソンでは、昨年秋のアムステルダムマラソンは途中棄権、2019年東京マラソンは出場を取りやめた。マラソンでキプチョゲに挑戦することはできると思う。しかし、それはまだ実現できていない。ベケレはキプチョゲに対してマラソンで0勝4敗である。東京オリンピックでそれが変わるかもしれないし、変わらないかもしれない。しかし、我々はこの2人が再び戦うのを見たくて仕方がないのである。

【レース後のインタビュー】※インタビュアー:アルベルト・ストレッティ

Q:先頭から遅れた時は、何かあったのか?それとも意図的だったのか?
「2:02ぐらいでは走れると思っていたが、準備期間が短いこともあり、ここまでの記録は予想していなかった。30kmぐらいで先頭と離れた時、少し脚の痛みを感じてペースを落として、自分の体をコントロールした。体に耳を傾ける必要があった」

Q:世界記録については考えたか?
「世界記録については考えることができなかった。世界記録ペースからは少し遅れていたし、難しい状況であったからね。マラソンに復帰して、世界記録更新はできないと思っていたよ。自己記録より速く走って、次のレースへの準備ができればと思っていた。自分の体がどのように感じるかを確かめる感じ」

Q:次のレースとは来年になると思うが、オリンピックは出たいか?
「もちろん、チャンスがあればオリンピックは走りたいとは思っているが、代表を決めるのはまだ時間がある。決めるのはエチオピア陸連だし、今後たくさんのエチオピア人がレースを走るから、誰が代表になるかはまだ誰にも分からないね。待つしかないね」

Q:なんども自分の時計を見ていたが、それはなぜ?世界記録のことは考えていなかったはずだが?
「ゴールの予想記録を知ることが難しかったから。予想記録を掲示していた車は結構前を走っていた。自分のペースを把握して自分のペースをコントロールする必要があった。前を走る計測車を探すよりは、自分の時計を見た方が簡単だからね」

Q:ケネニサ・ベケレが復活したと考えていいかな?
「もちろんだよ。完全に復活したよ。もっと速く走れるようになるよ」

 

【ケネニサ・ベケレ 2:01:41=世界歴代2位】
5km 14:24
10km 28:53(14:29
15km 43:29(14:36
20km 57:58(14:29
中間 61:05
25km 1:12:30(14:32
30km 1:26:55(14:25
35km 1:41:15(14:20
40km 1:55:30(14:15
ゴール 2:01:41(6:11
前半61:05 – 後半60:36

 

【総合成績:男子トップ20】

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村山謙太(旭化成)が2:08:56の自己新で9位  ©︎2019 Steffen Hartz

 

【総合成績:女子トップ20】

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レッツラン 記事

The GOAT is Back: Kenenisa Bekele Runs Stunning 2:01:41 at BMW Berlin Marathon

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