ドーハ世界選手権男子5000m展望:本命不在の混戦でヤコブ・インゲブリクトセンによってこの種目で20年ぶりの欧州勢のメダル獲得となるだろうか?

1993年以来では初めて、世界選手権での男子5000m決勝が、男子10000m決勝の前に開催される。伝統的に、男子10000m決勝を初日に行うことによって世界選手権の幕開けを感じさせるのは素晴らしいことであったが、そのプランに変更するのにはすでに遅い。

今回の男子5000mがこれまでと違うと感じる点はそれだけではない。オリンピックチャンピオンであり、この10年間で男子5000mを支配したモー・ファラーがマラソンに転向し、2007年大阪世界選手権で6位に入ってから6大会連続で出場していた世界選手権から姿を消した。

今年の男子5000mのダイアモンドリーグチャンピオン、ウガンダのジョシュア・チェプテゲイもこの種目にエントリーしておらず、DLファイナル2位でリオオリンピック銅メダリストのハゴス・ゲブリウェトも1種目のみに専念するため、2人はともにドーハでは10000mのみの出場となる。

また、世界室内選手権で2度の金メダルを獲得しているヨミフ・フケジェルチャは、3月に屋内1マイルの世界新記録を樹立し、今年のDLファイナルまでは5000mで無敗だったが(ペイントジョーダン、上海DL、ローザンヌDLで優勝)、この種目でエチオピア代表に入りさえしなかった。

そして、 3人のアメリカ人が13:01よりも速く走ったがキンケイド、ロモン、セントロウィッツのうちの誰もこのレースには出場しない。

2年前のロンドン世界選手権でファラーを破ったフィニッシュラインでMobotを真似た前回王者のムクター・エドリスは今季1レースだけ5000mを走っているが、ローザンヌDLで13:29.53の18位だった。また、ロンドン世界先週権でエドリスファラーの後ろでフィニッシュし、銅メダルを獲得したポール・チェリモは今季、最高の成績を収めておらず、全米選手権ではロモンに敗れた。

明確なこと:出場選手の中では4人のエチオピア生まれの選手(バーレーンのビルハヌ・バリュを含む)がサブ13:00を達成しており(テラフン・ベケレが12:52の今季世界最高をマーク)、かつてこの種目をにぎわしていたケニアの信頼を回復させようとするのは今季12:57をマークしたニコラス・キメリ、そして若きノルウェーのスター、19歳のヤコブ・インゲブリクトセンがこの種目では14年ぶりの非アフリカ勢としてのメダル獲得を狙っている。

混戦を極めるであろうこれらはすべて、予測不可能なレースを生み出す。しかし、それこそが今回の世界選手権で我々が見たいレースである。


日程(エントリー
予選: 9月28日PM19:55(日本時間AM1:55)
決勝: 10月1日PM21:30(日本時間AM3:20)

2019年シーズントップ5(出場選手中)
1. テラフン・ベケレ, エチオピア 12:52.98
2. セレモン・バレガ, エチオピア 12:53.04
3. ビルハヌ・バリュ, バーレーン 12:56.26
4. アバディ・ハディス, エチオピア 12:56.48

誰を本命に推すべきだろうか?

前回王者のエドリスは、2017年の調子を突然取り戻さない限り、メダル候補とはいえないが、今季調子の良い他の2人のエチオピア人、ベケレバレガは2人ともに金メダル候補である。ベケレは6月のローマDLで自己記録を12秒更新する12:52の今季最高記録をマークし、バレガ2018年8月のブリュッセルDLで世界歴代4位の12:43をマークする前には、昨年の世界室内選手権3000mで銀メダルを獲得した。

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昨年のU20世界選手権5000mでメダルさえ獲得できなかったこの2人(バレガ4位、ベケレ5位)がドーハで金メダル候補として火花を散らすのは信じられないかもしれないが、仮にあなたがエチオピアのトップ選手の1人なら、あなたは常にメダル候補としてカウントされる – 2008年北京オリンピック以来、エチオピア人選手はすべての世界選手権 / オリンピックの男子5000mでメダルを獲得しているからだ。

ベケレバレガは、今回の出場選手中では唯一今年のダイヤモンドリーグで優勝しており(バレガの優勝はオスロDLの3000m)、今季のDL戦線で常に安定した成績を収めた2人でもある。バレガはDLの5000mで2位、2位、3位、2位、5位、ベケレは5位、優勝、3位、4位と大きく外していない。今回のレースでハイペースとなれば、その恩恵を受けるのはこの2人である。彼らが敗れた昨年のU20世界選手権の決勝のレースの優勝記録は13:20だった(ペースが落ち着いた)。

しかしながら、彼らがDLファイナルで4位と5位だったことを考えると、そこで優勝したチェプテゲイ、2位のゲブリウェトが今回不出場とはいえ、彼らを不動の金メダル候補として推すことまで強調できない。

ケニア勢でメダル候補となるのはニコラス・キメリで、彼はDLファイナルで3位だったが、その2週間後のドーハ世界選手権ケニア選考会では3位に終わった。しかし、そこで優勝したマイケル・キベット、2位のダニエル・シミユIAAF規則第15条第1項(c)記載

「ドーピング警戒国カテゴリーAの国(ケニアなど)の選手は世界大会10ヶ月前までに競技外検査を最低3回受ける必要がある」

という規則をクリアしておらず、エントリーするも出場は叶わなかった

少なくとも、キメリはケニア勢としては2017年ロンドン世界選手権で唯一ケニア勢で決勝に残ったサイラス・ルットの13位を超えるパフォーマンスを上回るだろう。

チームインゲブリクセン!彼らのメダルの可能性は?(イエス)

世界選手権で初めて、3人のインゲブリクセン兄弟(28歳ヘンリク、26歳フィリップ、19歳ヤコブ)全員が同じ種目に出場する(フィリップとヤコブは1500mとの2種目出場)。そして、彼らのうちの1人がこの種目でノルウェーにメダルをもたらせるという理由がここにある。

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ヤコブはもちろん類稀なる才能を持っているが、若くして成功を収めたといえる最大の理由の1つは、昨年17歳にして欧州選手権で1500mと5000mの2冠を達成したことである。

ヤコブの専門種目は1500mである。そして、1500mを専門としている選手のほとんどが、ドーハ世界選手権では5000mの後に1500mが行われることもあって、今回は1500mのみにフォーカスしている。

しかし、ヤコブはそうではない。ノルウェーのメディアにドーハでの2種目出場を表明し、彼は2つのポイントを挙げた。:5000mは1500mに加えてのメダルのチャンスであり、世界選手権の5000mはハイペースにならず、ラスト勝負になりやすい(したがって、12.5周のハイペースのハードなレースになりにくい) 。

「1500mをおろそかにはしないが、5000mでパフォーマンスを発揮できると確信している」

しかし、ヤコブは5000mがメダルのチャンスだと話している。アフリカ生まれの選手以外ではこの種目でのメダルは滅多にないことである。過去30年間で世界選手権の男子5000mでは、非アフリカ勢ではたった1人しかメダルを獲得していない(クレイグ・モットラムの2005年ヘルシンキ世界選手権での銅メダル)。

しかし、2人しか出場しないケニア勢はメダル候補が1人しかおらず、ケニア、エチオピア以外の国の選手にとってメダルのチャンスが増している。そして、この夏のロンドンDLでヤコブの走りを見た人は誰でも、彼が5000mでも十分に戦えることを知っている。

そのレースで、ヤコブはラスト800mを1:54.5、ラスト1周を53.6で走り、13:02.03のノルウェー新記録を樹立した。その走りがドーハでもできれば、世界選手権でメダルを獲得できる。

そして(ペーサーのいない)選手権のレースはヤコブに有利に働く。彼は1500mで3:30の自己記録を持っている(5000mの出場選手では、フィリップだけがそのよりも速い自己記録を持ったいる)。そして、ヤコブは1500mでは今年のDLファイナルで2位だった。

そして、バレガとベケレが4位と5位に終わった昨年のU20世界選手権5000mで、ヤコブは3位だった(そのレースでヤコブを破った選手は今回出場しない)。

ちなみに、フィリップは2017年ロンドン世界選手権1500mで銅メダルを獲得したので、彼は明らかにラストのスピードを持っている。しかし、彼は5000mで成功するヤコブと同じパフォーマンスとはいえない。フィリップは5000mでは昨年夏のストックホルムDLで12位、ナイトオブアスレチックで13位、今年はローマDLで14位だった。

アメリカ勢について

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ポール・チェリモは、2016年リオオリンピックと2017年ロンドン世界選手権でメダルを獲得したアメリカ勢のトップ選手である。その実績は、今回のレースにおいては強調材料となるが、彼は今季好調とはいえない。6月のプリクラシック(ユージンDL)では2位だったが、今年の他のDLレースでは12位、6位、8位(DLファイナル)で、全米選手権では34歳のロペス・ロモンに敗れた。とはいえ、チェリモは2016年のリオオリンピック全米選考会で3位だったものの、本番のリオオリンピックでは銀メダルを獲得してパフォーマンスを上げているが…

ハッサン・ミードベン・トゥルーはどちらもメダル候補とはいえない。実際、どちらの選手も全米選手権でトップ3に入らなかったことを考えると、どちらもドーハの切符を手にできたのは幸運なことだった。全米選手権でミードは4位だったが、ロモンがそのレースまでにドーハ世界選手権参加標準記録を突破していなかったので、ロモンは優勝したものの切符を得ることができなかった。

そしてトゥルーは7位だったが、ウッディ・キンケイド(3位)とライリー・マスターズ(6位)もロモンと同じように参加標準記録を突破していなかったこと、ドリュー・ハンター(5位)が切符を得たものの故障によってそれを辞退したことで、繰り上がりでトゥルーにドーハへのチャンスが回ってきた。

ミードとトゥルーは、全米選手権までにドーハに出場するために必要な参加標準記録を突破したが、ロモン、キンケイド、マスターズはそれをすることができなかった。これは、今年USATF(全米陸上競技連盟)が選手たちに全米選考会の後に参加標準記録を突破する機会を認めなかったことの弊害の典型である。

キンケイドは9月に5000mを12:58を走った。彼を世界選手権で観れたとしたらそれはどれほどエキサイティングなことだろうか。その代わりに、彼は今回のレースをテレビ観戦することとなるだろう。

アメリカ勢以外の元NCAAアスリートでは、全米学生クロスカントリー選手権で優勝したジャスティン・ナイト(カナダ)とモーガン・マクドナルド(オーストラリア)も今回出場し、それ以外ではマーク・スコット(イギリス)とサム・パーソンズ(ドイツ)も出場する。

ただし、今回出場する元NCAAアスリートの有力選手はモー・アーメド(カナダ)である。アーメドはジェリー・シューマッカーが指揮をとるBTCでのトレーニングスケジュールをこなしている。つまり、アーメドは7月からレースに出場していないが、5000mはリオオリンピックでは4位、ロンドン世界選手権では6位に入っている。

彼は2週間前にはビーヴァートン(ナイキ本社)で12分台ペースで1800〜4600mまで引っ張って、キンケイドらのペーサーとして良い動きを見せていた。彼が今回メダルを獲得することは十分に考えられる。彼がメダルを獲得した場合、1500mより長い距離の種目としてはカナダ初の世界大会(オリンピック、世界選手権)でのメダル獲得となる。

レッツランの 予想:優勝 ヤコブ・インゲブリクトセン、2位 ベケレ

レッツラン 記事

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