【LRCJオリジナルインタビュー記事】ダニエル・ジョーンズ(マラソン2:16のマルチスポーツアスリート)

マルチスポーツとマラソン

ダンはジュニア期には山々に囲まれた土地に育った。父親がマルチスポーツの選手だったので、ダンも父親を追いかける形で野山を走り、自転車で山道に分け入り、カヤックで川へ乗り出すことにスポーツの楽しみを覚えた。ジュニア期には世界マウンテンランニング選手権にニュージーランド代表として出場した。

ダンがスポーツフィールドとして選んだ場所は山・丘のトレイルであり、さらには川の上である。いったい何がダンをマラソンへと向かわせたのか。

「マラソンは自分への挑戦。自分が(ランナーとして・アスリートとして)どれだけできるのか、ということがはっきりわかる」

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「マルチスポーツではレース中に気持ちを高揚させる、自分自身を鼓舞する瞬間がたくさん訪れる。例えば、チームメイトと激坂を駆けあがる時、チームメイトを牽引して走る時、絶景の中を疾走する時の気持ちの高ぶりはマルチスポーツ特有の瞬間だと思う。もちろんカヤックを川の上で4時間も5時間も漕いでいるときは退屈になってくるときもあるけどね」

「マラソンではレース中にそういった気持ちの高揚はほとんど感じたことはないかな。マラソン特有といえば、スタートラインに着いたときにマラソンのスーパースターが周りに同じように並んでいること。このときは気持ちの昂りを感じるかな。集団で給水所に入った時の少しエキサイティングな感じもマラソン独特だと思う。けれどマラソンはほとんどが、スタートからゴールまで自分と向き合っている」

ダンにとって、マラソンは気持ちを高揚させるスポーツとは違った種類の競技である。舗装された道路、≪42.195㎞≫という道の上で、≪アスリートとしての実力≫を淡々と正確に計るメジャーとなっているのかもしれない。

マルチスポーツとマラソントレーニング

「マルチスポーツで最も重要なのは持久力。だからランニングのトレーニングが重要になってくる」

筆者の私がダンと初めて会ったのは3年前。火曜日の夜6時15分から行うクラブトレーニングにクラブ外からダンが参加し始めたことがお互いのトレーニングパートナーとしての原点であった。トレイルを中心に走っている選手であるため力強いランニングフォームであるが、その動きに力みはなく体のバランスが非常に優れているということが第一印象であった。

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「カヤックはそのほとんどが上半身とコアのバランスで競技力が決まってくる。マウンテンバイクは全身の持久力が重要。この2種目に関して体の持久力を鍛えて競技力が上がるというのは正しい選択肢。けれども、最も大切なことは運動のエコノミーと機材を自由に扱うテクニックを向上させるという点だね」

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「今現在はカヤックもマウンテンバイクもエコノミーとテクニックを回復させる、維持する、改善する、といったことがトレーニングの中心になっている。そのためトレーニングにそこまで時間を割く必要はなくなった。マラソン中心のトレーニング後は、その運動(カヤック・マウンテンバイク・トレイルランニング)をしていなかった分だけ体がうまく動かなくなるけれど、トレーニングをすれば必ずうまくなるから1つ1つの動きを丁寧にトレーニングすることを心がけている」

「そうしてランニングに使える時間を増やせば、マラソンでもまた高いレベルへ上がれると思う。あとマルチスポーツのためのトレーニング時期は、1つのトレーニングがうまくいかなくても別の種目ですぐに気持ちを切り替えられる。各トレーニングにいいところの発見がたくさん潜んでいるところがマルチスポーツのいいところ」

各種目のトレーニングバランスを上手にコントロールできるようになったこと。ランニングにおけるトレーニングサイクルでも多種目をバランスよく取り入れられるようになったことはダンの競技力を向上させる1つのポイントになった。

陸上競技の選手は故障をすると代替トレーニングとして自転車や水泳、ウェイトトレーニングなどを行うことが一般的である。ダンの場合、故障をしなくてもマルチスポーツの時期には、必然的にこれら代替トレーニングを非常に計画的に取り組んでいる。ダンのマラソンランナーとしてのベースはバランスよく洗礼されたトレーニングプログラムだけではない。多種目に取り組むことで培ってきた全身のバランスとメンタルコントロールがダンのランニングを支えている。

世界選手権・世界レベルのマラソン

7月のゴールドコーストマラソンではドーハ世界選手権の参加標準記録を16秒逃す結果となった。そのことに悔いはないと話す。しかし今後記録を短縮していけるのであれば、世界選手権やオリンピックの参加標準記録も視野に入れて競技に取り組みたいという。

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左がダン

「ゴールドコーストマラソンでニュージーランド代表のシングレットを着て走れたことはとても誇りに思う」

今回のゴールドコーストマラソンは、マラソンのオセアニア選手権のという位置づけで開催された。ニュージーランド・ディスタンススターのゼーン・ロバートソン選手を始めオセアニアエリアの強い選手たちがしのぎを削る大会となったが、その中でニュージーランド代表選手として結果を残せたことはダンに、マラソンランナーとしての自信を芽生えさせるものとなった。

ダンは8月下旬から9月上旬までマルチスポーツの大会で中国の大会を転戦する予定となっている。大会を目前に控え、今はマルチスポーツのチームメイトと顔を合わせるのが本当に楽しみだという。そしてマルチスポーツを楽しんだ後で、ランニングに本格的に取り組む予定だという。

「今年のマルチスポーツの大会が終わった後のマルチスポーツのビッグゴール、マラソンのビッグゴールはまだ決めていない。しかしこれからも自分自身の限界に挑むマラソンに挑戦する意志がある。そして可能ならば、世界大会への標準記録も目標に設定してトレーニングを計画していく予定だね」

ダンにとってのマラソンは≪自分の限界を知るための42.195㎞≫である。マラソンランナーとしてのキャリアはまだ始まったばかりであり、ダンの限界値はまだまだ遥か彼方であるようだ。

 

【筆者プロフィール:谷本啓剛】

ニュージーランド・ウェリントン在住

ランニングガイド・RunZ(ラン・ニュージーランド)代表、酒井根走遊会主宰

【RunZ(ラン・ニュージーランド)】https://runnewzealand.wordpress.com/

【酒井根走遊会(オンライン陸上部・駅伝部)】https://ameblo.jp/dashpiro

 

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