【LRCJオリジナルインタビュー記事】サム・ハイド-スミス(2019年U20NZ選手権800m, 1500m, 3000m王者)

※以下は、ニュージーランド・ウェリントン在住の谷本啓剛氏(ランニングガイド・RunZ:ラン・ニュージーランド代表)によるレポートで、レッツランジャパン(LetsRun.com Japan=LRCJ)オリジナルコンテンツのインタビュー記事です。


サム・ハイド‐スミス

~2019年U20ニュージーランド選手権800m, 1500m, 3000m王者~

今回はニュージーランドのユース世代の選手へインタビューしました。サム・ハイド・スミス選手(以下サム)は、2017/2018年シーズンから急激に力をつけ、2018/2019年シーズンではついにU20の国内チャンピオンに輝くまでに成長した非常に伸び盛りの選手です。1500mという種目をメイン種目としてトレーニングを積みながらも、2019年3月には800mで1分50秒を記録しするなど、スピード・スピード持久力に非常に優れた選手です。

その能力だけでなく、ニュージーランドの多くのコーチが彼の将来を期待する最も大きなポイントの1つに彼のランニングフォームが挙げられます。国内外のトップランナーと走っていても遜色のないその美しいランニングフォームは彼の将来の飛躍を期待させます。

サムは現在は地元ウェリントンのヴィクトリア大学に通いながら、パートタイムで仕事をして目標達成のために競技に取り組んでいます。

眩い“中距離の才能“が溢れるようなランニングフォームを私たちに見せてくれますが、競技に対するセルフマネジメントに関しても非常に優れたものを持っていることが彼と話をしていてわかります。サムのユース期の取り組みと、現在地についてインタビューしました。

 

サム・ハイド-スミス:IAAF選手名鑑

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ゼッケン699がサム

出身: ニュージーランド・ウェリントン

生年月日: 2000/1/16

自己ベスト: 800m 1:50:52 / 1500m 3:53:30 / 3000m 8:35:88

クラブ:ウェリントンスコティッシュ・アスレティクスクラブ

コーチ:Evan Cooper


ランニングとソーシャライズ

ランニングを始めたのは11歳の時でまだ小学生だった頃。始めた頃はランニングクラブで友人を作ったり、コーチと話をしたりする※≪ソーシャライズ≫が主な目的であった。

(※)Socialize:友人との交流、付き合い、新しい人達と出会い、社会との関わりを持つ

「レースはキッズのために開催されている、スクールクロスカントリー選手権とウェリントン・スクールゾーン(子供向けの記録会)が当時の主な大会。当時出場した最も大きな大会といえば各都市対抗(ウェリントン地区・カンタベリー地区・タスマン地区)の大会に出たことが1番大きな大会の経験だった。しかし、特に目立った記録を出せるような選手ではなかったので、そこまで思い出深い大会というわけではない」

とサムは話す。

当時のサムの走る目的は、≪ランニングクラブでのソーシャライズ≫で友達付き合いのような感覚でランニングクラブに通い続け、トレーニングをしていたという。15歳まではランニングと並行して、テニス、サッカー、水泳なども行っていた。特に4歳から行っていたテニスは、最近まで子供たちにテニスを教えることもあったほどの腕前だが、15歳からランニングを始めるようになって、ラケットを握る時間は必然的に減っていった。

「弟はテニスを続けているので、たまに一緒にボールを打つこともあるけれど、そこまで頻繁に行わなくなった。テニスをジュニア期にメインで取り組んでいたニュージーランドの陸上選手といえば※ジョン・ウォーカーがいるね。テニス時代の友達にも陸上中心になったことでその話題が出るけど、(自分は)彼ほど素晴らしい成績はまだ収めてないよ」

(※)John George Walker:1976年モントリオールオリンピック男子1500m金メダリスト、1000m、1マイル、2000m現ニュージーランド記録保持者。1975年に世界初の1マイルサブ3:50を達成(3:49.4)

15歳までランニングはソーシャライズの1つだったが、何がサムをランニングに駆り立てたのか。1つのきっかけは現在のコーチ、エヴァンとの出会いと、3000mを9:00で走れたということだった。

「11歳の頃からグライアムコーチの元でトレーニングを行っていたが、グライアムのトレーニンググループは2015年からエヴァンが引き継ぐことになった。エヴァンのコーチングでトレーニングをしたら突然予想もしない記録が出た。3000mで9:00という記録は自分の中でランニングに対するマインドセットになった」

とサムは話す。

コーチングを受ける・考える

2016年に3000mで9:00を記録してからサムにとってランニングは≪ただのソーシャライズ≫から≪戦略的なトレーニングとレース≫へと変わっていく。

現在はエヴァンのコーチングのもと、ジェームス(2016年U20世界選手権男子800mNZ代表)ジョッシュ(800m / 1:52:53)、セームス(1500m / 3:59:34)、ルーシー(800m / 2:10:00)といった選手たちとウェリントンでトレーニングを積んでいる。サムは元来テニスでスプリントや俊敏性を養ってきた経験があるので、ジェームスやジョッシュといった800mの選手との練習で相性がいいという。

トレーニング内容に関しては、コーチのエヴァンから指示を受けるという形ではなく、

・≪この練習の目的は?≫
・≪この練習で重要なポイントは?≫
・≪どういったことを意識して取り組むべきか≫

ということをお互い自然に話すような形で取り組んでいるという。

その為、≪コーチングを受ける≫というよりは、大きな目標と1つ1つの大会を目指していくなかでのチームメイトと相談相手といったようなフラットな関わり合いといえる。

サムの質問に対して、エヴァンは適切なアドバイスを答えて会話が終わるわけではない。エヴァン自身も≪この考え方に賛成か、もしくは疑問か≫といったような言葉を返して、サムの思考を止めないようにし、より深く議論してお互いに納得のいく計画が進行できる状態にあるという。

そのことを象徴することといえば、≪今までオーバートレーニングになったことはない≫ということである。

サムは次のように話す。

「エヴァンのコーチングは選手に練習を押し付けすぎないコーチングである。選手のことをひとりひとりよく見ていて、トレーニングの量やペース、そして体調をよく考えている。そのため自分の状況に対して、自分自身で分析しにくい時でも相談しながら2人で分析することで、そのなかでちょうどよいトレーニング量を継続することができている」

そして、今までの競技生活で1つ大きな過ちがあったとすれば2017年の終わりごろに故障をして走れない期間があったことだという。

「この時は今振り返ると、自分の許容範囲を超えていたのだと思う。この期間の≪なぜ故障してしまったのか≫という分析と考察が、その後の適切なトレーニングと体の反応を見るものさしになっている。そして、それを自分1人でなく、エヴァンという客観的に見るコーチ・相談できる相手がいることは、トレーニングを適切の状態で継続し、段階的に引き上げていくことにとって非常に有利だと思う」

トレーニング

週間走行距離 夏:60~80km 冬:80~100km

月曜日 30分EASY / スピード練習(ショートヒル・プライオメトリクス)

火曜日 ワークアウト

水曜日 EASY DAY / ジムトレーニング

木曜日 ワークアウト

金曜日 REST

土曜日 ワークアウト

日曜日 LONG RUN(90mins)/ ジムトレーニング

トレーニング計画のポイントは≪構造的でありながら柔軟≫

「1番好きな練習は10×400mかな。800mや1500mの選手にとってはかなり量が多いワークアウトだけど、ペースは62″~56″くらいまで上げていく感じで1500mのリズムとスピード持久力を養う練習になっている。エヴァンが200m~300mくらいまでペースを作ることもあるけれど、練習では前を走ることを好んでいて、自分のリズムで気持ちよく走れるのがいいね。ジェームスの後ろだと速すぎて何もわからないこともあるしね」

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左端がサム

「この練習は多くの目的と効果を持っていて、≪スピード持久力≫を向上させることがメインになるけど、10本だと合計で4000m走ることになるから≪筋持久力・脚筋力≫も持久的な要素で鍛えることができる。後半にかけてペースが上がるから、調子が良い時には≪最後のスプリント能力≫を競うところまで練習を高められるところがとても気に入っている。そしてなによりスピードを競い合うことは楽しい!」

「トレーニングに関して最も大切なことは、継続してトレーニング計画を進行させていくことだと思う。特に秘密の練習みたいなものはないよ。ただ継続するだけではなく、1つの能力に執着しないで、バランスよくというのが最も大切だと思う」

サムのランニングに対する考え方は≪適切なバランスを継続して積み上げていけば競技力は自然に上がっていく≫ということが現在のトレーニング計画の基礎にある。またレースでもトレーニングでも良い時、悪い時というものは必ずある。そういった結果に一喜一憂するのではない。

レースにおいては、よく分析して自分に足りない能力やトレーニング状況の評価に使ったりする。トレーニングでは、その時の体調などに応じて柔軟に変更する。といった具合に、大きな目標に向けての細かい調整といった形で日々自己分析し、トレーニング計画と自分自身をうまくコントロールしていることが印象的である。

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