【ブログ】インゲブリクトセンファミリーについて:ノルウェー・サンドネスの陸上一家

インゲブリクトセン兄弟の成功要因

長男のクリストファー、四男のマーティンも陸上競技に取り組んでいたが、挫折を経験して陸上競技を辞めてしまう。華やかに見えるインゲブリクトセンファミリーの中にも日の目を浴びずにシューズを置いてしまったランナーが2人いる。

両親は7人の子育てを行いながらも、彼ら7人に対して平等に陸上競技に取り組む環境を作ってきた。つまり、彼らに対する経済的な援助を惜しむことなく尽くした。父はフルタイムの本業をこなしながら現在は3人のコーチングを務め、母もまた経済的な余裕を生むために育児の傍ら、美容師としてノルウェーで美容院を2店舗運営している。

経済的な支援は彼らの活躍には欠かせない要因の1つであるが、その他は以下が考えられる。

・多くの兄弟たちとの“活動的”な家庭生活(6男1女の大兄弟)
・子供の頃からの運動習慣(陸上以外にもクロスカントリースキーなど)
・これまでの多くのトレーニング機会の創出(=両親の経済的支援に由来する)
① 兄弟同士がトレーニングパートナー
② レース期のサンモリッツ(標高1800m)での高地トレーニング
③ シーズン前の南アフリカ(ダルストロアーム:標高2100m)またはアメリカ(フラッグスタッフ:標高2100m)での合宿
・閾値でのテンポ走等のトレーニングを重視(5000mやクロカンでの活躍に紐づく)
・高い最大酸素摂取量と高いランニングエコノミー
・ランニングの知性と頭脳(高いレベルのトレーニングと度重なる高レベルのレース経験で磨かれる)

また、父のイェトはトレーニングの強度管理を徹底しており、ペース設定1つから、トレーニング直後の乳酸値の測定(ラクテートプロで)においても昔から継続してきている。イェトのメニューでは、シニア期男子は週140~170km、ジュニア期男子はその半分の週間走行距離を目安としている。また、ヤコブはスタヴァンゲル大学で幼い頃から研究対象としてテストされている。

怪物ヤコブ・インゲブリクトセン

ノルウェーでは小学生から専門的なトレーニングをすることは非常に珍しい事であるが、ヤコブは小学生時代の11歳から珍しい研究対象としてトレーニング状況をスタヴァンゲル大学スポーツ科学のLeif Inge Tjelta教授に毎年モニタリングされてきた。また、アフリカの子供達と同じように、幼少期から毎日運動をすることは非常に重要なことである(ケニアとエチオピア等の選手はジュニア期から競技力が高い)。

ヘンリクフィリップが小学校の時にはクロスカントリースキーなど複数のスポーツをしていたが、ヤコブは早くから走ることにフォーカスしている(専門的なトレーニングを積んでいる)。

以下に、ヤコブの年次記録と成長の軌跡をまとめた。

【ヤコブの年次記録】※左から800m、1500m、1マイル、5000m、3000mSC
2012年(11歳):2:14.03, 4:21.98
2013年(12歳):2:04.48, 4:15.87
2014年(13歳):2:05.02, 4:05.49
2015年(14歳):1:52.60, 3:48.37
2016年(15歳):1:51.07, 3:42.44, ,,,,,,,,,,,,,, 14:38.67
2017年(16歳):1:49.40, 3:39.92, 3:56.29, 13:35.84, 8:26.81
2018年(17歳):1:52.01, 3:31.18, 3:52.28, 13:17.06
2019年(18歳):,,,,,,,,,,,,,, 3:30.16, 3:51.30, 13:02.03

【ヤコブの軌跡】※カッコ内は当時のヤコブの年齢

2012年(11歳)
ヘンリクが欧州選手権優勝、ロンドンオリンピック5位
ヤコブはスタヴァンゲル大学でのモニタリングを開始する

2013年(12歳)
ヘンリクがモスクワ世界選手権8位

2014年1月(13歳)最大酸素摂取量等の測定

2014年3月(13歳)
ヤコブは小学校から中学校に進級する前の休日を利用して13歳でヘンリクとフィリップと2週間の合宿に参加。ヤコブにとって初めての2部練習であり、兄と本格的なトレーニングを初めて共に行う。

ヤコブはこのシーズンにトレーニング量を増やした影響で故障に苦しんだ。このシーズンのヤコブの自己記録は800m2:05.02、1500m4:05.49

2014年欧州選手権
フィリップは予選落ちだったが、ヘンリクが銀メダルを獲得。ヤコブのメンタルにも火がつく。

2014年12月(14歳)サンドネスの室内練習場でヘンリクとトレーニング

2015年(14歳)
本格的なトレーニングを開始して1年で急激に競技成績が向上。
800m:2:05.02 → 1:52.60
1500m:4:05.49 → 3:48.37(14歳世界最高記録)
ヤコブは14歳にしてビスレットゲーム(オスロDL)の1500mに出場(非DLレース=シニアのレース)

2016年6月(15歳)
ヤコブはビスレットゲーム(オスロDL)1500mで3:42.44

2016年7月(15歳)
欧州選手権ではフィリップが優勝、ヘンリクが銅メダルを獲得。
兄のヘンリク、フィリップ、妹のイングリッド、弟のウィリアムらと↓

2016年12月(16歳)小学校時代からの継続的なモニタリング

2017年(16歳)
ヤコブは16歳で世界初の1マイルサブ4達成(ユージンDL:3:58.07)
6月:オスロDLで3:56.29まで記録を伸ばす
7月:初3000mSCで8:26.81、その後のU20欧州選手権5000m、3000mSCの2冠
8月:ロンドン世界選手権に3000mSCで出場:予選3組8着 8:34.88(最後の障害で転倒)
その後のノルウェー選手権で3冠(1500m、5000m、3000mSC)
5000mではソンドレ・モーエンを破って13:35.84の大幅自己新↑
12月:欧州クロカンジュニアの部8kmで2連覇

2018年1月(17歳)継続的なモニタリング

2018年6月(17歳)イタリアのキアヴェンナでサンモリッツ合宿の仕上げ(先導は四男のマーティン)

7月:U20世界選手権で1500m銀、5000m銅
8月:欧州選手権2冠(1500m、5000m)
12月:欧州クロカンジュニアの部8km3連覇

2019年6月(18歳)フィリップとシンクロ

以上のように13歳から本格的なトレーニングを世界トップクラスの選手とともに継続してきたヤコブ・インゲブリクトセン。スタヴァンゲル大学での最近のモニタリングでの測定値によれば、ヤコブはすでにハーフマラソンのノルウェー記録(59:48)を更新できるレベルにあるという。

コーチのイェトは9月のドーハ世界選手権でヤコブとフィリップに1500mと5000mの2種目にチャレンジさせ、その後10月12日(天候により後日延期)のINEOS 1:59(キプチョゲのサブ2レース)のペーサーとしてインゲブリクトセン兄弟の3人が参加させることを表明している。

ドーハ世界選手権ならびに東京オリンピックもインゲブリクトセンファミリーの活躍から目が離せないことだろう。

 

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