リッツ・オン・ランニング〜スピードを再構築〜

今回はPodium Runnerに2019年5月23日に掲載されたデイサン・リッツェインハインのコラムを紹介します。おもにマラソン後のスピード練習にスポットを当てた内容で、リッツェインハインにとってはオレゴンプロジェクトに移籍し、キャリア最高の成功を収めた2009年のトラックシーズンの具体的なトレーニングも記載されています。

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ボストンマラソンを終えた後に私が最初に考えたことは、休憩が必要だということ。私は心身共に回復する必要がありました。バッテリーを充電することは、より強くなるためには不可欠です。私は“最高に身体が仕上がっている”という感覚が大好きですが、ダメージを受けた後の休養期間を楽しみにしていました。

それから数週間が経ちましたが、しかしながら私は今、本格的なトレーニングに戻りたくてたまらない気分で、トレーニング計画を策定しなくてはならないのです。ゴールを決めなければ、私自身も含めて多くのランナーにとってトレーニングは目的を欠くものになります。

しかし、今後2カ月間(基礎期)に何をするかどうかは、次のマラソンに向けた鍛練期と同じくらい重要です。その都度の小目標の達成が、最大目標のレースに向かって精神面でフォーカスするために重要であるだけでなく、※特異的なマラソン練習で失ってしまった能力(おもにスピード能力)を再び獲得するモチベーションにもなります。

(※)特異的:レースの中身(ペースや距離)に近いもの

マラソンのような種目は、長期間においてトレーニングを継続させていくことに専念させ、その終盤においては特異的な練習へと移行させます。そして、時に故障を招いて場合によっては競技生活を短命にさせてしまうことさえもあります。

これはマラソン練習に限った話ではなく、どんな距離の種目であっても同じような話です。どんなトレーニングサイクルの終わりにも、練習内容は目標のレースの中身に近い特異的な内容になります。

もし、トラック種目に取り組んでいれば、仕上げの数週間ないしは1ヶ月間は特異的なスピード練習にフォーカスするでしょう(例えば、目標タイムに近いペースでのタイムトライアルやレペテーションなど)。ここでは、有酸素能力の土台を考慮しないわけではありませんが、特異的なスピード練習と引き換えにして、スピードを手に入れてスタミナを失います(つまりスピードとスタミナはトレードオフの関係)。

同様にマラソンでは、仕上げの1ヶ月間はマラソンという42kmの距離やペースに近い特異的な練習を行い(例えばレースペース90%以上での30〜40km走など)、ここではスピードやトレーニングパートナーとの駆け引きについてはあまり重視されません(レースではなくあくまで練習の場合において)。

目標のレース後の1ヶ月間は、身体をバランスのとれたニュートラルな状態に戻すために時間をかける必要性があり、トレーニングのすべての要素を再確認するフェーズに戻ることが焦点となります。つまり、再び特異的な練習を行うまでには、一般的な練習に戻る必要があります。

これを達成するための私が見つけた最良の方法は、前月に取り組んだ内容と反対の練習にフォーカスすることです。それまでがスピード練習中心であれば、有酸素能力の土台を作るトレーニングで距離を踏み、それまでが高マイレージ中心であれば、ショートインターバルなど短い距離で速い走速度の練習をしてください。もしそれを2ヶ月間消化することができれば、心身ともにリフレッシュした状態で次のフェーズに移行できるでしょう。

リッツェインハインがキャリア最高の成功を収めた2009年のトレーニング振り返り

20094月、私はロンドンマラソンを2:10:00で走りました。2008年北京オリンピックのマラソンで2:11:599位、その後2009年上旬はロンドンへ向けてのトレーニングに入り、1年間で2回のマラソン練習を消化しました。この時期は速い距離走が得意で、終盤には3:00-3:07/kmのペースで走ることができました。

私のトレーニングログからいくつかのセッションを紹介します。

321日:20kmファルトレク(59:58, 疾走1km – 緩走1kmの繰り返し)
→ 疾走時 
2:50-2:57 – 緩走時 3:00-3:10 
421日:20マイル走(= 32km, 1:37:59, 3:02/km)

マラソンペースでの練習はうまくこなせていましたが、数年前にできていたインターバルでのペースが速いと感じるようになっていました。何人かはそれに対してスピードを開発していけばいい、と言うでしょうが、マラソン後に同じようなトレーニングサイクルにすんなりと移行することは、課題を根本から解決するに至らないと私は考えています。

数週間の軽めのトレーニングの後、私はまた別の目的を持って取り組みはじめました。私はジムに行ってエクササイズを始め、トラックのレーススケジュールを立てました。この数年はロードレースが中心でしたが、長期的なキャリアを考えると自分のスピードや可動域を取り戻すための練習は不可欠でした。これは新しいレベルに入ってから、ハーフやマラソントレーニングに戻ることを可能にし、この数年間のマラソン練習で失ったスピードを取り戻しました。

8月28日:チューリッヒGL(5000m12:56)までの2ヶ月間の練習メモ

4月26日:ロンドンマラソン(2:10:00, 11位)
6月11日:トロントフェスティバル 5000m(13:34, 2位)優勝はS. シャヒーン
6月25日:全米選手権 10000m(27:58, 2位)優勝はG. ラップ

・17マイル走( = 27km, 3:43/km)
・(800m + 300m)× 5セット(平均2:1246″, R = 400mjog)

・600mブレイクダウン(600m + 400m + 300m + 200m)× 5セット
→ 1:32-1:2962″-58“、44″-42“、28″-26“(R = 400m300m300m300mjog)
・7マイルペース走( = 11.2km, 3:00/km)+ 200m坂ダッシュ × 8
・200m × 10(27″, R = 200mjog)※ 標高2400mのコロラド州ヴェイルにて

20マイル走( = 32km, 3:21/km)
200m × 8(トラックで26″-28″, R = 200mjog)+ 200m坂ダッシュ × 8(32″ = 平地で29″の力配分)
・(800m + 600m + 400m× 5セット →  2:06-2:001:35-1:30、60“-57

・20マイル走( = 32km, 4:02/km)
・200m × 8(27″-28″, R = 200mjog)+ 200m坂ダッシュ × 8(31″ = 平地で28″の力配分)
・(1600m × 3)× 2セット(設定4:20 = 2:42/km, R = 3′, セット間6’)
→ 4:264:244:21 + 4:204:164:13(1セット目は芝、2セット目はトラック

727日から標高1800mのサンモリッツで4週間半(過去最高のスピード練習を消化)

【1週目】
・移動日含め
2日間軽め
・17マイル走( = 27km, 3:43/km)
・ジョグ日
・午前:
8kmペース走(2:57/km)午後:200m × 8(28″, R = 200mjog)
・2日間ジョグ

【2週目】
1000m × 7(平均2:39, R = 400mjog)
・ジョグ日
・15マイル走(24km, イージーペース)
・2日間ジョグ
・600mブレイクダウン(600m + 400m + 300m + 200m)× 5セット
→ 平均1:27、56″、41″、26″(R = 400m, 300m, 300m, 300mjog)

・2日間ジョグ

【3週目】
・5000mタイムトライアル(13:44 ※標高1800m)
・2日間ジョグ
・300m × 9(45”、45”、42”、45”、43”、41”、45”、43”、41”, R=200mjog)
・ジョグ日 → ベルリンに移動
・シェイクアウトレース前に行われる身体をほぐす軽いジョグ
・ベルリン世界選手権10000m(27:226位)※前半13:50 – 後半13:32

【4週目】
・2日間ジョグ

・“マッサージワークアウト”(800m + 400m + 200m)× 5セット
2:1866”、32”(
R300m200m200mjog)※ベルリン(平地)にて
・2日間ジョグ
・600mブレイクダウン(600m + 400m + 300m + 200m)× 3セット ※サンモリッツにて
① 
1:3260″44″28″
② 1:3059″43″28″
③ 1:2757″42″27″

【5週目】
2日間ジョグ
・300m × 7(45″, R = 200mjog)
・チューリヒに移動 → シェイクアウト
ゴールデンリーグチューリヒ大会 5000m(12:56.27, 3位, 当時北米記録)
1位:K. ベケレ、2位:E. ソイ

ラップ(カッコ内はその時点での位置)
30.9(15)
61.8(15)

61.8(15)1000m2:34.5
61.3(15)
62.7(15)
62.2(14)
62.8(12)
63.9(11)3000m7:47.4
62.9(9)
62.9(8)
62.5(7)
60.4(3)
60.2(3)5000m12:56.27
ラスト800m2:00.6
ラスト1600m4:06

この後、10月には世界ハーフマラソン選手権で60:00で銅メダルを獲得


これを見ればわかるように、私はこれまで行っていた短めのペース走と距離走を継続しながらも、多くの200m〜800mへのインターバルと、600m / 400m / 300m / 200mの“ブレイクダウン”という反対方向のトレーニングにシフトしました。私が築いてきた有酸素能力の土台が私を強くしました。しかし、もし私が同じトレーニングの繰り返しでマラソン練習だけにフォーカスしていれば、私は何年も前に引退していたでしょう。

そうならずとも、この夏季のスピード練習とボリュームを消化したことにより、9月以降にはこれまでにできなかったハーフマラソンへのトレーニングを実行することができました。(マラソン練習の時のように)週間100マイル以上(月間660km以上)走れるようになり、10月の世界ハーフマラソン選手権(イギリス・バーミンガム)までの数週間で以下の2つの練習を消化しました。

・1マイル × 9(4:20 = 2:41/km, R = 500mjog)
・10マイル走(45:03 = 2:47/km)
※10km27:59ペース。10マイル全米記録の46:13より1分以上も速い

私は自信を持って世界ハーフマラソン選手権に出場し、自己記録を約90秒更新する60:00で銅メダルを獲得することができました(優勝はZ. タデッセ、4位はW. キプサング)。

トレーニング刺激の変化は、自分に足りない能力の開発を促進するので、長距離走において私を次のレベルへ引き上げてくれました。

短期間で別の目標に切り替えることは、それまで開発できていなかった能力を獲得するチャンスであり、新たなチャレンジは自分自身を奮い立たせるでしょう。何年も同じトレーニングを継続すれば単調に感じることもあります。

(停滞している時に)同じトレーニングを継続していれば、維持することはできても、上昇することを望むことはできません。ですから、コンフォートゾーンから抜け出して少しだけ逆に向かっていきましょう。そのトレーニングを消化したとき、これまで以上に力をつけていることを感じて、それが自信になるでしょう

(原文)

Ritz on Running: Rebuild Running Speed

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