【LRCJオリジナルインタビュー記事】マックス・スペンサー(NZセカンダリースクール選手権男子800m王者)

トレーニングを楽しむ

マックスは今までニュージーランド北島のマスタートンの街から離れたことがなかったので練習はいつも1人だった(マスタートンはウェリントン市の中心から約100㎞、車でおよそ1時間30分の場所に位置している)。トライアスロン時代から、コーチが基本的なトレーニングプログラムを作成し、両親がタイムを取ることもあるなど、1人で練習するということに慣れていた。

「コーチや両親は自分が良い結果や良い記録を出したらとても喜んでくれた。それでも、練習をきつくしすぎたり、無理に押し付けたりすることはなかった。どんな時も練習は楽しんでいるよ」

マックスは2018 / 2019年シーズンからウェリントンにやってきて、専門的に中距離のトレーニングをスティーブ・ウィリス(NZ中長距離ヘッドコーチ)ギャレイ(前100mNZ記録保持者)のグループで練習するようになる。

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ギャレイは素晴らしい短距離コーチで、スプリントトレーニングでは今まで発揮できなかった最大スピードの上限を大きく高めてくれた。スティーブの中距離練習では800mに対するランニングエコノミーが非常に高まったことを実感している。これらのコーチのもとでトレーニングに励む短距離の選手との競り合いや驚くべきスピードでの走り、また800mレースに備えたレースペースでのトレーニングはいつも楽しい」

そして、こう続けて話す。

「きつい練習もあるけれど、グループでやればそんな練習も楽しめるね。ヒロ(筆者)とやったヒルスプリントと1マイルの3セットはかなりきつかったよ」

“練習をいつも楽しめる“その言葉通り、マックスの走りは練習から空を駆けるように走っている。

基本的な練習の流れ

・週間走行距離:約60㎞

1週間の流れ
・週2回スピードワーク
・週3回ジムワーク(コアワーク・ジェネラルコンディショニング・ストレングス)

月:ストライド・スプリント
火:ミディアムロング(13-14km)
水:スピードワーク
木:ミディアムロング(15-16km)
金:オフ
土:トラックスピード
日:ロングラン(19-20km)

1週間のトレーニングプログラムに関しては、かなり柔軟に変更していくことが多い。

彼がマスタートンに住んでいて、ワイン(地元のコーチ)にトレーニング計画を作ってもらっていた時には月曜から日曜まで同じサイクルが固定されていた。そして、昨季からウェリントンのトレーニンググループに参加するようになって、グループ練習の日はトラックワークアウトなどの日が固定されるようにはなったが、それでも常に固定されたプログラムはないという。

木曜日と土曜日のワークアウトが入れ替わることはあるものの、いつでも柔軟に進めており、1つのワークアウトを飛ばしたりしても、“絶対にやらなければいけない”という感覚はないのでそこまで深く考えないという。

好きな練習:ほとんどのトラックワークアウト

・300mのレースペース
・200m ×4レースペース – 30秒リカバリー(レースに向けて、レースのイメージで)

「今まではレースペースを27秒5設定で行っていた。今後のトレーニングレベルとして来年は27秒~26秒後半くらいを基準にできるレベルまで高めていきたいと思っている」

 

Q 「自分自身のランニングの強みは?」

A “最大下スピードの維持”

「これに加えて2018年はランニングエコノミーの向上と、最大スピードの強化をスティーブギャレイのグループで強化できた。最初に800mに取り組み始めた時に、ワインは400mの重要性を説いて400mにまず出場した。そこで当時50秒で走れたことは自信になっている」

 

Q「トレーニングの重要なポイントは?」

A “特にこれが重要というものはない”

「“コーチを信じて練習できること、現在のトレーニングの進行状況を信じて取り組んでいけること、周りの仲間とお互いを尊重して高め合えること”、これが自分にとって最も重要なトレーニングの鍵といえる」

アメリカ留学のチャンスは自ら作る

セカンダリースクールを卒業後、アメリカの大学に留学することを考えていたマックスは、まだ自己記録が1:55や1:54という時期から色々な大学にコンタクトを取っていた。(経済的負担の少ない)※フルスカラシップ入試で入学するためには、やはり800mの持ち記録が「1:46なら」「1:47なら」…という返答が多かったという。

(※)貸与型でなく、全額返済しなくてよい給付型の奨学金を得る特待生入試

そんななか、2019年1月にボストンのノースイースタン大学のコーチから「1:50であれば」、という提案があった。その後、同大学コーチとディスカッションを進め、マックスのそれまでの競技歴・現在の練習状況などを話していたところ、

「今季中に1:49台を出せるか。その力があると思うならサインする」

と、言われたという。

「このプロセスに関して、本当に感謝しかない」

と、マックスは話す。

「まだ直接会ったこともない、アメリカやヨーロッパでレースをしたこともない自分を信じてそこまで言ってくれた。そして、その後の3月に1:49台を出した時は本当に嬉しかった」

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一番前がマックス

自分から行動を起こすこと、チャンスを作ること、そしてそれを引き寄せて“モノ”にすることはそう簡単にできることではない。1:55台を記録した時もそうであったが、準備の先でチャンスをつかむ勝負強さをマックス・スペンサーという選手は持っている。

自ら積極的にアメリカの大学とコンタクトを取り、チャンスをつかみ取ったマックスだが、やはり新しいコーチ・トレーニング環境・ライバルたちのなかに、遠く離れたニュージーランドから飛び込んでいくことは、やはりドキドキするという。それでも、

「今までトレーニングしてきた仲間・コーチ・サポーターの存在があるからこそ、自信をもって新しい環境でも競技力を高めていけると信じている」

と、力強く話す姿が印象的であった。

将来の目標・世界選手権

「“800m選手”として、将来はアメリカでプロランナーになって多くのレースに挑みたい。そして世界選手権・オリンピックの決勝を走りたい」

マックスは、アメリカで競技を続け、そしてプロになること、それは多くの世界を見ることに繋がると考えている。

2012年、ロンドンオリンピックで“デイビッド・ルディシャ”が先頭を走り続けて世界記録を樹立したレースは今でもよく見るという。

「“800m”という種目を自分が始めてから、フロントランで世界記録を出してしまうということが、本当に凄いことだとよくわかった。あのレースでは、ほとんどの選手がナショナルレコードや自己新を出したけれど、あのようなレース展開でも自分のレースができる“ニック・シモンズ”選手のような走りもまた素晴らしいと思う。いつか、あのようなレースに挑みたい」

そして、夢を語るだけでなく現実的な目標についても述べた。

「まずはアメリカでプロになるには1:45が必要。世界選手権やオリンピックの参加標準も最近では1:45台というレベルになっている。大学に進学して最初の目標はその記録になる」

アメリカでの挑戦と、まだ経験したことのない800mのレース。目標とともに将来に大きな希望を持っているが、もちろんその先にあるニュージーランドの※ナショナルレコードも見据えている。

(※)オリンピック連覇、2冠のピーター・スネルが1962年に記録した1:44.3

「ニュージーランドでは昨年に自分が“800m選手になった”ということが意識できた。今年はニュージーランドから海を渡って、“800m選手としての挑戦する”チャンスをつかんだ」

次はナショナルレベルからインターナショナルレベルへ、マックスの800mランナーとしてのレースはまだ始まったばかりである。

 

【筆者プロフィール:谷本啓剛】

ニュージーランド・ウェリントン在住

ランニングガイド・RunZ(ラン・ニュージーランド)代表、酒井根走遊会主宰

【RunZ(ラン・ニュージーランド)】https://runnewzealand.wordpress.com/

【酒井根走遊会(オンライン陸上部・駅伝部)】https://ameblo.jp/dashpiro

 

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