【LRCJオリジナルインタビュー記事】マックス・スペンサー(NZセカンダリースクール選手権男子800m王者)

※以下は、ニュージーランド・ウェリントン在住の谷本啓剛氏(ランニングガイド・RunZ:ラン・ニュージーランド代表)によるレポートで、レッツランジャパン(LetsRun.com Japan=LRCJ)オリジナルコンテンツのインタビュー記事です。


マックス・スペンサー

〜NZセカンダリースクール選手権男子800m王者〜

今回はニュージーランドのユース世代の選手へインタビューしました。マックス・スペンサー選手は、陸上競技を本格的に始めてからわずか2年で※ セカンダリースクールの全国大会で優勝。そしてニュージーランドのトップ800m選手であるブラッド・マサス選手らと同レースで1分49秒台を記録し、伸び盛りの選手です。今年8月からアメリカ・ボストンにある合格率わずか19%の名門大学であるノースイースタン大学へ進学します。800m選手としての成長や大学進学のいきさつ、トレーニングに関して伺いました。

(※)Secondary School:13, 14〜18歳まで在籍

 

マックス・スペンサー:IAAF選手名鑑

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ニュージーランドの全国大会で優勝(ゼッケン1746)

出身: ニュージーランド・マスタートン

生年月日: 2000/5/21

自己ベスト: 800m 1:49:57(2019年)

クラブ:アスレティクス・サイクリング マスタートン

コーチ:Steve Willis / Gary Henley-Smith / Wayne Andrews-Paul


トライアスロン選手として

マックスがランニングを本格的に始めたのは彼が16〜17歳の時の、2016 / 2017年のシーズン(ニュージーランドではトラックのレースは12月に本格的に始まり、翌年の3月の国内選手権・4月のスクール選手権までがシーズンとなる)。2016年までは子供の頃から取り組んでいた競技であるトライアスロンを中心に行っていた。トライアスロンで得意だった種目は意外にも“ラン”ではなく、“スイム”のブロックを得意としていた。そのため“ラン”という種目で、現在ナショナルレベルで競い合っていることは当時には全く想像もできなかったという。

「水泳は自分の“ランナーとしての”競技の出発点としてはとても良い助けになっていたと思う。トライアスロンでのランニングは、もう少し鍛えたら(トライアスロン全体として)結果が良くなる、とコーチや周りの人がアドバイスしてくれた。しかし、水泳が得意で水泳の練習ばかりしていたので“ラン”を集中的に鍛えようとはあまり考えなかった」

そう話すマックスは、そのうちにトラックレースにのめり込んだという。

「自分でもあまりわからないけれど、そのうちに“トラックレース”というものに夢中になっていって、いつの間にか800mで勝負することを中心に競技に取り組んでいた。だから、“なぜトライアスロンをやめたのか”、ということはわからないけれども“800mというトラックレースが何より好きだ”ということは今の自分の中心にある」

当時は“スイム”が得意種目で、かつピュアスプリンターでもなかったので、2015年ごろまでは“ラン”に関してそこまで自信はなかったという。

しかし、セカンダリースクールのクロスカントリー大会で、“アイザイア・ペィディ”(U18・1500mNZ記録保持者)、“サムエル・タナー”(U19・1500mNZ記録保持者)、“ニック・モウライ”といったこの世代のトップランナーらと競り合ったことは自信になった。そして、2015年12月にNZセカンダリースクール選手権には1500mで初出場。それがランナーとしてレースの始まりだったようだ。

「けれども、当時はまだ“ラン”のための練習をしていなかったから“スピード”もそんなになかったし、ただレースに出てみる。というだけだった」

そして、2017年から陸上競技を専門とするまでをこう振り返った。

「当時のトライアスロンの練習は、主にスイムで週間の練習時間が最大12時間を超えないように練習していた。水泳をトレーニングの中心に置いていたから、必然的に“ラン”の練習をする時間はあまり残されていなかった。あとは、7歳のことからフィールドホッケーと別の趣味でいうとピアノもやっていたかな。2017年から800mをメインスポーツとして開始すると、ランに対する練習時間が次第に増えていって、それらはどれもやらなくなっていった」

“様々なスポーツを楽しむこと“、それがマックスの800mランナーとしての基礎にある。

800mランナーとしての出発

「2018年1月、ニュージーランドの代表的なクラシックレースである“ポッツ・クラシック”で1:55.28で走ったことが1つの分岐点になった」

と、マックスは話す。

「それまではレースに出れば特に練習を積極的に行わなくても記録は自然と伸びてきたし、ある程度レースも上位で走れていた。いつも優勝できず、銀メダルとか銅メダルばかりだったけれども、特別そのことに不満を持つようなことはなかった」

続けてこう話す。

「でも、2016 / 2017年シーズン(16〜17歳)では1:56という記録を立て続けに出したが、いつもは越えていけるはずの記録が同じように繰り返されるだけに感じていた。当時、その記録やレースに少し不満が残るようになってきていた」

“次のシーズンでその壁を乗り越えたい“、その思いが2017年のオフシーズンから次のシーズンに向けての練習に変化をもたらす。水泳よりもランニングをより中心的に取り組むようになっていったのである。

マックスは2017 / 2018年シーズン(17〜18歳)では1月に1:55.28の自己新記録を出すと、3月のシーズン終盤には1:52.74まで一気に記録を伸ばす。そして、記録だけでなく結果もついてきた。今までのセカンダリースクール選手権では銀メダル・銅メダルばかりだったが、4月に※北島のセカンダリースクール選手権800mで優勝、12月にNZセカンダリースクール選手権800m優勝と、次々にタイトルを獲得する。

(※)ニュージーランドは大きく北島地区と南島地区に分かれる

「2018年1月のポッツクラシックでの1:55.28は今の自己記録と比べると随分と遅いけれども、このレースは自分が“800mのトラックランナー”となる分岐点だった。そして自分にとって大切なレースの1つになっている」

そう話してくれた。

陸上競技の選手にとって、“勝ったレース”というものが、自分にとっての印象深いレースになりやすい。マックスにとってもセカンダリースクール選手権での勝利はとても印象深いレースだったという。しかし、マックスは“自分が変わった瞬間”を1:55.28のレースで感じた。これは自分が800mの選手になったことを確信した瞬間でもあった。

“自分が変わった瞬間”をレースので体験した選手は、その競技に対して思い入れが一際強いのではないかと筆者は思う。陸上競技においては特に、自分が次のステップに進んだ瞬間というものがその競技を好きになること、そして何より自信に繋がっていくのではないかと考えるからである。

2018 / 2019年の飛躍

現在の自己記録である1:49.57を記録したのは2018 / 2019年シーズン(18〜19歳)の終盤の今年3月に行われたピータースネル国際大会である。

2019年3月3日:ピータースネル国際大会:男子800m動画

「いつもレース前は人並みに結構緊張するけれど、この時は意外と落ち着いていた」

という。

「レース前にウェリントンのトラックではよく顔を合わせる“サム・スミス”とスタート前に話をした。“今日は1分50秒を狙うつもり?”サムがそう訪ねた時に、“そうだ”と言ったけれど、実際にはそこまで自信があったわけではない。(それまでの自己記録の)1:52から1:50切りを狙っていくには、あと3秒も速く走らないといけないからね。そう考えると難しいとも思っていた」

期待と不安を持ちつつもレースは始まった。

「レースのスタートとして走り始めると、いつの間にか400mが過ぎていて、ペーサー抜けて先頭のジェームスやブラッド・マサス(世界選手権・コモンウェルスゲームズNZ代表)が前方の少し離れたところを走っていたけど、自分の走りは悪くなかった。終盤に自分がいた第2集団から抜け出そうと必死にフィニッシュするだけだった。タイマーを見た時にとブラッド・マサスとの距離感から考えて1:50台だと思っていたけど、実際には1:49秒台だった」

そしてマックスはレースを総括してこう述べた。

「この記録は自分でも驚くべきもので“本当にできた“というような感覚だった」

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2019年3月3日:ピーター・スネル国際で自己新の1:49.57(左から2番目)

自分自身が800mランナーだと意識してからわずか1年。世界大会を経験するNZのトップランナーと同じレースで今競い合っているという事実がある。これは2年前に専門的に800mを始めるときには想像もできなかったことだった。800mを始めた時の自分というものをマックス自身もまだ鮮明に覚えている。この2年間で800mランナーとして勢いよく成長してきたことに、まだ心は追いついていないのかもしれない。

筆者の私が今年2月にウェリントンのトラックで彼と一緒に練習している時に

「自分はまだユース選手だけど、今年はシニアのグループに参加できるようになった」

と、嬉しそうに話していたことをよく覚えている。

マックスが自己記録を出したピータースネル国際大会は、男子800mと1マイルがメイン種目として開催された(男子800mは400m52秒のペーサー、男子1マイルは809m2分00秒のペーサーがついた)。1マイルのレースでは、こちらも同年代の“サムエル・タナー“がニック・ウィリスも記録できなかったU19での1マイルサブ4を達成している。サムはU19 のNZ記録3:43.03を今年1月に”ニック・ウィリス”と走ったレースで記録。

さらにアメリカ・北アリゾナ大に留学中の“セオ・カックス”がU20のNZ記録3:39.84を今年4月に記録。その後、6月にはまたもやサムが3:38.74(U19+U20ニュージーランド新記録)を出し、彼は秋からのアメリカ・ワシントン大学入学を前に大きなインパクトを残した。

ニュージーランドのこの年代の選手は、中距離の競技歴が2~3年ほどの選手が多いが、トップレベルで選手が互いに刺激をし合って記録を高め合っている。

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