“東京の猛暑”と“午前6時スタート”は2020年東京オリンピックのマラソンにどのような影響を与えるだろうか?

1996年アトランタオリンピックとの比較

過去のオリンピックのマラソンと比較すると、来年の東京オリンピックが最悪のコンディションになるだろうということがわかる。

【1996〜2016年のオリンピック:男女マラソンの気温 / 露点温度 / 湿度】

大会 気温 露点温度 湿度
2016年リオ(女子) 26℃ 18℃ 57%
2016年リオ(男子) 22℃ 21℃ 89%
2012年ロンドン(女子) 19℃ 11℃ 60%
2012年ロンドン(男子) 21℃ 15℃ 68%
2008年北京(女子) 23℃ 19℃ 78%
2008年北京(男子) 26℃ 15℃ 52%
2004年アテネ(女子) 31℃ 21℃ 58%
2004年アテネ(男子) 27℃ 16℃ 51%
2000年シドニー(女子) 17℃ 14℃ 82%
2000年シドニー(男子) 20℃ −1℃ 24%
1996年アトランタ(女子) 27℃ 20℃ 74%
1996年アトランタ(男子) 27℃ 22℃ 82%
平均 24℃ 16℃ 65%

最も露点温度が高いのが、1996年アトランタオリンピック男子マラソンの22℃。東京の過去10年における8月2日と8月9日の平均露点温度は23℃である。

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したがって、東京オリンピックで予想されるコンディションを考えるときの良い例は、1996年アトランタオリンピックの男子マラソンである。そのレースは1996年8月4日午前7:05にスタートしたが、それでもコンディションは悪かった。スタート時の気温は27℃、露点温度は22℃、湿度は82%。これは東京の例年の8月9日の一般的な気候である。

「アトランタオリンピックよりも気温が高いシンガポールでマラソンを走ったことがあるけど、アトランタオリンピックの時のように“気温と湿度が両方高い状況”(=露点温度が高い)でレースを走ったことはこれ以外に経験がないよ」

と、アトランタオリンピック男子マラソンで41位(2:20:27)に入ったアメリカのマーク・クーガンは話した。

「とてもきつかった。最初の数マイルはまだ大丈夫かもしれないが、その後は凄くきつい。オリンピックのような舞台で選手たちが求めるコンディションではなかった」

このアトランタオリンピック男子マラソンのレースは、南アフリカのジョサイア・チュグワネが2:12:36の記録で優勝した。高地(標高2250m)で行われた1968年のメキシコシティオリンピック(2:20:26)以来、この2:12:36よりも優勝記録が遅かった大会は1つしかない(1992年バルセロナオリンピックで、この時もスタート時の気温が約32℃だった)。

クーガンによると、アトランタオリンピック男子マラソンの日のコンディションはスタートラインに立った瞬間から厳しいコンディションで、それはレースが始まってからも同様だった。

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「すでにジメジメしている状態で、バスからスタジアムの中(スタート地点)に歩くだけでも湿気の高さを感じた。“やばい、もう汗をかいているよ…”っていう感じだった。レースが終わって、脱水症状がひどくて静脈内輸液を2袋も点滴した。レース後のオリンピックスタジアムの中はまるで病院のようだったよ」

「最初の15マイル(24km)がすごく速かったわけではないし、先頭集団の人数も多かった。つまり、世界の高速レースで先頭集団についていけない選手たちも、その時は先頭手段についていけていた。クレイジーなコンディションは、それが暑すぎても寒すぎても、普段は先頭集団にはいないような選手たちをも先頭争いに入れる可能性がある。そして、その選手が、そのまま優勝することもあり得る。※1 昨年のボストンマラソンのように、※2 サラ・セラーズが2位に入るなんて、一体誰が想像しただろうか」

(※1)暴風雨で極寒のコンディション:女子招待選手16人のうち9人=56%が途中棄権
(※2)サラ・セラーズ:それまでマラソンの自己記録が2:44だった一般参加の選手。同様に2018年のボストンマラソン女子は自己記録2:41の選手が4位、2:53の選手が5位に入った

一方で、アトランタオリンピックの過酷なコンディションは多くの途中棄権者を出したわけではなかった。出場者124人のうち13人=10.5%が途中棄権で、これはオリンピックの過去6大会の平均途中棄権者数より低かった。

【1996〜2016年のオリンピック:男子マラソンの途中棄権者数とその割合】

大会 出場者数 途中棄権者数 DNF率
1996年アトランタ 124人 13人 10.5%
2000年シドニー 99人 18人 18.2%
2004年アテネ 102人 21人 20.6%
2008年北京 98人 22人 22.4%
2012年ロンドン 105人 20人 19.0%
2016年リオ 155人 15人 9.7%

しかし、2020年東京オリンピックで予想されるコンディションと比較する大会として、もっと良い大会がある。それは、1991年に同じく東京で開催された世界選手権で、その時の男子マラソンの結果はもっと悪かった。出場者60人のうち24人=40%が途中棄権だった(レースは1991年9月1日午前6時にスタート。その時点で気温26.7℃、露点温度20.9℃、湿度71%だった)。

2006年のニューヨークタイムズの記事で、1991年東京世界選手権の男子マラソン銅メダリストのアメリカのスティーブ・スペンスは、

「レース中に十分に呼吸さえもできなかった」

と、答えている。彼のアドバイザーで運動生理学者のデイビッド・マーティン氏は、

「1991年東京世界選手権男子マラソンは、これまでで1番チャレンジングなコンディションだった」

と、話していた。この時の優勝記録は2:14:57で、これまでの16回のIAAF世界選手権の男子マラソンでこの優勝記録より遅かったのは※ 2007年大阪世界選手権(2:15:59)だけである。

(※)2007年8月25日午前7時スタート。その時点で気温27.8℃、露点温度23.2℃、湿度76%だった(出場者85人のうち28人=33%が途中棄権)

クーガンの2020年東京オリンピックに対する見解はどうか?

レースが開催される場所は変わらない。だから彼は、暑さ対策のために少しでもスタート時間を早くしたことは正しい判断だと考えている。しかし、マラソンにおいて厳しいコンディションへの対策は大切なことではあるが、2020年東京オリンピックに関しては、その対策はさらに重要となるだろう。

「東京でレースが行われるということは、そういうことだ」

クーガンはそう話す。

「東京の気候にどうやって身体を慣らすかを考えなければいけないと思う。(我々アメリカ人選手が)フラッグスタッフ(標高2100m前後)でトレーニングしてから、飛行機に乗って東京に向かう。それだけではベストパフォーマンスを発揮できるとは思えない。フラッグスタッフ(アメリカ・アリゾナ州)は乾燥しているからだ。東京独特の夏の湿気に慣れておく必要がある」

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