キプチョゲの前人未到の成功は続く
我々はすでにその事実について知ってるが、エリウド・キプチョゲは彼が人類で最も偉大なマラソン選手であることをもう1度ここに示した。 とはいえ、彼の全盛期は永遠に続くわけではないので、彼がこれからレースに出場する度にわずかな不確実性が発生してくる。
しかし、キプチョゲがそういった声を払拭して今回のように圧倒的なレースで優勝する姿は美しい。キプチョゲのマラソン10連勝によって、彼の優位性がさらに増した。これは(高速化した)近代のマラソンでは信じられないことであり、彼は本物の巨匠である。
マラソンは新しい領域へ:3位で2:03:16、モー・ファラーも2:05台
3位のミュール・ワシフンは自己新の2:03:16で走り、素晴らしいレースで戦った。それは彼がかろうじてキプチョゲからは39秒後に、2位のゲレメウから21秒後にゴールにやってきたことを意味する。 そして、モー・ファラーは2:05:39で走り、キプチョゲに3:02の差(約1km差)をつけられた。これが仮にトラックでのマラソンだったら、彼は2周抜かしを喰らっていただろう。
キプチョゲの偉大さは他に類を見ない。さらに注目すべきことは、マラソンが新しい領域に向かっているこの時代において、キプチョゲが他を圧倒しているということである。他の選手も記録を伸ばしている状況であるが、彼はいまだに王者であり続けている。
ファラーは、
「彼のレースプランは先頭集団の後方でできるだけ無駄のない走りをすることにあった。61:38で中間点を通過した時は気持ちよく走っていて、そのあたりまでは、ほぼプラン通りにレースを進めた」
と話したが、ペーサーが先頭でなくなってからファラーは、先頭集団での争いから置いていかれた形となったが(終盤にペースを落としていることから)単に調子が十分良くなかった。
「(キプチョゲがペースを上げたことで)ペーサーが先頭集団から後退するのを見て、しばらくペーサーと一緒に走っていたが、、※意表を突かれてそこで差が広がってしまった)」
と、ファラーは答えた。
(※)先頭から振り落とされたペーサーとともに“公式な設定ペース”で走っていたが、そこからキプチョゲらに大きく引き離されてしまった
Embed from Getty Images「それから私はその差を詰めようとしたが、その余力はなかった」
第2グループの選手たちもベストを尽くした:前半速めに入り終盤ペースを落とすも自己新ラッシュ
マラソンという競技がどこまで成熟したかを見るには、第2グループの選手たちの結果に注目してもらいたい。彼らは中間点を2:06:40ペースで通過し(ベルギーのバシール・アブディ、イタリアのラシン・ヤシク、イギリスのカルム・ホーキンス、数秒後にオーストラリアのブレット・ロビンソン、イギリスのデウィ・グリフィス)、その時点での先頭集団とは差は1:43だった。
彼らは皆、後半のハーフでペースを落としたが自己新ラッシュとなった。 アブディは2:07:03(それまでの自己記録 2:10:46)のベルギー新記録(今月2人目のベルギー人サブ2:08 = コーエン・ナートのアムステルダムでの2:07:39に続いて)で7位に入り、ラシクは2:08:05の自己新(それまでの自己記録 2 :12:09)で9位に入り、ホーキンスは2:08:14(それまでの自己記録 2:10:17)のスコットランド新記録で10位に入った。
そして、ロビンソンは彼にとって初のマラソン完走となる(12月の福岡国際で35km以降にDNF)2:10:55の13位に入った。
レース後にホーキンスに話を聞くことができたが、彼は自己新記録で走れたことに喜んでいた。彼は今や、ファラーとスティーブ・ジョーンズ(2:07:13)に次いで、イギリス歴代3位のマラソンランナーとなった。
ホーキンスは、
「今日のレースをあくまでも(東京オリンピックに向けての)“ステップレース”としている」
と語ったが、それでも彼にとっては大きな結果となった。忘れてほしくないのは、彼が昨年4月のコモンウェルスゲームで独走しながらも熱中症で途中棄権してから、福岡国際に向けてトレーニングしていたが、故障の影響で福岡国際を欠場してしまったことである。
そこで彼のマラソン計画に狂いが出たが、それでも、ホーキンスは今回全く恐れず、中間点を63:21で通過した。これまでの彼の4回のマラソンの全てがネガティブラップだったが、今回新しい戦術に打って出た。
「40kmを通過した時に向かい風が襲ってきて“最悪だ!”と思った。最後の2kmは失速してしまって、それに対処するのに精一杯だった。今回は2:07台を望んでいたが、気象条件なども考慮して2:08台前半の記録に満足している」
ブレット・ロビンソンが初のマラソン完走でハーフの自己記録も更新
オーストラリアのブレット・ロビンソンはハーフでこれまで64:01でしか走っていなかった (彼はこれまで5000mの選手:自己記録13:15、今年の世界クロカン30位)。 彼は今回が初のマラソン完走とはいえ63:25で中間点を通過し、同じオーストラリアのジャック・ライナーとともに東京オリンピックの参加標準記録(2:11:30)をクリアした。
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