【LRCJオリジナルインタビュー記事】ジェームス・プレストン(2016年U20世界選手権男子800mNZ代表)その2

自分自身を見つめて

ニュージーランドには、“ピーター・スネル”をはじめ、多くの選手が1500mを中心に世界大会で活躍してきた。

『子供の頃に憧れた選手は?』

という質問に、ジェームスは『特にいないよ。子供の頃にスポーツを観ることといったらホッケーが中心だったしね』と話す。

『陸上競技に本格的に移った後、2016年リオオリンピック1500m決勝の※ニック・ウィリスの走りレース動画)にはとても刺激を受けた。ただ自分が子供の頃から“この選手のようになりたい”という考えはほとんどない』

(※)オリンピック2度目のメダル獲得となる銅メダル

『今は近い目標として※ドーハ世界選手権の参加標準記録を突破することを考えている。オーストラリアのハイペースのレースでその記録を狙っている。まずは世界選手権への挑戦、そしてその先に世界選手権・オリンピックでの目標を自分の走りと照らし合わせながら深く考えている』

(※)参加標準記録:ドーハ世界選手権が1分45秒80、東京オリンピックが1分45秒20。現在の自己記録は2019年3月にNZ・ワンガヌイでマークした1分47秒61

マイペース

ニュージーランドの若手の選手を見ていると、“結果に対して焦る”ということがあまりない。“結果を求めて厳しく練習する”ということが全くないわけではなく、非常に長い目で自分たちのスポーツを見ている。陸上競技の大会が10月~3月の春から夏の終わりまでしかないことも関係しているのかもしれない。『次のレースで、次のレースで、次のレースで…』と常にタイムを追って競技をしている姿はあまりない。

毎年の夏に何度かある限られたレースで、そのレースを“楽しむ”という姿が印象的である。それは競技のレベルに関わらず、どの選手もとてもリラックスして競技に取り組む。もちろん納得のいくレースができなかった時は悔しく思うし、世界大会への参加標準を最後のチャンスで切れなかった時には落ち込むこともある。

そして、レースを走る時のまなざしはいつも真剣である。走ることを真剣に楽しむ。

その中で“焦り”や“悔しさ”というものは誰しもが同じように味わうことになるが、その気持ちがシーズンのオンオフと同じように、程よくメリハリがあることが※Kiwiランナーの心の強さではないのかと筆者は最近よく思う。

(※)ニュージーランドのランナー

800mと1500m

『今は800mを中心に取り組んでいるけれど、将来1500mにも取り組みたいという意志はある。まずは800mで世界大会に挑みたいから、今はまだどちらもやる時期ではないけれど』

800mと並行して、ほぼ毎年1500mも走っているジェームスは、800mと同様に1500mの記録も2015年から大きく伸ばしてきた。

実際に2018年2月にジェームスはニュージーランド・ディスタンスカーニバルの1500mで3分46秒60という記録で1500mを駆け抜けている。しかし、ジェームスには駆け抜けるといった表現とは全く違った印象のレースとなった。

『この1500mは400m60秒のペースを基本に考えて走っていた。2周走った時点や、最後の鐘をきいたときには2分44秒か45秒くらいで、あとは400mを60秒ペース。とても気持ちよく走れていた。ただ、その後とても興味深いことが起こった。ラスト200mくらいで急に体が重くなった。全く前に進まなくなった。もがいているうちにいつの間にかレースを終えたという印象だった。その後に“これが1500mなのか…”、と思った』

『2018年には3月にNZ選手権でもう1度1500mを走った。2月のレースでの失敗を考えて、もう少し余裕を持ってレースを進めることにした。自分の中では良い感覚で走れていたけれど、最後の直線でハーミッシュに前を取られてしまった。自分にとって1500mで彼はまだ少し強すぎる存在だ』

そのように2018年の1500mのレースを振り返るが、『次は負けない』という強い意志がインタビュー中、言葉の随所に感じられた。

将来の目標

まだジュニアからシニアに上がったばかりであるし、800mの競技歴もまだ7年目と浅い。これから先に、さらに競技力を伸ばす可能性を持っている選手であることは、多くの人が認めている。ジェームスのこれからの競技生活の展望を伺った。

『今年のドーハ世界選手権、そして2020年の東京オリンピックに出場することを近い目標として現在取り組んでいる。自分の競技生活はまだまだ長いと思っているので、その先の世界選手権と2024年のパリオリンピックも目標である。将来、世界大会での表彰台に上ることが競技者としての目標。1500mにも対応できれば、800mと1500mの両種目でその目標に挑みたい』

2019年3月ピーター・スネル国際大会:1分47秒61の自己新で2位
(4レーン:黄色のユニフォーム)

1964年東京オリンピックでニュージーランドのレジェンド、ピーター・スネルが800m・1500mの2冠を達成してから半世紀以上が立つ。ニュージーランドの中距離選手が新しい伝説を作る日もそう遠くはないかもしれない。

生まれも育ちもウェリントン。現在はウェリントンの中心に位置するヴィクトリア大学で建築学を学びながら競技に取り組む大学生である。インタビュー中は非常に落ち着いてランニングや自身の生活について語る一方で、ランニングに対する情熱と大きな目標を心に持ちながら1歩1歩その目標に向けて歩んでいる。

 

【筆者プロフィール:谷本啓剛】

ニュージーランド・ウェリントン在住

ランニングガイド・RunZ(ラン・ニュージーランド)代表、酒井根走遊会主宰

【RunZ(ラン・ニュージーランド)】https://runnewzealand.wordpress.com/

【酒井根走遊会(オンライン陸上部・駅伝部)】https://ameblo.jp/dashpiro

 

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