素晴らしいマラソンだった
ボストン優勝をかけて2人の選手が全速力でフィニッシュに向かう、これほどの良い場面があるだろうか。チェロノとデシサは優勝を強く望んでいたが、必ずどちらかが負けるのである。このフィニッシュを見ても何も感じないのであれば、ランニング(陸上長距離)はあなたのためのスポーツではないといことだ。このゴールは本当に素晴らしかったのだから。
ローレンス・チェロノにとってのWMM初勝利
今年のボストンまでは、チェロノは“WMMで勝ったことがない世界レベルの強力なマラソン選手”の1人でだった。ホノルルとアムステルダムでは大会記録を持っていて、自己記録は2:04:06(過去に走ったWMMは昨年のロンドンのみで7位)。昨年秋のアムステルダムでの大会記録、そして昨年のニューヨークシティを2:05台で優勝したデシサに今回競り勝ったことで、チェロノはエリウド・キプチョゲを除いて、現在における世界最高のマラソン選手の1人としてその座に君臨していくだろう。
マラソンのスプリント勝負ではキックがなくても勝てる
ここ何年間で我々が払いのけようとしている神話、それは全速力のスピードとトラックのタイムは、マラソンにおいては、ラストのスプリント勝負になった際にあまり影響しないということである。レース前の記者会見で、チェロノは出場選手の中では1番速い自己記録を持ってることを考えると、ラストのスプリントで優位に立てるかどうかを質問として聞かれていた。
「いいえ。個人的には、マラソンレースでのラストスパートをはあまり得意じゃないんだ」
と、チェロノは答えていた。
レリサ・デシサはゴール手前に競り負ける
デシサの過去2回のマラソンは、どちらも最後の最後まで勝負が分からないレースとなった。今回はチェロノに2秒差で負け、昨年秋のニューヨークでは2秒差をつけてシュラ・キタタに勝った。ニューヨークでは、キタタがデシサに追いつこうと猛追する前の26マイル(残り300m)でジョフリー・カムウォロルを振り落した。今回、デシサは似たような走りをした。26マイルの最後のヒアフォードストリートで前に出てしかけるが、カムウォロルと違ってチェロノはその動きに反応した。
残り100mのデシサの表情はきつさを物語っていた。チェロノよりも苦悶の表情を浮かべ、ゴール目前でスピードを落としてしまった。しかし、デシサ自身には何も問題はなかったという。単に燃料が切れ、チェロノが前方に出た際に、もうなす術がないと悟ったのである。
「問題はなかったよ。チェロノに抜かされたとき、もう追い抜けないと思った。問題はない、自分は大丈夫だ」
デシサはそう話した。
フィニッシュ以外は、すべてデシサの予定通りに進んだと話していた。出場選手の中で唯一マークしていた選手は「2週間前に勝った男(2年前に勝ったキルイのことを指していると思われる)」だったが、「彼が離れたときに、優勝すると腹を括った」と、話した。
チェロノがデシサを最後に抜くまで、レース全体を通して予定通りに走れていると感じていたと話していた。チェロノに抜かされた時は、「自分の中でペースをコントロールすることができなかった。だから2位になったんだ」と、話した。
適度な気象条件だったが川内優輝は昨年とはぼ同じ記録でフィニッシュ
昨年の最悪の気象条件で日本の川内優輝は2:15:58で走って優勝した。そして今年、マラソンには適度な気象条件だったが、川内のゴールタイムは昨年より少しだけ速い2:15:29であった。結果は17位。前半のスプリットは似ていて、昨年は65:59で今年が66:01である。
川内の今回走りで奇妙だったのが、最後の1マイルである。川内は後半は69:28(3:17/km)までペースを落としてプライドのためだけに走っている感じであったが、最後の1マイルだけなぜか5:02(3:07/km)で走りきった。これには驚いた。
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