BUデイビッドへメリー・バレンタイン室内5000m:遠藤日向が13:27.81の室内日本新
男子5000mでは、バウワーマントラッククラブ(BTC)のジョッシュ・トンプソンと、2018年全米選手権10000m王者のロペス・ロモンがペーサーとして務め、ドーハ世界選手権の5000mの参加標準記録である13:22:50の突破を目標にレースは行われた。BTCのショーン・マクゴーティ、ライアン・ヒル、マーク・スコット、マット・ヒューズ、そして日本の遠藤日向と松枝博輝がその目標に向かってスタートラインに立った。
トンプソン(5:21.95で2000mまで引っ張る)とロモン(8:35.17で3200mまで引っ張る)は仕事を果たしたが(13:22.50ペースは3200mで8:33.60)、ペーサーが抜けてからはマクゴーティがペースを上げて先頭に出た。 マクゴーティはそのままフィニッシュまで先頭を走って、13:21.35の自己新(0.58秒だけ自己記録を更新)でドーハ世界選手権の参加標準記録を切った。
イギリス人のスコットは、ラスト400m地点でマクゴーティに3秒ほど引き離されていたが、ラスト400mを59.77でカバーして13:21.97で2位に入り、マクゴーティのようにドーハ世界選手権の参加標準記録をクリアして、わずかながら自己記録を更新した(0.40秒だけ自己記録を更新)。
(BTCのジェリー・シューマッカーコーチと)
遠藤日向は世界選手権の参加標準記録こそクリアできなかったが、20歳の彼は13:27.81(5000mの自己記録を11秒更新)の室内日本新で、それまでの大迫傑の記録を0.19秒ほど縮めた。また、その記録はアジア生まれの選手としての室内5000mの最高記録となった。
【レース動画:Flotrackより】
東京オリンピックにむけてトラック種目での出場を目指して、大学ではなく実業団への道を選んだ遠藤日向。かねてからアメリカのチームでのトレーニングを望んでいた彼が、BTCのJMPに参加し始めたのが2018年の5月。高卒1年目で日本選手権1500m2位、5000m13:38.79、ニューイヤー駅伝1区区間賞、高卒2年目はJMPに参加し始めてからも日本選手権5000m2位と、順調に力をつけてきてこの日の快走に繋げた。
今後はドーハ世界選手権の参加標準記録(13:22.50)の突破と、日本選手権の優勝に向けてピッチを上げていくだろう。
【レース結果:招待男子5000m】
1 ショーン・マクゴーティ Bowerman Tra 13:21.35 2:41 - 5:22 (2:41) - 8:03 (2:41) - 10:44 (2:41) - 13:21 (2:37) 2 マーク・スコット Bowerman Tra 13:21.97 3 遠藤 日向 住友電工 13:27.81 2:42 - 5:23 (2:41) - 8:04 (2:41) - 10:48 (2:44) - 13:27 (2:39) 33.805 (33.805) 1:05.514 (31.709) 1:37.102 (31.589) 2:10.100 (32.999) 2:42.576 (32.476) 3:14.810 (32.235) 3:47.460 (32.650) 4:19.611 (32.151) 4:51.404 (31.793) 5:23.384 (31.980) 5:55.554 (32.170) 6:27.820 (32.267) 6:59.972 (32.152) 7:32.125 (32.153) 8:04.357 (32.233) 8:36.310 (31.953) 9:09.488 (33.179) 9:42.267 (32.780) 10:15.235 (32.969) 10:48.028 (32.793) 11:20.464 (32.436) 11:53.226 (32.763) 12:26.145 (32.920) 12:58.525 (32.380) 13:27.802 (29.277) 4 ライアン・ヒル Bowerman Tra 13:36.61 5 マット・ヒューズ Bowerman Tra 13:39.49 6 松枝 博輝 富士通 13:47.64 2:42 - 5:23 (2:41) - 8:04 (2:41) - 10:55 (2:51) - 13:47 (2:52) -- ロペス・ロモン Bowerman Tra DNF -- ジョシュア・トンプソン Bowerma Tra DNF
また、女子3000mでは松﨑璃子(積水化学)が9:00.86の室内日本新記録で3位に入った。
翌日に行われた同大会の男子1マイルでは荒井七海(Honda)が3:58.35の室内日本歴代2位の記録で4位に入った(1500m通過3:42.87=荒井の1500mの自己記録とほぼ同じ)。
ミルローズゲーム男子1マイル:ケジェルチャが世界記録に0.01秒及ばず
ヨミフ・ケジェルチャは2019年のミルローズゲームのワナメーカーマイルを3:48.46で制したものの、室内1マイルの世界記録まであと0.01秒及ばかなかった。世界記録はまだモロッコのヒシャム・エルゲルージが持っており、彼は22年前にドイツのレースで3:48.45で走ってから今でも世界記録を保持し続けている。
このレースには他にも10人の選手が出場していたが、ケジェルチャがペーサーのロブ・ナポリターノを750m頃に追い越すと、そこからは1人でレースを作って勝利を収めた。ケジェルチャの800mの通過は1:52.99で、そのペースは世界記録更新ペースである1:54.89よりもはるかに速かった。結局、ハイペースが仇となってしまった。
ケジェルチャはスタートしてからの最初の409mを56.25で通過し(1マイル3:41.33ペース)、ペーサーが800mまで引っ張ることができなかったので、ケジェルチャは自分でレースを作るしかなかった。5周目から単独走で28.80、29.16、29.21で3周を走った(1周28.39が世界記録の平均ペース)。ラスト1周は大観衆の後押しもあり28.33でカバーしたが世界記録には届かなかった。
「最初が少し速かったと思う」
と、ケジェルチャはレースの後に話した。
「1周目はちょっと速かった… 終盤にそのツケがきたと感じた」
ケジェルチャは優勝者に贈られる花束を手にしたが、彼は優勝記録の電光掲示板を見続けていた。最初は速報値の3:48.47を示し、後に正式記録が3 :48.46と表示されたとき、彼は悲しみを体全体で表現して倒れ込んでしまい、花束はいたるところに落ちてしまった。
ケジェルチャの今回の走りは、これまで歴代のどの室内1マイルの走りよりも良かった。しかし、エルゲルージが今でも世界記録を持ち続けている。ケジェルチャは、3年前にマシュー・セントロウィッツが出した大会記録(3:50.63)と、この会場(Armory)での競技場記録を更新し、室内1マイルの世界歴代3位(3:49.44)を持つ、エドワード・チェセレクよりもほぼ1秒速い記録を手にした。
ケジェルチャは、今季の別のレースで世界記録の更新を狙うと話し
「私は世界記録に近づいたので、もう1度チャレンジしてみたい。そして、私は世界記録を破ることができると思う」
と、述べた。
良いペーサーに恵まれなかったことがレースの後半に影響した
我々はレース前展望で、ペーサーが十分に役割を果たせないのではないかと心配したが、実際にそれが起こってしまった。世界記録への挑戦レースで、後半の半分以上を単独走で走らせるのは酷い仕打ちである。
今回のレースとの比較のために、ゲーレン・ラップがが室内1マイルを3:50で走ったレースと、エドワード・チェセレクが室内1マイルを3:49で走った時には、その両方のレースともに1200mまでペーサーが引っ張っていたし、エルゲルージの屋外1マイルのレースでも1200mまでペーサーが引っ張っていた(室内1mマイルの世界記録のレースでも1000mまでペーサーが引っ張っていた)。
後半に単独走になったことに加えて、2周目速すぎたことも影響した。 室内1マイルの世界記録の3:48.45ペースは、409m通過が58.10で809m通過が1:54.89になる。しかし、ケジェルチャは今回56.25と1:52.99でそれぞれ通過した。ペーサーのロブ・ナポリターノは1周目(209m)こそ29.62と完璧な入りだったが、2周目を26.37と速く走ってしまったがために、それが後半に響いてしまった。
ケジェルチャの世界記録への挑戦は続く
レース終了後、ケジェルチャはすぐに「今季に再び1マイルの世界記録を狙う」と、話した。また、「5000mでも世界記録を破りたい」とも述べている(ケネニサ・ベケレの室内世界記録は12:49.60、屋外世界記録もベケレの12:37.55)。彼が室内、屋外どちらの記録を対象とするかは明確にしていない。ニューバランス室内グランプリのレース後は 高速トラックで有名なボストン大でのレースについて言及していたが、今日のレース後はどのレースで記録を狙うかについて話さなかった。
ピンバック: ミュラー室内グランプリ:エチオピアのサムエル・テフェラがヒシャム・エルゲルージの室内1500mの世界記録を更新する3:31.04の快走! – LetsRun.com Japan
ピンバック: ブルース・ルヘイン招待マイル:エチオピアのヨミフ・ケジェルチャが室内1マイル世界新記録の3:47.01で優勝、ジョニー・グレゴリックが全米史上7人目のサブ3:50マイラーとなる – LetsRun.