今やRACの登録選手は6以上の部族から来ている。チェリヨットはカレンジン族、マナンゴイ兄弟はマサイ族である。マナンゴイは北京2015年世界選手権で銀メダルを獲得した際、マサイ族の伝統的な祝福の儀式で、ヤギを殺してその血を飲んだという。

しかし、オウマは今でも彼の指導の実績ではなく、どの部族出身か、ということで判断されていると感じる時があるという。ロンドン世界選手権の男子1500mでマナンゴイとチェリヨットがワンツーフィニッシュをしたとき、練習パートナーどうしががワンツーフィニッシュを決めたのは、これまでの世界選手権のこの種目では初めてのことだった。
オウマはこの実績が認められ、ケニア陸連が毎年主催しているケニア陸上アウォードにて2017年の最優秀コーチ賞にノミネートされた。オウマは自らの受賞を確信しており、家族にもそう伝えていたという。
「妻はスーツを用意していたよ。子どもたちにも、その日は早く寝ないように言っておいてんだ。パパが表彰されるからってね」
マナンゴイが栄えある最優秀選手賞に輝いたが、最優秀コーチ賞は、若くて将来が期待できる選手を指導しているジャフェット・キメイが受賞したのだ。
その夜に彼の家族が感じたであろう落胆と考えると、オウマは今でも心が痛むという。彼の出身部族が少なからず関係しているとオウマは考えている。
「出身部族は確かに選考に何かしら影響があったと考えている。2017年にこれほどメダルを獲得した選手を持つコーチは他にはいないはずだ。もし私が間違ってるのなら、最優秀コーチ賞の選出基準を公表すべきだ」
オウマが気がかりなのは、このことだけではない。これだけ選手が良い成績を残すと、それに疑問を呈してくる人も出てくる。特に、ケニアではドーピングが大きな問題となっているからだ。キプロプにドーピング陽性反応が出たというニュースが今年の5月に駆け巡った時、世界中が衝撃を受け、オウマはナイロビでも痛烈にその衝撃を感じていた。ケニア人がドーピングで陽性反応が出れば出るほど、オウマのチームへのドーピング検査もより一層厳しくなる。
「エリジャ(マナンゴイ)やティモシー(チェリヨット)、ウィニー(チェベット)など、ドーピングをしていない選手に対しても疑いの目が向けられる、それは本当に私が心配していることですごく悲しいことだ。私のチームはWADAやADAK(ケニア反ドーピング機関)の検査を受けているし、規則に従っている。数えきれないぐらい検査を受けてきた。レースの時も、レース以外の時もだ。陰性反応が出たことは1度もない。規則違反はない。陸上競技をクリーンなスポーツにするために、我々も検査官も日々仕事をしてるんだ」
疑いの目を止める手立てはない。オウマができることは、選手たちが練習時間までにしっかり集合し、30-30を走り、ナイロビ国立公園のシマウマを避けながら走り続けさせること。選手たちは、2019年ドーハ世界選手権と2020年東京オリンピックに向かい始めている。東京オリンピックでもチェリヨットとマナンゴイはまだ全盛期であるだろうし、あと2年のうちにジョージ・マナンゴイもメダル争いに絡むまでに成長してくるだろう。ロンガイアスレチッククラブがオリンピックで表彰台を独占するなんて可能性も出てくるかもしれない。そうすれば、オウマの最優秀コーチ賞は確実であろう。
ロンガイ・アスレチッククラブ(Facebook・Twitter)
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参考記事
・For Manangoi and Cheruiyot, it’s the Rongai Athletics Factor(2017年8月13日)
・Training with champions – Rongai Athletics Club(2018年1月22日)
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