オウマは自分の選手達が速く走るのを好む、だから、昨年のロンドン世界選手権で、25歳のマナンゴイ、22歳のチェリヨットは新奇な作戦を取り入れた。彼らがやったことは、単に他の選手から逃げ切ることだった。チームメートにペースメイクを頼るエルゲルージとは違って、勝つためにどちらかが犠牲になるようなことはなかった。レースの最後にマナンゴイがチェリヨットを抜いたが、それでもチェリヨットは銀メダルを獲得した。
この戦略は2018年に驚くほど効いた。マナンゴイとチェリヨットはコモンウェルスゲームズとアフリカ選手権で1、2位に入った。ロンドン世界選手権同様に、そのレースはどちらも高速レースとなった。マナンゴイのコモンウェルスゲームズでの優勝記録の3:34.78はこの28年間で1番速い優勝記録である。アフリカ選手権での3:35.20という記録は大会新記録となった。
世界の並みいる強豪選手の中で、特に4日間で3レース走らなければならない選手権の決勝で、最初からこのようなハイペースで走ることにはある程度のリスクが伴うと考える人もいるだろう。オウマはそのような見方をしていない。

「トラックで走っている選手は、彼らは練習したことを体現しているだけだ。彼らが速いペースで走っていれば、そのような練習をしているということになる。これが、我々のトレーニング方法だ」
オウマはそのように語った。
しかしそれと同時に、選手の調子が良ければ(そして勇敢さがあれば)、もっとすごいアドバンテージがある。すでに前方に出ていれば、1500mにおいて重要となるポジション取りにおいて他の選手と争う必要はない。他の選手が自分より前にいなければ、転倒の可能性も減る。1番重要なことは、彼らに対してはカウンター戦略というものは有効でないのである(自分から仕掛けていかないといけない)。
マナンゴイとチェリヨットが3:33で走ると決めれば、対戦相手には2つの選択肢がある。1つ目が、それより速いペースで走る。2つ目が、後ろに下がり、彼らのペース配分が間違っていることを願うことだ(ロンドン世界選手権でこの戦略を選んだ選手はひどい目にあった)。どちらにせよ、マナンゴイとチェリヨットは、レースの主導権を握っていたのだ。
1年経った今も、どうやってRACの勢いを止められるか、誰もわからないままだ。チェリヨットは、2018年にDLに5回出場して5回とも優勝している。しかも、毎回シーズン世界最高記録を出した。7月20日のモナコDLでは、3:28.41という記録を出し、世界歴代7位の記録となった。世界歴代ランキングでは、マナンゴイよりも3つ上のランクに位置している。
今年そのチェリヨットを破った唯一の選手は?マナンゴイである。彼の3:29.64という記録は、チェリヨット以外では2018年に3:30を切っている唯一の選手である。全体でも、このチームは世界の屋外1500mにおいて、オリンピック以外で素晴らしい成績を残している。チェリヨットはダイヤモンドリーグ年間王者であり、マナンゴイは世界選手権、コモンウェルスゲームズ、アフリカ選手権を制し、そしてマナンゴイの弟であるジョージは、彼もオウマのもとで練習をしているが、彼もU18世界選手権とU20世界選手権で優勝している。
現在、陸上競技におけるいかなる種目においても1つの種目を“独占”しているトレーニンググループは、世界を探してみても他にはないだろう。すべての始まりは、ケニア西部ヴィクトリア湖に面する漁業の町にいた空手家(オウマ)だった。
②に続く。
ロンガイ・アスレチッククラブ(Facebook・Twitter)
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参考記事
・For Manangoi and Cheruiyot, it’s the Rongai Athletics Factor(2017年8月13日)
・Training with champions – Rongai Athletics Club(2018年1月22日)
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