藤本拓:マラソン2戦目にして積極的な走りでのサブ2:08

日本のマラソンファンにとってこのシカゴマラソンでの驚きは大迫の快走だけではなかっただろう。トヨタ自動車に所属する藤本拓は、自身2度目のマラソンにシカゴマラソンの大舞台を選択して積極的なレースを展開して見事に2:07:57の8位でMGCの出場権を獲得した。
今年の2月にはチームメイトの宮脇千博が2:08:45の好記録をマーク。仲間の活躍に刺激を受けた藤本は3月のびわ湖毎日マラソンで初マラソンを走ったが2:15:30に終わっていた。
Embed from Getty Images藤本は今回のレースでは積極的に先頭集団についていった。25kmからのペースアップに喰らい付き、この5kmを14:39でカバーした。その後はペースを落としたものの、しぶとく粘った結果、その失速を最小限に抑えた。藤本は2017年の全日本実業団ハーフで1:01:53の4位と好走しているが、今回もロードでその強さをみせた。
【シカゴマラソン男子:トップ20位】
【シカゴマラソン女子:トップ20位】
日本男子マラソンの飛躍的な進歩
数年前の日本男子マラソンの低迷期を考えれば、現在の状況は非常に明るい兆しだといえる。WMMが始まってから、日本の男子選手がWMMで3位以内に入ることが増えてきたのは今年に入ってからのことである。サムエル・ワンジルが北京オリンピックを制した10年前あたりから最近まで、ケニアやエチオピアの世界トップクラスのマラソン選手が圧倒的な成績を収めてきた。しかし、2017年は大迫がボストンで3位に入り、今年はさらにそのインパクトを超えた。
【2018年男子マラソン主要大会での順位】※ 2018年10月現在(WMM4位まで + アジア大会)
2月:設楽悠太 2:06:11 – 東京2位
4月:川内優輝 2:15:58 – ボストン優勝
8月:井上大仁 2:06:54 – アジア大会優勝
9月:中村匠吾 2:08:16 – ベルリン4位
10月:大迫傑 2:05:50 – シカゴ3位
今となってはこのように、東アフリカ系の選手が多く出場するレースにおいて、男子の日本人選手が好走することは珍しいことではなくなってきたのである。また、それにともなって日本の男子マラソンの記録水準が過去最高クラスに上昇している。
【2018年男子マラソン日本10傑】※ 2018年10月現在
① 大迫傑 2:05:50 – シカゴ3位 (マラソン3戦目)
② 設楽悠太 2:06:11 – 東京2位 (マラソン3戦目)
③ 井上大仁 2:06:54 – 東京5位 (マラソン4戦目)
④ 藤本拓 2:07:57 – シカゴ8位 (マラソン2戦目)
⑤ 木滑良 2:08:08 – 東京7位 (マラソン4戦目)
⑥ 中村匠吾 2:08:16 – ベルリン4位(マラソン2戦目)
⑦ 宮脇千博 2:08:45 – 東京8位 (マラソン4戦目)
⑧ 山本憲二 2:08:48 – 東京9位 (マラソン2戦目)
⑨ 佐藤悠基 2:08:58 – 東京10位 (マラソン6戦目)
⑩ 園田隼 2:09:34 – 別大2位 (マラソン12戦目)
この10年における男子日本マラソンの低迷期は、サブ2:10を出せばある程度上位にランクインできる記録水準であったが、今年に限ってはトップ10入りすらも遠い存在となっている。驚くべきなのはその記録水準の高さだけでなく、マラソンキャリアの早い段階で好記録を樹立する選手が続出している点にある。

彼らに共通するのは、高いスピード能力とロード適性にある。このリストの1〜8位の選手のなかでの大まかな記録水準でいえば、木滑以外はハーフ1:02:00よりも速い記録を持っていることに加えて、5000mで13:40前後の記録(もしくはそれよりも速い記録)を持っているという点にある(こちらは山本を除いて)。
言い換えれば、トラックである程度の実績を持ちつつ、ロードでの実績も持っているというところにある。当たり前のことかもしれないが、トラックでスピードを磨くということはある程度マラソンで生きるのである。そのようなことからみれば、この2つに当てはまる、もしくは今後その記録水準を達成できる選手にはマラソンで4戦目以内にサブ2:09の可能性があるといえる。
ただ、大迫クラスの選手となると別格である。マラソン選手として、陸上選手として突き抜けられるかどうかは、大迫自身がレース後に話したように、「世界トップクラスの選手が行っている練習内容に興味を持って、それをいかにして自分のなかに落とし込めるかどうか」というところにヒントがあるだろう。
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