この2週間、ベルリンマラソンでエリウド・キプチョゲが出した2:01:39の世界記録の余韻に浸っているのも当然だろう。今後何年も語り継がれるだろう伝説的な走りだった。しかし、今週末、もう1つのWMM(ワールドマラソンメジャーズ)が待ち構えている。楽しみすぎる2018年シカゴマラソンに集中する時がきた。
2014年シカゴマラソンでキプチョゲとベケレが対決して以来、我々は興奮を覚えている。今年のシカゴマラソンは、こんな楽しみがある。
- 1982年のグレッグ・マイヤー以来、アメリカ生まれのアメリカ人選手として昨年、シカゴマラソンを35年ぶりに優勝したゲーレン・ラップが2連覇を狙う(ハリド・ハヌーシは1997年と1999年に優勝したが、当時はモロッコ国籍で、2000年と2002年に優勝したときはアメリカ国籍であったもののアメリカ生まれの選手ではない)
- 2018年の冬〜春の4大マラソンのうち3つの優勝者が参戦:モジネット・ゲレメウ(ドバイ)、ディクソン・チュンバ(東京)、川内優輝(ボストン)
- ジョフリー・キルイの出場:2017年のボストンとロンドン世界選手権を制した彼をレッツランは2017年最優秀男子マラソン選手に選出した
- ラップは全米記録(2:05:38)、ファラーは欧州記録(2:05:48)の更新となるか
- オレゴンプロジェクトの大迫傑が2:06:11の日本記録更新と1億円のボーナス獲得なるか
- WMM初参戦の2人(ゲレメウと、1月のドバイで初マラソン2:04:15のビルハヌ・レゲセ)がWMM初制覇なるか
モー・ファラーとゲーレン・ラップのマラソン直接対決が実現する。そう、2018年シカゴマラソンは素晴らしいレースになるだろう。ファラーとラップに関しては、すでに※ 記事をあげている。
(※)シカゴマラソンで直接対決へ:かつての練習パートナー 、モー・ファラーとゲーレン・ラップの歴史を振り返る
しかし、この2人だけに注目しすぎるのは、ゲレメウ、チュンバ、キルイらの有力選手への配慮が欠ける。男子招待選手について記事を書いた。日曜日のレース前までに知っておかなければならない選手ばかりである。しかし、その前にレース当日の天気を見てみよう。天気はアメリカのWMMのレースにおいて大事な要素である(2018年のボストンマラソンのように)。
天気予報
シカゴの日曜日の天気予報によると、16〜18℃でほどの気温で適度なコンディションが予想される。曇り空もいい条件ではあるものの、雨(にわか雨の予報)と北北西の風(風速11 mph)が吹き、それにより記録に影響する可能性がある。
【2018シカゴマラソン主な男子招待選手】
選手 | 国籍 | 自己記録 | 備考 |
モジネット・ゲレメウ | エチオピア | 2:04:00 | ’18ドバイ優勝(大会新) |
ビルハヌ・レゲセ | エチオピア | 2:04:15 | ’18ドバイ2:04:15(初マラソン) |
ディクソン・チュンバ | ケニア | 2:04:32 | ’15シカゴ優勝・’14 + ’18東京マラソン優勝 |
アベル・キルイ | ケニア | 2:05:04 | ’16シカゴ優勝・’18ロンドン4位 |
ケニス・キプケモイ | ケニア | 2:05:44 | ’17年旭化成に在籍。’18年ロッテルダム優勝(自己新) |
ゲーレン・ラップ | アメリカ | 2:06:07 | ’17シカゴ優勝・’18プラハ優勝(自己新) |
バーナード・キピエゴ | ケニア | 2:06:19 | ’17シカゴ3位・’18ソウル10位 |
モー・ファラー | イギリス | 2:06:21 | ’18ロンドン3位(自己新) |
ジョフリー・キルイ | ケニア | 2:06:27 | ’17ロンドン世界選手権優勝・’18ボストン2位 |
大迫傑 | 日本 | 2:07:19 | ’17ボストン3位・’17福岡国際3位(自己新) |
ビダン・カロキ | ケニア | 2:07:41 | ’18ロンドン5位・世界最高クラスのハーフの選手 |
木滑良 | 日本 | 2:08:08 | 18’東京マラソン7位(自己新) |
川内優輝 | 日本 | 2:08:14 | ’18ボストン優勝・今回は天候は荒れそうにない |
モハメド・レダ | モロッコ | 2:09:18 | ’18東京マラソン11位(自己新) |
ルーク・プスケドラ | アメリカ | 2:10:24 | ’16リオ五輪マラソン全米選考会4位 |
スティーブン・サンブ | ケニア | 2:11:07 | ’16 +’17シカゴ5位 |
エルカナ・キベット | アメリカ | 2:11:31 | ’18ボストン8位 |
タイラー・マキャンドレス | アメリカ | 2:12:28 | ’17カリフォルニア2位(自己新) |
アーロン・ブラウン | アメリカ | 2:12:54 | ’17シカゴ12位・’18ロッテルダム途中棄権 |
キヤ・ダンディーナ | アメリカ | 2:12:56 | ’17カリフォルニア3位(自己新) |
パトリック・リゾ | アメリカ | 2:13:42 | 自己記録は6年前の記録 |
アンドリュー・バンバロー | アメリカ | 2:13:58 | ’17シカゴ12位・’18ボストン5位 |
パーカー・スティンソン | アメリカ | 2:18:07 |
今回2:11を狙うと宣言
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オーガスティン・チョゲ | ケニア | 初マラソン | 驚異的なスピードと持久力(800m1:44 ・ハーフ59:26)果たしてマラソンに対応できるか? |
2013年以来、38回のWMMの男子マラソンの優勝者は、全てサブ2:08よりも速い自己記録を持つ選手か、世界選手権、もしくはオリンピックでメダルを獲得した選手しかいない(世紀の悪天候により今年のボストンマラソンで優勝した川内優輝だけがその例外)。以下にその基準を満たしている選手をあげ、かつその他の注目選手も加えた(エントリーしている全ての招待選手はこちらから確認できる)。
前回王者:ゲーレン・ラップ

ゲーレン・ラップ — アメリカ・32歳 自己記録 2:06:07(2018年プラハ)ハーフ59:47
この3回のマラソン成績:2017年シカゴ優勝(2:09:20)、2018年ボストン途中棄権、2018年プラハ優勝(2:06:07 = 自己新)
調整レース:9月2日ティルバーグ10マイル3位(46:24)
これまで6回のマラソンを走り、ラップにはマラソンの素晴らしい素質があることは確かとなった。6レースのうち、5レースは非常にうまくいった。唯一のう良くなかったレースは今年のボストンマラソンで、最悪の天候により招待選手の63%が棄権したレースでラップも途中棄権した。
ラップは、もちろんシカゴマラソンの前回王者であるが、今年のレースは去年とは様相が全く違う。1番大きな違いは?それは、ラップのライバル選手が、去年に比べると今年は断然に強い選手が揃っていることである。2017年と2018年の男子招待選手の比較をしてみよう。
シカゴマラソン男子 | 2017年 | 2018年 |
サブ2:08 | 7人 | 11人 |
サブ2:07 | 7人 | 9人 |
サブ2:06 | 5人 | 5人 |
サブ2:05 | 3人 | 3人 |
サブ2:04 | 2人 | 0人 |
WMM or ドバイの優勝者 | 1人 | 6人 |
この表を見るだけでは少し誤解を与える。昨年の表でサブ2:08の7人のうち、過去2年で自己記録を出した選手は3人のみである。昨年の出場選手で持ち記録最速の2人だった、デニス・キメット(自己記録2:02:57)とスタンリー・ビウォット(自己記録2:03:51)は、ピークの状態からは程遠い調子で、結局は途中棄権に終わった。
今年はというと、サブ2:08の選手が11人。その中の7人が過去2年の間に自己記録を出している。これには今年2月の東京マラソンで優勝したディクソン・チュンバは含まれていない。今年出場のサブ2:08のうちの5人は今年に自己記録をマークしており、昨年とは違って、今調子が良い選手が今年は多いということを意味している。
昨年、ラップが35km地点で優勝へ向けたスパートをかけた時点で先頭集団に残っていたのはたった5人、その地点で2:11のペースだったにも関わらず、である。天気が悪かったわけではない、(男子トップレベルがフィニッシュするまでに)18.3℃を上回ることはなかった。ラップは15年ぶりとなるアメリカ人の男子選手の優勝へ向けて素晴らしいスパートをしたのだが、実際には他の選手が実力をほぼ発揮できなかったのである。
次にポイントとなるのは、ペーサーである。シカゴマラソンは2015 〜 17年にかけてはペーサーを起用していなかったが、今年からペーサーを復活させたのである。ハリド・ハヌーシの2:05:38の全米記録を更新することを、今回の1つの目標にしているラップにとって、必ずしも不利になるとは限らないが、ラップの過去6回のマラソンのうちペーサーがいたのはたった1回だけである。
そのレース(2018年プラハマラソン)の出場選手は、今年のシカゴマラソンと比べると強い選手は少なかった。ラップが注目選手の1人であることを考えると、日曜日のペーサーの速さがポイントとなってくるのでは、と想像しているが、マラソン2:04ペースにラップはついていくことができるのか?なぜなら、そのペースが今回出場するライバル選手に勝つのに必要になるであろうペースだからである。
そして、ラップは今回完全に良い調整過程で臨むといえない。昨年ラップは自らのシカゴへの調整について「今までで1番準備ができている」と話していた。今回の調整過程はそこまでスムーズではないようである。9月2日のティルバーグ10マイルの前にアキレス腱を故障した影響で、レースでの46:23という結果に「少し落胆していた」とコーチのアルベルト・サラザールが認めていた(優勝したロジャーズ・ケモイと1分差)。サラザールは46:00を望んでいたようだ。
そのインタビューでサラザールは、アキレス腱の故障が原因で練習ができていないことを認めた。さらにラップはそれから2週間後の9月16日のコペンハーゲンハーフもその影響で欠場した。明らかにこのアキレス腱の故障はラップにとっては問題であるが、どの程度深刻なのかは不透明である。過去にラップは調整がうまくいかなくても、それなりに結果を出している。去年のボストンマラソンの準備段階で足底筋膜炎になりながらも2位に入っている。しかし、今回のシカゴマラソンではそう上手くはいかないだろう。
かつての練習パートナーとの再戦:モー・ファラー
Embed from Getty Imagesモー・ファラー — イギリス・35歳 自己記録 2:06:21(2018年ロンドン)ハーフ59:22
この2回のマラソン成績: 2014年ロンドン8位(2:08:21)、2018年ロンドン3位(2:06:21 = 自己新)
調整レース:9月9日グレートノースラン優勝(59:27 = 5連覇)
ファラーのトラックでの活躍は周知の事実である。トラックでの彼の活躍を改めて説明するまでもない。それよりも我々が知りたいのは、マラソン選手としてのファラーなのである。
ファラーはこれまで2回マラソンを走っており、2回ともロンドンマラソンであったが、その2つは全く内容の違うレースだった。
ファラーのマラソンデビューは2014年、まだアルベルト・サラザールの指導を受けていた頃で、結果は2:08:21で、先頭集団で走ることはなかった。2回目のマラソンは、ファラーがマラソンに完全転向し、ゲイリー・ラフ(ポーラ・ラドクリフの夫)の指導を受けて臨んだ2018年4月。
ファラーはタフなレースを強いられた。世界最高のマラソン選手と共に走り、イギリス国民の期待を背負ってレースに臨んだが、ファラーは華麗にその期待に応えてみせた。前半を61:00という異常なスピードで入り、給水も失敗してしまったが、暑い気候のなかで2:06:21という素晴らしい記録でフィニッシュした。
マラソンに集中することについてファラーはレース前に語っていたが、彼は選手引退前に賞金を稼ぎにきただけではないということを、ロンドンマラソンの走りと記録で証明してみせた。彼は強く、マラソンに順応していた。この2つは、彼がこれからマラソンで常に成功していくために重要なものとなる。
金曜日の記者会見でファラーの調整具合準について聞くつもりではあるが、調整レースとなったグレートノースランでは59:27で5連覇を果たしており、調子が良いことは確かである。そして、シカゴはロンドンよりはファラーにとって比較的ゆったりとしたなレースになることが予想され、ロンドンの時のようにキプチョゲのことを心配しなくてよい(ファラーは、ソンドレ・モーエンの欧州記録2:05:48の更新を狙っており、それは十分達成可能である)。良い走りをするための準備は整っていることだろう。
大迫傑は今年2人目の男子マラソン日本記録更新者となれるか
大迫傑 — 日本・27歳 自己記録 2:07:19(2017年福岡国際)ハーフ61:01
この2回のマラソン成績:2017年ボストン3位(2:10:28)、2017年福岡国際3位(2:07:19 = 自己新)
調整レース:9月3日レッドモンドハーフ優勝(61:01 = 自己新)
2020年東京オリンピックを開催する日本のクールなこと、それはProject EXCEED(実業団マラソン特別強化プロジェクト)である。日本実業団陸上競技連合によって2015年に始まったこの制度は、2020年東京オリンピックに向け日本のマラソンを促進させる目的で、日本記録を出した選手に1億円を与えるプロジェクトである。
設楽悠太が2月の東京マラソンで、高岡寿成の前日本記録を16年ぶりに更新する2:06:11の日本新記録を出して1億円を獲得した。ナイキオレゴンプロジェクトの大迫傑が日曜日のシカゴマラソンで次の日本記録に挑戦する(彼が設楽の日本記録を更新すれば、1億円が授与される)。
昨年の大迫の2回のマラソンはとてもうまくいった(2:10:28でボストンマラソン3位、2:07:19で福岡国際マラソン3位)。彼は9月3日のレッドモンドハーフで自己記録を13秒更新する61:00の記録を出し、シカゴマラソンに挑戦してくる。
しかし、これまでの歴史は彼に逆行している。Japan Running Newsのブレット・ラーナー氏が指摘するように、これまで2:08を切った日本人選手は16人いるが、2回以上出した選手は1人(高岡)しかいないのである。大迫と他の日本人選手については、ラーナー氏の素晴らしいレースプレビューを確認してほしい↓。
(要約:2017年にボストン3位、福岡国際3位と好走した大迫は、クロスカントリー日本選手権を制し、世界ハーフマラソン選手権では日本人トップ。その後、10000mの日本記録更新を目指してアメリカのレースを走るも途中棄権、日本選手権も欠場となった。
しかし、9月初旬のレッドモンドハーフでは61:01の自己新で日本歴代9位にランクイン。昨年の福岡国際への調整と似たような調整の過程で、その時は福岡の前に走ったフェニックスのハーフを62:15で走った。そして、本番の福岡国際では2:07:19で走り、その記録は現在日本歴代7位にランクインしている。
10000mでも日本歴代6位の記録を持つ大迫の今回のハーフ61:01の記録は彼の調子の良さを物語っている、と日本のメディアは期待しているが、一方では10000mとマラソンの歴代記録と同じような水準で走った、という見方もできる。
これまでマラソンでサブ2:08を達成した日本人選手は16人いるが、高岡のみが2回以上記録している。もし大迫がサブ2:08を達成できるかどうかに関わらず、日曜日のレースは大迫にとって素晴らしい1日となるだろう。日本記録を更新すれば大迫は1億円を獲得する)
ラップ以外の4人のWMM優勝経験者
ジョフリー・キルイ — ケニア・25歳 自己記録 2:06:27(2016年アムステルダム) ハーフ59:38
この3回のマラソン成績:2017年ボストン優勝(2:09:37)、2017年ロンドン世界選手権優勝(2:08:27)、2018年ボストン2位(2:18:23)
優勝候補を選ばなければならないとなると、キルイが優勝候補の1人だろう。彼は2017年のボストンとロンドン世界選手権優勝により、昨年レッツランが選ぶ2017年の男子マラソンNo.1選手に選出され、今春のボストンマラソンでは最悪なコンディションにも関わらず、もう少しで3連覇をするところだった。
今にも飛ばされそうな風に吹かれながらも、ボストンでは残り4.5マイルまで2位に1:31秒差をつけて先頭を走っていた。その力走は結果的には判断ミスではあったものの(最後の1マイルは7:18 = 1km4:32ペースかかってしまった)、キルイは2位に入った。招待選手として出場していた他のアフリカ勢より断然素晴らしい走りをしたのである(キルイの他に、14位に入ったスティーブン・サンブだけが完走できた男子の唯一のアフリカ人のプロ選手だった)。
今年のボストンマラソンの時と同様に、今回への調整を練習拠点のケリンゲットとカプタガトに分けた。カプタガトではパトリック・サングのグループに入って8月後半から9月上旬の3週間トレーニングを積んだ。
「ケリンゲットにいる時は、セルフコーチで練習するが、カプタガトでの練習は完全にパトリック・サングの練習メニューに沿ってトレーニングしている」
と、キルイの代理人であるバレンタイン・トゥロウは話した。
「しかし、ケリンゲットでもカプタガトと同じメニューをやっている」
キルイのこの練習は功を奏しているようにみえる。ここで1番問題になってくるのが、キルイがペーサーがいるマラソンでも成功できるかどうかということである。キルイはペーサーがいるマラソンは2回走っており、2016年のロッテルダムの3位(2:07:23)とアムステルダムの7位(2:06:27)である。
このようにキルイはペーサーがいないレースのほうが明らかにうまく走れているが、ロッテルダムもアムステルダムも彼のマラソンキャリアのなかで最初の2回のマラソンであった。その頃と比べると、今のキルイのマラソン選手としてのレベルは格段に上がっており、シカゴマラソンでは自己記録更新を狙っている。
ディクソン・チュンバ — ケニア・31歳 自己記録 2:04:32(2014年シカゴ)ハーフ60:39
この3回のマラソン成績:2017年東京マラソン3位(2:06:25)、2017年トロント2位(2:09:11)、2018年東京マラソン優勝(2:05:30)
アベル・キルイ — ケニア・36歳 自己記録 2:05:04(2009年ロッテルダム)ハーフ60:11
この3回のマラソン成績:2017年ロンドン4位(2:07:45)、2017年シカゴ2位(2:09:48)、2018年ロンドン4位(2:07:07)
この2人をまとめたのは、2人には共通点が多いからである。2人ともマラソンでコンスタントに成績を残しており、メジャー大会(WMM + 世界選手権などの世界大会)で良い走りをしている。そして2人ともシカゴマラソンでの優勝経験がある(チュンバは2015年、キルイは2016年)。そして、2人とも冬 〜 春のマラソンに強い(チュンバが東京マラソンで優勝、キルイはロンドンマラソンで4位)。
(※)チュンバは3勝(東京×2 + シカゴ)、WMMでは8回連続でトップ5入り。キルイは3勝(世界選手権×2 + シカゴ)、WMMでは5回連続でトップ5入り
ひとつ心配なのは、年齢である。キルイは36歳、チュンバは今月末に32歳になる。キルイにとって今回のシカゴマラソンは自身22回目のマラソンであり、チュンバにとっては18回目のマラソンになる。2人ともこれまでは素晴らしい成績を残してきたのだが、誰にでも潮時はくるものである。
Embed from Getty Images川内優輝 — 日本・31歳 自己記録 2:08:14(2013年ソウル)ハーフ62:18
この3回のマラソン成績:ゴールドコースト9位(7月1日:2:14:51)、ニューカレドニア国際優勝(8月26日:2:18:18)、わっかない平和マラソン2位(9月2日:2:24:55)
調整レース:9月23日一関国際ハーフ7位(67:31)
公務員ランナーの川内優輝が2018年ボストンマラソンで優勝したのは、本当に素晴らしいことだった。しかし、暴風や豪雨が今週末シカゴを襲わない限り、彼の優勝の可能性はないだろう。
彼は出場選手の中で1番我慢強い選手ではあるが、ペーサーが復活したシカゴマラソンで優勝するには、速くなければならない。川内はマラソンで2:08を切ったことがない。実際には、彼は秋のマラソンでは2:11さえ切ったことがなく、川内の通訳者であるブレット・ラーナー氏によると、※ 関東地方の暑い気温がその原因とのことである。シカゴマラソン当日の天気予報は普通であることを考えると、彼の優勝の可能性は1%以下である。
(※)暑い時期に高地の涼しい環境で重点的に練習できる選手と違って、8月や9月でも関東地方の平地の気温が高いということは公務員ランナーの川内の普段の練習にも影響が出るということで、その時期の日本のマラソンレースでもそもそもサブ2:11は出にくい。
そうはいっても、川内は例年シーズンを上手くまとめてきている(今回のシカゴは川内の今年9回目のマラソンとなる。3週間後にはヴェニスマラソンにもエントリーしている)。今後、WMMを優勝した選手がその年に別のマラソンを9回(+ 50kmと71kmのレースにも出場)いたら教えてほしい。いずれにせよ、川内がシカゴで活躍すれば、ボストンでの勝利がいかに素晴らしかったかということが強調されるだろう。
次世代のスター候補たち
Embed from Getty Imagesモジネット・ゲレメウ — エチオピア・26歳 自己記録 2:04:00(2018年ドバイ) ハーフ59:11
この3回のマラソン成績:2017年厦門マラソン2位(2:10:20)、2017年ベルリン3位(2:06:12)、2018年ドバイ優勝(2:04:00)
調整レース:8月26日ブエノスアイレスハーフ優勝(59:48)
ビルハヌ・レゲセ— エチオピア・24歳 自己記録 2:04:15(2018年ドバイ)ハーフ59:20
前回のマラソン成績:2018年ドバイ6位(2:04:15, 初マラソン)
ゲレメウとレゲセは、2:04:00から2:04:15の間に6人がフィニッシュした、あの異常な2018年ドバイマラソンを走った2人である。ゲレメウは自身3回目のマラソンで、高速コースとして知られるドバイでの大会新記録で優勝、レゲセの2:04:15という記録は歴代で3番目に速い初マラソンの最速記録となった。
ドバイマラソンで好走した後、それぐらいの好記録を再び出すのに今まで多くの選手が苦労してきたが、ゲレメウとレゲセにはスタートしてのポテンシャルがある。ゲレメウは先月のブエノスアイレスハーフを素晴らしい大会新記録で優勝した(59:48)。それはハーフマラソンに滅法強いビダン・カロキ(自己記録58:42)を破っての優勝だった。
一方レゲセは、ゲタネ・テセマの指導により次世代のマラソンのスター選手になる素質がある。ゲタネ・テセマは、ロンドンマラソンを2回(+ 2012年シカゴマラソン)で優勝しているツェガエ・ケベデと、2012年ロンドンオリンピック女子マラソン金メダリストのティキ・ゲラナのコーチでもある。
レゲセはこれまでハーフマラソンで素晴らしい成績を残しており、59:46より速い記録を3回出して、マラソンでも鮮烈なデビューも飾っている。2回目のマラソンで、どのような走りができるだろうか。
マラソン史上最高のスピードと持久力を誇る男となれるか
Embed from Getty Imagesオーガスティン・チョゲ — ケニア・31歳(初マラソン)ハーフ59:26
以下がオーガスティン・チョゲの自己記録である。
800m:1:44.86
1500m:3:29.47
3000m:7:28.00
5000m:12:53.66
ハーフ:59:26
彼は今までマラソンを走ったことがないが、中長距離のあらゆる競技においてマルチな活躍を収めてきた、と話題に挙がる。800m1:44とハーフ59:26?冗談をいっているのか?
もちろん、今回の出場選手のなかでは1番、中長距離のあらゆる競技においてマルチな活躍を収めてはいないだろう、という議論がでるかもしれない。ファラーは1500mを3:28で走り、マラソンを2:06で走った。
チョゲは800mで1:45、ハーフマラソンで60:00を切った、歴代の陸上選手でただ1人の選手である。そのようなことから、彼がシカゴマラソンを走りると発表された時、800mで1:45を切った選手で1番速いマラソンの記録を持つのは誰か?と掲示板で聞いてみた。その答えは、ポルトガルのルイ・シルヴァのようである。
彼は800mを1:44.91で走り、マラソンを2:12:16で走った(興味深いことに、シルヴァは2004年アテネオリンピック男子1500m決勝でラスト800mを最後方から1:46.3で走って銅メダルを獲得した。これは1500mのレースで史上最速と思われるラスト800mだった)。シルヴァのハーフマラソンの自己記録が62:40だったことを考えると、チョゲは2:12:16よりもかなり速い記録で今回走るのではないかと我々はと予想している。
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