“史上最強”から“史上最速”に到達 – 2:01:39 – エリウド・キプチョゲが世界新記録でベルリンマラソン2連覇

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サングと抱き合った後、キプチョゲはフィニッシュラインにひざまずき、祈りを捧げていた。その後、写真撮影があり、すぐにコースに戻り集まったファンとともに喜びを分かち合った。観客達もこの最高のチャンピオンの勝利を喜び、抱擁や握手、ハイタッチをした。その様子を流していたテレビの右下にうつる記録を見てハッとした。

2:03:20。キプチョゲがゴールした後これだけ時間が流れてもまだ2:03:20。6年前なら世界記録であった記録である。
しかし、それはエリウド・キプチョゲがマラソンを走る前の話。今や、彼は史上最高かつ史上最速のマラソンを走ったのである。

この記録は長い間破られないであろう(キプチョゲ自身が更新するまでは)

キメットの世界記録2:02:57は4年間破られなかったが、それでもいつかは破られるだろうと思われていた。その記録は2014年9月に樹立された記録であるが、キプチョゲ、キプサング、ケネニサ・ベケレ、エマニュエル・ムタイ、この4人が2時間03分台前半(これらの記録は16秒以内)でひしめき合っていた。

今回の2:01:39に近い記録で走った選手はこれまで誰もいない。唯一サブ2:03で走ったキメットでさえも、78秒も差をつけられているのである。キプチョゲがマラソンでの優位性を飛躍的に高めたことは、長距離界において彼が史上最高の選手である、という証明になっている。そして、それを裏付ける自己新記録 = 世界新記録を彼は遂に手に入れた。

容易く述べられることではないが、キプチョゲはマラソン界におけるウサイン・ボルトである。ボルトのように、長い間王者として君臨している。ボルトの100mと200mの世界記録は9年間破られておらず、この後10年は破られないであろう。100mで9.5秒で走れる可能性のある選手が、まだ現れていない。キプチョゲの2:01:39も同様のことがいえるだろう。並外れたアスリートが出した、信じられない記録である。

この記録でもう1つ触れておかなければならないのは、今回のコンディションがマラソンを走るには最適な状態であったということである。キプチョゲのこれまでのキャリアが示すように、マラソンにおいてのグラウンドコンディションは記録に大きな影響を与える。

良い記録を出すには、キプチョゲのような卓越した才能のある選手と、最高のコンディションが必要である。この2つが近いうちに揃う可能性は概ね少ない。男子1500mの世界記録は20年前のものである。男子5000mの世界記録は14年前、男子10000mの世界記録は13年前の記録である。キプチョゲの今回の世界記録が、それぐらい長い間破られることがなかったとしても、それは驚くことではないのである。

キプチョゲは1マイルあたり3秒ずつ記録を縮めた

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キプチョゲの走りは素晴らしすぎて、正当な評価をすることさえ難しいが、称賛、栄誉に値することは間違いない。世界記録が速くなればなるほど、それを破るのは難しくなる。それを破れる選手も少なくなる。しかし、エリウド・キプチョゲは世界記録を更新した。しかも、ラスト10マイル(16km)を正真正銘の独走で。

今日まで、マラソンにおける中間点の通過最速記録は61:00だった。前半の5kmが下り勾配のロンドンマラソンで今年記録された中間点の通過記録である。その記録(最初の5kmが13:48とい通過記録も)は、あまりにも速すぎたので、キプチョゲを含めた選手を世界記録から遠ざけた。キプチョゲのその時の優勝記録は“たった”2:04:17だった。

しかし今回、キプチョゲは前半を61:06で走り、マラソンにおける中間点での通過記録で史上2番目に速い記録で走った。それでも、この速さは彼にとって速すぎることもなく、そこからネガティブスプリットで走るにはちょうど良いペースだった。キプチョゲは後半を※ 60:33という驚異的な速さで走ったのである。

(※ 参考までに:ハーフの日本歴代4位は60:32)

デニス・キメットが世界記録を出した際の後半は61:12。これはそれまでのマラソンでの後半の最速記録であった(前半は61:45だった)。キプチョゲの今回のペースは、前半も後半もキメットの記録よりもどちらも39秒速かったのである。とても信じられない。マラソンの記録更新はぜいぜい数秒だといわれてきたこの時代において、キプチョゲは1マイルあたり※ 3秒ほど記録を縮めたことになる。

(※ キメットの記録より1kmあたり1.85秒ほど速いペースだった)

キプチョゲの“全盛期”は長く続いている

マラソン選手が2、3年の間トップクラスでい続けることはとても珍しい。メブ・ケフレジギのような選手は長い間トップレベルで素晴らしいキャリアを残してきたが、そのようなキャリアも次第に陰りをみせていくのが通常である(コンスタントに成績を残し続けるのは容易でない)。キメットサムエル・ワンジルジョフリー・ムタイのように1年か2年は輝かしい成績を残すも、消えていってしまった選手をこれまでたくさんみてきた。

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©︎2018 Sushiman Photography

しかし、エリウド・キプチョゲはマラソン選手としてこの6年間、時が経つにつれて進化を遂げている。もし彼の“全盛期”がその他大勢のマラソン選手と同じようであれば、彼が今回世界記録に挑戦することはなかったであろう。つまりは、何年も前に選手生命を終えていただろう。しかし、キプチョゲパトリック・サングはそのモチベーションを持続していき、良いトレーニングを継続していく道を見つけたのだろう。これはキプチョゲにとってBreaking2を含めば12回目のマラソンであり、これまでのどのレースよりも速い記録で走った。今後、彼の活躍はいつまで続くのだろうか。

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  4. ピンバック: エリウド・キプチョゲが世界記録を狙って再びベルリンへ:カギとなるのは気象条件とライバルの動向 – LetsRun.com Japan

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