2020年東京オリンピック開催まで2年を切った。そして、東京オリンピック開催の約1か月前に、東京オリンピック全米選考会がユージン(オレゴン州)で開催される。
オリンピック全米選考会は素晴らしい大会ではあるものの、我々はこの記事でその醍醐味を少々台無しにしてしまうかもしれない。なぜなら、2020年東京オリンピック全米代表に誰が選ばれるか、ここで予想してみなさんにお伝えしてしまうからだ。

LetsRun.com共同設立者のロバート・ジョンソン(以下RJ, 写真右)と、LRCスタッフでライターのジョナサン・ガルト(以下JG, 写真左)は、2020年東京オリンピックの中長距離種目においての全米代表選手を予想した(女子は後日アップする)。男子800mからマラソンまでの各種目において、代表が確実視されている選手と、+αとして代表になり得る選手を予想。もちろん、
現在と2年後の2020年では変わることも多くあるだろうし、選手たちは万全な状態で選考会に臨む必要がある。しかし、これは我々が考える東京オリンピックでアメリカ国旗を背負うであろうベストな選手たちである。2年後、我々の予想が果たして合っているかどうか、ぜひ楽しみにしていてほしい。
女子編その①(800m, 1500m, 3000mSC)はコチラから
男子編その①(800m, 1500m, 3000mSC)はコチラから
男子編その②(5000m, 10000m, マラソン)はコチラから
女子5000m

本命◎:シェルビー・フーリハン
JGの対抗候補◯△:カリッサ・シュヴァイツァー、エミリー・インフェルド
RJの対抗候補◯△:カリッサ・シュヴァイツァー、 シャノン・ローバリー、ヴァネッサ・フレイザー
JG:2020東京オリンピックの陸上競技の競技日程次第では、フーリハンは5000mでも代表になりうると思っている。彼女がメダルを獲れる可能性が高いのは現在1500mなので、そちらに集中するとは思うが、彼女のラストのスプリント力と14:34という自己記録をもってすれば、選手権では戦略的なレースとなる5000mでメダル獲得の脅威となるだろう。(競技日程が確定し)もし1500mの方が先にくれば、彼女が5000mも走らない理由はない。
インフェルドについても同じことが言える。2016年のリオオリンピックの時、彼女は5000mと10000mの全米代表になったが、両種目に出場することを選ばなかった。しかし、2020年に30歳になるインフェルドは、2020東京オリンピックが彼女のトラック最後のレースになる可能性もある。
(競技日程が確定し)もし10000mが最初であれば、彼女が2種目出場しない理由があるだろうか。インフェルドは5000mで14:56の自己記録を持っており、かつ、フーリハン以外のライバルたちは※ 距離を伸ばしてマラソンに転向したりしていることもあり、そのようなことからあと2年の間はインフェルドはトラックで重要な選手でい続けると思っている。
(※おもにモリー・ハドル、ジョーダン・ハセイ、シャレーン・フラナガンのことを指している)
シュヴァイツァーはミズーリ大学時代に※ 滅法強い選手で、今はジェリー・シューマッハの指導を受けている(= BTC入り)。2020年までには彼女は14:40台で走れると考えており、14:40台という記録は全米代表になれる記録である。
(※シュヴァイツァーは、3年時に合計3冠 + 4年時に合計3冠 = 全米学生タイトルを合計6つ獲得大学時の自己記録は15:18.69、卒業後の7月のナイトオブアスレチックでは15:02.44の自己新をマーク)
- ① 2016年全米学生クロスカントリー選手権・1部6km:優勝
- ② 2017年全米学生室内選手権5000m:優勝
- ③ 2017年全米学生選手権(屋外)5000m:優勝
- ④ 2018年全米学生室内選手権3000m:優勝
- ⑤ 2018年全米学生室内選手権5000m:優勝(2連覇)
- ⑥ 2018年全米学生選手権(屋外)5000m:優勝(2連覇)
- 2017年全米選手権(屋外)5000m4位、2018年同大会5000m3位
ここで述べておかなければならないもう1人の選手は、シャノン・ローバリーだ。彼女はほんの数週間前までは5000mの全米記録保持者だった。しかし、彼女は今年、出産のために休養しており2020年には35歳になっている。※ ローバリーは2017年にはすでに走力低下の傾向は見て取れていた。
(※ローバリーは、2016年に1500m3:57.78, 5000m14:38.92 → 2017年に4:04.61, 14:57.55がそれぞれのシーズン最高記録)
彼女には才能があるし彼女なりのトレーニングに関する倫理観(トレーニング論、メソッド)を持っている選手なので、復活して代表になっても驚くことではないが、35歳という年齢で5000mの全米代表になるのは(これまでの歴史上)一般的には難しい。そうはいっても、フーリハンやインフェルドが※ 2種目出場をしなかった場合、ローバリーが全米代表になるのは順当ともいえる。
(※フーリハンの場合は1500mと5000m、インフェルドの場合は5000mと10000m)
RJ:インフェルドが全米選考会に問題なく出場すれば、トップ3に入ると思うが、2020東京オリンピックで彼女が(10000mとの2種目を)走るかどうかはわからない。アビー・ダゴスティーノと同じ状況が2020年に起こるかもしれない。
2016年リオオリンピック全米選考会にて、ダゴスティーノは5位だったが、リオオリンピックに全米代表として出場することができた。インフェルドとリオオリンピック全米選考会の5000mで優勝だったモリー・ハドルが2人ともリオオリンピックの※ 5000mに出場する意向がなく(両種目を兼ねるつもりでなかった)、繰り上がりでダゴスティーノが全米代表として出場したからだ。
(※ 両選手は10000mのみに出場。ハドルは30:13.17の北米新記録 = 全米新記録で6位入賞を果たした)
ジョン、なんでインフェルドが東京を走らないか聞いたよね?なぜなら、5000mにおいては彼女は世界レベルでは現状のところ厳しいからだ。ということは、もう一枠誰かに開かれることになる。その枠を争うのがレイチェル・シュナイダーかヴァネッサ・フレイザーか。
シュナイダーのことをこの話題から外してはいけない。彼女はオリンピックには出れないかもしれないが、ジョージタウン大学卒の彼女は今年の全米選手権(屋外)1500mで4位、5000mで2位に入ったことで注目を浴びている選手だ。
しかし、実際に私はフレイザーを選んだ。最初はローバリーが3番手でフレイザーを4番手にしていたが、ロバートのようにBTC(バウワーマントラッククラブ)の選手を1, 2, 3番手で選びたくなったので。ただ、選手は違うがね。フレイザーは今年の全米学生選手権(屋外)の5000mで大胆な走りをしたけど4位に終わっている。
フレイザーの5000mの自己記録(15:09)が、※1 プロ1年目としては、※2,7回も全米学生タイトルを獲得したアビー・ダゴスティーノ(15:11)よりも速いということに気づいている人がほとんどいないと思う。その記録は、ダゴスティーノが2014年にダートマス大学でのキャリアを終え、プロ選手として最初の1年を始めたときの記録だ。
(※1 正確には大学卒業後すぐのプロ選手としての初戦:6月卒業 → 7月プロ選手に、その後のナイトオブアスレチックでフレイザーは15:09を記録)
(※2 ダゴスティーノは、2年時に1冠 + 3年時に合計3冠 + 4年時に合計3冠 = 全米学生タイトルを合計7つ獲得)
- ① 2012年全米学生選手権(屋外)5000m:優勝
- ② 2013年全米学生室内選手権3000m:優勝
- ③ 2013年全米学生室内選手権5000m:優勝
- ④ 2013年全米学生選手権(屋外)5000m:優勝(2連覇)
- ⑤ 2013年全米学生クロスカントリー選手権・1部6km:優勝
- ⑥ 2014年全米学生室内選手権3000m:優勝(2連覇)
- ⑦ 2014年全米学生室内選手権5000m:優勝(2連覇)
それに、フレイザーは(先月に)BTCに入ったばかりだ。これからフーリハンやフレリクス、インフェルドらと共にトレーニングをしていくだろう。フレイザーがフーリハンのチームメイトとなった今、フレイザーがローバリーの後ろ、仮に4番手になったとしても、フーリハンは(恐らく)2種目に出場しないだろうから、フレイザーが東京オリンピック全米選考会4位でも東京オリンピックに出場できることになるだろう。
女子5000m:過去4大会の全米チームのオリンピック成績
【2004年アテネオリンピック】 = 予選落ち × 3人
① マーラ・ラニャン:予選1組9着(15:24.88, 予選落ち)
② シェイン・カルペッパー:予選1組13着(15:40.02, 予選落ち)
③ シャレーン・フラナガン:予選2着11着(15:34.63, 予選落ち)
【2008年北京オリンピック】 = 入賞 × 1人, 決勝進出 × 2人
※このレースで2着で入線したエルバン・アベイレゲッセ(トルコ)が2017年にドーピング発覚。各選手が繰り上がり。
① カラ・ガウチャー:8位入賞(15:49.39)
② シャレーン・フラナガン:9位(15:50.80)
③ ジェニファー・ラインズ:13位(16:34.63)
【2012年ロンドンオリンピック】 = 決勝進出 × 2人, 予選落ち × 1人
① モリー・ハドル:11位(15:20.29)
② ジュリー・クルーリー:14位(15:28.22)
③ キム・コンリー:予選2組12着(15:14.48, 自己新)
【2016年リオオリンピック】 = 決勝進出 × ※ 2人, 予選落ち ×1人
① シェルビー・フーリハン:11位(15:08.89)
② アビー・ダゴスティーノ:※決勝欠場
③ キム・コンリー:予選1組12着(15:34.39)
(※ ダゴスティーノは、予選2組に出場し、ニッキー・ハンブリンがレース中に転倒した影響で彼女も転倒してしまった。しかし、その後ハンブリンが競技に戻る前に、ダゴスティーノに歩み寄り、フィニッシュ後2人は抱き合った(映像)。このシーンはリオオリンピック全体としても大きくと取り上げられた)
(ダゴスティーノとハンブリンには、救済措置によって決勝に進出する権利を与えられたが、ダゴスティーノは、予選で痛めた箇所の影響で決勝のレースを欠場した)
- 2004年アテネ:予選落ち × 3人
- 2008年北京:入賞 × 1人, 決勝進出 × 2人
- 2012年ロンドン:入賞 × 2人, 決勝進出 × 1人
- 2016年リオ:決勝進出 × ※ 2人, 予選落ち ×1人
4大会全体を通してケニア、エチオピア勢の壁は厚い。全米チームのレベルが上がっていないようにも思えるが、2016年、2018年に全米記録が苦心されたように記録の水準は上がってきている。
2020東京オリンピックでも、ヘレン・オビリ、ゲンゼベ・ディババ、シファン・ハッサンらの強力な選手が引き続き前に立ちふさがるが、1500mの項目でも触れたように、シェルビー・フーリハンは競技日程次第では、5000mよりもメダルが狙えるであろう1500mに集中する可能性がある。
【全米選手権成績】
2017年
① シェルビー・フーリハン 15:13.87(初優勝)
② シャノン・ローバリー 15:14.08
③ モリー・ハドル 15:15.29
2018年
① シェルビー・フーリハン 15:31.03(2連覇, 1500mとの2冠)
② レイチェル・シュナイダー 15:32.71
③ カリッサ・シュヴァイツァー 15:34.31
女子10000m
Embed from Getty Images本命◎:エミリー・インフェルド
対抗候補◯△:エミリー・シッソン、マリエル・ホール
JG:インフェルドはとにかく故障が多い選手だが、それでも※ 過去3回も10000mで全米代表になってきた。モリー・ハドルの強さもとどまるところを知らないが、インフェルドは過去2回の世界選手権でハドルを破っていることを思い出してほしい。もしインフェルドが2020年オリンピック全米選考会のスタートラインに立つのならば、彼女は全米代表になる。
(※ インフェルドは大舞台で記録を着々と伸ばし、結果を残してきている。故障が多いので年間のレース自体は多くな出場しないが、大舞台への調整力はピカイチである)
- 2015年北京世界選手権:銅メダル(31:43.49)
- 2016年リオオリンピック:11位(31:26.94, 自己新)
- 2017年ロンドン世界選手権:6位入賞(31:20.45, 自己新)
シッソンは徐々に距離を伸ばしていって、将来的にはマラソンが彼女のメインの種目になると思うが、まだ今のところ2020東京オリンピックでマラソン全米代表になるには荷が重すぎる。現在のアメリカは10000mの選手層があまり厚くないので、もし彼女が10000mを選べば代表枠を掴みとれるはずだ。
ノートルダム大学のアナ・ローラー(自己記録 15:29 / 31:58)を3人目の選手として考えていた。彼女も良い長距離選手だと思うからだ。しかし、ローラーは調子を維持することができずに今年の全米選手権(屋外)では6位に終わっている。
ならば、彼女ではなく、2016年リオオリンピック10000m全米代表で今年の全米選手権(屋外)でハドルに次いで2位だったマリエル・ホール(自己記録 15:06 / 31:37)を選ぶよ。
ハドルといえば、もし彼女がマラソン全米代表になれなければ、東京オリンピック全米選考会では10000mを走るのではないか、と私は思っており、(その場合は)10000mで全米代表になってほしいとも考えている。恐らくハドルはマラソン全米代表になるとは思うが、マラソンには強い選手が多いし、トラックよりもマラソンの方が波乱が起きる。
2012年ロンドンオリンピック全米選考会10000mのチャンピオンであるエイミー・クラッグも、マラソン全米代表になれなければ10000m全米代表として東京オリンピックに出れる選手だ(昨年トラックで31:17の記録を出している)。
でも、ディズ・リンデンやジョーダン・ハセイは(トラックの速いスピードに対応しなければならないので)10000m全米代表にはなれないと思う。彼女らはマラソンだろう。
RJ:同意見だ。インフェルドが本命だ。ハドルやクラッグがマラソン全米代表にならなければ、彼女らは10000m全米代表になるだろう。ハセイは10000mでもかなり良いポテンシャルを発揮するとも考えている。ホールが対抗候補というのも良いね。もしこれらの選手が全てマラソン全米代表になれば、3人目は悩みどころかな。
アリー・オストランダーは10000mに距離を伸ばせるだろうか?3000mSCは彼女にとっては距離が短すぎると思う。
女子10000m:過去4大会の全米チームのオリンピック成績
【2004年アテネオリンピック】 = 入賞無し(19位、21位) ※2人のみの出場
① エルヴァ・ドライヤー:19位(32:18.16)
② ケイト・オニール:21位(32:24.04)
【2008年北京オリンピック】 = 銀メダル(北米新), 8位入賞, 24位
※このレースで2着で入線したエルバン・アベイレゲッセ(トルコ)が2017年にドーピング発覚。各選手が繰り上がり、シャレーン・フラナガンが銅メダル → 銀メダルに。
① シャレーン・フラナガン:銀メダル(30:22.22, 北米新)※当時
② カラ・ガウチャー:8位入賞(30:55.16, 自己新)
③ エイミー・ヨーダー・ベグリー:24位(32:38.28)
【2012年ロンドンオリンピック】 = 11位, 12位, 13位
① エイミー・クラッグ:11位(31:10.69, 自己新)
② ジャネット・チェロボン・バウコム:12位(31:12.68, 自己新)
③ リサ・ウール:13位(31:12.80, 自己新)
【2016年リオオリンピック】 = 6位入賞(北米新), 11位, 33位
① モリー・ハドル:6位入賞(30:13.17, 北米新)
② エミリー・インフェルド:11位(31:26.94, 自己新)
③ マリエル・ホール:33位(32:39.32)
- 2004年アテネ:入賞無し(19位、21位)
- 2008年北京:銀メダル(北米新), 8位入賞, 24位
- 2012年ロンドン:11位, 12位, 13位
- 2016年リオ:6位入賞(北米新), 11位, 33位
オリンピックの10000mにおける非アフリカ勢の反撃の狼煙がゲーレン・ラップの銀メダルだとしたら、(中国とロシアの女子選手を除いて)シャレーン・フラナガンの銀メダル獲得は女子におけるターニングポイントであった。
リオオリンピックでは史上最速ペースでのレースとなったが、その激流でもモリー・ハドルがそのフラナガンの記録を上回ったことから、この種目の全米チームの全体的な底上げが感じられた。マラソン転向組がマラソンで出場権を得れば、男子同様にこの種目はやや手薄となるだろう。
【全米選手権成績】
2017年
① モリー・ハドル 31:19.86(3連覇)
② エミリー・インフェルド 31:22.67
③ エミリー・シッソン 31:25.64
2018年
① モリー・ハドル 31:52.32(4連覇)
② マリエル・ホール 31:56.68
③ ステファニー・ブルース 32:05.05
女子マラソン

本命候補◎:(該当者なし)
対抗候補◯△:モリー・ハドル、ジョーダン・ハセイ、エイミー・クラッグ
RJ:なんて、豪華なメンバーだろうか!
もしUSATFが予算を節約したいのならば、マラソンこそ我々が手助けできる種目である。次の5人のスター選手だけを選考会に出場させる。
USATFはまさかそんなことをして、他の選手の夢を打ち砕くようなことはしないと思うが、以下の5人の中から必ず全米代表となる選手は3人出るだろう。
- シャレーン・フラナガン(2017年ニューヨークシティ優勝, 自己記録 2:21:14)
- ディズ・リンデン(2018年ボストンマラソン優勝)
- エイミー・クラッグ(2017年ロンドン世界選手権銅メダル、自己記録 2:21:42)
- ジョーダン・ハセイ(自己記録 2:20:57)
- モリー・ハドル(2016年ニューヨークシティ3位、自己記録 2:28:13、10000m + ハーフマラソン全米記録保持者)
リンデンは今年のボストンマラソンで優勝しているものの、5人の中では1番代表になる確率が低いと思っている。フラナガンは選考会に出るかどうかも100%自信はない。フラナガンは現在37歳で、もし今年のニューヨークシティマラソンを連覇しても驚きではないが、来年のボストンでラストランをしてその後に引退するかもしれない。
リンデンはコンスタントに成績を残してはいるが、彼女のポテンシャルが他の選手に比べると低いと感じている。もちろんボストンで優勝はしているが、記録は2:39だった。
2020東京オリンピックを目指している、ここに挙がっていない選手たちへの朗報だが、このビッグ5の年齢をみてみよう。2020東京オリンピック全米選考会時点で、フラナガンは38歳、リンデンとクラッグは36歳、ハドル35歳、ハセイは28歳だ。
(※ アメリカの選手は、日本とは対照的に大学時代にハーフマラソン以上のレースを通常走らない。そのようなことからも自然とハーフマラソンやマラソンへの転向はキャリアの後半に差し掛かったときに訪れる。そのようなことから、20代後半、もしくは30代前半からマラソンで活躍するアメリカの選手が比較的多い。そういう意味ではハセイは若い時点でマラソンに適正を見出し、見事に成功させている)
JG:フラナガンは2020年までには引退していると思うから、彼女は候補としては考えていない。昨年、ニューヨークシティで優勝する前に引退するようなことを話していたし(優勝して引退を撤回した)、あと2年も競技を続けるとは思えない。彼女は既に※ オリンピックでメダルを獲っているしね。
(※ 北京オリンピック10000mで銀メダル = 銅メダルからの繰り上がり)。
リンデンが、この中では1番可能性は低いということについては同感だ。オリンピック全米選考会は※ 選手権スタイルのレースで彼女にとっては都合が良く、アトランタ(東京オリンピック全米選考会:マラソンコース)では力を発揮できるとと思うが、それでも、クラッグやハドル、ハセイに勝てるほどではないだろう。
(※ ペーサーがおらず、ペースが落ち着きやすく、中盤以降に駆け引きがが多い)
この3人の中だと、クラッグの可能性が1番低い。しかし、過去2回のマラソン、ロンドン世界選手権での銅メダルと、2:21:42で走った今年の東京マラソンでは並み居る強豪選手たちに競り勝った。その事実は今みても素晴らしい。
誰に聞いても、今年のボストンマラソン前のハドルの調子は恐ろしく良かったようだ。しかし、悪天候が彼女の邪魔をした。しかし、ハドルがマラソンで強い選手になっていくだろうし、2020年はマラソン選手として彼女はピークを迎えているはずだ。
ハセイは、彼女のキャリアの中で走った2回のマラソンで、ボストンマラソンを2:23:00、シカゴを2:20.57で走った。かかとの違和感から今年のボストンマラソンを欠場する前に、かなり激しいトレーニングをしていたと聞いた。もし調子が良ければ、マラソンで強い選手になる。ハセイより速い記録で走ったアメリカ人選手はこれまでにディーナ・カスターしかいないのだから。
フラナガンが、もし引退すると考えると、2016年リオオリンピック全米選考会と同じような状況になる。2016年は4人の選手(クラッグ、リンデン、フラナガン、カラ・ガウチャー)のうち3人が代表になることが戦前から確実視されていた。
そして、驚いたことに彼女らは1位, 2位, 3位, 4位でフィニッシュした。だから、2020年全米チームは、おそらくリンデン/クラッグ/ハドル/ハセイの上位4人の組み合わせになると思う。
そうはいってもローラ・スウィート(2:25、昨年のロンドンで6位)やケリン・テイラー(シーズンベスト2:24)のような選手がどのような走りをしてくれるか、それもすごく楽しみだ。長年、彼女達のような選手が全米代表になるのは十分なレベルだったが、2020東京オリンピック代表は、これまでの全米マラソン史上でも最高レベルの選手たちがひしめきあっていて、全米代表になるのはかなりハードだ。
RJ:そうだね、スウィートやテイラーについて話題に挙げないとね。でも、彼女たちには頑張ってほしい。有力視されていたカラ・ガウチャーが4位に終わるというビッグドラマが2016年は起きた。だから、2020東京オリンピック全米選考会もビッグドラマが起こるだろう。マラソンは最後まで何が起こるかわからない。
女子マラソン:過去4大会の全米チームのオリンピック成績
【2004年アテネオリンピック】 = 銅メダル, 34位, 39位
① ディーナ・カスター:銅メダル(2:27:20)
② ジェニファー・ラインズ:34位(2:43:52)
③ コリーン・ド・ルック:39位(2:46:30)
【2008年北京オリンピック】 = 27位, 途中棄権 × 2人
① ブレーク・ラッセル:27位(2:33:13)
② ディーナ・カスター:途中棄権
③ マグダレーナ・レウィ・ブレット:途中棄権
【2012年ロンドンオリンピック】 = 10位, 11位, 途中棄権 × 1人
① シャレーン・フラナガン:10位(2:25:51)
② カラ・ガウチャー:11位(2:26:07)
③ ディズ・リンデン:途中棄権
【2016年リオオリンピック】 =6位入賞, 7位入賞, 9位
① シャレーン・フラナガン:6位入賞(2:25:26)
② ディズ・リンデン:7位入賞(2:26:08)
③ エイミー・クラッグ:9位(2:28:25)
- 2004年アテネ:銅メダル, 34位, 39位
- 2008年北京:27位, 途中棄権 × 2人
- 2012年ロンドン:10位, 11位, 途中棄権 × 1人
- 2016年リオ:6位入賞, 7位入賞, 9位
ディーナ・カスターという大砲(オリンピック銅メダリスト + 全米記録保持者, 2:19:36)が抜けてから、全米チームの停滞期があったが、ロンドン、リオと徐々に入賞争いをするようになり、全体の底上げ、レベルアップに成功している。
2017年ロンドン世界選手権ではエイミー・クラッグのラスト2kmの猛烈な追い上げで銅メダルを獲得。東京オリンピックでも、男子マラソン同様にメダル争いをする見込みがあり、かつ他の選手も入賞争いにも絡んでくるだろう。
【近年のWMM+α成績】
- 2016年:ニューヨークシティマラソン3位
- 2018年:ヒューストンハーフ7位(1:07:25, 北米新)
- 2017年:ニューヨークシティマラソン優勝
- 2018年:ボストンマラソン優勝
- 2017年:ロンドン世界選手権銅メダル
- 2018年:東京マラソン3位(2:21:42, 自己新)
- 2017年:ボストンマラソン3位(2:23:00, 初マラソン全米最高記録)、シカゴマラソン3位(2:20:57, 全米歴代3位)
※10000mでは男子と同じく主力選手がマラソンに転向したため、戦力ダウンが否めないが、その選手たちが万が一マラソンで全米代表を逃せば、10000mに回ってくるだろう。5000mやマラソンにおいて東京オリンピックではメダル候補として日本代表選手の脅威となりそうだ。
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