※以下は、ニュージーランド・ウェリントン在住の谷本啓剛氏(ランニングガイド・RunZ:ラン・ニュージーランド代表)によるレポートで、レッツランジャパン(LetsRun.com Japan=LRCJ)オリジナルコンテンツのインタビュー記事です。
ジュリアン・マシューズ
~リオオリンピック男子1500mNZ代表~

今回はニュージーランド・1500mのスペシャリストであるジュリアン・マシューズ選手を紹介します。ジュリアンは2014年のコモンウェルズゲームズで9位、2015年の北京世界選手権に出場、2016年のリオオリンピック出場と年齢を重ねるにつれて確実にキャリアを伸ばしてきた選手です。
ジュニア期から1500mという種目にこだわり1500mに挑み続けています。ニュージーランドの選手ですが、ニュージーランドのみならずトレーニング拠点は世界各地に点在しており、私がインタビューした場所もお互いにベルギー遠征中というタイミングで練習場所が同じ場所になったためでした。

世界各地を回りながらトレーニングを行っていくことは、世界レベルのランナーとしては非常に稀だと思いますが、ジュリアンのランニングに対する思いとポイントについて伺いました。日本では長距離走は『旅』と例えられることがよくあります。ジュリアンの1500mのキャリアはまさに『旅』そのもので、世界でも類を見ないようなキャリアを積み上げて行っています。
ジュリアン・マシューズ:IAAF選手名鑑
Embed from Getty Images出身: ニュージーランド・ネルソン
生年月日: 1988 / 7 / 21
自己記録: 800m 1:48:95 1500m 3:36:14 1mile 3:56:91 3000m 8:00:21
大学: Providence College(アメリカ・プロビデンス大)
クラブ:アスレティクス・ネルソン
コーチ: Ray Treacy(レイ・トレイシー)、Ron Warhurst(ロン・ワーハースト)
その1はこちらから
4:トレーニング
ジュリアン・マシューズの基本的なトレーニング
【週間走行距離】
基礎をつくる時期:160㎞ / WEEK
レースシーズン:120~130㎞ / WEEK
【レースシーズン中の計画】※レース期前半のレースがある週の基本的な流れ
日曜日:ゆっくりのペースで90〜120分間走
月曜日:軽めのジョグ(流し数本)
火曜日:ポイント練習 / ジムセッション
水曜日:ゆっくりのペースで80〜90分間走
木曜日:軽めのジョグ(流し数本)
金曜日:軽めのジョグ(流し数本)
土曜日:レース
※レースがなければスピードトレーニング
好きなトレーニング
- スピードトレーニング
- 綺麗な場所でのロングラン

※ケニアで行った集団でのロングテンポ(距離走)はとれも気持ちよかった。ネルソンのトレイルはいつも心を落ち着かせる場所。
【トレーニングのポイント】
- 週2回のスピードトレーニングで速筋繊維に刺激を入れること
- ロングランを行って有酸素能力を十分に高めること
- レース期でもあまり持久系トレーニングを落とさない
- 健康な状態でいること
- 怪我の予防
- 回復を重要視
- 精神的にタフになること
- 自分自身を信じること
【トレーニング年齢】
- ジュニア期には自分の強みを伸ばし、力を高めていく。あまり深く考えずバランスよくトレーニングを行っていれば自然に強くなっていく
- 能力が十分に高まる年齢に達したら、1つ1つの能力をさらに強化するとともに弱点も克服し力をさらに高めていく
こうした点から“楽しいランニングではあるが、ランニングは非常に複雑なスポーツだ”とジュリアンは話す。
『練習計画にしても高地トレーニングだけをとって速くなるものかといえばそうではない。手術後ようやく走れるようになってきてから、様々なところで練習したが、(アメリカでの)高地トレーニングから高地トレーニングでケニアへ行った。順調にトレーニングはできていたが、その後思うようにレースで結果が出なかった。練習環境の変化での学びはいつの時もある。』
Embed from Getty Images2015年北京世界選手権
『2015年には世界選手権があり、1年で21回もレースを走った。実際にこれは多すぎて、スピード持久力が少しずつ失われていることを感じていた。このレースとトレーニングのバランスは常に考えなければならないことだと思っている。』
『またトレーニングを開始すると、1日中ジムにいることもある。ジムでは柔軟性のトレーニング、神経系のトレーニング、筋力系のトレーニングなど様々なことを克服するために計画し取り組まなければならない。いろんなことを考えながらトレーニングに取り組んでいる。ランニングは同じことだけ続けていればいいものではなく、速くなるために多くのことを取り入れたり、考えたりしなければならない。それは年齢が上がり、競技力が上がってきてより一層複雑になっていくように思う。ランニングは単純ではない。』

何を選択するのか
『自分にとってベストな状態になるために必要なことを1つ1つ考えながら選択していくこと。ケニアではランニングに対する精神力が強調されていたように思う。アメリカでは精神的な面よりも効率的な面を強調するトレーニングであった。客観的に見て何が優れているかを考えるよりも、自分自身にとって必要なことを様々なところから学んで繋げていくことがトレーニングで最も大切になってくる。』
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