【LRCJオリジナルインタビュー記事】アンジェ・ペティ(リオオリンピック、ロンドン世界選手権女子800mNZ代表)

キャリアとトレーニング

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【週間トレーニングスケジュール】※2015年~

日曜日 ロングラン(75分・17㎞~18㎞)

月曜日 午前 ミドルロングラン+ショートスピード プライオメトリクス

午後 ショートラン

火曜日 ワークアウト+ジムトレーニング

水曜日 軽いランニング+軽いスイミング

木曜日 ミドルロングラン+ショートスピード プライオメトリクス

金曜日 ワークアウト+ジムトレーニング

土曜日 休養

 

※週間走行距離 鍛錬期 80㎞~85㎞

※今までで最も走った週間走行距離 6日で95㎞

 

【好きなトレーニング】

  • 300m×6 リカバリー2分
  • 60秒ヒルインターバル
  • 600m×6 リカバリー600m 目標1分40秒
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アンジェは2013年に初めて世界選手権の標準記録を切り、2014年にコモンウェルズゲームズに出場し決勝へ、2015年には初めて2分の壁を破り1分59秒06を記録。世界ユニバーシアード選手権800mで優勝を飾る。2016年にはリオデジャネイロオリンピックに出場する。

キャリアを通じて確実にステップアップしていくアンジェのトレーニングのポイントを聞いてみたところ次のように話してくれた。

 

【アンジェの重視するトレーニングのポイント】

  • 質の高いトレーニングとトレーニングの量、この中に確実に軽く、回復させる日を設けていく。ランニング技術の改善も行っていく。自分に必要な要素がすべて入っている中でもバランスのよく取れたトレーニングであることが大切。
  • コーチはトレーニングの中に“楽しさ”を含めていること、その中にハードトレーニングも入っていること。そのバランスをよく取っているコーチングが良いコーチングのポイント。

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『キィウィ(Kiwi=ニュージーランド人)はあまり練習をハードにしすぎない。多くの選手が速いタイム・苦しい負荷を高めていくことがいい練習だと思っているが、ニュージーランドの選手はバランスを重視する。私はすべての練習で常に最大限の努力で設定タイムをクリアしていくようなことはしない。ハードに練習を行う日もあるけれども、常に自分の力・動きをコントロールできる範囲で行うようにしている。いつも練習でより速く・よりきつく、と考えていると疲れて故障や病気になってしまうから。休養と回復はランナーにとって非常に大切。』

と、アンジェは話す。

走行距離に関してもスピードのある800m選手は週間走行距離が40㎞程、スタミナのある選手は100㎞以上。自分自身に関してはちょうど中間に位置する能力なので80㎞程になっているという。自分の能力とトレーニングの内容をよく考えて行っているということが話を聞きながら伺うことができた。

月曜日と木曜日はショートスピードを行った後、練習の最後にプライオメトリクスを行っている。17歳の頃にランニングドリルを行うようになったが、それの延長で動きをよくするために行っている。はじめはボックスジャンプといった簡単なプログラムから初めて、慣れてきたら徐々に種目を増やしていくように行ってきた。

水曜日に行うスイミングセッションはあまり好きではないトレーニングだが、ランニング時の呼吸を安定させるために重要な役割を果たしている。パートナーのサムはトライアスリートで水泳の先生なので、サムによく泳ぎ方・呼吸の仕方を教えてもらって実践している。

 

2014年はコモンウェルスゲームズで決勝に進んだがあまりいいシーズンではなかった。2015年に自己ベストを出せたのは、このシーズンでランニングに対する感じ方が少し変わったからだという。軽いランニングでの1km4分20秒のペースからレースでの800m2分02秒のペースまで、『そのペースが快適か、そうでないか』ということをよく考えるようになったと話す。

“私は結構いろんなことを気にしてしまうタイプ。”とアンジェは自分自身の性格について話していた。アンジェはランニングやトレーニングについて深く考えているが、それと同時にいつもランニングを楽しんでいる。アンジェがオーバーワークや考え過ぎに陥らない基本的な部分に、アンジェ自身が本来持っているランニングや生活における“バランス”が常にアンジェを適切な方向に導いているように筆者は思う。

海外レース・国内レース

アンジェはヨーロッパの各レースを数か月転戦してピークのレースに挑むというような計画で毎年行っている。ヨーロッパの各レースではペースメーカーが付き、自分の狙ったタイムで競争する相手もたくさんいる。こういったレースがピークに向けて走りを高め、自己ベスト更新の大切なステップになっている。

(※試合期はヨーロッパのレースを転戦:British milers 800m

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ニュージーランド国内では多くのランナーが、戦略的なレース(勝ちを意識したレース)を海外のレースで学び、ニュージーランド国内のレースではスローペースになることが多い。

(※地元クライストチャーチでのレース:Christchurch Street Mile 2017

アンジェは速いペース・速いリズムで展開するレースの方が自分に合っているというので、国内で記録を出したりすることはやや難しいと感じている。前を誰かが走り、ついていくことができるレースは記録を出しやすいが、前を行く選手のペースが速いということが必要になってくる。自分の狙ったレースペースで進むレースがあることは、中距離選手にとって、とても大切なことである。

レースを引っ張るような展開ももちろん好きで楽しいが、やはりペースメーカーがハイペースで一周目を入ってそれを目指して走るレースが最もタイムが出しやすいということは経験的に感じている。

レースで最も好きな瞬間は、『最後の直線で前を行く選手を捕まえること!!』

ジュニアからシニアまで、年齢が上がっても変わらず同じ種目で、楽しい瞬間をレースで味わえることは中距離選手にとって一番の強みであるように筆者は思う。

今後の目標とキャリア

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2018年ゴールドコーストコモンウェルスゲームズ

2018年にはコンチネンタルカップで800m2分切り、1500m4分7秒切りを狙っている。2019年にはドーハ世界選手権に出場して世界選手権での決勝を走ること。そしてこの間にニュージーランドレコードの1分58秒25(トニ・ホッジキンソン*1996・アトランタオリンピック)を更新することを視野に入れている。

800mを中心に今後も競技を続けて行くつもりだが、400m(54”15 *2016)のタイムを上げることが難しくなってきたら、800m・1500mの両方の種目を中心に行っていこうと考えている。アスリートとしてそんなに若くはないので、そういったスピードと種目のことはよく考えていくつもり。しかし今は、800mで走りたいという思いが強くある。

 

2020年には東京オリンピックを迎える。アンジェは日本には特別な思い入れがあって、1000mの自己ベスト(2分37秒)は日本の大会で出している。またセイコーゴールデングランプリの練習するトラックではニュージーランドの国旗を一周囲んでもらうように設置してくれて、まるでホームにいるようだった。いろんな人が親切にサポートしてくれて自己ベストが出せたのだと思っている。

アンジェはこの国で開催されるオリンピックで決勝を走りメダル目標に大会に挑める日を楽しみにしている。

 

多くのアスリートが幼少期は、“楽しいランニング”であったが年齢を重ねるにつれて“勝つランニング”ということに変わっていく。またプロランナーになると“ランニングを楽しむ”ということを言葉にすることが難しくなってきたりもする。

アンジェの走ることに対する気持ち、そして800mという種目に対する気持ちはいつの時も変わらず、“ランニングは楽しい”・“ランニングが好き”という、レースがキャンセルになって涙を流した幼い頃の思い出と全く変わっていない。

また多くの選手が海外の経験を通したスポンサー企業などのサポートで世界大会に挑んでいる中で、地元クライストチャーチの環境を最大限に活かして世界レベルのランナーに成長したことは、クライストチャーチや家族・友人、そしてサムのサポートを心から信じていることを感じさせる。

様々な選手と大会で会う中でも、自分自身のランニングとランニング環境を築いてきたこと。自分自身のランニングスタイルを持ちながらも、多くのランナーと交流していくこと。こうしたアンジェのパーソナリティーが、彼女のランニングに多くの経験をもたらすとともに、多くの可能性を与えてくれたように話していると強く思わせる。

 

“可能性は自分自身がつくること“

”ランニングは楽しむこと“

アンジェが憧れた走り《エリック・リドル、ニック・ウィリス、ウェイ・バン・ニキルク、、、》次のオリンピックに向けて、次はアンジェ自身が多くの人に希望を与えていくことになるだろう。

自分を信じたことと、自分の思いを信じてきたことが、アンジェをこれからもレースで輝かせていく。

 

【筆者プロフィール:谷本啓剛】

ニュージーランド・ウェリントン在住

ランニングガイド・RunZ(ラン・ニュージーランド)代表、酒井根走遊会主宰

【RunZ(ラン・ニュージーランド)】https://runnewzealand.wordpress.com/

【酒井根走遊会(オンライン陸上部・駅伝部)】https://ameblo.jp/dashpiro

 

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