【LRCJオリジナルインタビュー記事】アンジェ・ペティ(リオオリンピック、ロンドン世界選手権女子800mNZ代表)

※以下は、ニュージーランド・ウェリントン在住の谷本啓剛氏(ランニングガイド・RunZ:ラン・ニュージーランド代表)によるレポートで、レッツランジャパン(LetsRun.com Japan=LRCJ)オリジナルコンテンツのインタビュー記事です。


アンジェラ・ペティ

〜リオオリンピック、ロンドン世界選手権女子800mNZ代表〜

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今回はニュージーランド女子中距離を代表するアンジェアンジェラ・ペティ)選手を紹介します。

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クライストチャーチマラソン前日、アンジェ(右)と彼女の夫のサム(中央)にミーティングする時間頂きました。アンジェサムと話していると、私自身がランニングを始めた頃の純粋な気持ちを思い出させてくれ、次の日の大会が初めて出場したときのような“楽しみ”という気持ちだけで臨むことができました。

ニュージーランド・クライストチャーチでは2011年にカンタベリー地震があり、町が壊れ、人口が減り、陸上競技場使えなくなってしまった状態が続きました。そんな中、地元のでこぼこした芝生のトラックで今まで通りの練習を続け、パートナーと出会い、常に前進し続けるアンジェの姿に多くの人たちが希望を持っています。多くの人の希望でありながらも、自分自身のランニングを純粋な気持ちで常に“楽しむ”アンジェのランニングキャリアを紹介していきます。

 

アンジェラ・ペティ:IAAF選手名鑑

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出身: ニュージーランド・クライストチャーチ

生年月日: 1991 / 8 / 16

自己記録:400m 54.15 (2016) / 800m 1:59.06 (2015) / 1500m 4:07.83 (2016)

大学: カンタベリー大学(ニュージーランド・クライストチャーチ)

クラブ: University of Canterbury Athletics

コーチ: Danny MackeyBrooks Beasts TCヘッドコーチ)


 

ランニングは楽しい!! ~ランニングとの出会い~

アンジェのランニングとの出会いは5歳の時に学校で走り始めたことがきっかけだった。そして7歳の頃からパパヌイのランニングクラブの練習に参加するようになった。9歳の頃に引っ越しに伴ってノースカンタベリー・アスレティクスクラブに所属し、少しずつ“レース”というものをするようになる。

“走ること”を楽しむようになっていたある日、楽しみにしていたレースがキャンセルになった。レースに行く途中の車の中で知った時、『自然に涙がこぼれた。この時、私は本当にそのスポーツが好きなんだ。』ということを実感したと話す。

また13歳の頃から受け始めたコーチングで、コーチ≪マリア・ハッサン≫の元には当初アンジェのほかにもう一人のランナーしかいなかったが、次第にトレーニンググループも大きくなってランニングをする仲間も増えてきたことはアンジェをさらにランニングの世界に引き込んでいった。

ランニングを始めた当初、学校の先生がアンジェに才能があることに気が付き、アンジェの両親に「あまり練習をハードに行ったり、試合に集中させすぎない方がいい。」とアドバイスをしたことがあったという。幸運にもそのアドバイスがアンジェの競技を長く成長させていくきっかけになったのだと楽しそうに話す。

ランニングキャリアのステップアップ

5歳の頃から少しずつランニングをするようにはなったが、“トレーニング“というようなものはジュニア期にはほとんどなかったと話す。13歳からコーチングを受け始めて、その時に初めて“トレーニング計画”に沿って練習するようになる。当時のアンジェのコーチ≪マリア・ハッサン≫はオーバートレーニングに関して非常に敏感であり、トレーニングにおけるステップアップというものをよく理解していた。そのため一週間の内にランニングを行うのは4日間だけで、ランニングとともにホッケーも行っていた。ランニングやホッケーのスポーツだけでなく別の趣味もあり、社交的なミーティングに参加する機会も多くあった。

彼女の競技における大きなステップアップとして挙げられるのが、2006年に行われたオセアニア地区のスクール選手権での自己ベスト更新である。この大会で初めてニュージーランドの代表選手として選出されるとともに、オーストラリアで行われたこの大会で自己ベストを2分14秒から2分10秒に大きく伸ばすことができた。そして家族と一緒にお祝いをしたこの日のことは一生忘れられない思い出となっている。もちろん他の多くのレースも忘れられない思い出だが、この大会は特に記憶に残っていると話す。

ランニングを楽しむジュニア期にニック・ウィリスが北京オリンピックの男子1500mで銅メダルを獲得する(その後銀メダルに繰り上がり)など、アンジェはオリンピック・世界大会のレースを見ることからも多くの刺激を受けてジュニア期を過ごしていった。

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『ジュニア期を通して健康的にランニングを行ってきたこと、少しずつトレーニングを増やしていけばいいと考えていたこと、そしてランニングは楽しむものと信じていたことが結果的に、多くの可能性とランナーとしての基礎を築けたと思っている。』

と、アンジェは話す。

『多くのランナーがジュニア期に、ランニングに対して真剣になりすぎオーバートレーニングや故障を抱えランニングに対しての情熱を失っていった。そしてその時一緒に走っていた選手たちは今では走ることをやめている。』

 

【アンジェが話すジュニア選手に考えてほしいポイント】

  • オーバートレーニングに注意すること
  • トレーニング間の休養をしっかりととること
  • よく食べること 『速く走るエネルギーとするために!!』

ジュニア期からシニア選手へ 大学進学

大学進学は、地元のカンタベリー大学へ進学する。アンジェにとって当時地元のクライストチャーチを離れて長い海外生活を送る準備はできていなかったと振り返る。9年前から現在に至るまで基本的に1年間のサイクルの中で9か月間は国内で練習して、数か月ヨーロッパのレースを転戦してピークを作るという方法をとっている。そうした中で国内外の様々なことが見えてきたと話す。

もしアメリカに留学し競技をしていたら、レベルの高いトレーニンググループやコーチングを選択する中で、重要になるポイントを次のように話してくれた。

  • 選手一人一人を適切に見てくれるコーチがいること
  • 自分と一緒にトレーニングを行ういいアスリートがいること
  • 自分に合うトレーニングを行うトレーニングであること
  • 自分に合うトレーニング距離であること

 

コーチは選手を尊重してくれるものだが、トレーニングに選手を合わせようとするコーチもいる。そういった環境をよく調べる必要がある。トレーニンググループに関しても、自分と同じ走力であっても、同じレベルの練習内容にすべての選手を当てはめるグループもある。例えば800m×2本を行ったときに、すべての選手が同じ効果を得られるとは限らない。また同じ週間走行距離100㎞を行ってオーバートレーニングになってしまう選手がいたり、40㎞だけで十分にトレーニング効果を得られる選手もいる。そういったことをよく判断してくれるコーチ、柔軟なトレーニンググループがあることが重要だと話す。

アンジェは『アメリカの大学に留学することで、奨学生として学費を抑えられたり、違う環境でトレーニングができたり、いろんな国の友達ができたり、学位を得られたり…多くの経験をすることができたかもしれない。』と話すが、アンジェは、自分自身のトレーニング環境・クライストチャーチでの生活とキャリアに自信を持っている。

世界大会と地元での生活

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サムとアンジェ

アンジェは2012年に地元の芝生トラックで1マイルのインターバルを行っているときに、イギリスから留学していたサム(サム・ペティ:800m1’50″39 / 1500m3’49″37 *2013/2018 NZ選手権800m3位)がトレーニング場所・グループを探しているところで出会い、それからよくトレーニングを共に行うようになる。

サムはイギリスで幼いころからランニングとトライアスロンをしており、800mの自己ベストもお互いに近かったために良いトレーニングパートナーとなった。専門とする種目は違っていても、お互いの練習をよく理解し合い支え合えるパートナーとの出会いは、アンジェの競技力をその後国内トップレベルから世界レベルへと引き上げていく。

(※大学在学時:SKYTV取材・芝生トラックでの練習

アンジェはニュージーランド・クライストチャーチを拠点に2013年に初めて世界選手権の標準記録を突破してからシニアの世界大会に挑戦し、現在も国内でも順調に力を伸ばしている。

アンジェはニュージーランド国内で地元のカンタベリー大学に進学し≪楽しいランニング≫をサムとともに継続しながら、2015年には世界ユニバーシアード選手権で1分59秒の自己ベストで優勝する。

※予選は2分3秒(63-60)、準決勝は2分00秒(60-60)、この2レースともに、思ったよりも無理なく走ってこのタイムが出ていた。決勝ではジャマイカの選手が56秒で1周目を入る展開。それに続きアンジェも57秒で一周目を入る。最後の直線で先頭の選手を捕らえて一着でフィニッシュ。

(※世界ユニバシアード選手権:女子800m決勝

ニュージーランド(自国)でトレーニングをし、世界大会に挑戦していくことの良い点・悪い点については以下のように話してくれた。

【良い点】

  • 家族や友人が近くにいること
  • 周りの環境に慣れていること
  • 自分をよく知るコーチがいること
  • ランニングに関するサポートを国内のランニング環境から受けられること

【悪い点】

  • 競技力の高いアスリートやランニンググループが少ない
  • 近い間隔で高いレベルの大会がない
  • トレーニングパートナーが少ない
  • トレーニング施設があまりない

 

現在のトレーニングは地元の芝生トラックで行ったりしているが少し足場が悪い。(デコボコしている。)『ウェリントンのハットレクはきれいでいいよね!』サムアンジェは口をそろえて言う。そして『今年、クライストチャーチの新しい競技場が使えるようになるのが楽しみでしょうがない。』と楽しそうに話す。

すべてが整っていない環境でも、その利点を十分に活かしてトレーニングを行っている。

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『芝生のトラックは確かに走りにくいけれど、故障を予防することに適しているし、体も強くなるところがいいところ。クライストチャーチは美しい山に囲まれている。ポートヒルズはとても近いトレイルだしアカロアなどの海沿いも本当にきれい。そうした場所に拠点を置けることは幸せなことだと思っている。そして地元の芝生トラックではじめてサムアンジェのパートナー)と出会ったという特別な思いもある。』

と、アンジェは楽しそうに話す。

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【LRCJオリジナルインタビュー記事】アンジェ・ペティ(リオオリンピック、ロンドン世界選手権女子800mNZ代表)」への8件のフィードバック

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  2. ピンバック: 【LRCJオリジナルインタビュー記事】ハーミッシュ・カールソン(2018世界室内3000mニュージーランド代表)その2:練習拠点とレース拠点等について – LetsRun.com Japan

  3. ピンバック: 【LRCJオリジナルインタビュー記事】スティーブ・ウィリス(ニュージーランド中長距離代表コーチ)のコーチング哲学その1 – LetsRun.com Japan

  4. ピンバック: 【LRCJオリジナルインタビュー記事】スティーブ・ウィリス(ニュージーランド中長距離代表コーチ)のコーチング哲学その2 – LetsRun.com Japan

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  7. ピンバック: 【LRCJオリジナルインタビュー記事】リオオリンピック男子1500mニュージーランド代表 – ジュリアン・マシューズ ~NZ1500mランナー・ワールドトラベラー:その2 – LetsRun.com Japan

  8. ピンバック: 【LRCJオリジナルインタビュー記事】2017年NZ選手権1500m王者エリック・スピークマン 〜 NZサブ4マイラー – LetsRun.com Japan

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