ダイヤモンドリーグユージン大会:エマニュエル・コリルが無敗を継続、ノア・ライルスが19.69で200mを制す、17歳のヤコブ・インゲブリクトセンが1マイル3:52

男子800m:怪物エマニュエル・コリル

男子800mと男子2マイルは、世界レベルの選手が多く出場し大会1日目のAランクのレースだった。

選手は、最初の400mを49.85で走ったペーサーにハラン・アブダにはついていかず、最初の400mを通過した選手はケニアのファーガソン・ロティチで51.85だった。実力がある選手たちがレース序盤はスローペースで進み、男子800mの勝負は、ラスト200mまで持ち越されるかたちとなった。

そして、これが起こった。

コリルは、後方のアモスに接触し押されるかたちになり、転倒しそうになる。ここでかなりリズムを崩されてしまった。バランスを崩し失速、レーンの内側に入ってしまうが、それでも態勢を持ち直し、その後コリルは考えられない巻き返しを成功させ、アモスを振り切って1:45.16でコリルが優勝。アモスは1:45.51でゴールした。

順位 選手 国籍 記録 400m通過 800m
1 エマニュエル・コリル ケニア 1:45.16 51.94 [51.94] 1:45.16 [53.23]
2 ナイジェル・アモス ボツワナ 1:45.51 52.17 [52.17] 1:45.51 [53.35]
3 ワイクリフ・キンヤマル ケニア 1:46.14 52.04 [52.04] 1:46.14 [54.11]
4 キピエゴン・ベット ケニア 1:46.46 52.42 [52.42] 1:46.46 [54.05]
5 カイル・ラングフォード イギリス 1:46.53 52.12 [52.12] 1:46.53 [54.41]
6 アダム・クチョット ポーランド 1:46.64 52.63 [52.63] 1:46.64 [54.01]
7 ファーグソン・ロティチ ケニア 1:46.90 51.85 [51.85] 1:46.90 [55.06]
8 エリック・ソウィンスキ アメリカ 1:46.91 52.05 [52.05] 1:46.91 [54.87]
DNF ハーロン・アブダ アメリカ 49.85 [49.85]

コリルは本当に良い走りをした

2018 Prefontaine Classic

我々も、NBCSNアナウンサーのクレイグ・マスバックも、600m地点で転倒しそうになって失速した選手が、800mのレース(世界レベルの)において優勝した選手を見たことがない。エマニュエル・コリルは44.53(400m)と1:43.10(800m)の自己記録を持っている本物の選手だ。

昨年、UTEP(テキサス大学エルパソ校)の1年生の時は無敗だったが、彼は大学でのレースだけ走っていた。その後、ケニア選手権で注目を集め、モナコDLで初めてのダイヤモンドリーグを走って1:43.10で優勝した。

ロンドン世界選手権の予選ラウンドで故障してしまい決勝に進むことはできなかったので、多くの人は彼がいかに良い選手かということを知らずにここまで来てしまった。

今年に入ってコリルが走ったレースは3つだけである。室内レースは1回走り、ミルローズゲームでは、過去17年間での最速記録で優勝した。しかし、ビザの発行が追いつかなかったためのバーミンガム世界室内選手権には出場できず、またもや世界がコリルの走りを見る機会は奪われてしまった。

バーミンガム世界室内選手権の1週間後にビザがようやく発行されたため、バーミンガム世界室内選手権に出れなかったことに関しては“相当イラつきを覚えた”と彼は話していた。バーミンガムでは“100%勝つ自信があった”と、話してくれた。

コリルはドーハDLで優勝し、そして今大会。世界最高の800m選手が集まったレースで、残り200mで転倒しそうになりながらも見事優勝し、無敗を守った。レース後のインタビューで、“接触があった時は心配したが、ここで失うものは何もないので思いできるだけ全力でゴールまで走ろうと決めた”と、コリルは話した。

「全力を尽くそうと自分に言い聞かせた。アモスに勝とうとして走ったわけではなく、ただ全力で走ったんだ」

そうコリルは語った。コリルが言うには、学生時代とプロになってからのトレーニングでは大きな違いはないという。ただ、6月の全米学生選手権にピークを持っていく必要がないのでスケジュールに若干の違いが出るだけだ。去年より調子が良く、“もっと多くのダイヤモンドリーグ”を走る予定で、すぐに1:43を切りたい(彼の自己記録は1:43.10)と、最後に話した。

©2018 T. Wada

コリルを失格にしなかったのは正しい判断

コリルがコーナーで転倒しそうになった際、レーンの内側に6歩入ってしまったが、その際のルールは明らかである。選手がレールの内側に入ってしまった時、それにより選手が有利になる場合のみ失格が適用される

ワイクリフ・キンヤマルの走りはまるでアマチュアランナー

コモンウェルスゲームの王者で1:43.91で上海DLを優勝した20歳のワイクリフ・キンヤマルは、レースを戦略的に進めるための改善が必要だ。戦略的に進んだ1周目の後、アメリカのエリック・ソウィンスキ(最終的には1:46.91の最下位)が選手を振り落とそうと、コーナー手前でキンヤマルを含めた何人かの選手を抜かそうとした。キンヤマルはすぐさま反応し、自分のポジションを取り戻そうと2レーンに広がった。

これは賢明な選択ではない。我々のお気に入りの800mのモットーは、“スパートは1回だけ、それを賢く利用しろ”である。ゴールまで350m残っているところで、無駄な動きをしてエネルギーを使うのは、賢い決断ではない。それでも、キンヤマルは1:46.14の3位でフィニッシュした。

男子2マイル:バレガの素晴らしい走り

©2018 T. Wada

レースはスタート直後から戦略的なレースとなった。最初の400mの時点でペーサーについていくものはおらず、集団はスローペースとなった。バレガは最初の1マイルを4:15で走った(彼の公式の1618m地点の通過記録は4:16.60)。そこまで速くないペースであることを考えると、ゴールタイムもそこまで速いものではなく、バレガは後半の1マイルを4:04で走り、ラスト4周のラップを見てみると64.35、62.54、61.70、54.83であった。

ラスト1周の鐘がなった時点で、出場選手17人のうち14人が先頭集団に固まっていた。しかし、あの選手がこの中にはいなかった。エドワード・チェセレクである。元オレゴン大学のスター選手で、今はスケッチャーズのプロ選手であるチェセレクが、2018年の屋外レース初戦で後方に消えようとしていた。

バレガは先頭集団から落ちることはなかった。最終コーナーに入ったところで、レースはバレガ、チェリモ、上海DLを13:09で優勝したビルハヌ・バリュの3人の争いとなって後方集団を引き離していた。ラスト100mに入ると、バレガチェリモの競り合いとなり、バレガが優勝を手にした。

順位 選手 国籍
1 セレモン・バレガ エチオピア 8:20.01
2 ポール・チェリモ アメリカ 8:20.91
3 ビルハヌ・バリュ バーレーン 8:21.54
4 モー・アーメド カナダ 8:22.29
5 ヘンリック・インゲブリクトセン ノルウェー 8:22.31
6 ライアン・ヒル アメリカ 8:22.36
7 エリック・ジェンキンス アメリカ 8:23.50
8 ベン・トゥルー アメリカ 8:23.76
9 エマニュエル・ボア アメリカ 8:23.96
10 ハッサン・ミード アメリカ 8:24.09
11 ジェイコブ・キプリモ ウガンダ 8:25.17
12 アルベルト・ロップ バーレーン 8:25.44
13 ムクター・エドリス エチオピア 8:26.11
14 シャドラック・キプチルチル アメリカ 8:28.38
15 エドワード・チェセレク ケニア 8:31.43
16 リチャード・キムニャン ケニア 8:31.92
17 ポール・タヌイ ケニア 8:33.44
ロペス・ロモン アメリカ DNF
キラベル・エラッサ アメリカ DNF

今回のレースは残念な結果に終わった

このような素晴らしい出場選手を招聘してくれたナイキとプリフォンテーンのオーガナイザーには感謝をしている。しかし、これは陸上ファンが見たいものではなかった。最高のコンディションだったのに、誰も8:20を切らなかった。もちろん記録だけが全てではない。しかし、チェセレクが全く走れなかったこと、そしてこれ以前のレース結果が良かったことを思うと、残念な結果に終わってしまった。

セレモン・バレガはビッグスターになるだろう

2018 Prefontaine Classic

バレガの今夜の走りはすごく良かった。ラスト200mは特に良く、最終ラップを54.83で締めくくった(ラスト200mは26.1)。彼のレース運びも素晴らしかった。レース序盤、彼は先頭集団の前方につけていた。17人の選手がいることを考えれば、賢い位置取りだ。レース後半になってくると、他の選手は自分の位置取りに無駄なエネルギーを使っていたが、バレガは優勝へ向けて完璧な位置を確保していた。

我々はバレガを次世代のハイレベケレを呼ぶことはしない(掲示板でハイレバレガをエチオピアの次世代スターと命名したという書き込みがあったので、次世代のハイレベケレと呼ぶべきなのかもしれないが)。彼が18歳だというのも疑わしい。『レース・リザルト・ウィークリー』のデイビッド・モンティによれば、その年齢は“完全に偽り”とのことらしい。しかし、彼は世界を舞台に目覚ましい成長を遂げてきている。2017年ローザンヌDLで12:55.58の2位に入り、ロンドン世界選手権では5位に入り、今年3月のバーミンガム世界室内選手権では銀メダルを獲得した。素晴らしい経歴を残してきている。

バレガが恐るべき存在である理由がもう1つある。彼の英語はつたないものだが(しかし、ミックスゾーンで英語で対応してくれたことに感謝する)、1つの単語を明確に聞き取ることができた。レースについて感想を聞いた際に彼が言った言葉だ。

「“イージー”

ポール・チェリモは全米記録をこのレースで諦めたものの今年の安定した結果には満足している

このレースはチェリモが全米記録に挑戦するレースだと言われてきたが、2007年プリクラシックでマット・テゲンカンプが出した8:07.07という全米記録は破れないことがレースの序盤からすでに明らかだった。

その後、何が起こったのか?

ペーサーの後ろについて先頭集団を引っ張るものだと思っていたチェリモは、序盤からペーサーについて走らなったのだ。チェリモは、“今日は調子があまり良くなく、コンディションもそこまで良いものではなかった”と説明した。結果として、彼は自分を犠牲にはしたくないと思い、先頭を引っ張りたくはなかったようだ。

コンディションは本当に悪かったのだろうか?いや、そんなことはない。湿度は少しあったが(66%)、多くの選手にとってはほぼ理想に近いコンディションだったはずだ。しかし、チェリモは暑い中走るのを好み、バックストレッチで風もあったと説明した。

“ラスト100mで足に、刺すような痛みはなかった”と言っていたが(おそらく上海DLのフィニッシュの際に痛めた痛めたか。チェリモは4月以降レースに出ていないので休養は十分にとってあった)、今回のレースの走り、そして今年は安定した成績を残してもいるので、“全体的には満足だ”と話した。

「良いレースだった。上海DLで13:09で2位に入った2週間後に、文句はないよ」

チェリモは話した。

サブ13:00という観点で話すと、アメリカ人選手が最後にサブ13:00を出したのは5年前である。7月5日のローザンヌDLに注目しよう。チェリモは全米選手権までの1か月は高地トレーニングに戻る。しかし、しっかり休養も取ってローザンヌではサブ13:00を狙うと話してくれた。

エドワード・チェセレクのヘイワードフィールド凱旋は台本通りには進まなかった

チェセレクはオレゴン大学時代は失敗をそこまで経験してこなかったはずだ。プロとしての初めての室内シーズンも非凡なものだった。しかし、ヘイワードフィールドでの凱旋レースとなった今大会は、非凡とは遠くかけ離れたレースになってしまった。

大学時代、チェセレクがレースでうまくいかなくても、それでも優勝していたか、少なくとも優勝争いはしていた。しかし、今夜は出場選手も世界最高の選手ばかりが集まった最高のレースだった。そんなレースでうまくいかないと、15位という結果で終わってしまうのだ。

ミックスゾーンでチェセレクは我々のインタビューを断ったので、話を聞く機会を得られなかった。しかし、何とかして彼のエージェント兼コーチのスティーブン・ハースに接触を試みることができた。ハースは文章でこのように語ってくれた。

「調子は良かった。数週間前、ふくらはぎの張りがあり1週間程休養を取って、それ以来順調に進んでいた。今夜のレース結果以上に彼の調子は良かったはずだが、レース前にすべき細かな部分が抜けてしまっていた。そのせいで、彼の能力を活かした彼らしい走りが今夜はできなかったのだろう」

男子バウワーマンマイル:17歳のヤコブ・インゲブリクトセンが1マイルで3:52。ティモシー・チェリヨットが3:49で優勝

18歳の高校生だったアラン・ウェブが2001年のプリフォンテーンクラシックのバウワーマンマイルで3:53.43の5位に入り、その後アメリカのスターダムへと登った日から16年と364日目、ノルウェーのヤコブ・インゲブリクトセンが3:52.28の4位に入り、ウェブの記録を年齢でもタイムでも順位でも上回った。彼の最終ラップは55.42(非公式のラスト200mラップは27.3)という驚くべきタイムだった。

今から17年経ったら、ロンドン世界選手権銀メダリストのティモシー・チェリヨットがラスト200mを27.4(ラスト400mを56.48)で走り、バーミンガム世界室内王者のサムエル・テフェラを引き離し、3:49.87で優勝したことを覚えている人は、ごく僅かになってしまうだろう。なぜならば、プリクラシックのバウワーマンマイルでのサブ3:50で走るのは、ごく普通のことだからだ(過去10年間で8回目のサブ3:50)。

元祖ヘイワードフィールドで行われる最後のプロレースであること、そしてティーンネイジャーのインゲブリクトセンが世界屈指のマイル選手であることが証明されたという、1つの時代の終わりを始まりとして、このレースは語り継がれるだろう。

レース展開

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©︎2018 Tim Healy

エリジャ・マナンゴイティモシー・チェリヨットのコーチであるバーナード・オウマは昨日、3:46~3:47ペースでレースを進めたいと話しており、その通りスタートから速いペースで進んだ。

ペーサーについてレースを引っ張ったのは、チェリヨット、エリジャ・マナンゴイ、アヤンレ・スレイマンの3人で、最初の400mを56秒で通過した。序盤から後方とは間隔があいていた。

しかし、2周目に入るとペースは劇的に遅くなり、この3人の2周目ラップは59秒を超えた。

3周目はスピードを持ち直し56.78のラップタイム。チェリヨットが先頭を引っ張り、ラスト1周の鐘を2:53.82で通過。チェリヨット、テフェラマナンゴイが後方集団をここで引き離す。その後、ラスト1周の第1コーナーでマナンゴイが離れ、優勝争いは2人に絞られる。ラスト200m、チェリヨットテフェラを引き離し、そのまま1位でゴールした。

彼らの後方で、インゲブリクトセンアラン・ウェブの記録を塗り替えようとしていた。1周目の後、インゲブリクトセンは一1番後ろを走っていた。2周目、順位を1つ上げる。しかし、17歳のインゲブリクトセンは3周目まで58秒台のほぼイーブンペースで走っていた。2周目は58.25(1:59.34)、3周目は58.53(2:56.87)。

イーブンペースで走りペースダウンもせず、インゲブリクトセンは15人中9位まで順位を上げたアメリカのリオオリンピック1500m金メダリスト(マシュー・セントロウィッツ10位)とアメリカのリオオリンピック800m銅メダリスト(クレイトン・マーフィー8位)に挟まれる形で走っていた。

しかし、インゲブリクトセンが順位を上げるとマーフィーセントロウィッツも後方に消えていった。バックストレッチにさしかかり、インゲブリクトセンは次々と抜かしていき残り200mの地点で4位まで順位を上げてきた。3位との差はかなりあいていた。しかしラスト200mを切ると、2位を走るマナンゴイとの差をどんどん詰めていくも、ゴールまでに差を詰め切ることはできなかった。彼のラスト1周のラップ55.42は、出場選手の誰よりも速いラップタイムとなった。チェリヨットでさえ次に速い56.05のラップタイムだった。

順位 選手 国籍
1 ティモシー・チェリヨット ケニア 3:49.87
2 サムエル・テフェラ エチオピア 3:51.26
3 エリジャ・マナンゴイ ケニア 3:52.18
4 ヤコブ・インゲブリクトセン ノルウェー 3:52.28
5 クレイトン・マーフィー アメリカ 3:53.40
6 マシュー・セントロウィッツ アメリカ 3:53.61
7 ベスウェル・バーゲン ケニア 3:54.60
8 アヤンレ・スレイマン ジブチ 3:55.87
9 アンドレ・シアゴ ブラジル 3:56.03
10 アマン・ウォート エチオピア 3:56.49
11 ベン・ブランケンシップ アメリカ 3:56.67
12 クレイグ・エンゲルス アメリカ 4:01.70
13 ジョニー・グレゴリック アメリカ 4:02.01
14 サイラス・キプラガト ケニア 4:04.77
15 ヴィンセント・キベット ケニア 4:06.29
16 ジャクソン・キブバ ケニア DNF
17 アンドリュー・ロティチ ケニア DNF

17歳で1マイル3:52の記録は馬鹿げたほど速い

昨年、16歳だったインゲブリクトセンはこの場所で3:58で走り、1マイルのサブ4:00を出した最年少選手となった。その後、夏に自己記録を3:56に更新した。これらの記録も素晴らしいものだが、これだけ若い時期に速いタイムを出してしまうと、それ以降成長し続けるのが難しいのが普通である。

しかし、インゲブリクトセンは違う。2017年に5000mで13:35、3000mSCで8:26(そしてロンドン世界選手権ノルウェー代表で出場)の記録を出した後、2018年は更に良い成績を残している。まず、ペイトンジョーダン招待1500mで、マシュー・セントロウィッツポール・チェリモなどの選手を破って優勝。そして、今日は現世界チャンピオンにホームストレートであと一歩まで迫る走りをした。彼の前にいた3選手は、現在世界最高のマイル選手だけだ。ティモシー・チェリヨット、サムエル・テフェラ、エリジャ・マナンゴイの3人だ。

そう、ノルウェー出身の17歳が世界最高のマイル選手の仲間入りをしたのだ。

アフリカ出身の選手の年齢に関しては正確でない部分もあるので、インゲブリクトセンの走りを年齢という文脈に入れ込むのは難しい部分もある。例えば、2位だったサムエル・テフェラは公式には18歳で、今回3:51で走ったが、誰も彼のこのタイムに熱狂しない。インゲブリクトセンをアメリカ人選手と比較したいのなら、1番近い選手はウェブ(18歳で3:53)とジム・ライアン(17歳で3:55、19歳で3:51の世界記録)だろう。しかし、9月で18歳になるインゲブリクトセンは、この2人と比べても若くて速い。彼は驚異的な選手だ。

インゲブリクトセンはこのレースで、“2001年のアラン・ウェブの3:53.43の記録を狙っていた”と語った。

「他の選手がスタートから速いペースでいくといいなと思っていたら、実際そうなった。だから、1周目は彼らについていって様子を見ようとした。ラスト1周は上手く走れた。とても気持ちいいよ」

インゲブリクトセンはそのように話した。もちろん、インゲブリクトセンは最初控え目な走りだった。409m地点では最後尾で、途中までは16位にいた。しかし、最終ラップの55.42は出場選手の中で1番速く(56秒を切ったのは彼だけだ)、そのおかげで9位から4位に順位を上げることができた。

今年3:28を切りたいティモシー・チェリヨットにとっては大きな意味をもつ勝利

チェリヨットはトレーニングパートナーであるマナンゴイと同じ戦歴があるわけではない。しかし、ダイヤモンドリーグの勝利数ではマナンゴイを上回っている。チェリヨットが5勝しているのに対して、マナンゴイは3勝だ。今回のレースは非ダイヤモンドリーグ種目なので、ダイヤモンドリーグでのポイントにはならないことから、チェリヨットのDLの勝利数にはカウントされない。

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チェリヨットは2018年のDLにおいて2戦2勝しているが、今日に勝利は2週間前の上海DLの勝利よりも説得力のある勝利となった。上海DLでチェリヨットテフェラに0.15差で勝ったが、今回は1.39差で優勝している。バウワーマンマイルにおいては2007年以降で1番差がついた勝利となった。チェリヨットは昨年のチューリッヒDLでも優勝しているので、直近3大会のDLの1500m / マイルで優勝している。

チェリヨットは優勝を喜んではいるものの、“もっと速い記録、3:47で走りたかった”と話した。これは彼のコーチであるバーナード・オウマも話していたことだが、レース後ペースメイキングにいささかの不満を漏らした(オウマは、チェリヨットにペースが落ちた2周目にペーサーについて欲しかったようだ)。

クレイトン・マーフィーは好記録を残す

マーフィーは昨年のこのレースでは5位だった。NOPに移籍するなど彼にとってそれ以来多くのことが変化したが、2018年も同じく5位だった。強豪揃いのレースでは、悪くない結果だ。今回の記録の3:53.40は、昨年の3:51.99より遅かったが、今年は風が強かった。2週間前の上海DLで800mのシーズンベストの1:45で走ったマーフィーは、今日の走りには満足の様子だった。

「今日の結果には満足している。正しい方向に進んでいると感じている」

今年は、マーフィーがNOPの選手としてフルに1年過ごす最初の1年となる。マーフィーとコーチのアルベルト・サラザールは忍耐強くアプローチを踏んできた。マーフィーは昨年故障しており、その故障は秋まで長引き、2月までまともな練習ができない状態に陥った。

今年は800mに集中し、800mに特化した練習をしてきた一方、筋力を鍛えるために5000mタイプの練習も行ってきた。しかし、今後出場レースも増え、レースを走るたびに良い走りになってきている。この状態を続ければ、夏の終わり頃には、さらに速く走れるようになるだろう。

マーフィーが気づいたこと:サラザールの練習はきつい)

「これまで練習をしてきて、練習の途中でもう限界だと感じることがあった。サラザールは、そんなの気にしない。レースにおいても限界の中で走ることはあるだろ、みたいな感じだった」

NOPのチームメイトのマシュー・セントロウィッツは、3:53.61で6位に入った後、記者の質問に答えるのを拒否した。

男子3000mSC:ベンジャミン・キゲンが素晴らしい最終ラップを刻んで強豪選手をくだす

予想通り、男子3000mSCの戦いは、2016年リオオリンピック金・銀メダリストであるコンセスラス・キプルトエヴァン・ジェイガーの接戦になった。最初にゴールしたのはキプルトであったが、2人とも8:11.71の記録(同記録着差あり)で、まさしく接戦だった。

ジェイガーキプルトは長い間3000mSCの世界トップに居続けているため、彼らがゴールぎりぎりまで競い合うことは、なんら驚きではない。1番の驚きだったのは、彼らが争ったのが優勝ではなかったことだ。彼らが争ったのは、優勝ではなく2位の座だった。優勝した選手は、この2人よりかなり前、8:09.07でゴールしていた。ラスト1周のラップが57.89という速さだった。

世界は、ベンジャミン・キゲンの走りを目の当たりにした。

ケニアのンゴングで、世界ジュニア選手権金メダリストのアモス・キルイと一緒に練習している24歳のキゲンは、昨年3000mSCに転向したばかりだった。彼にとっての初めての3000mSCは1年ちょっと前、2017年5月11日だった。今や彼はDLの優勝者となった。ただ勝っただけではない。ラスト1周で、オリンピック金・銀メダリストを引き離し、レースを独占したのだ。

キゲンは昨年のロンドン世界選手権をあと一歩のところで逃していた(ケニア選手権で4位だった)。モナコDLでは8:11の記録で4位、その後ブリュッセルでのDLファイナルでは6位だった。しかし、今日は全く次元が違う走りを見せ、2018年さらに飛躍するだろうと期待を持たせてくれた。

順位 選手 国籍
1 ベンジャミン・キゲン ケニア 8:09.07
2 コンセスラス・キプルト ケニア 8:11.71
3 エヴァン・ジェイガー アメリカ 8:11.71
4 アモス・キルイ ケニア 8:15.23
5 ニコラス・ベット ケニア 8:15.52
6 ジェイラス・ビレチ ケニア 8:18.76
7 ヒラリー・ボア アメリカ 8:21.51
8 ポール・コエチ ケニア 8:23.22
9 アンドリュー・ベイヤー アメリカ 8:29.70
10 テスファエ・デリバ エチオピア 8:33.36
11 スタンリー・ケベネイ アメリカ DNF
12 ハロン・ラガト ケニア DNF

コンセスラス・キプルトは100%の状態でなかった

今回2位でフィニッシュしたことには失望しているとキプルトは話した。しかし、オレゴンに来る前に“少しマラリアにかかってしまった”とのこと。それは必ずしも正確とは言えないかもしれない。ケニア人は風邪とマラリアを同じ意味で使うと聞いたことがある。しかし、いずれにせよキプルトは100%の状態ではなかったのだ。

「調子に関しては心配していない」

と、キプルトは話した。

「ただ単に(病気によって)身体が疲れていただけだ。ラスト1周に入って、身体に力が入らなくていい感じに走れなかった」

病気にかかったのになぜレースに出たのか聞くと、“ナイキがスポンサーの大会であるし、ヘイワードフィールドの観客の前で走るのが好きだから、出場しないということはしたくなかった”と説明した。

先頭集団につけてエヴァン・ジェイガーは満足している

ジェイガーはラスト1周をキプルトと争うものだと誰もが思っており、実際にそうなったが、キゲンが素晴らしい記録で優勝したため、彼らが争ったのは優勝ではなかった。それにも関わらず、ジェイガーはレースに満足していた。特に、最後のスプリントがすごいキプルトとラスト200mを争えたことについて、満足していた。

コンセスラスと争ったが、順位は3位だった。でも、彼とラスト100mを競えあえたのは、楽しかった。最後の障害を跳び終え後、まだ彼の方が僕より一枚上手だったんだ」

ジェイガーはここ5回のキプルトとの対戦を0勝5敗とした。彼が最後に勝ったのは2015年チューリッヒで行われたダイヤモンドリーグファイナルの時まで遡る。7月20日のモナコDLでさらに速いタイムで走る前に、彼には全米選手権が待ち構えている。

男子200m:ノア・ライルスが自己ベスト大幅更新の19.69で優勝

アメリカの20歳、ノア・ライルスが今現在世界一の200m選手であることは間違いない。ドーハDLにて自己記録19.83で優勝した後、ライルスは追い風を味方につけ、ロンドン世界選手権銅メダリストのジェレミー・リチャーズ含むライバル選手をことごとく破った。ライルス以外に20:00を切った選手はいなかった。

ライルスの記録は、南アフリカのクラレンス・ムニャイが今年3月に高地で出した今季最高記録に並んだ。2015年北京世界選手権でウサイン・ボルトが19.55で走って以来、このタイムより速く走った選手はいない。

200m(+2.0)
1 Lyles , Noah USA 19.69
2 Richards , Jereem TTO 20.05
3 Brown , Aaron CAN 20.07
4 Jobodwana , Anaso RSA 20.42
5 Mitchell-Blake , Nethaneel GBR 20.51
6 Webb , Ameer USA 20.56
7 Guliyev , Ramil TUR 20.57
Makwala , Isaac BOT DNF

男子100m:ロニー・ベイカーが今までで1番の走りをしてクリスチャン・コールマンを破る

クリスチャン・コールマンロニー・ベイカーは100mの2/3の地点まではほぼ並んで走っていた。しかし、驚いたことに、最後に優勝したのは全米学生選手権の100m王者(全米学生室内選手権の60mと全米学生選手権の200mで2度タイトルと獲っている)のコールマンではなく、全米学生室内選手権の60mで2度王者になったベイカーの方だった。

9.78というタイムが電光掲示板に表示された時、なぜベイカーが勝ったのか理解した。ベイカーは飛ぶようにゴールしたのだ。コールマンの9.84という記録は、風が+2.4だったので追い風参考記録となってしまったが、それでもシーズン初めの記録として良い記録だった。

追い風を考慮すると、ベイカーの9.78という記録は、風が無いときの9.89に相当する(風速2.0m(参考記録にならないギリギリの風速)にした場合、タイムはあと少し速くなる)が、それでも彼の自己記録であり今季最高記録である9.97より速い記録になると考えられる。ベイカーは昨年のプリクラシックでも+2.4mで優勝しているが、その時の記録は9.86だった。

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100m(+2.4)
1 Baker , Ronnie USA 9.78
2 Coleman , Christian USA 9.84
3 Prescod , Reece GBR 9.88
4 Su , Bingtian CHN 9.90
5 Young , Isiah USA 9.94
6 Ujah , Chijindu GBR 10.12
7 Meité , Ben Youssef CIV 10.13
8 Smellie , Gavin CAN 10.16

【女子1500m】

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【女子800m】

【女子5000m】

 

レッツラン記事

http://www.letsrun.com/news/2018/05/friday-night-pre-emmanuel-korir-stays-undefeated-selemon-barega-impresses-king-ches-disappoints/

http://www.letsrun.com/news/2018/05/17-year-old-jakob-igebrigtsen-runs-352-mile-prefontaine-classic-oh-yeah-timothy-cheruiyot-wins-349/

http://www.letsrun.com/news/2018/05/rest-meet-noah-lyles-runs-19-69-ryan-crouser-jenn-suhr-break-meet-records-new-steeple-star-arrives/

http://www.letsrun.com/news/2018/05/2018-pre-womens-distance-recap-shelby-houlihan-runs-massive-4-pb-shock-world-caster-semenya-genzebe-dibaba-continue-roll/

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プリクラシックからの特ダネ:セントロがキプロプについて語る。ジェイガーが新しいレース戦略を明かす。ケニア勢はバウワーマンマイルを3:46のレースにしたい。ニック・ウィリスはキプロプがクロだと知っていた?

 

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