プリクラシックからの特ダネ:セントロがキプロプについて語る。ジェイガーが新しいレース戦略を明かす。ケニア勢はバウワーマンマイルを3:46のレースにしたい。ニック・ウィリスはキプロプがクロだと知っていた?

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記者会見でアメリカのスター選手(マシュー・セントロウィッツ、エヴァン・ジェイガー、クリスチャン・コールマン)とムダス・エサ・バルシムに話を聞く機会があった。

アスベル・キプロプのEPO陽性反応についてのセントロの考え、ジェイガーがジェリー・シューマッハーの頭脳について語ってくれたり、この後に特ダネ情報を書くが、まずは2019年の話をしたいと思う。

ご存知のように、オレゴン州ユージンのヘイワードフィールドは来月の全米学生選手権の後に取り壊される予定になっている。約2億円をかけて改装工事に入るため、2019年のシーズンは使用することができなくなる。

しかし、大会ディレクターのトム・ジョーダンは、来年も変わらずプリクラシックは開催すると明言した。開催場所は未定であるが(開催地域は変わらない予定だが、まだ最終決定はされていないとジョーダンは述べた)、開催時期は2019年6月28、29日と決定している。近年では、プリクラシックは5月の最終週に開催されているが、来年のドーハ世界選手権は9月28〜10月6日開催となるため、他の大会スケジュールが後ろ倒しになる。

キプロプのEPO陽性反応に対するセントロの考え「正直言って、驚いたよ」

2011年からセントロキプロプと共にレースを走ってきた。彼らはその間、2つの世界大会で表彰台に一緒に上がった。2011年大邱世界選手権でキプロプは金メダル、セントロは銅メダルを獲得。2013年モスクワ世界選手権では、キプロプは金メダル、セントロは銀メダルだった

今月の初めにキプロプのEPO陽性反応のニュースを見たとき、彼は驚いたという。しかし、キプロプセントロにとってライバルなので、セントロは意識的に推測だけでものを語らない反応を見せた。

「彼の対戦相手として、どの選手も同じフィールドで戦っていると考えたい」

そうセントロは語った。

「推測だけで話したくはないし、誰がクロで誰がシロだとかいう推測だけの話はしたくない。他の競技や他のスポーツだったら話せるかもしれないが、自分の種目のことになるので、そのことに心を奪われたくない。結局はみんな一緒にレースをしなけれなならないし、何ら変わることはない」

しかし、1つだけセントロが覚えていることがあるという。それは、ニック・ウィリスが2016年リオオリンピックのメダル授与セレモニーの前にセントロに言った言葉だった。銅メダルを獲得したウィリスは、金メダルを獲得したセントロにこう言ったという。

“キプロプではなくてタウフィク・マクルフィが2位でゴールしてくれて本当に良かったと”

「僕にとってこの言葉は少し奇妙に聞こえた。その前年にマクルフィには色んな疑惑がかけられていたからね。だから最近このニュースを聞いて、ニックがこの時に言っていた言葉を思い出したんだ」

陽性反応が出た後に、妨害行為があったこと、そしてEPO摂取を否定しているキプロプは、2013年モスクワ世界選手権1500mのチャンピオンだった。セントロウィッツは銅メダルを獲得したときだ。セントロは、金メダルを奪われたと感じているのだろうか?

「他の選手に比べれば、奪われたとは感じていない。もし、オリンピックで彼に次いで2位だったとすれば、そんな風に感じていたかもしれない。でも、自分か犠牲者だなんて言うつもりは全くないよ」

2016年リオオリンピック、ポートランド世界室内選手権のタイトルを手に入れたセントロは、このように語った。

キプロプのこのニュースからセントロが感じたことは、ケニアでのドーピング検査が改善されるべきだということだ。

「このニュースを読んだ後、改善しなければいけないことがあると感じたよ。いつドーピング検査官が来るか前もって予告したり、そんなことはアメリカでは有り得ない。自分がアメリカにいない時、例えばヨーロッパにいるときなど、ドーピング検査は突然行われる。ドアがノックされるまで、ドーピング検査のことを知る由もないんだ」

セントロウィッツはこのように話した。

バウワーマンマイルは熱い戦いになるだろう

昨年1500mの金・銀メダリストであるエリジャ・マナンゴイティモシー・チェリヨットのコーチであるバーナード・オウマと今朝話す機会を得られた。オウマは昨日IAAFに、

「この2選手は現在3:46~3:47で走れる状態であり、明日のレースもこのぐらいのタイムを目標にしている」

と、述べた。

ナイロビからユージーンに来るのはそう簡単ではない(オウマは22時間かかったと言っていた)。だからこそ、“彼らが遅いレースを走るためにわざわざ長い距離を移動してくるわけがない”と、オウマは語った。速いマイルのレースが1年に何回もあるわけではないが、” このレースは高速レースにしたい”と考えているという。

マナンゴイチェリヨットが優勝するにはベストな方法でもある。彼らは昨年の夏に1500mにおいて3:30を切っていた唯一の選手であったし、記録を見れば、彼らは出場選手の中でも飛び抜けて速い選手たちだ。レースがサブ3:50のレースになれば、彼らについていける選手はそう多くはないだろう。

セントロウィッツがベストな状態であれば、彼も3:50を切れるはずだ(彼の自己記録は2014年プリクラシックで出した3:50.53)。しかし、今セントロは万全な状態ではない。3:49のタイムでも、マナンゴイチェリヨットは優勝できるであろう。セントロは“他のDLレース同様にこのレースに挑む”と言っていた。

「極限まで自分を追い込む予定ではない。もし彼らが53秒でいけば、自分は53秒ではいかない。いつも通り自分のレースをするつもりだ。もし最終周で前方にいれば、良い展開になるかもしれない」

そうセントロは話した。

エヴァン・ジェイガーは2018年に進化を遂げる

ジェイガーはインタビューの中では常に非常に慎重で、様々なテーマで17分間ほど語った。土曜日のレースに関して、ジェイガーは“ペーサーが8:08ペースでリードする”と話し、標高約2130mの高地で8:00〜8:15ペースで障害の飛越練習を行ってきたジェイガーにとっては、“今は8:00〜8:08を狙える状態で手応えを感じている”という。

ジェイガーは過去数年で世界最高レベルの3000mSCの選手の1人であるが、世界大会で金メダルはまだ獲得していない。それはこの種目においておそらく史上最強の2人の、エゼキエル・ケンボイと、今ではコンセスラス・キプルトと勝負しなければならなかったからである。

ジェイガーは今年に入って、彼はトレーニングの仕方を“今までと同じようにキープしてきている”と話したが、今年に入ってきて普段の走行距離を伸ばしてきている。2017年には週に85〜90マイル(136〜144km)走っていたが、2017年の秋以降は、95〜100マイル(152〜160km)と伸ばしており、“走行距離を増やすことに順応しているのを満足している”と述べた。

「私はまだまだやれると感じていて、スピードを失ったとは思わない。最大目標は、最大スピードの持続性に磨きをかけることだ」

また、ジェイガーは彼の戦術を今回試してみる予定である。近年では、ジェイガーキプルトのようにスプリント力のある選手とのラスト勝負に競り負けてきた。しかし今年は屋外の世界大会がないので、ジェイガーは他の戦略を試みるだろう。

「今までのレースのように、ペーサーが抜けてからのレースの後半で先頭を引っ張っていって目標にされる、というレースのやり方を変えようと模索している。レースがスローペースになって、ラスト3周のビルドアップのレースは望んでいないし、ハイペースを維持するためのラビットになる必要はない。自分のレースに集中しつつリラックスしながらのびのびと走りたい」

最後にジェイガーは、“7月20日のモナコDLで記録を狙う”と話した。自身初の8:00切りを今年に狙うとすればそのレースとなるだろう。

ジェイガーとセントロがNOPとBTCのレースへの調整の違いを語る

この2人の長距離選手について印象的だったことは、シーズン通してどのように出場レースを選んでいるかということだ。エヴァン・ジェイガーマシュー・セントロウィッツもこの10年(もちろん、これまでの歴史においても)、アメリカでもっとも成功している中距離選手たちである。彼らは、アメリカのもっとも卓越したトレーニンググループに所属し練習を積んでいる。

しかし、いつ、どのぐらいの頻度で走るレースを決めているのか、その方針には違いがある。土曜日のバウワーマンマイルはセントロウィッツにとって2018年の7つ目の屋外レースとなる。一方、ジェイガーにとっては今年2回目の3000mSCのレースである。

800mや1500mの選手の方が、3000mSCの選手に比べ、たくさんのレースを走るのは容易ではあるが、1番の違いは、レーススケジュールの組み立て方の違いにある。

アルベルト・サラザールは、オレゴンプロジェクトの選手を、選手の状態が良ければ、室内シーズンをフル回転でレースを走らせるのを好む(セントロウィッツは秋に故障していたので、室内シーズンは1レースしか走っていない)。ジェリー・シューマッハーの選手もたくさんの室内レースを走るが、屋外となると話は別だ。

セントロウィッツは多くのレースを走るのは問題ではないし、プロとしての7年の間に、シーズン序盤で記録が出なくても冷静でいられる術を知っている。彼は3月22日のオーストラリアのブリスベンでの800mで1:53という記録で、5月3日のペイトンジョーダン招待の1500mでは3:40で6位に終わっている。しかし、彼は“自身の計画に沿ってトレーニングしているので心配したことはない”と語った。そして、自分が少しずつ前進していることについても満足していると言っていた。

「1年を通して多くのレースを走る。何回も走るのが好きなんだ、だから毎回フレッシュな状態ではいられない。プロの選手として2012年からそうやってきた。毎回良い気持ちでフレッシュでいるわけではない。いつも錆びれているけど、だからといって何かが変わることはない」

セントロウィッツはそう話した。

一方でジェイガーは、シューマッハーのレースの組み立て方についてこのように説明した。“頻繁にレースを走ったり、シーズン通して良い記録を出し続けるのは不可能”。BTCはトレーニングに長距離の耐久性をベースにした練習を取り入れている。シューマッハーは、シーズンを通して選手達の走行距離を長く保つことを好んでいる。

しかし、レースで良い結果を出すために、シューマッハーの選手たちは、レースに向けた特別セッションが必要で、レース前は走行距離を短くする必要がある。レース当日にフレッシュな状態で準備が整っている状態にするためだ。この方法を1つのレース前に行い、そしてまた通常のトレーニングに戻っていく。

もしいつもレースを走っていれば、長距離を走るのも負荷の重いトレーニングをするのも困難になってしまう。そこから、効率的なレースに戻すのは難しいのだ。

もし基本から逸れてしまうと、結果は徐々に出なくなっていく。ジェイガーによると、スピード練習をする際の食事、テーパリング、そしてレースはシューマッハーのシステムでは持続不可能なものだという。ジェイガーは、レースの機会を十分に活用したいと考えている。

「長い間このシステムの中にいると、精神的にも身体的にも2週間ごとに準備ができるようにトレーニングされてきている」

ジェイガーは話した。

「そのおかげで、ここ数年は常に良い状態でレースに出れているように感じる。幸いなことに、本当に悪いレースというのは自分のキャリアにおいてはそんなに多くは無かった。ほとんどのレースで、自分のベストに近い状態で走れているように感じる。この状態でもっとレースを走っていきたいと思っている」

結果がそれを物語っている。ジェイガーは過去2回の世界大会(リオオリンピック、ロンドン世界選手権)でメダルを獲得しており、2014年まで遡って過去7回のDLのうち6回は、トップ3内でゴールしている(残り1回は4位だった)。しかし、“シューマッハーのやり方だけが成功への道ではない”とジェイガーは言った。

「どちらのやり方でもできるさ。たくさんのレースで良い結果を残す人もいる。少ないレースで良い結果を出す選手もいる。僕たちのトレーニングシステムでは、夏の間に毎週レースに出るというのは、全く機能しないと思っている」

「我々は筋力ベースの練習をしているので、レースを通じてトレーニングしたり、常に調整をすることになる。ジェリーは、調整期に良好な状態を持続するために、スピードを重視して押し進めることはさせない。もし毎週末や1週間おきにレースをしていれば、良い状態をキープし続けるための大切な練習のピースを失うことになるよ」

クリスチャン・コールマンは準備万全

コールマンはハムストリングスの故障から2週間前の上海DLの出場をとりやめ、昨日100mと200mの両方に出場予定だったが100mのみに出場すると発表した。しかし、バーミンガム世界室内選手権60m王者は、それでも自信をのぞかせている。

どうしても必要であれば上海を走ることもできたが、そこでリスクを冒すのは得策ではないと考え回避したという。200m出場をとりやめたのも、この夏初めての個人レースで無理をしすぎたくなかったからだという。

「最初のレースだから、1つの種目に集中することにした。エネルギーをすべてそこに注いで。今年この後に走る200mが少し心配だけど」

コールマンはそう話した。

彼が100%の状態かどうか聞いてみると、彼はその質問は本質的に見当違いだと言った。レースを走るということは、状態が良いということだ。

「トラックにいるときは、いつだって100%の状態だ。トラックに行けば言い訳は通用しない。トラックに行けば逃げることはできない。負けて、90%とか85%の状態だったんだと言っても、それは違う。トラックに行けば、準備ができていないとダメだ。だから、トラックに行けば、自分は100%準備ができている。準備万全だ」

ムダス・エサ・バルシム優勝を狙う

バルシムは昨年のバーミンガムDLで2m40を超え、彼のキャリアの中で10回目の2m40超えを果たした(2m40超えを10回以上出した選手は、これまでにハビエル・ソトマヨルしかいない)。この跳躍後、彼はバーを掴みトラック外へと歩き、自らの跳躍を喜んだ。この後、彼はこのバーを故郷カタールに実際に送ってもらった。

もはやそれは伝統となりつつあるのか、大会ディレクターのトム・ジョーダンは、バルシムが2m40越えをし、明日優勝した際には、バーを彼に寄贈するように準備を進めている。バルシムは、既に父親から今大会に向けての指示を得ていると言っていた。

「もう1本、バーを家に持ち帰ってこい」と。

持ち帰ったバーをどうするかはバルシム自身もまだ分からないようだが、いつかソトマヨルの2m45という世界記録を破った際には(バルシムは2m43の記録で世界歴代2位の記録を持っている)、“バーだけではなく走高跳の用具すべてを持ち帰るつもりだ”と話した。

 

レッツラン記事

http://www.letsrun.com/news/2018/05/inside-scoop-pre-centros-thoughts-kiprop-jager-reveals-new-racing-tactics-kenyans-want-bowerman-mile-346-race-nick-willis-know-kiprop-dirty/

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