(※2018ロンドンマラソンは、4月22日(日)日本時間17:15に女子レースがスタート、18:00に男子レースがスタートの予定)
※ベケレとキプチョゲ、アドラについての今大会の展望はコチラ、ファラーについてはコチラ
【ロンドンマラソン:男子招待選手】
選手 | 国籍 | 自己記録 | 備考 |
ケネニサ・ベケレ | エチオピア | 2:03:03 | 昨年のマラソン3レース中2レースを途中棄権、過去2回のロンドンは2位と3位 |
エリウド・キプチョゲ | ケニア | 2:03:05 | 歴代最強選手の呼び声が高い。この4年マラソン無敗 |
グエ・アドラ | エチオピア | 2:03:46 | 昨年のベルリンでキプチョゲを終盤までヒヤヒヤさせる初マラソン世界最高記録をみせた |
アベル・キルイ | ケニア | 2:05:04 | 2回の世界選手権優勝、現在はキプチョゲのキャンプでトレーニング |
ローレンス・チェロノ | ケニア | 2:05:09 | 昨年のアムステルダムとホノルルを大会新で優勝 |
ダニエル・ワンジル | ケニア | 2:05:21 | 前回王者であるが本命候補ではない |
トラ・キタタ | エチオピア | 2:05:50 | 昨年ローマとフランクフルトで優勝 |
ビダン・カロキ | ケニア | 2:07:41 | 昨年のロンドンで初マラソンで3位、2月のRAKハーフで58:42の自己新 |
ギルメイ・ゲブレスラシエ | エリトリア | 2:07:46 | 北京世界選手権金メダル、2016年ニューヨークシティハーフ優勝、昨年のロンドン6位 |
ヨハネス・ゲブレゲルギシュ | エリトリア | 2:08:14 | 昨年の東京で自己新の7位、その後のロンドン世界選手権7位 |
アマヌエル・メセル | エリトリア | 2:08:17 | 昨年のロンドン8位、2013年から自己記録を更新できてない |
モー・ファラー | イギリス | 2:08:21 | 歴代最高クラスのトラックキャリアを引き下げてマラソン復帰 |
濱崎 達規 | 日本 | 2:11:26 | 川内2世となるか? 昨年12月の防府読売で2:11の自己新、2017年に6回のマラソンを経験 |
フェルナンド・キャバダ | アメリカ | 2:11:36 | 昨年12月のカリフォルニア20位 |
イホー・オレフィレンコ | ウクライナ | 2:12:04 | 1月の厦門5位 |
ジョニー・メラー | イギリス | 2:12:57 | 昨年のベルリンで4分の自己記録更新で10位 |
サム・チェランガ | アメリカ | 2:15:02 | ヒューストンハーフで自己新の60:37、今回大幅な自己記録更新が期待される |
アーロン・スコット | イギリス | 2:17:46 | |
スティーブン・スカリオン | アイルランド | 2:17:59 | |
マシュー・クローズ | イギリス | 初マラソン |
次のマラソンスターか?
ローレンス・チェロノ、ケニア、21歳 自己記録2:05:09(2017アムステルダム)
この4回のマラソン成績:2016ホノルル優勝(2:09:39)、2017ロッテルダム2位(2:06:21)、2017アムステルダム優勝 (2:05:09)、2017ホノルル優勝(2:08:27=大会新)
WMMとドバイマラソンが、野球でいうメジャーリーグに相当すれば、チェロノはマイナーリーグのAAA(トリプルA)で大活躍している今1番注目で期待の選手ということになる。2016年、チェロノは2つのAAAクラスのマラソンで優勝している。プラハ(2:07:39)とホノルル(2:09:39)である。ホノルルでは大会記録(2:11:12)を12年ぶりに更新した。しかし、これは2017年の序章に過ぎなかった。
4月のロッテルダムマラソンでは2:06:21で自己記録を大幅に更新し2位に入った。続く秋のアムステルダムでは、大会記録更新とまた自己記録を更新した。そして、ホノルルに戻って大会2連覇を果たし、自らの大会記録を更新し、アップダウンのあるコースで2:08:27で走ったのだ。
これまで多くの有名選手がこれらのコースを走ってきた。2005年、ハイレ・ゲブレセラシエがアムステルダムで優勝。2012年、ウィルソン・キプサングがホノルルで優勝(ハリケーンに夜影響でニューヨークシティからホノルルに変更した)している。
2016年のアムステルダムでダニエル・ワンジルが大会記録を出し(その翌年、チェロノが更に大会記録を更新)、ワンジルはその6カ月後のロンドンマラソンで優勝した。チェロノは、上に挙げた誰よりも、それぞれのコースで速いタイムで走っている。それは、1つひとつが独立した出来事ではない。チェロノは、直近の7つのマラソンすべてで1位か2位でゴールしている(彼のキャリア11大会中10大会)。すまり、彼は安定して良い結果を出し続けているのである。
チェロノに関して不思議なこともある。2014年(彼が26歳の時)より前の彼の戦績がTilastopajaのデータベースに掲載されていないのだ。マラソン以外の種目の戦績の記載もない。しかし、彼が日曜日に優勝すれば、チェロノに関してもっと多くのことがわかるだろう。
チェロノについてもう1つ書くべき点は、彼は“ローザ & アソシアッティ”のメンバーであり、近年ここの選手がドーピング検査で陽性反応が出ている。リタ・ジェプトゥーやジェミマ・スムゴングなど。彼の躍進がドラッグのせいだと言っているわけでは決してないが、この団体との関係は記さなければならないだろう。
ハーフマラソンの猛者
ビダン・カロキ、ケニア、27歳 自己記録2:07:41(2017 ロンドン)、ハーフ58:42
この2回のマラソン成績:2017ロンドン3位(2:07:41)、2017福岡国際マラソン4位(2:08:44)
調整レース:RAKハーフ優勝(58:42)
福岡国際マラソンで4位だった選手が通常、ロンドンでの優勝を狙うということはないだろう。しかし、ビダン・カロキほどハーフマラソンが強い選手は他にいない。28歳のカロキは8回のハーフマラソンを走り、6回優勝している。その中の1つは、稀に見るハイレベルな戦いとなったRAKハーフマラソンでの優勝がある。大会記録を10秒更新しての優勝だった。どこのハーフマラソンであっても58:42で走ったらかなり強い選手であるが、それをRAKハーフマラソンでやるというのは話が少し違う。なんといっても過去優勝しているのはマラソンで結果を残している強者ばかりである。
【RAKハーフでの歴代のサブ59:00】
58:42 ビダン・カロキ
58:52 パトリック・マカウ:元世界記録保持者、WMM2勝、自己記録2:03:38
58:53 サムエル・ワンジル:北京オリンピック金メダル、WMM4勝、自己記録2:05:10
58:54 ジョフリー・カムウォロル:世界ハーフマラソン選手権優勝3回、世界クロスカントリー選手権優勝2回、2017ニューヨークシティ優勝、自己記録2:06:12
58:56 スタンリー・ビウォット: 2015ニューヨークシティ優勝、自己記録2:03:51
58:58 ジョフリー・ムタイ:WMM4勝、ボストンとニューヨークシティ大会記録保持者、自己最高記録2:03:02(非公認)
58:59 ウィルソン・キプサング:WMM5勝、東京マラソン大会記録保持者、自己記録2:03:13
カロキより前に優勝した6人の選手は、すべてマラソン選手だ(だった)。これはカロキにとっては良いサインであるが、だからといってマラソンで成功すると保証されたわけではない。ハーフマラソン世界記録保持者のゼルセナイ・タデッセは、ご存じのとおりマラソンで苦戦を強いられている。カロキは10000mにおいても優れた選手である。過去5回の世界大会では、5位、6位、4位、7位、そして4位と健闘している。ハーフマラソンが彼の得意分野であるというのはわかる。
しかし、昨年のロンドンマラソンでのマラソンデビューはうまくいった(2:07:41の3位)。12月に行われた福岡マラソンではタイムは遅かったが(2:08:44の4位)、彼のマラソンのポテンシャルはまだまだ大いにある。
1つ問題なのは、先月の世界ハーフマラソン選手権をハムストリングの故障により出場を取りやめたことだ。ロンドンは厳しいレースだ。カロキが100%の状態でなければ、彼が番狂わせをする可能性はないだろう。
前回王者
ダニエル・ワンジル、ケニア、25歳 自己記録2:05:21(2016アムステルダム)、ハーフ59:20
この2回のマラソン成績:2017ロンドン優勝(2:05:48)、ロンドン世界選手権8位(2:12:16)
調整レース:ビッグハーフ2位(61:43)
キプチョゲとベケレというスターウォーズ級の選手の影になって、ワンジルは前回王者ながらノーマークの状態でロンドン入りした。前回大会で、ベケレや他の選手を破ったことを考えれば今回も優勝候補になるはずだが、いくつかの疑問が残る。8月のロンドン世界選手権、日曜日に予想される天候とほぼ同じだったその大会で、ワンジルは8位に終わっていた。そして、1月のヒューストンハーフマラソンでは25位、記録は62:55と散々だった。
しかし、次のレースとなった3月4日のロンドン、ビッグハーフでは調子がよく、モー・ファラーのたった3秒後、2位でフィニッシュした。タイムは61:43という平凡なものだったが、かなり戦略的なレース展開だったのでそのタイムを気にしていない。かつ、カルム・ホーキンスに2秒差で勝っている。それ以来、“練習はうまく進んでいる”とワンジルは語った。
昨年のロンドンマラソンの調整レースでは、ワンジルの調子はそこまで良くなかった。RAKハーフマラソンでは62:16の12位であった。ビッグハーフ(3月4日開催)は昨年のRAKハーフ(2月10日)より日程が遅かったが、結果はRAKハーフよりも良かった。つまり、昨年よりも今年のほうが調子が良い可能性が高い。しかし、それでもエリウド・キプチョゲという男子のトップに立つ選手を倒すことはできないだろう。
ホットな選手
トラ・シュラ・キタタ、エチオピア、21歳 自己記録2:05:50(2017フランクフルト)、ハーフ60:10
この3回のマラソン成績:2017厦門3位(2:10:36)、2017ローマ優勝(2:07:28)、2017フランクフルト優勝(2:05:50)
調整レース:ヒューストンハーフ4位(60:20)
彼の名前をなんと呼ぼうとも(我々はキタタと呼ぶ)、キタタは今大会で注目すべき選手である。彼は19歳だった2015年上海マラソンでデビューし2:08:53で走った。しかし、その後の5レースでは2:10を切れなかった。しかし、どれも12か月以内に走っており十分な回復の時間を取れていなかった。しかし、彼は4月のローママラソンで2:07:28の自己記録を出し、10月のフランクフルトでは更に自己記録を1:38も縮めた。今回、WMMに挑戦するのは初めてである。
忘れてはならない世界王者
アベル・キルイ、ケニア、35歳 自己記録2:05:04(2009ロッテルダム)、ハーフ60:11
この2回のマラソン成績:2017ロンドン4位(2:07:45)、2017シカゴ2位(2:09:48)
ギルメイ・ゲブレスラシエ、エリトリア、22歳 自己記録2:07:46(2016ロンドン)
この2回のマラソン成績:2017ロンドン6位(2:09:57)、2017ニューヨークシティ途中棄権
キルイ(2009年ベルリンと2011年大邱世界選手権優勝、2016年シカゴマラソン優勝)とゲブレスラシエ(2015年北京世界選手権優勝、2016年ニューヨークシティ優勝)は、それぞれ違った戦績をもってロンドンにやってきた。キルイは去年のロンドンマラソンでは4位で、その後秋のシカゴマラソン(ゲーレン・ラップに次いで2位でゴールした)前にカプタガトのパトリック・サングのグループで参加して練習を積んだ。キルイの進化にはサングも満足しており、“日曜日のコンディションが良ければ自己記録で走れる状態にある”と、サングは語った。
ゲブレスラシエは、昨年のロンドンマラソンでは、2年前の4位から6位と後退した。11月のニューヨークシティの結果はもっと悪く、途中棄権に終わった。彼の代理人から聞いた話だと、ゲブレスラシエのロンドンマラソンに向けた練習は、最初はうまくいっていなかったようだ。しかし、彼は天候に左右されない選手である。暑い気候でも走れる選手だ。その証拠に、3年前のうだる様な暑さの中行われた北京世界選手権で優勝している。
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