2018ロンドンマラソン女子展望:Breaking 2:15:25 ロンドンマラソンで女子マラソン世界記録を破ることができるのか?

(※2018ロンドンマラソンは、4月22日(日)日本時間17:15に女子レースがスタート、18:00に男子レースがスタートの予定)

 

【ロンドンマラソン:女子招待選手】

選手 国籍 自己記録 備考
メアリー・ケイタニー ケニア 2:17:01 世界歴代2位の記録で昨年優勝、2月にハーフ64:55で自己新
ティルネッシュ・ディババ エチオピア 2:17:56 昨年のロンドンで2:17、昨年のシカゴで2:18、レッツラン2017年最優秀女子マラソン選手に選出
グラディス・チェロノ ケニア 2:19:25 ベルリン2回優勝、もう一段階ステップアップを目指す
マレ・ディババ エチオピア 2:19:52 北京世界選手権金メダル、リオオリンピック銅メダル、ロンドン世界選手権8位(昨年唯一のマラソン)
ブリジット・コスゲイ ケニア 2:20:22 相当なポテンシャルを秘める。昨年のシカゴでディババに次ぐ2位、その後のホノルルで2:22の大会新で優勝
ティジスト・トゥファ エチオピア 2:21:52 2015年ロンドン優勝、リオオリンピック銅メダル(4位からの繰り上がり)、昨年のロンドン8位
タデレッチ・ベケレ エチオピア 2:21:54 昨年のアムステルダムを大会史上3番目の記録で優勝
ローズ・チェリモ バーレーン 2:22:51 ロンドン世界選手権金メダル、再びロンドンでの快走を狙う
ヴィヴィアン・チェリヨット ケニア 2:23:35 リオオリンピック5000m金メダル、昨年のフランクフルト優勝
ステファニー・ブルース アメリカ 2:29:35 昨年のニューヨークシティ10位、自己新を狙う
ベッキー・ウェイド アメリカ 2:30:41 昨年のシカゴ10位、3月の世界ハーフマラソン選手権41位
トレイシー・バーロウ イギリス 2:30:42 昨年のロンドン16位、3月の世界ハーフマラソン選手権72:35の自己新
リリー・パートリッジ イギリス 2:32:09 昨年のセビリアで初マラソン4位
リズ・コステロ アメリカ 2:38:21 元プリンストン大学のスター選手、昨年のボストンで初マラソン18位
レベッカ・ミューレイ イギリス 初マラソン ハーフ72:59、23歳でマラソンデビュー

2018年ヴァージンマネー・ロンドンマラソン、女子の注目ポイントは何と言っても、ポーラ・ラドクリフの2:15:25という世界記録が更新されるか、という部分だろう。ポーラは15年前のロンドンマラソンでこの世界記録をマークし、それ以来誰もこの記録に挑戦できていない。2:17を切った選手はそれ以来おらず、2:16は言うまでもない。日曜日にそれが変わるかもしれない。

世界歴代2位のケニア、メアリー・ケイタニーと、世界歴代3位のエチオピア、ティルネッシュ・ディババ、女子マラソン界2大巨塔ともいえる2人が出場するからである。前回大会で、ケイタニーは2:17:01、ディババは2:17:56で走っており、ケイタニーは男性ペースメーカーがいない大会での世界最高記録を出した(ラドクリフの記録は、男性ペースメーカーの恩恵によるものだ)。それ以来、ケイタニーラドクリフの世界記録を視野に入れ、今回のロンドンでは男性ペースメーカーの助けを借りて世界記録更新を狙うと決めた。

ディババも“世界記録を狙う”と公言し、世界記録更新の戦いに参戦する。

「世界記録を更新するためには、多くの要素が必要になります」

と、通訳を通してディババは話した。

「天気も良くなければならない、レースコンディションなどすべての要素が重要。すべてが整えば、あとは世界記録を狙うだけ」

2人のどちらかが世界記録を破ることができるのか?我々の情報を総動員して、その答えを探ってみよう。

2:15:25の価値

ケイタニーディババが世界記録に挑戦できるかを述べる前に、2:15:25という記録がいかに評価されるものなのか見る必要がある。オリンピックで競われる長距離種目(1500m以上の種目)において、これまでラドクリフのこの世界記録はもっとも長い間やぶられていない記録となっている。ラドクリフは2003年4月にこの世界記録を樹立した。次に古い記録は、2008年6月、ディババの5000m、14:11.15という記録である。他のオリンピック長距離種目(1500m、10000m、3000mSC)は、過去3年以内に世界記録が更新されている種目になる。

ラドクリフが2:15:25で走った時、当時の世界記録であった2:17:18を1:53も縮めた。2:17:18という当時の世界記録もラドクリフの記録であり、ちょうど6か月前のシカゴマラソンでのことだった。ラドクリフの現在の世界記録と当時の歴代2位であったキャサリン・ヌデレバを比較すると、彼女の世界記録はヌデレバの自己記録の2:18:47から3:22も速いことになる。

昨年のロンドンマラソンでケイタニーが出した2:17:01という記録でさえ、ラドクリフは1:36もまだ速いことになる。パーセンテージで言えば、ケイタニーの2:17:01よりも1.18%速いことになり、すべての陸上競技の中で2番目にギャップが大きいものとなっている(円盤投げが一番差が開いている)。下記の表を参照してほしい。

【陸上競技・公式種目の女子世界記録一覧】

種目 世界記録 世界歴代2位 %差 種目 世界記録 世界歴代2位 %差
100m 10.49 10.61 1.14% 走幅跳 7m52 7m49 -0.4
200m 21.34 21.56 1.03% 三段跳 15m50 15m39 -0.71
400m 47.60 47.99 0.82% 砲丸投 22m63 22m55 -0.35
800m 1:53.28 1:53.43 0.13% 円盤投 76m80 74m56 -2.92
1500m 3:50.07 3:50.46 0.17% ハンマー投 82m98 82m29 -0.83
5000m 14:11.15 14:12.59 0.17% やり投 72m28 71m99 -0.4
10000m 29:17.45 29:31.78 0.82% 七種競技 7291点 7215点 -1.04
100mH 12.20 12.21 0.08% 4x100mリレー 40.82 41.01 0.47
400mH 52.34 52.42 0.15% 4x400mリレー 3:15.17 3:15.51 0.18
3000m SC 8:52.78 8:55.29 0.47% 20000m競歩 1:24:38 1:24:47 0.18
走高跳 2m09 2m08 -0.48% マラソン 2:15:25 2:17:01 1.18
棒高跳 5m06 5m05 -0.20%

※世界歴代2位の記録を世界記録で割って%差を計算。 100mでは、10.61 ÷ 10.49 = 1.0114、つまり101.14%。 したがって、10.49は10.61よりも1.14%優れている。 フィールド競技の場合%差はマイナスとなる(世界歴代2位の記録が世界記録よりも数字が低いため)。

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ラドクリフの2:15:25という記録がいかに速い記録であるかがわかる。2003年4月に彼女がこの記録を出した時、男子の世界記録は2:05:38だった。それ以来、男子は2:05の壁を崩し(2:05以下はそれから計66回出ている)、2:04の壁も崩れ(2:04以下はそれから計17回出ている)、2:03の壁さえも崩れている(デニス・キメットが2014年に出した世界記録2:02:57)。
しかし、2:15:25に90秒だけであるが近づけた女子選手が、まだいない

10年以上もの間、ラドクリフの記録は誰にもやぶることができないとされてきた。

ポーラの記録は遠すぎて、選手は意識することさえできなかった」

シカゴマラソンのレースディレクター、キャレイ・ピンコウスキは2014年シカゴトリビューン紙のフィル・ハーシュに語っている。

「世界記録に近づける選手は、1人といないよ」

確かに、昨年ぐらいまでは、ラドクリフの世界記録を破ろうなんていう選手がいたら、頭がおかしいのではぐらいに思われていた。昨年のロンドンでケイタニーが2:17:01で走り、もしかしたら世界記録更新もあり得るかもしれないと、人々は考え始めた。

それでもなお、2:17:01と2:15:25の差は大きい。水曜日に行われた記者会見で、ケイタニーディババラドクリフの世界記録に敬意を払い、“記録更新にはとてつもない努力が必要である”と語った。

「簡単なことではない。2:15というのは次元が違う。私たちは、この伝説に続けるようにするわ」

ケイタニーはこう話した。

ポーラの世界記録は、決して簡単なことではありません。更新するのは凄く難しい」

ディババも、通訳を通してこのように話した。

誰が世界記録を破れるのか?

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今大会の女子選手は素晴らしい選手が集まったが(2:20以下の自己記録を持つ選手が4人、2:22以下がもう3人いる)、世界記録に挑戦できるのはケイタニーディババだけであろう。他の選手にも今日の記者会見で話を聞いてみた。

フランクフルトマラソン優勝のヴィヴィアン・チェリヨット、ロンドン世界選手権優勝のローズ・チェリモ、ベルリンマラソン優勝のグラディス・チェロノ、そして2015年ロンドンマラソン優勝のティジスト・トゥファである。

もしケイタニーが前半を世界記録ペースで行ったとしたら、彼女についていくかどうか尋ねてみた。4人の選手はきょとんとした様子だった。まるで、キプチョゲよりも速く走れる可能性はどのぐらいあるか?という質問をされているみたいに、4人全員きょとんとした様子だった。

彼女たちがこのような表情を見せたのは当然のことだろう。 昨年、この4人の選手は前半を67:54で走っている(世界記録ペースは67:42)。ケイタニーが2:17:01、ディババが次いで2:17:56でゴールしたものの、この4人は見事なポジティブスプリットになってしまい誰も2:23を切ることができなかった。

今大会では、ケニアのグラディス・チェロノが、ケイタニーディババに次いで、2:19:25の記録を持っている。彼女が世界記録を出すためには、自己記録を4分以上更新しなければならない。それはどう考えても難しいだろう。ケイタニーディババ以外の選手が、世界記録を狙うというのは、ほぼ自殺行為である。

1つ明白なことがある。世界記録が更新される可能性は低い。2時間以上の戦いにおいて世界記録が出るということは、すべての条件が揃わないといけない。どのマラソン大会においても、特に女子に関しては、世界記録を期待することは馬鹿げているともいえる。ラドクリフが世界記録を出したときは、集団をかなり引き離していた。しかし、今回は誰かが世界記録を破るベストな機会と言える。

そして、30歳を超えた女子の長距離選手(ケイタニーは36歳、ディババは32歳)がそれに挑戦するとなると、ケイタニーラドクリフ以来の歴代2番目の最強選手)かディババ(トラックでオリンピック3回優勝、世界選手権5回優勝の実績を持ち、自己記録が14:11、29:42、2:17:56)の、どちらかになるだろう。

最近ハーフマラソンにおいては好タイムが続出しているため、2020年東京オリンピックでは多くの世界記録が期待できる。昨年の初めからこれまでに7人の選手がハーフで65:30を切っている。それ以前はというと65:30を切ったのは1人だけだった(ラドクリフの自己記録は65:40)。

これらのハーフマラソンの選手らが、マラソンに対しても同じように(もしくはそれ以上に)適応できれば、2:15:25を切る選手も出てくるだろう。マラソンの世界記録は、ハーフマラソンの世界記録(64:51)よりも、さらに上をいくパフォーマンスである。2:15:25をハーフマラソンにおおよそ換算すると、ダニエルによると64:35マクミランによると64:21ケロッグによると63:35と同等と換算される(ハンソンの換算では64:57と出るのだが)。

どこでタイムを削れるか?

ケイタニーが世界記録の2:15:25を破るためには、自己記録を1:35縮めなければならない。ディババは2:31縮める必要がある。このタイム差は非常に大きい。特に、もうすでに世界でベストの選手である場合はなおさらだ。ケイタニーの場合、彼女は36歳である。レースまであと少し時間がある。彼女たちが2:15:25を切れる可能性はどのぐらいあるのか。

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もっとも重要になってくるのはペースだ。昨年のロンドンマラソンはポジティブスプリットだったのにも関わらず、ケイタニー(66:54 – 70:07)とディババ(67:53 – 70:03)は2人とも自己記録を更新した。そればかりではなく、前半のスプリットタイムは決して効率がいいものではなかった。最初の10kmが異常に速かったのだ。

ケイタニーは最初の20kmを31:17 – 32:09というラップで走り、ディババは31:31 – 32:42で走った(世界記録ペースは10km32:05ペース)。イーブンペースで走るのがもちろん良いが、最初の10kmが少しぐらい速くても問題はないだろう。

ロンドンマラソンは2マイルの終わりあたりに30m程の下り坂があり、そこでいくらかタイムを稼げる(3m下るごとに1.8秒速くなるというジョン・ケロッグの計算を用いれば、30m下るとと18秒速くなる計算になる)。ケイタニーがペース設定を賢く計算していれば、昨年2:16:30を切れていたかもしれない。“ジョン・ケロッグは2:16を切れていただろう”とも言った。

ケイタニーも言っていたが、今回はもっと慎重に走らなければならない。

「最初に飛びだすのではなく、そうすると最後に失速してしまいます」と。

もっと賢く世界記録ペースを計算をすること、そして、彼女が昨年のよりも少しでもいいので調子を上げていれば、世界記録更新の可能性も増える。ディババはペースに関してはそこまで改善の余地はない。しかし、ペース次第で昨年は2:17では走れていたと思う。昨年は、“ケイタニーのスタートからの積極的な走りに準備ができていなかった”と、ディババは認めている。

また、彼女は去年のレース、残り数マイルのところで腹痛に襲われ一時止まり嘔吐寸前までいってしまったことを思い出してほしい。ここで約20秒はロスしている。今大会で同じようなことが起こらないであろうと予想すれば、タイムに改善の余地はまだまだあるといえる。

ラドクリフが2003年に走って以来初めて、男子選手のペーサーを起用したと聞いて、ケイタニーはとても嬉しそうだ。ラドクリフが後にペーサーがいたからと言ってそんなに大きな違いはないと言っていたが、ケイタニーの夫でコーチでもあるチャールズ・コエチは、“ケイタニーのために安定したペースを刻んでくれるペースメーカーの役割は大きいだろう”と話していた。

昨年はペースメーカーよりも速く走って中間地点で棄権したキャロライン・チェプコエチの存在もそうだ。ペーサーが誰なのかはまだ公表されていなく、彼らは最後までゴールはできない、男子選手にとっても2:15というのはそこそこの記録である。しかし、そんなペーサーが、ケイタニーを必ず助けるであろう。

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「ロンドンマラソンのレースディレクターには感謝をしたいです。女子選手のために、男子のペーサーをつけてくれました。おかげで私たちがどこまで記録を出せるのか、挑戦すことができます。今回は、男子のペーサーがいますので、また違ったレース展開になるでしょう」

と、ケイタニーは述べた。また、ディババと一緒に走ることにより、レース序盤ケイタニーは“良い走りができるだろう”と言った。しかし、“レース終盤になっても2人で走ることになれば、タイムよりも優勝することが優先的になるので、駆け引きによりペースが下がるだろう”とも語った。

2016年のロンドンマラソン男子で起きたことだ。キプチョゲスタンリー・ビウォットが30km地点を2:02:40ペースで一緒に通過したが、それ以降、タイムよりもお互いの勝負に集中したため、最後の数マイルはペースが落ちた。ペーサーがどのペースで走るのかは、正確にはまだ決まっていない。前半をどのぐらいのペースで走りたいかケイタニーに聞くと、彼女は教えたくないと言って、答えてくれなかった。

「(ペーサーとレースの主催者と一緒に)話し合わなければなりません。彼らが、どのペースで走るか教えてくれるわ」

と、ケイタニーは述べた。コエチは率直に答えてくれて、彼の希望では前半は67:00~67:30で走って欲しいと思っているようだ。67:30の方が理にかなっているだろう。ケイタニーとコエチが望みは、心地よく一定のペースでレースを走ることであるからだ。どんなにケイタニーの調子が良くても、彼女は2:14:00では走らない。昨年前半を66:54で入って、後半苦しんだことを思えば、たった6秒遅いだけだと、また二の舞になるだろう。

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※追記 女子の第1ペーサーは67:30、第2ペーサーは69:00、第3ペーサーは74:00

レースに向けた準備はうまく進んだのか?

ケイタニーとコエチによると、昨年2:17:01で走った時と同じ具合に練習を進んでいるという。2017年ロンドン以降、ケイタニーは4つのレースを走り、それぞれに良い成績を残している。2017年6月、ニューヨーク・ミニ10kmを31:20で優勝、8月はビーチ・トゥ・ビーコン10kmを30:41の大会記録かつ自己記録で優勝。

11月のニューヨークシティマラソンは、フラナガンの後ろの2位でゴールした(のちにわかったことであるが、彼女は前日から体調を崩していた)。2018年唯一のレースは、上のどのパフォーマンスよりも素晴らしいものとなった。2月9日のRAKハーフマラソンに出場し、64:55の自己記録で2位に入った。

すごい良い兆しと言える。昨年のレッツランのロンドンマラソンのレース展望で、ケイタニーは“ものすごい速さで走れるポテンシャルがある”と指摘していたが、その証拠にRAKハーフマラソンでの成績があり、そしてその2カ月後となる今回のロンドンマラソンの前兆ともいえるであろう。下記は表を見ると、彼女はRAKハーフマラソンでこれまでよりも18秒速く走っているのがわかる。

RAKハーフの結果 ロンドンマラソンの結果
2011年 優勝、65:50 優勝、2:19:19
2012年 優勝、66:49 優勝、2:18:37
2015年 優勝、66:02 2位、2:23:40
2017年 2位、65:13 優勝、2:17:01
2018年 2位、64:55 ???

ケイタニーの準備は万全だ。ディババはどうだろうか?

昨年のロンドンマラソンの後、彼女はロンドン世界選手権出場のため再度ロンドンに戻り、10000mでアルマズ・アヤナに次いで2位の銀メダルを獲得した。10000mの世界記録保持者に負けても何ら恥ずかしいことではない。その後、5月のグレートマンチェスター10kmで優勝し、シカゴマラソンに出場。そこで2:18:31で圧勝した。

シカゴマラソンの女子のスタートはかなり人が多かったが(ディババは走りながら多くの男子選手を抜かさなければならなかった)、ペーサーもいなくて、レースほとんどを独走での素晴らしい結果だった。

シカゴマラソン後は、2か月の長い休養をとり(2か月完全に休養したのか、軽い走りはしたのかは定かではないが)、休養としてはいつもより長い休養だった。ロンドン前に調整レースを走らなかったのは、トレーニングの邪魔になるのが嫌だったからだとディババは話した。

これには2つの見方ができる。

(1)ディババは長く休養を取りすぎたため、トレーニングに戻るのも遅れ、ロンドンでも身体はなまってしまっている。
(2)多忙だった2017年(ロンドンマラソン、ロンドン世界選手権10000m、シカゴマラソン)の後、ディババは充電期間をいつもより長く必要とし、今大会に向け状態は万全に回復している。

私は、どちらかというと後者の見方をしている。選手にとって長い休養がどれほど重要であるか我々は知っているし(ニューヨークシティマラソン前のシャレーン・フラナガンのように)、ディババがこれまでのキャリアで3回しかマラソンを走っていないとしても、彼女は長い間高いレベルで走り続けており(彼女の初めての世界タイトルは2003年まで遡る)、身体が何を必要としているのか彼女自身が一番良く知っているはずだ。彼女の調子は良好で、“昨年よりも良い”と彼女は言っていたので、彼女の言葉を信じようと思う。

「去年は準備も万全で、トレーニングも厳しく積んだ状態でロンドンに来ました。レースで驚いたのは、メアリーがスタート直後からかなり速いスピードでいったことでした。そこから学びました。昨年学んだことをもとに練習をしなければならないと思い、本当に厳しい練習をしてきました」

ティルネッシュはたくさんのことを変えました」

と彼女の通訳が付け加えた。

「変えたものは何かと彼女に聞いたところ、ただ沢山の事とだけ答えました。彼女の調子はすごくいいみたいです」

総括

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2:15:25にはとてつもない努力が必要である。しかし、ラドクリフ以降初めて、世界記録更新の可能性を秘めた選手が2人、同じスタートラインに立つ。天気が良く、男子ペーサーが一定のペースで走り、すべての事がプラン通りに行ったとしても、記録が破られる可能性は低い。2:15で走るには、最高潮のケイタニーディババでも、ほぼ完璧なパフォーマンスが求められ、驚くべきほど調子が良い必要がある。

しかし、ケイタニーは、2017年よりも18秒速い記録でハーフマラソンを今年走っており、彼女のポテンシャルと、効率的なペース戦略が組み合わされば、可能性は見えてくるかもしれない。一方のディババは、彼女はまだ32歳でマラソン選手としてこれからの伸びしろがある選手だ。ケイタニーと一緒に走れ、腹痛がなければ、記録を狙える可能性がある。

ケイタニーの方が有利だろう。昨年ディババを55秒差で破っているということもそうだが、2か月前のRAKハーフマラソンで彼女の調子がものすごく良いということを証明している。これまで3回しかマラソンを走ったことがないディババは、将来の伸びしろや期待は高い。ケイタニーが36歳で、これまでのような高いレベルで永遠に戦えるわけではもちろんない。

ディババも日曜日のレースでケイタニーに近づき、歴史に残る一戦になる可能性が多いにあるが、それでもケイタニーが一番の優勝候補になるだろう。総括すると、世界記録が出る可能性は“15%”だと個人的には考えている。しかし、過去のどのレースと比較しても(他のレースで世界記録が更新される確率は0%だ)、15%というのは高い確率である。

WMMシリーズタイトルを獲る可能性のあるもう2人の選手

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グラディス・チェロノ(写真右):ケニア、34歳 自己記録2:19:25(2015ベルリン)、ハーフ66:07
この2回のマラソン成績:2017ボストン5位 (2:27:20)、2017ベルリン優勝 (2:20:23)
調整レース:RAKハーフ8位(67:13)

ローズ・チェリモ:バーレーン、28歳 自己記録2:22:51(2017ボストン)、ハーフ68:08
この2回のマラソン成績:2017ボストン2位 (2:22:51)、ロンドン世界選手権優勝(2:27:11)
調整レース:世界ハーフマラソン選手権14位70:20)

チェロノチェリモも、メジャーマラソンの優勝を引き下げてロンドンにやってきた。チェロノはベルリンマラソン。チェリモは世界選手権。2人とも、ケイタニーディババには及ばないが、チェロノは番狂わせを起こす可能性がある。チェリモは昨年夏のロンドン世界選手権で優勝しており暑い気温でのレース経験があるが、チェロノの方が速い自己記録(2:19:25、世界歴代9位)を持っており、優勝タイムが速い可能性のあるマラソンであると、自己記録が速いことは重要である。

2人とも調整レースではそこまで良い結果は残せていない。チェロノはRAKハーフマラソンでケイタニーに2分以上の差をつけられて負けている。しかし、2人は世界トップクラスの選手であることは間違いない。しかし、それでもケイタニーディババに挑戦するのはワンパンチ足りないだろう。

オリンピック5000m王者

ヴィヴィアン・チェリヨット:ケニア、34歳 自己記録2:23:35(2017フランクフルト)、ハーフ67:44

この2回のマラソン成績:2017ロンドン4位(2:23:50)、2017フランクフルト優勝(2:23:35)
調整レース:ニューヨークシティハーフ途中棄権(寒さのため)

チェリヨットはトラックで5回世界王者に輝いているが、今はロードレース専門のマラソン選手である。マラソンデビューとなった昨年のロンドンマラソンでは、理想とはいえないコンディションながら良い走りをした。ケイタニーが序盤早い段階からペースを上げたことにより、集団が予想より早くばらけた。

チェリヨットは自分のペースで走るのはなく、集団についていくことを決めた。イーブンスプリットではなかったが(67:42 – 76:08)、チェリヨットは2:23:50の4位でフィニッシュすることができた。チェリヨットは、昨年のフランクフルトで自己記録を17秒更新する走りをみせ、昨年よりも準備が整った状態でロンドン入りをした。トップの2人についていくのは賢い戦略とは言えないが、チェリヨットには他の選手を破り自己記録を出す才能が備わっている。

躍進の準備はできている?

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ブリジット・コスゲイ:ケニア、24歳 自己記録2:20:22(2017年シカゴ)、ハーフ66:35
この3回のマラソン成績:
2017ボストン8位(2:31:48)、2017シカゴ2位(2:20:22)、2017ホノルル優勝(2:22:15=大会新)
調整レース:RAKハーフ7位(66:49)

8位に終わった昨年のボストンマラソンを除けば、24歳のコスゲイはそれ以外の6回のマラソンで1位か2位でゴールをしている。もっとも最近の2レースが顕著に、彼女がマラソン界の次世代スター選手になることを示唆している。1つ目のレースは、シカゴマラソンだ。そこで彼女は2:20:22で走った。2002年シカゴマラソンでポーラ・ラドクリフが世界記録を出して以来、シカゴマラソンでコスゲイの2:20:22より速いタイムで走った選手は2人しかいない。

1人はドーピングをした2013年のリタ・ジェプトゥー。もう1人は、昨年のティルネッシュ・ディババだ。彼女の次のレースとなったホノルルマラソンは、間違いなく素晴らしい結果だった。シカゴマラソンのたった9週間後、彼女はアップダウンのあるホノルルで2:22:15で走り、5分以上も大会記録を更新した。

コスゲイは、男子でいうとローレンス・チェロノと同じような存在だと言える。素晴らしい結果を残してはいるのだが、メジャーマラソンでの優勝経験がない。そして残念なことに、コスゲイは“ローザ & アソシアッティ”に属しているので、ドーピング問題が常につきまとう(彼女が12月に更新したホノルルマラソンの前の大会記録はロシアのルイボイ・デニソヴァの記録であり、ホノルルから4か月後にドーピング検査の陽性反応が出て、2年間の競技停止を言い渡された)。

 

レッツラン記事

http://www.letsrun.com/news/2018/04/breaking-21525-can-womens-world-record-go-london-marathon-lrc-examination/

http://www.letsrun.com/news/2018/04/london-marathon-womens-viewers-guide-track-star-vivian-cheruiyot-full-time-marathoner-brigid-kosgei-primed-breakout-steph-bruce-leads-american-hopes/

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