2018ボストンマラソン:記者会見での招待選手のコメント

フェアモント・コプリー・プラザで開かれるボストンマラソンの記者会見は、ジャーナリストにとっては一番忙しい90分間となる。ニューヨークやロンドンのように招待選手のインタビューを数日間に渡ってやるのではなく、ボストンの場合30人以上の招待選手のインタビューを1度にすべて行うからである。有力選手にはできるだけ多く話を聞く努力をした。しかし、前もって謝罪するが、前回王者のジョフリー・キルイには話を聞くことができなかった。

 

【男子招待選手】

ゲーレン・ラップ:これまでのどのレース準備よりも多く距離を踏んでおり準備は万全

ボストンに向けた調整がかなり順調に進み、ラップは満足している様子だった。これまでの彼の人生においても、1番ボリュームのある練習をこなしてきたとのこと。どのぐらい走ったかを正確には言わなかったが、“これまでより、かなり多い”とのこと。先月のローマでのハーフマラソンを59:47で走ったことが証明しているように、スピードを維持できると感じているようだ。

今大会のレースに向けた準備は万全である。昨年故障によりできなかったアップダウンへの対策を今年は増やし、前回大会ではニュートンヒルズの付近の坂で早めにスパートしてしまったため、今年はもう少し勝負ポイントを見極める構えである。

「昨年からの学びはそこで、前回のボストンで学んだことをシカゴで実践した。ラスト5か6マイル(ラスト8.0〜9.6km)で少し体力を溜めた。そこが、勝負の分かれ目になる」

ラップはそのように語った。

ラップは4/13付『ボストン・グローブ』の一面を飾ったが、それには喜んでいない。記事を見れば分かる通り、ナイキ・オレゴン・プロジェクトの疑惑について報道されているからである。

2回の優勝経験を持つレリサ・デシサ:好調で準備は万全

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レリサ・デシサは4回ボストンマラソンに出場しており、そのうち3回は良い結果を残している(2013年と2015年に優勝。2016年は2位。2014年は途中棄権)。今大会5回目の出場となり、4回目の良い結果を残せることを彼は期待している。トレーニングが順調に進み、過去に優勝した時の状態に似ているという。

昨年の秋、ニューヨークシティで3位だった時と比べて、今の調子はどうかと尋ねると、“ニューヨークシティでの3位という結果は全く満足いく調子での結果ではなかった”とのことである。ニューヨークシティの時は胃の状態が悪かったようだ。それまでの身体の調子が良くても、現地で体調不良になればメジャーレースで勝つことはできないということを、デシサは知っている。

昨年は、Breaking2のためにボストンマラソンは走らなったデシサ。Breaking2のトライアルとなったモンツァサーキットでのハーフマラソン(62:55)から、Breaking2の本番は難しいと予想できたが、あのレースはタフだったか尋ねてみた。

「それまでのトレーニング自体は問題なかったが、体調が100%ではなかったため、マラソンサブ2:00:00のペースに対応することができなかった」

と、語ってくれた。

出場選手中、トップの自己記録を持つタミラト・トラ(2:04:06)とレミ・ベルハヌ(2:04:33)のコーチのゲメドゥ・デデフォ:“2人とも調子は良く、トップ3に入るだろう”と予想している

2017年のドバイマラソンでの2:04:11での優勝と、ロンドン世界選手権銀メダルという成績から、レッツランが選ぶ2017年マラソン選手の第3位にランクインしたトラは、今回のレースに関してはかなりの自信を覗かせた。ロンドンマラソンに出場する2:03:46の記録を持つグエ・アドラと共にトレーニングを積んでおり、ベルハヌとともに優勝する準備が整っているという。

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ベルハヌ、トラ、アドラの3選手を比べてどうかとデデフォに尋ねると、26歳のトラが1番の注目株で、躊躇することなく、“彼が1番将来性ある選手だ”と述べた。トラはすべてのことに真剣に取り組むと。

そうは言いつつも、1月26日の2:04:06(3位)だったドバイマラソンからの回復の時間が十分になかったことを少し心配しているとも認めた。今年は、ドバイマラソンとボストンマラソンが80日しか離れていない(昨年は87日間離れていた)。ベルハヌは、“前回大会の途中棄権以降、モチベーションがかなり上がっている”と語った。“ベルハヌの途中棄権は、暑いコンディションが原因だった”とデデフォは述べた。

アブディ・アブディラマン:エチオピアでモー・ファラーとトレーニングを積んできた

41歳のアブディラマンは、これまでのマラソントレーニングをほぼ1人で行ってきた。結果は出ていたものの(過去2回のニューヨークシティでアメリカ人トップでゴールしている)、やは1人でトレーニングを積むことはなかなか難しいことだったようだ。

今回のボスントンマラソンに向けたトレーニングは、友人のモー・ファラーと一緒に組んで、エチオピアでムダネチーム(Mudane Team)を結成し、一緒にトレーニングを行ってきた。そのときのファラーの調子は良く、“ロングランになるとファラーについていくのはキツかった”、とアブディラマンは語った。ファラーのペースを上げるために、何人かで交代しながら走ることも多かったようだ。

近年、エチオピアでは大会以外でのドーピング検査がそこまで厳しくないと言われているが、アブディラマンはドーピング検査を定期的に受けているとのこと。

「いつでもドラッグテストを受けてるよ。実際に週に1回はやってくる。モーのような選手は1週間に2、3回くる。エチオピアにいるころは、3、4回は受けたよ」

月曜日のレースに関しては、昨年6位に終わったボストンマラソンは準備段階で体調を崩していたが、今回の調子はずっと良いとのこと。

目標は?

「優勝さ!みんな優勝を狙いにきている。それが俺の目標だ」

シャドラック・ビウォット:2年連続トップ5以内を狙う

ビウォットは昨年4位だったが、

「昨年はレースの3週間前に体調を崩して8日間練習を休んだので、万全の調子ではなかった」

と、語った。今回の準備に関しては、フロリダでデイゼン・リツェンハインと4週間一緒に練習を行い、これまでの1人での練習からいい転機になったと語った。

「今回はすべてうまくいっている。体調もいいし、良い練習を積んできた」

ケヴィン・ハンソンがリッツの故障について話す

仙腸関節の故障により今大会への出場を見送ったデイゼン・リツェンハインについて、さらにケヴィン・ハンソンに話を聞いてみた。リッツの仙腸関節の故障はレース前の急なもので、レース前の最後のポイント練習の時に発症した。リッツは、4マイル(マラソンペース)、3マイル(マラソンペースよりも5秒速いペース)、2マイル(マラソンペースよりも10秒速いペース)の練習を完璧にこなしたが、クールダウンに行った際に“張り”を感じると打ち明け、“夜には歩けなくなっていた”とハンソンは言った。注射などの治療をしたものの、回復には至らなかったようである。

 

【女子招待選手】

シャレーン・フラナガン:ニューヨークシティマラソンで優勝したときと同じぐらいに調子は良いと感じている

“ボストンマラソンへ向けた調整は順調に進んだ”、とフラナガンは語った。多くの時間をコロラドの高地で過ごした。“身体の調子は、昨年秋にニューヨークシティマラソンで優勝したときと同じぐらいに良く、故郷であるボストンで走るのはこれが最後のつもりだ”と話した。

「たぶんこれが最後のボストンマラソンになると思う。私にとって最後のマラソンになるかどうか、まだわからないけど」

今大会に向けた調整と、ニューヨークシティのときの調整とで大きく違うのは、彼女が前回でWMMの大会で優勝してしまった、ということである。つまり、マラソンを走り終わった後のリラックスをする時間が十分にとれなかった、とということである。

「ニューヨークシティを走り終わった後、メディアへの出演やその他のイベントへの参加などで身体は疲労していたのだけど、それでも同時にトレーニングも続けようとした。両方一緒にやるのは、すごく疲れたわ。ボストンに向けた練習に入るのは、すごく疲労が溜まっていたわ。ゆっくりとした休養をとる時間がなかったから」

しかし、1回練習に入ってしまえば、そのようなことは目もくれずに彼女は100%集中した。結果、レベルが高い今大会で優勝の大きな可能性を持って、ボストンのスタートラインに立つことができたのだ。

デジ・リンデン:“A”レースをすれば優勝できると考えている

デジ・リンデンにとっては6回目のボストンマラソンとなる。それについて彼女に話を聞いたとき、彼女の答えは、“もう歳をとったわ”というものだった。念のためにいうと、彼女は34歳で、そんなに歳を取っているわけではない。しかし、2007年からボストンマラソンを走っており、過去3大会でトップ4に入っているので、今年こそは優勝したいと考えている。

リンデンは、“トレーニングに少しひねりを加えた”と語った。走行距離を少し減らして、短い距離でスピードを上げる練習を、練習の最終段階で取り入れたようだ。そこから何かを得て、ボストンのようなレースで優勝できることを望みに、練習を少し変更した。

また、フラナガンがメジャー大会を回避したときと同じレースプラン(年2回ではなく年1回のマラソン)を取り入れた。といっても、その理由はフラナガンとは違うのであるが。フラナガンは2017年春シーズンを故障のために回避したが、リンデンは、自らの意思で2017年秋シーズンを回避した。しかし、2人が目指す結果は一緒である。

「1度リセットして、精神的にも身体的にもリフレッシュして、研ぎ澄まされたことで、月曜日のレースでは良い感じに結果がでると思っている。次の何年間に向けてもまだ余力があるから、2020年の東京オリンピックに向けて改善できることもあるわ」

ジョーダン・ハセイ:脚の故障で1週間練習を中断したが復調してきた

(※記者会見後のレース前日に欠場を発表)

3月10日に開催された全米15kmロード選手権で2位に入った1週間後、ロングランの最中に腓骨腱は痛め、その後の1週間は練習を休まざるをえなくなった。しかし、治療を入念に行い、それ以降は予定通り練習をこなしてきた。ボストンに向けて調子を取り戻してきた。。ロンドンやベルリンのような高速コースだったら、現状どのぐらいのスピードで走れるか尋ねてみた。

「自己記録を出せる状態よ。ロングランも数をこなしたし、これまでのレース結果についても満足している。すべてが理想の状態よ」

故障をしたことによって、希望の光もあったという。やり過ぎ(overcooking)をしないで済んだ。

「ある意味、脚の故障をしたことは結果的には良かったわ。練習でもう1回40km走を走ろうと思っていたけど、それをやらずに済んだ。25マイル(40km)走を毎週やっていたけど、1回スキップしたの」

ハセイはボストンマラソンに向けたトレーニングを故郷のカルフォルニアで行った。天気もよく、NOPの本拠地ポートランドよりもアップダウンの多い地形だという。しかし、今でもコーチのアルベルト・サラザールとは“毎日”、時には1日に2回は話すそうだ。また、ハセイは天気予報の強い向かい風にも慌ててはいない。彼女は暑い天気と向かい風を好むので、向かい風は彼女の望むところなのだ。

モリー・ハドル:ボストンマラソンを走る言い訳なんて何もないのがいい

これまでの人生の中でも最も距離を踏んだのにも関わらず、何事もなくトレーニングをこなせるのは、彼女にとっては珍しいことらしい。ハドルの今大会へ向けての合宿中にあったことはポジティブな事ばかりだったとのことであるが、1つだけ疑問を投げかけるとすれば、彼女はまだ、これだけの距離を踏んでからマラソンを走ったことがないということだ。

距離を踏むということは、それだけレース当日までに疲労が残っている可能性を示している。先月の全米15kmロード選手権では余裕をもって優勝し、最近ではロングランの疲労からも回復しているとのことである。兆しはいいが、レースが終わるまでは、積極的な練習が功を奏したのか、積極的過ぎたのかは、わからないだろう。

「マラソンは不思議な競技。たくさん練習したことが良かったか、疲労がたまってしまったか、レース後にわかるでしょう」

前回王者エドナ・キプラガト:連覇に向けて準備は整っている

キプラガトは、昨年と“大体同じ”トレーニングをこなしてきたため、今年も優勝の可能性に期待を抱いている。38歳の彼女に、昨年ボストンで優勝した後、ロンドン世界選手権では2位、ニューヨークシティでは4位と、順位を徐々に落としていることについて尋ねると、

「それぞれのレースに向けた練習の時間が十分に取れなかったから、ロンドン世界選手権とニューヨークで優勝するのは難しかった」

と、語った。ボストンに向けては4か月間練習を積んだが、ロンドン世界選手権には3か月、ニューヨークには2.5か月しか練習期間がなかったようだ。今大会に向けては、フルで練習をしてきたため、自信を覗かせた。そうは言っても、キプラガトは雨の可能性について他選手よりも心配しているようだった。

「雨の中を走るのが好きな人なんていないわ。雨の中走るのは良くない」

雨のレースだった2012年のロンドンオリンピックで19位に終わった経験のあるキプラガトはそう述べた。

今大会に向けた練習をケニアで行っている間は、“ほとんど暖かくて晴れていた”と言った。

コーチ、ゲメドゥ・デデフォ:アセレフェッチ・マージアはライオンの心を持っていると語る

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女子の出場選手の中で1番速い持ち記録(2:19:31)を持っているアセレフェッチ・マージアについてキーとなるのは、“ゼッケンをつけて5kmを通過すること”だという。彼女は一旦レースに入ってしまうと、獰猛な競技者になって、まるでライオンのように気持ちが変わってしまうという。

ドバイマラソン3回優勝(2011年、2012年、2015年優勝。2010年ロンドンマラソンでも優勝している)しているマージアは、2015年に2:20:02でドバイマラソン優勝をして以来、2:23:53より速い記録で走っておらず、優勝もしていない。しかし、デデフォが言うには、今年途中棄権に終わったドバイマラソンは2:20を出せる調子にはあったようだ。

10km地点で“水たまりに入ってしまって、怪我をしてしまった”とデデフォは話した(水たまりに入りスリップしただけなのか、それとも実際に転倒してしまったかについては、聞かなかった)。マージアは他の選手より長身のため、坂道を下るのが得意ではない。“彼女が坂が多いボストンでどのような走りができるのかがまだわからない”、とデデフォは語っていた。

マミトゥ・ダスカ、11月ニューヨークシティ3位の時よりもいい調子

記録だけみると、最近のダスカの調子は良くない。現在34歳の彼女は、2012年以降に2:24を切っていないし、過去2回のボストンマラソンでは9位と12位に終わっている。かつ、先月のニューヨークシティハーフマラソンでは72:50だった。とはいえ、彼女と話した時に、“ニューヨークシティで3位を獲ったときよりも調子は良い”、と彼女は話していた。

ブズネシュ・デバは今回も苦戦を強いられるだろう

ボストンマラソンの大会記録保持者であるブズネシュ・デバは、2015年から一度も2:30を切れていない。苦戦は今大会でも続くだろう。彼女の夫によれば、“膝に問題を抱えており、下り坂の多いボストンのコースにどれだけ耐えられるか、わからない”と明かしてくれた。

レッツランの掲示板はボストンマラソン当日の天気についてかなり盛り上がっているが、アフリカ勢の招待選手のほとんどは、どんな予想が出ているか知らなかった

ボストンマラソン当日の天気予報が、雨と強い向かい風と出ていることについて、ほとんどのアフリカ勢が知らなかったことは、興味深い事実である。天気予報について聞いてみたとき、レリサ・デシサタミラト・トラは驚いた様子は見せなかった(どちらかは少しワクワクしている様子を見せたが、それがどちらだったかは覚えていない)。しかし、女子選手の中には、その天気はイヤだと答える選手もいた。

エドナ・キプラガトは、“雨の天気予報はイヤだ”と答えたが、アセェフェッチ・マージアは“天気は問題ではない”と答えた。マージアは雨の中のレースは経験があるが(2:19:31の自己記録を出した同じ年の、ロンドンオリンピックは雨のレースとなって41位に終わっている)、“風が強くなるのはイヤだ”と語った。

天気について聞いた他2人のアフリカ人の女子選手も、天気についてはあまり良く思っていなかった。しかし、驚いたことにゲメデゥ・デデフォは、この天気はアフリカ勢女子選手にとっては有利に働くだろうと考えていた。

「アメリカ勢がもしレースを慎重に進めれば、アメリカ勢は負けるだろう。アフリカ勢は、どんな天気の中でも練習を積んでいるので、天気は味方するだろう」

と、語った。

 

レッツラン記事

http://www.letsrun.com/news/2018/04/2018-boston-marathon-mens-media-day-highlights-galen-rupp-run-significantly-gets-front-page-boston-globe-coverage/

http://www.letsrun.com/news/2018/04/elite-women-speak-boston-hasay-discusses-injury-shalane-feels-fit-nyc-desi-thinks-race-good-enough-win/

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