【ブログ】世界一のマラソン王国ケニアのマラソントレーニングについて

ケニアのマラソントレーニングに関するエンダストーリーの原文はこちら

マラソンに向けたトレーニングをケニア人のように行う方法

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©2018 Sushiman Photography

マラソンに向けた準備には以下の3つのフェーズがあります。

1. ローディング(準備期)

スピードを気にせず心地よい適度なスピード(easy and moderate run)で走ります。負荷の高いセッションはアップダウンのある所を意図的に走るか、坂ダッシュのトレーニングぐらいしかしません。少なくとも3か月はローディングの期間とします。

2. ワークアウト(鍛錬期)

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©2018 Sushiman Photography

調子が整ってくるので、ペース走やスピード練習を開始します。2か月間はこの期間にあてます。

3. テーパリング(調整期)

レースに備えてトレーニングの量を減らしていく時期です。レース前の2週間はこの期間となります。

それぞれの期間について以下で細かくみていきます。

1. ローディング(準備期)

ここで重要なことは、身体に負担をかけずに長い距離を走るということを身体に染みこませることです。長時間のロングランで身体や足を慣らしていきます。

プロランナーでないマラソン初級者であれば、イージーランを1週間に3~4回走ることから始め、それを週5~6日の頻度に増やしていきましょう。すると、平日の朝に70〜80分を楽に走れるようになりますので、週末には2時間のイージーランをしましょう。ここで重要なのは、心地よいペースで気軽に走ることです。まだエネルギーが余っている状態で走り終えるのがベストです。

この流れに慣れてきて余裕があれば、1週間に1回のスピードトレーニングや上り坂でのトレーニングを入れてもいいですが、それらで無理をしすぎないように気を付けてください。

2. ワークアウト(鍛錬期)

レースの10週間ほど前からの、高強度のトレーニングをスタートする時期です。

レース本番より負荷をかけてしまうと故障をしてしまうので注意しましょう。ケニアではどのトレーニンググループも以下のように、だいたい似たようなメニューでトレーニングしています。

  • 月曜日:アップダウン走・坂ダッシュ
  • 火曜日:トラックでのインターバル走
  • 水曜日:イージーラン
  • 木曜日:ロード練習:ファルトレクやペース走など
  • 金曜日:イージーラン
  • 土曜日:ロングラン
  • 日曜日:休養

(※ケニアの中長距離選手の伝統的な週間スケジュール。必ずしもこのスケジュールというわけではないが便宜上、この方式が採用され続けている。レナート・カノーバなどによる個人的な指導に基づいたコーチングであればこのスケジュール通りにはならず、細かくメニューを調整・変更する場合がある。パトリック・サングなどの大きなトレーニングキャンプのコーチとなると、指導する選手が多いため、便宜上このスケジュールでメニューを組み立てる)

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選手が多いトレーニングキャンプは便宜上、メニューが曜日で固定されている。火曜日はスピード練習 ©2018 Sushiman Photography

しかし各々の身体の調子によっては、トレーニングメニューや、その曜日を柔軟に変更してもいいでしょう。練習の前には、ゆっくり走ったり、動的ストレッチをしたりと20~30分のウォームアップをします。朝に高強度のトレーニングをしたときは、午後に40~50分のジョギングをします。

 

■起伏を生かしたアップダウン走・坂ダッシュ

ケニアのどのトレーニンググループにおいても、このトレーニングは週の1番最初にやるトレーニングです。それをいつやるにせよ、筋力とスタミナ強化のためには、必ず週1回は取り入れるトレーニングです。

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ウィルソン・キプサング(右)の2017年の東京マラソンにむけたとある週の月曜日の山上り走 ©2017 Sushiman Photography

多くの選手は、ローディングの段階からこのトレーニングを取り入れています。ローディング期間でのこトレーニングとは、繰り返しの回数を決めた一般的にイメージされる坂ダッシュのようなトレーニングだけではなく、通常の場合“60分”などと時間を決めて、その時間中で上りと下りを繰り返すことです。その後、坂での短距離のスプリントトレーニングを行います(人によっては坂ダッシュを必ずしも行うとは限らない)。400m、200m、100mなどの距離を10~20回繰り返してスプリントトレーニングを行います。

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アップダウンのある森の中を月曜日に走るハーフマラソン59:47=オセアニア記録を持つゼーン・ロバートソン ©2018 Sushiman Photography

(※このトレーニングは“アップダウンのあるところを意識的に長時間走る+坂ダッシュ”の起伏に富んだ高地ならではのトレーニングメニューといえる。平地では場所を選べばすることのできるトレーニングであるが、高地では地形の特性を生かしてその場所で自然にできるトレーニングがこのトレーニングである)

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ソンドレ・モーエンのコーチのレナート・カノーバは坂ダッシュでのスプリント強化を重視している ©2018 Sushiman Photography

 

■トラックでのインターバル走

トラックでのインターバル走は、1週間の練習スケジュールうちで、おおよそ1番強度の高いトレーニング(レースを想定したロードでの高強度のトレーニングを除いて)となります。マラソンでより速く走れるためのスピードを手に入れるには、トラックでのインターバルが欠かせません。多くのランナーはこのトラックでのインターバルトレーニングをラッピング(lapping)と呼びます。

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©2018 Sushiman Photography

400m、1000m、1600m、2000m、3000mなどの距離のインターバル走を行い、リカバリーはゆっくりとジョグするか歩きます。2000mや3000mなどのロングインターバルであってもマラソンペースよりも速いスピードで走ります。1回の練習で走る合計走行距離は12~20kmにもなります。インターバル走が終わるとクールダウンの前に200mか400mのスプリント走を何本か行います。トラックでのインターバル走は、パワーとスピードを同時に獲得できるトレーニングです。

(※ケニアでのトラックでのインターバル走の特徴は、①標高2000m前後の高地でありながらスピードが速い、②土のトラックで走ることがほとんど、③400mや1000mでのインターバル走でもリカバリーはウォークか、かなりゆっくりのジョグで60〜90秒とそこそこの回復を促す。④決まった本数をこなすというよりかは、できるところまでやる)

(ケニア人選手で特にスピードにフォーカスしたい選手は疾走スピードを重視し、リカバリーを多くとる。逆に欧米のマラソン選手は、ケニアでトレーニングする際に疾走スピードを抑えて、リカバリーを短くする、もしくは速いジョグで繋ぐ、というやり方が多く見られる。ケニア流のやり方は疾走重視のリカバリーはゆっくりとる、というものである)

 

■ロードスピードトレーニング(①ロードでのファルトレク)

ファルトレクは、ケニアの中長距離選手が行う一般的なスピードトレーニングです。ファルトレクはコース全体の距離を測る必要もなく、また必ずしもフラットな道を必要としません。最も一般的なファルトレクトレーニングは、1分間疾走 + 1分リカバリージョグ(1′ – 1’)、もしくは、2分間疾走 + 1分リカバリージョグ(2′ – 1’)、の繰り返しが一般的です。1回のファルトレクのトレーニング時間は約40~50分間が一般的です。

ケニア・イテンでの恒例の木曜のファルトレク

(※例えば1′ – 1’で40分のファルトレクをするなら、1′ – 1′ × 20セットとなり、50分なら1′ – 1′ × 25。同じように2′ – 1’で40分程度なら2′ – 1′ × 14、50分程度なら2′ – 1′ × 17。他にも(1′ – 1′ × 10)+(30″ – 30″ × 20)=40分間の違うスピードでの組み合わせのファルトレクもあり、(2′ – 1′ × 5)+(1′ – 1′ × 5)+(30″ – 1′ × 5) セット間2分というメニューもある)

(様々なスピードでの組み合わせによるファルトレクのメニューまで多岐にわたってバリエーションが組める。トラックでのインターバル走との違いは、路面や風向きに関して規則性がなく、様々な変化に富んでいて、それによって、風向きやコースのアップダウンでの急激なペースアップに対しての耐性ができる)

 

■ロードスピードトレーニング(②ロードでの速めのペース走)

ここでいうペース走は、レース当日の走りに近いペースでの走りをするトレーニングです。そうなれば、走りやすいコースを選ぶ必要性があります。ケニアにはどのトレーニングスポットにもランナーたちのお気に入りのコースがあり、1週間か2週間おきぐらいの頻度で、速めのペースでのペース走を行います。

このセッションでは1時間ほどの時間を速いペースで走るため、ケニアでのコースは通常16~18kmぐらいのコースが選択されます。しかし、ペース走では速いスピードでどれぐらいの距離を走れるかが重要なポイントとなってきますので、人によっては最初の20分間をウォームアップとして走り始めてから、その後の40分間をビルドアップしていってハードなペース走に移行していく場合もあります。ペース走が終わるときには、レースを想定した負荷まで追い込むことが目的なので、ここでいうペース走とは速めのペース走を指します。

 

■ロードスピードトレーニング(③ロードでのインターバル走)

インターバル走ができるようなロードの1~2kmのコース(だいたいが直線)で、マラソンやハーフマラソンのレースペースよりも速いペースで走り、途中リカバリーを取りながら疾走を繰り返し行います。

(※3月の世界ハーフマラソン選手権で8位入賞を果たしたスイスの22歳、ジュリアン・ワンダース(写真中央) は10代の頃からケニアで数年間トレーニングを積み、着実に力を付けていった。ワンダースはハーフマラソンで60:09の自己記録=スイス記録、欧州U-23記録を持っているが、世界ハーフで彼が競り勝った十数名ものアフリカ系選手の持ち記録を考えると、条件が揃えば彼がすぐにでもハーフ59分台を出す力があると断言できる)

 

■ロングラン(距離走)

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ジェイク・ロバートソン(写真右、気温が高かったびわ湖で初マラソン2:08:26)のケニアでのロングラン ©2018 Sushiman Photography

ケニアでのどのトレーニングキャンプにおいても、ロングランは1週間に1度は行われます。セミロングランもその間に一回行われます。ロングランとは、通常は35~43kmの距離を走ることを指し、セミロングランとは25~30kmのことをいいます。

(※必ずしもこれに全てが当てはまるというわけではない。ロングランのすべてをこなせた場合にこれらの距離になるのであって、途中でついていけなくなって脱落すれば、基本的にはそこで終わりとなる)

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©2018 Sushiman Photography

ロングランでは水分補給が重要な要素となります。1時間ごとに300~600mlの水分を消費するとするば、※1 それ以上の水分を持って走らなければならないことなります。そのため、トレーニンググループには給水用の伴走車を用意しなければならなくなります。給水のサポートがあれば選手たちは給水の心配をすることもなく、これまで走ったことのないような長距離走でも全力で挑むことができます。なぜなら先頭集団に着いていけなくなってペースを落とした場合には、※2 その時点で給水車に乗り込めばいいからです。

(※1 ケニアでは周回コースで行う距離走はほとんどない。そのほとんどが土のダートコースの一本道のワンウェイである。日本では、一本道という意味では河川敷で走る距離走が同じようにイメージにあたる。例えば日本の市民ランナーが好む、大濠公園や駒沢公園、代々木公園、長居公園のような周回コースでの距離走ではない)

(※2 それぞれが決まった距離を決まったペースで走り切るのではなく、先頭のペースでどれだけ走れるか、ということに主眼が置かれているため。詳しくは【ブログ】ケニア人選手の一般的なトレーニング方法と“持久力拡大のアプローチ”についてを参照)

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©2018 Sushiman Photography

■イージーデイ(Easy Days)

トレーニング負荷の高い鍛錬期の練習の合間にはイージーデイ(いわゆる、落としのジョグ)を挟みましょう。朝に1時間ほど心地よい速さで走って、夕方に40~50分ほど軽く走ります。ケニアでは通常、火曜日に高強度の練習をして水曜日をイージーデイとしています。

(※個人的に自分でメニューを作成している選手や、自分のメニューを各々のコーチに組んでもらっている選手は火曜日がポイント練習という流れに沿わないことがある=ケニアでトレーニングをしている非アフリカ系の選手にそのパターンが多い)

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イージーデイは、ゆっくり長く走れるようなペースで ©2018 Sushiman Photography

3. テーパリング(調整期)

目標のレースへ向けてのトレーニングの最終段階です。テーパリングの目的は、ハードなトレーニングから身体を回復させてレース本番に備えることです。テーパリングはマラソンの2、3週間前から始まって、トレーニングのピーク時よりもおおよそ練習量を50%減らします。25km以上は走らずに、スピード練習は変わらない強度で行いますが、距離や本数を減らしていきます。テーパリングの時期は、トラック練習を終えたあとでもまだ余力がある状態が好ましいとされます。

しかし、この段階での調整方法や過ごし方は選手それぞれで、自分に一番適したテーパリングを考えて行うのが良いでしょう。レース前の練習量(特にスピード)を落としてしまうと、レース本番でそのままスピードが出なくなってしまう人もいます。なかにはレース前日まで、トレーニング内容を変えないことを好む選手もいます。レースを何回か経験していくうちに、自分にとっての最適なテーパリングがみえてくることでしょう。自分の体の状態に耳を傾けて、レース当日にフレッシュな状態で臨めるようにしましょう!

 

レッツラン・ジャパン編集長:SUSHI MAN

 

参考:【ブログ】ケニア人選手の一般的なトレーニング方法と“持久力拡大のアプローチ”について

【ブログ】ケニア人の強さの源になっているケニアの食事について

 

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