2018世界ハーフマラソン:ジョフリー・カムウォロルが15kmからの5kmを13:01で走り3連覇 – ネサネット・グデタが女子のみレースでの世界新記録の66:11で優勝

2018世界ハーフマラソン選手権の男子レースでは、最初の15kmまでは正直なところ見どころがないレース展開となった。かなり強い風が吹く中、有力選手たちは控え目にレースを進め29人の大集団は15kmを44:13で通過した。このペースでのゴール予想タイムが62:11というかなり遅いペースだった。

しかし、ここからジョフリー・カムウォロルのショーが始まった。

このレースを見ていたものは、過去2回のこの大会で優勝している25歳のこのカムウォロルの歴史に残る、ラスト6.097kmからのフィニッシュを、忘れることはないだろう。

これは全く誇張ではない。ラスト5kmの追い風の助けもあったが※カムウォロルは不可能としか思えないスプリットを15kmから刻むことになる。15〜18kmの3kmが7:48、15〜20kmの5kmが13:01だ。

(※カムウォロルの5000mの自己記録は12:59.98で2016年の記録)

もう一回書こう。

ハーフマラソンのラスト5kmを13:01で走ったのだ。

カムウォロルが強烈なスパートで他の選手を引き離した、世界で最高のレースといえる。ラスト6.097kmを平均4:10/マイル(2:36/km)でカバーし、カムウォロルは満面の笑みを浮かべ拳を上げながら、60:02でゴールテープを切った。2位に入ったハーフマラソン世界歴代3位の記録(58:40)を持つバーレーンのアブラハム・チェロベンに20秒差をつけた、見事な優勝だった。

去年の世界クロスカントリー選手権で5位だったエリトリアのアーロン・キフレが60:31で3位に入り、去年の世界クロスカントリー選手権で4位、先月に初ハーフマラソン世界最高記録の59:00を出したジェマール・イェメールが4位に入った。これらの選手はカムウォロルのライバル選手と目されていたが、カムウォロルはラスト5km、彼らをいとも簡単に置き去りにした。

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チェロベンは15〜20kmの5kmを13:14で走って※カムウォロルに喰らいつこうとしたが、ハーフマラソンにおいてジョフリー・カムウォロルに勝る選手は他にはいなかった。

(※実際にカムウォロルが15kmからスパートしてからしばらく対応できたのはエチオピアのイェメールモッラの2人だけであり、最終的にその2選手は4,5位に順位を落とした。チェロベンは第2集団から順位を上げて2位に入った)

カムウォロルが優勝を果たしたが、チームとしてはエチオピアが4,5,6位(チーム戦では出場選手の上位3名の記録の合計タイムを争う)に入り、合計タイム3:02:14でチーム戦は優勝。2位のケニアは3:02:40、3位のバーレーンは3:02:52だった。ケニアチーム優勝の可能性は、バルセリウス・キピエゴが9km地点で転倒してしまったことでなくなってしまった。

昨年の世界クロスカントリー選手権でアメリカ人トップだったサムエル・チェランガが61:23の14位でアメリカ勢トップでゴール。アメリカチームを7位に押し上げた。43歳のバーナード・ラガトも素晴らしい走りをし、アメリカ勢では2位、全体の31位の62:16(自己記録からたった16秒遅いだけだった)でゴール。

ディエゴ・エストラーダはアメリカ勢3位(63:69の69位)でフィニッシュした(ジャレード・ワードは64:49で83位)。サブ60:00の自己記録を持つレオナルド・コリルは苦しい戦いになり、途中棄権となった。

非アフリカ系選手としてトップでゴールしたのが、スイスのジュリアン・ワンダースで8位(61:03)であった。彼は22歳になったばかりで、この3年間は(トラックシーズンや夏を除いて)ほぼケニアでトレーニングを積んでいる。トップ20に入った非アフリカ選手は、ワンダースだけであった。フルマラソン2:10:16の自己記録を持つベルギーのコーエン・ナートが22位に入り、非アフリカ系選手としては2番手でフィニッシュした。

【2018世界ハーフマラソン選手権:男子結果】

順位 ゼッケン 選手 国籍 記録
1 116 Geoffrey Kipsang KAMWOROR KENKEN 1:00:02 SB
2 24 Abraham Naibei CHEROBEN BRNBRN 1:00:22 SB
3 56 Aron KIFLE ERIERI 1:00:31 PB
4 74 Jemal YIMER ETHETH 1:00:33
5 72 Getaneh MOLLA ETHETH 1:00:47 SB
6 71 Betesfa GETAHUN ETHETH 1:00:54 PB
7 57 Amanuel MESEL ERIERI 1:00:58 SB
8 153 Julien WANDERS SUISUI 1:01:03
9 161 Kaan Kigen OZBILEN TURTUR 1:01:05 SB
10 70 Leul GEBRESILASE ETHETH 1:01:07 SB
11 22 Aweke AYALEW BRNBRN 1:01:09 PB
12 115 Leonard Kiplimo BARSOTON KENKEN 1:01:14 SB
13 27 Albert ROP BRNBRN 1:01:21 PB
14 170 Samuel Kiprono CHELANGA USAUSA 1:01:23
15 117 Barselius KIPYEGO KENKEN 1:01:24 SB
16 143 Stephen MOKOKA RSARSA 1:01:26 SB
17 54 Nguse AMLOSOM ERIERI 1:01:34 SB
18 119 Jorum Lumbasi OKOMBO KENKEN 1:01:34
19 55 Afewerki BERHANE ERIERI 1:01:37 SB
20 166 Fred MUSOBO UGAUGA 1:01:38 PB

5kmスプリット13:01!何も言うことなし!

クレイジーなスプリットで、素晴らしい王者の誕生となった。 先頭で後方集団を引き離し、満面の笑みでゴールするカムウォロルを見ていると、彼の優勝は本当に素晴らしいものだった。彼のスプリットに気付いたコメンテーターのポーラ・ラドクリフティム・ハッチングスには称賛を送ろう。彼のスプリットがどれほどすごかったのか、文章で書くよりも、ハッチングスがイギリス英語で述べているコメントを聞いた方が臨場感もリアリティもあるだろう。ラドクリフがスプリットを読み上げた後のハッチングスのコメントを聞いてみよう。

「このスプリットタイムが正確ならば、ロードレースでこんなにも素晴らしい数字を見たことがない!カムウォロルは、情報によるとこのバレンシアの地で、15〜20kmの5kmを13:01で走った。これが本当ならば、これまでの10kmやハーフマラソンの歴史においてこんなスプリットタイムは見たことがない!」

(※彼は10〜20kmの10kmを27:46で走っている)

13:01というスプリットタイムは信じられないタイムであるが、カムウォロルが追い風を受けていたという事実も記さなければならないだろう。北西からの風が強く吹いていて、ラスト5kmで彼の背中を押していた。

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しかし、それでもこの記録は本当に素晴らしい。アブラハム・チェロベンの15〜20kmのスプリットタイムは13:14であり、カムウォロルのそれと比べると13秒遅いことになる。強い追い風が吹いていたとしても、カムウォロルの速さが分かる。

カムウォロルはすでにレジェンドであったが今回の走りは彼の中のトップパフォーマンスにランクインするだろう

世界ハーフマラソン3連覇、世界クロスカントリー2連覇、ニューヨークシティマラソン優勝を果たしているカムウォロルから、これまでのベストレースを選び出すのは難しい。彼の今日のフィニッシュは、現実のものとは思えなかったが、しかし2年前、彼はスタート直後転倒し他の選手に押しつぶされながらも、レースに戻って風の強い雨のカーディフで59:10で優勝したのだ。

ここで言えるのは、彼がこの世界ハーフの過去2回のレースにおいて伝説的なパフォーマンスをしたということだ。彼が理想のコンディションのもと、ペースメーカーがいるレースを走った際、一体どれだけ速く走れるのだろうか?想像するだけでもすごい。

カムウォロルの自己記録は58:54であるが、その記録は2013年2月の記録であり、彼が世界大会で勝ち始める1年前以上の話しだ。ゼルセナイ・タデッセの58:23というハーフマラソンの世界記録の更新ももちろんカムウォロルの視野に入っているだろう。彼がサブ58:00の壁に挑むことも、決して不可能ではないだろう。

しかし、タイムに縛られすぎるのはやめよう。様々な場所、様々な距離で様々な勝利を収めてきた、素晴らしい王者である、今のカムウォロルを称えよう。

【2018世界ハーフマラソン選手権:男子団体結果】※上位3選手の合計記録

順位 チーム 記録
1 Ethiopia EthiopiaEthiopia 3:02:14
2 Kenya KenyaKenya 3:02:40
3 Bahrain BahrainBahrain 3:02:52
4 Eritrea EritreaEritrea 3:03:03
5 Uganda UgandaUganda 3:06:15
6 South Africa South AfricaSouth Africa 3:07:16
7 United States United StatesUnited States 3:07:38
8 Spain SpainSpain 3:08:29
9 Peru U18 Peru U18Peru U18 3:08:35
10 Israel IsraelIsrael 3:08:47
11 Great Britain & N.I. Great Britain & N.I.Great Britain & N.I. 3:08:57
12 Japan JapanJapan 3:09:15

女子レース:高速決戦を制したグデタ

前回、前々回とこの2回の世界ハーフマラソン選手権では、ケニアがメダルを独占していたが、今大会はエチオピアが個人と団体で金メダルを獲得した。 27歳のネサネット・グデタはケニアの世界記録保持者ジョイシリン・ジェプコスゲイを14kmで振り切り、女子選手のみのレースの世界新記録となる66:11で優勝した。

(※ジェスコスゲイは64:51の世界記録を持っている。女子選手のみのレースとは、男子選手のペーサー無しのレース)

グデタは15kmからの5kmを15:23で走り、圧倒的なスパートで圧勝した。最終的には2位のジェプコスゲイに43秒をつけるほどの素晴らしい走りだった。ケニアのポーライン・カムルジェプコスゲイから2秒差でフィニッシュし銅メダルを獲得した。

この2大会ではケニア人選手の上位独占によってグデタは苦戦したが、そのこともあって今大会の勝利は彼女にとって会心の勝利だった。過去2大会でグデタは、ケニア人選手以外のトップ(2016年4位、2014年6位)で走ったが、表彰台に上ることはできなかった。

2015年の世界クロスカントリー選手権で3位に入ったことのあるグデタは、少なくとも80,000ドルの賞金を獲得した。個人優勝の賞金が30,000ドル、そしてロルナ・キプラガトの世界記録66:25の更新を達成したボーナスで50,000ドル、それに加えて団体優勝のエチオピアは15,000ドルの賞金も獲得した。

【2018世界ハーフマラソン選手権:女子結果】

順位 ゼッケン 選手 国籍 記録
1 248 Netsanet Gudeta KEBEDE ETHETH 1:06:11 WRwo
2 289 Joyciline JEPKOSGEI KENKEN 1:06:54
3 290 Pauline Kaveke KAMULU KENKEN 1:06:56 PB
4 212 Eunice Chebichii CHUMBA BRNBRN 1:07:17 SB
5 250 Zeineba YIMER ETHETH 1:08:07 PB
6 246 Meseret BELETE ETHETH 1:08:09 PB
7 215 Desi MOKONIN BRNBRN 1:08:10 PB
8 247 Bekelech GUDETA ETHETH 1:08:12 PB
9 210 Dalila ABDULKADIR BRNBRN 1:08:12 PB
10 214 Shitaye ESHETE BRNBRN 1:08:25 PB
11 249 Zinash MEKONNEN ETHETH 1:08:30 PB
12 275 Chemtai Lonah SALPETER ISRISR 1:08:58 NR
13 288 Ruth CHEPNGETICH KENKEN 1:09:12 SB
14 211 Rose CHELIMO BRNBRN 1:10:20 SB
15 308 Ancuţa BOBOCEL ROUROU 1:10:21 PB
16 317 Fabienne SCHLUMPF SUISUI 1:10:36 SB
17 282 Kaori MORITA JPNJPN 1:10:46
18 207 Volha MAZURONAK BLRBLR 1:10:57 NR
19 280 Mao ICHIYAMA JPNJPN 1:11:02 SB
20 235 Dolshi TESFU ERIERI 1:11:09 PB

ネサネット・グデタの飛び抜けたパフォーマンス

グデタは今大会までにも国際大会での良い成績を残してきたが、今大会が彼女のキャリアの中で一番大きな優勝といえるだろう。2位を43秒を引き離す圧勝は、2009年の世界ハーフマラソン選手権でメアリー・ケイタニーが優勝したとき以来だった。

今大会でのグデタの飛び抜けたパフォーマンスは今回に限ったことではなかった。2015年のバレンシアハーフを67:31で優勝した時は、それまでの自己記録を1:15も更新してのものだった。レース前に有力選手の欠場があったが(64:52の自己記録を持つファンシー・チェムタイや前回大会での銅メダリストのメアリー・ワセラグデタの今大会でのパフォーマンスは誰も寄せ付けなかっただろう。

ジョイシリン・ジェプコスゲイが復調:彼女にとって初めての世界選手権での銀メダルは良い結果だった

ジェプコスゲイは、2017年にハーフマラソン2回を含む7つの世界記録を樹立したが、常に世界レベルをリードすることは簡単でなく、彼女は先月のRAKハーフで体調不良の影響で5位に終わりそのレースではチェムタイは世界記録を1秒差で逃していた。そして今日はグデタには43秒差もつけられた。

しかし、ジェプコスゲイを非難しているわけではない今大会の66:54での銀メダルは客観的にみれば良い結果であるし、彼女が先頭争いから脱落した後も諦めずにカムルに競り勝って銀メダルを獲得した。

団体戦において3人しか走れなかったケニアチームが敗れてしまった

女子ケニアチームはトップ3に2人が入ったものの、エチオピアが3:22:27で、3:23:02のケニアに競り勝ち団体金メダルを獲得した。ケニア勢の3番目にフィニッシュした自己記録で66:19を持つルース・チェプゲティチは69:12の13位という順位で、結局ケニアチームはエチオピアに合計で35秒届かず敗れてしまった。

ケニアチームは、ファンシー・チェムタイメアリー・ワセラの今大会の最終エントリー後の欠場によって3人のみで今大会に臨むことになった(アメリカチームにも同じことが起こり結局3人での出場となった)。彼女たちが5人のフルメンバーで臨んでいたなら、ケニアチームは団体で金メダルを獲得していただろう。今大会でケニアの3番手が68:35で走れば団体金メダルであったが、その記録は昨年、ケニアの女子選手24人がクリアしている記録であった。

アフリカ系ランナーが上位独占

アフリカ系選手は、女子のレースで上位14位までを独占(バーレーンやイスラエルの帰化選手も含む)し、団体では上位3位までを独占したが、それは帰化選手による影響である。

前回大会も含めてそこから過去9回の世界ハーフマラソン選手権において、9大会連続で女子の団体銅メダルを獲得していた日本は、ついにその表彰台から引きずり降ろされた。

今大会の女子団体で4位に入った日本は、女子団体3位のバーレーンから10分差以上もつけられてしまった(バーレーン3:23:39、日本3:33:57)。

【2018世界ハーフマラソン選手権:女子団体結果】※上位3選手の合計記録

順位 チーム 記録
1 Ethiopia EthiopiaEthiopia 3:22:27
2 Kenya KenyaKenya 3:23:02
3 Bahrain BahrainBahrain 3:23:39
4 Japan JapanJapan 3:33:57
5 Eritrea EritreaEritrea 3:35:09
6 Belarus BelarusBelarus 3:35:43
7 Great Britain & N.I. Great Britain & N.I.Great Britain & N.I. 3:35:48
8 Peru U18 Peru U18Peru U18 3:35:52
9 United States United StatesUnited States 3:39:11
10 Canada CanadaCanada 3:39:19

 

レッツラン記事

http://www.letsrun.com/news/2018/03/geoffrey-kamworor-splits-1301-5k-yes-1301-end-race-win-3rd-straight-world-half-marathon-title/

http://www.letsrun.com/news/2018/03/netsanet-gudeta-kebede-ethiopia-sets-womens-world-record-6611-2018-iaaf-world-half-marathon-championships/

 

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43歳のバーナード・ラガト、全米代表として世界ハーフマラソン選手権への出場を楽しみにしている

 

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  1. ピンバック: 【ブログ】レッツラン・ケニアその2:圧巻の2018ケニアクロスカントリー選手権と世界王者ジョフリー・カムウォロルの貫禄 – LetsRun.com Japan

  2. ピンバック: 【世界王者の軌跡】世界ハーフ3連覇、世界クロカン2連覇のジョフリー・カムウォロル:ケニアのスターはここからどこへ向かうのか? – LetsRun.com Japan

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