【ブログ】レッツラン・ケニアその1:ンゴング・ケンスウェド高校訪問 + 駿河台大1年生コンビ武者修行の様子など

私にとっては昨年の1月に続いて2度目のケニア滞在でした。1ヶ月前のことではありますが、今回の滞在のことをブログとして発信していきます。

ンゴングについて

ナイロビに到着してからすぐにンゴング(Ngong)に移動しました。ンゴングはナイロビから南東に直線距離で約20km、ナイロビから車で40分程度のところに位置しています。ンゴングはケニアのリフトバレー州の南部に位置し、標高は1960m前後。リフトバレー州でナクル、エルドレットに次いで3番目に人口が多い都市です。

【ンゴングの位置】

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出典:Wikipedia:Ngong, Kenya

この街の中心部にはスーパーやレストランやショッピングモールがある一方、露天商も多く見かけます。郊外に行くと住宅とトウモロコシ畑などが多くあります。

ンゴングは男子マラソン元世界記録保持者のポール・テルガトがトレーニングをしていた場所であり、同じく男子マラソン元世界記録保持者のパトリック・マカウや、先日のRAKハーフで世界歴代4位の好記録をマークしたビダン・カロキなどの選手が生活しています。その他にも多くの強力な中長距離選手がトレーニングを行っています。

【リフトバレー州の位置】

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出典:Wikipedia:Rift Valley Province

(※ケニアの中長距離選手の大半が、ンゴングを含むこのリフトバレー州全域の山岳地帯=イテン、エルドレット、カプタガト、カプサベト=ナンディ、ナクル、ケリンゲット、マラクウェト、ケリチョ、ニャフルルなどで生活してトレーニングしています)

貧困地区を救った学校

ンゴングにある※KENSWED Secondary School(ケンスウェド高校)を訪れました。

(※各国の教育システムにより、セカンダリースクールとは中等学校や、中学校+高校の位置づけを指す場合もあるが、ここでは“高校”として表記します)

この高校はスウェーデンの財団と、ンゴングを拠点にしているアイザック・マチャリア氏(マラソン自己記録2:07:16)が共同で設立し、2011年からスタートした学校です。ちなみに、ケンスウェドとはケニア+スウェーデン(KENYA + SWEDEN = KENSWED)の造語です。

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©2018  SushiMan Photography

この学校は、この周辺の地域にもともといた貧しく学費の払うことの困難な生徒のために設立された学校です。学費を収めることはケニアの法律で定められている義務ですが、現実的にはそれを収められない家庭が多くあります。

そこで、かねてから慈善事業に参画していたマチャリア氏が賞金などで得た収入でこの学校の敷地の土地を購入し、この学校建設のプロジェクトのパートナーとして、1998年からンゴングで貧困救済の活動をしているスウェーデンの非営利団体であるグローバル・リレーションズと、その財源となるスウェーデンの著名人たちによって設立された財団、Zelmerlöw & Björkman Foundationの協力によって、2011年から男女計47名の学生を抱えてスタートしました。

 

アイザック・マチャリア氏

ケンスウェド高校では、スウェーデンの個人、企業、財団からの寄付をもとに、生徒たちの財政面や学校の年間運営費用の大部分を賄い、さらに制服の購入費用や井戸の建設や増設、そして音楽室や寮の建設など多くの面においてのサポートを受けています。

また、そのようなことから生徒一人あたりの月謝(授業料など)の負担は格段と減りました。それによって現在ではケンスウェド高校では男女合わせて約300名の生徒をかかえており、2015年には15名、2016年には18名もの大学への進学実績を作りました。

このようなグローバル・リレーションズZelmerlöw & Björkman Foundationの活動はアフリカの他の国々、ウガンダや南アフリカなどでも行われており、エチオピアでのケネニサ・ベケレによる首都アディスアベバでの学校建設プロジェクトにも参画しています。

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©2018  SushiMan Photography

ケンスウェド高校では昨年に女子寮が完成。遠くから通学している生徒や最貧困層の負担を減らし、またスポーツ選手の育成に力を入れています。彼女たちは女子の陸上中長距離選手で、ケンスウェド高校の敷地内にある女子寮で生活をしています。この中には仙台育英で活躍したヘレン・エカラレの実の妹もいます。

ケンスウェド高校では寮生活している生徒を除いた大半の生徒が、朝7時前から生徒がぞろぞろと通学(おもに数kmを徒歩)し、勉強の時間に備えます。陸上競技に取り組む学生はそれまでにトレーニングを終わらせているそうです。男子も同じく高校の横にある男子寮(こちらは女子とは違って一般的なケニアの家屋)で生活をしています。

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©2018  SushiMan Photography

左からケンスウェド高校の生徒と、ケニア修行中の駿河台大学の学生、ChiMa Sports Promotion Ltd.代表の柳田主税(やなだちから)氏。

ChiMa Sports(チマ・スポーツ)は柳田氏アイザック・マチャリア氏が共同で立ち上げたスポーツマネジメント会社で、現在ニャフルルとンゴングにトレーニングキャンプを所有しています。男女のジュニア選手とシニア選手がそれぞれ所属するChiMa Campには先述した通り、ニャフルルとンゴングに拠点がありますが、ンゴングのChiMa Campのジュニア選手たちはこのケンスウェド高校に在籍しています。

このようにかねてから貧困地区であった場所で教育機会を失っている子どもたちに学びの機会を与え、スポーツへの参加をも積極的に促すことが新たな才能の発掘に繋がります。また、陸上選手においてはChiMa Campが軸となって、ジュニアからシニアにかけての育成を強化し、きちんと選手のマネジメントを行っています。

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©2018  SushiMan Photography

この冬はケンスウェド高校に帰省していたンガンガ・ワウエル

それにより、日頃のトレーニングの充実や、環境の整備はもちろんのこと、選手にとっての活躍の場を増やしたり、時によっては日本の高校への留学や、日本の実業団への移籍も考えられます。その代表格が、昨年大阪の興国高校に入学したンガンガ・ワウエルです。

 

 

 

2年前のインスタグラムでの投稿。ワウエルがケンスウェドの生徒として走っていた頃

今回元気な姿を見せてくれたワウエルはケニアで充電期間を設けて、日本での興国高校での2年目のシーズンに備えるようでした。日本語もしっかり喋れる様子から、日本での勉学も疎かにしていないようでした。

ケニアからの留学生といえば、かつてはニャフルルからの留学生が多くを占めていましたが、このようなことからもンゴングから日本に留学する学生や、日本の実業団に移籍するシニア選手も今後増えてくる可能性は大いにあります。

ンゴングで武者修行を行う2人

今回、ンゴングで2人の大学生が奮闘している様子もうかがえました。駿河台大学1年の鍵谷希(かぎや のぞみ)と吉里駿(よしざと しゅん)の2人です。

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©2018  SushiMan Photography 駿河台大学1年吉里(左)と鍵谷(右)

アメリカに留学しているボイシ州立大学の打越雄允や、カリフォルニア大学バークレー校の岡田健、オレゴン大学を拠点に短期留学をしている東海大の各選手、またポートランドで経験を積む中央大の舟津彰馬など、日本の学生中長距離選手のアメリカ進出が最近では積極的に行われています。

一方、ケニアでの合宿や留学に関してはまだまだ未開であることから、これまで日本の学生としてこのケニア留学を行う大学生はほとんどいませんでした。興味本位でケニアに訪れる一部の大学生(どちらかというと“部”には所属せずに同好会として所属している一部の若者)はいたものの、箱根駅伝の本戦出場を目指す選手としても、かつ10代の選手としてもこのケニア武者修行は日本初の試みであります。

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©2018  SushiMan Photography

鍵谷希は岐阜の益田清風高校出身。高校時代の5000mの自己記録は15:08で、駿河台大学に入ってからは、故障をしていたこともあり活躍の機会をうかがえずに今日を迎えています。しかし、今回のケニア合宿を自ら希望し、自らを変える良いチャンスだと前向きに捉えています。

そのキッカケとなったのが昨年の秋に、先述したChiMa Training Campに所属するケニア人選手が日本でレースを経験するために来日した際、その受け入れ先となった駿河台大学陸上部のメンバーの1人として、そのケニア人選手との交流を彼が積極的に行ったことです。

それを機に彼は英語の勉強をしながら、コミュニケーション能力に磨きをかけ「今回は自分がケニアで勉強する番だ」とばかりに気合十分。今回のケニア合宿行きに関して徳本一善監督から「頑張ってこい!と背中を押された」といいます。

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©2018  SushiMan Photography

吉里駿は福岡の大牟田高校出身で、高校時代は芽を出せなかったものの、大学に入って実力を発揮し始め、昨年の秋には5000m14:15.32、10000m29:35.35の自己記録を出しています。今回は元々ケニア合宿行きが決まっていた鍵谷とともに、チームの期待株という立ち位置でケニア行きを指揮官から言い渡されたそうです。

彼は4月の金栗記念選抜陸上中長距離熊本大会の5000mでこのケニア合宿の真価を試すことになりますが、これからが期待の成長株だけにそのレースぶりが注目されます。明るい性格の鍵谷とは打って変わって、ケニアでは少々おとなしい(日本ではどうかは知りませんが…)彼にはある意味で内に秘めたるものを感じさせます。

誰であっても、ケニアで合宿をしたからといって急に強くなるわけではありませんが(むしろ、生活面がハードで体調を崩すなどマイナスの影響が出る日本人選手のほうが多いかもしれないと思います=合わない人のほうが多い)この経験をキッカケにして、彼が今後大きく羽ばたけるチャンスを心待ちにしたいと思います。

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©2018  SushiMan Photography

今回のケニア合宿では、彼らに与えられた環境下でどれだけ自律できるかがポイントになってきます。食材の調達、調理はもちろんのこと、現地でのコミュニケーション、そしてトレーニング。

駿河台大学の徳本監督は今回のこの2人のケニア合宿に帯同していませんが、徳本監督自身も2016年にケニアを訪れており、この場所で生活することの厳しさをこの2人に体験してもらって、トレーニング以外の面でも人間的に成長して欲しいという狙いがあるのではないでしょうか。

トレーニングに関してはChiMa Training Campの選手をはじめとするンゴングの実力揃いの選手たちの背中を追うことがメイン(トラックでのスピード練習や週末の距離走など)となりますが、普段のジョグも含めて現地での選手間でのコミュニケーションは必ず今後の彼らの競技生活に生きてくることでしょう。

ンゴングに自宅を構えるビダン・カロキとの交流や、彼とのトレーニング(ジョグ)も含めて刺激的な日々を過ごしている若武者の2人です。2月の始めから、3月の終盤までの2ヶ月弱のケニア合宿でこの2人がどのように成長するのかどうかは、もしかしたら今年の駿河台大学の箱根予選会での結果に反映するかもしれません。

 

レッツラン・ジャパン編集長:SUSHI MAN

 

参考:【ブログ】レッツラン・ケニアその2:圧巻の2018ケニアクロスカントリー選手権と世界王者ジョフリー・カムウォロルの貫禄

【ブログ】ケニア人選手の一般的なトレーニング方法と“持久力拡大のアプローチ”について

 

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