エドワード・チェセレクのコーチ、スティーブン・ハースへのQ&A:何がキング・チェセレクを特別な存在にしているのか?

2月8日(チェセレクのボストンでの1マイル、3000mの前のインタビュー)

金曜日の夜にボストン大学で開催される、デイビット・ヘメリー・バレンタイン招待でエドワード・チェセレクは、全米史上4人目となる、室内1マイルのサブ3:50に挑戦する。

LetsRun.comはその模様を現地から伝える予定だが、その前に、チェセレクのコーチであるスティーブン・ハースへのインタビューの機会をいただいた。彼は、アリゾナ州フラッグスタッフでチェセレクと共に室内1マイルのサブ3:50に向けたトレーニングをしている。

ハース(34歳)は、トータルスポーツ・アメリカ (チェセレクが所属するマネジメント会社)でクライアント・サービス・コーディネーターとなる前までは、自身も強い選手であった(自己記録:5000m13:33、10000m28:21)。彼は、チーム・ラン・フラッグスタッフのプロディレクターも務めている。スケッチャーズのプロ選手であるチェセレク(24歳)は2018年になってから2レースに出場し、2レースともに結果は素晴らしいものだった。

標高約1600mのアルバカーキで室内1マイル3:54.73、そして先週行われたキャメルシティ・エリートレースではフラットのトラック(バンクのないコーナーのきつい)で室内1マイルの今季世界最高記録となる3:53.85をたたき出した。キャメルシティでのレースの後、チェセレクはテネシー州ジョンソンシティのトータルスポーツ本社で数日過ごし、その次の水曜日にはボストンに飛んだ。ボストンでの週末は忙しいものだった。

金曜日にボストン大学で室内1マイルを走り、土曜日にはニューバランス室内グランプリで室内3000mに出場、そこではオリンピックメダリストのハゴス・ゲブリウェト、デジェン・ゲブレメスケルと対戦する。

水曜日の夜に電話でハースにインタビューを行った。そこで、彼はチェセレクの能力の高さに驚きを示し、チェセレクの今後の動向についてシェアしてくれた。そして、アメリカ代表への野望も語ってくれた。

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2017年12月ホノルルでのカラカウアメリーマイル後の1枚:インスタグラムより

レッツラン:スケッチャーズとの契約の経緯をお伺いしたいです。誰もがチェセレクはナイキと契約するものだと思っていたはずでしたので、驚きの契約でした。オレゴンと何か関係があるのでは?と勘繰っている人もいると思います。どのようにスケッチャーズと契約に至ったのでしょうか。

ハース:トータルスポーツと契約するアスリートがみんなそうしているように、我々はお店を回ってすべてのブランドのシューズを買う。メジャーブランドとはほとんど取り引きがあると思うが、クライアントのためにベストな交渉をすることを常に心がけている。

スケッチャーズは、エドを本当に求めてくれていた。だから契約した、それだけだ。もちろん、ナイキもエドを欲しいと言ってくれていたが、契約には至らなかった。スケッチャーズの方がより多くエドのためにしてくれる意志があった。すごく良い状況だと思うよ。

レッツラン:最近はフラッグスタッフで一緒にトレーニングをしていると思います。そこが、彼の拠点になるということでしょうか。

ハース:実は、彼が高地でトレーニングするのはこれが初めてだったんだ。高地トレーニングに挑戦している様子を見たかった。トータルスポーツの選手でフラッグスタッフでトレーニングしている選手は多い。天気に恵まれてすごくラッキーだよ。すごく良いトレーニングができている。ここに来て6週間になるが、もう一度試してフラッグスタッフが彼に合っているかどうか確認したいね。

他の場所も訪れてみた。秋の初めにはマンモスレイク(カリフォルニア州)を訪れたが、フラッグスタッフ(アリゾナ州)には自分も縁があり素晴らしい場所だと感じたし、エドも良いキャンプができていた。彼もとても気に入っていると思うよ。今のところはしばらくは、ここでトレーニングする予定だ。

レッツラン:今も彼のメインのコーチとして指導していますね。

ハース:はい。

レッツラン:これからも続いていきますか?

ハース:もちろん。それが計画だ。アンディ・パウエルチェセレクの大学時代のコーチ=オレゴン大学のコーチ)は素晴らしくて、色んな情報を彼から教えてもらっている。ただ、彼もフルタイムで大学で選手の指導していて、そちらに集中しなければならないから、折り合いをつけながらってところかな。エドにはフラッグスタッフにいてほしかったし、その理由もたくさんあった。アンディはそれについてすごく協力的でいてくれた。

今のところ、すごく順調にいっている。エドとも素晴らしい関係性を築けている。このままの調子で屋外シーズンに入ると思うし、もうその計画をし始めている。将来は、もっとビッグなことを成し遂げるよ。

レッツラン:トレーニングパートナーについてですが、エドにトレーニンググループをつくることなどは考えていますか。それとも、マンツーマンでの指導になるのか。今後、どのようにお考えですか?

ハース:難しい質問だ。フラッグスタッフには多くの人がいる。今回の室内シーズンのように、エドがレースに向けて本格的な時期に入る頃、たくさんの選手がいて良い準備ができる。私は3年前にトータルスポーツの選手をマネジメントするために、フラッグスタッフに来た。年間を通して、かなりの数の選手がフラッグスタッフに出入りする。フラッグスタッフにはずっと住める家もある。だから、常に良い練習相手はいる。

彼は今、ハッサン・ミード(ロンドン世界選手権10000m全米代表)、パット・ケイシー、マック・フリートと共に住んでいる。それも、すごく良い影響を与えている。ハッサンからは、多くのことを学んでいるようだ。ハッサンは今レースでは走っていないが、チェセレクは彼を尊敬しているし共通点もあるから、プロフェッショナルの生活がどんなものか、それを経験するだけでも、素晴らしいことだね。今後も、一緒にトレーニングをする選手は常にいるだろう。

だから、これがトレーニンググループかと言われると、それはわからない。プロフェッショナルなトレーニンググループはすでにあってチーム・フラッグスタッフというグループだ。まだ進化中のグループではあるが、フラッグスタッフに住まいもあるし、一緒にトレーニングできる選手はいる。良い環境だ。

レッツラン:彼がアンディのもとで行っていたトレーニングを変更したり調整したりはしましたか?

ハース:アンディが過去に行っていた練習についてはたくさん話し合った。たくさん会話をし、我々のトレーニング哲学には多くの点で共通点があった。しかし、私独自のものだったのは、高地トレーニングだった。

それは我々が標高7000フィート(2134m)程度のフラッグスタッフで生活して、トレーニングの内容によって標高を使い分けてトレーニング場所を変えることかな。負荷の高いトレーニングは標高5300フィート(1615m)程度だったり、ときには3500フィート(1067m)程度のコットンウッドでもトレーニングをする。

どんなことでも調整は必要だし、今やっているトレーニングの意味を知っておく必要がある。エドはとても指導のやりがいがある選手だし、一緒に練習していて楽しい。自分を信頼してもくれている。今のところすごくいいキャンプができているし、物事も順調に進んでいる。

自分とアンディとは違う哲学を持っているわけではない。エドはすごく才能ある選手で、彼が健康で楽しくトレーニングできるように、我々は環境を整えてあげることが大事だ。毎週きついトレーニングを一緒にやれているからこそ、彼の今の走りがあると言える。

レッツラン:チェセレクがフラッグスタッフですごいトレーニングをしていると聞きましたが、最近の彼のトレーニングについて教えてください。何か印象に残っているトレーニングはありますか。

ハース:正直、トレーニング内容をここで伝えても、特に驚くべきことはないと思うよ。ここにきて6週間経つけど、一番走らなかった週でも100マイル(約160km)。彼はすごく強い信念を持っているから、すべてがうまくいっている。彼のトレーニングを見て“今日は疲れているんだろうな”とか“調子が悪いのかな”と思ったことなんて一度もないよ。

何事もなく順調にやっていけていることは、本当に素晴らしい。ハッサン・ミードモー・ファラーも、多くの選手がフラッグスタッフで高地トレーニングをして、それは本当に今までに印象に残るものだったし、それを見れたのは自慢してもいいと思っている。エドが順調なのは、彼が信念を持って集中しているからだ。

先日、ポイント練習が終わった後に、彼がどのぐらいのスピードで走れるかというテストをしてみたんだ。そしたら、メインのポイント練習の後に彼は400mを49秒で走れた。これは自信につながったよ。彼は練習でも力があることを証明していたが、この長い練習後でさえも、これだけのスピードで走れるんだと。

私にとってすごく自信になった(指導やトレーニングがうまくいったことについて)。“ボストンでのマイルを走ってみるか?”こんな感じで決まったよ。彼のそれまでの1マイルのレーススケジュールがすでに決まってはいたけど。アルバカーキもうまくいった。キャメルシティも走りたいと思っていた。

そして、ボストンは最後の選択肢として決まったよ。室内でそんなに多くは走りたくはなかった。ニューバランス室内グランプリで3000mを走ることは決まっていたが、エドはトラックが本当に好きで(去年のボストンで3:52.01の全米大学新記録を出している)、1マイルに対して今自信があるから、試してみたかったのだろう。すごく調子がいいから、やってくれると思うよ。

レッツラン:高地で1マイル3:54、フラットで1マイル3:53、このタイムを見ると、全米代表になれる記録ですよね。ボストンのような高速トラックでのレースに向けてのこの結果については、どう思いますか。

ハース:室内1マイルのサブ3:50を達成してほしいと思っているし、そのためにトレーニングをしている。ここ数週間のトレーニングでも、その力があることを彼は見せてくれている。サブ3:50のレースにおいては、もちろん世界記録(3:48.45)を狙って最初はいくと思うが、私の哲学だと、一歩一歩近づいていくことが、あとで大きな結果につながるということだ。

室内1マイルでのサブ3:50は、今までで3人しか成し遂げたことがない記録だ(ヒシャム・エルゲルージ、イーモン・コーラン、バーナード・ラガト)。だからサブ3:50は大きなマイルストーンになる。サブ3:50の先を見るよりは、今はそこに集中しよう。何が起こるかはわからない。ここ2レースの彼の走りが、今の彼の状態を証明している。サブ3:50に近い位置にいる。

レッツラン:彼のアメリカの市民権の取得については、何か状況は知っていますか?

ハース:それに関しては進行中であまり多くの情報を言えないけど。まだ彼はアメリカの市民権は持っていないよ。

レッツラン:アメリカの大学に来て、そこで成功し、WCAP(米軍アスリート養成プログラム)に入りアメリカの市民権を得る選手が多くいます。なぜエドはこの道を選ばなかったのでしょうか。

ハース:難しい質問だ。それについては、私から話すことではないと思っている。エドは多くの人に、違ったそれぞれの環境下でのトレーニングについて話していると思うし、我々もいろんな場所を訪れた。私から言えることは、フラッグスタッフで挑戦してみたいとエドが思っていたこと、そして実際にエドはそれを成し遂げている。

トレーニング環境やそういうことについては話せるけど、アメリカの市民権のことなどについては、彼に直接聞いてみてくれ。いつか彼はアメリカの市民権を得られると思っているけど、今は手続きを進めて彼の弁護士を信じること。そうすれば、彼も全米代表になれる日がくるよ。

レッツラン:くどく聞いてしまって申し訳ないのですが、すごく興味があり貴重なことだと思うのですが、彼はケニア代表になることを考えたことがあると思いますか?過去2回のメジャー大会(ロンドン世界選手権、リオオリンピック)での男子のケニア勢は5000mで、彼らの元々の基準からすれば良い成績を残せていない。

ハース:これも、彼に聞くといいよ。我々も以前その話をしたけど、彼の希望は全米代表として走ることだ。アメリカに長い間いて、全米代表になりたがっている。彼がそう言っていたから、私も言えることだ。ケニア代表になることについては、彼に直接聞いてみてくれ。私が話すことではないからね。

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アリゾナ州フラッグスタッフでのトレーニングをみるハースインスタグラムより

レッツラン:チェセレクのコーチとして、今シーズンそして今後数年間、どんなアプローチをしていきますか。どの大会にピークを持っていくか、どの大会に重きを置くか、メジャーな国際選手権で走るという選択肢もあるのかどうか。

ハース:ゴールは常に定めておかなければならない。それについては何度も話し合っているし、トレーニングの組み方やレーススケジュールを決める時も、いつも話すことは、記録の目標を持つということだ。スケジュールを決めるとき、大きな記録の目標を定めなければならないし、大きな目標を追う必要がある。それを成し遂げるためにはね。

今は(IAAFの国際規定の取締り強化によって国籍変更のルールが厳格化されたことにより)メジャーな国際選手権は走れない(つまりケニア代表で走った後は、アメリカに帰化したとしても全米代表で出場することが認められない=ケニア代表であえて出ない)が、そこに行きつくまでにいろんな特別なことができるだろう。今回のように、室内1マイルでサブ3:50を目指す。彼がサブ3:50で走れば、本当に素晴らしい。今はサブ3:50をいうゴールに集中している。選手権に出れないということをストレスの思わないことが大事だ。彼には明らかに出場できる才能はある。

大きな目標があると彼のチベーションもあがる、アルバカーキが終わってから、サブ3:50を目指せるじゃないかという話をして、彼はそれ以降、もっとモチベーションが上がったみたいだった。目標があってそれに向けてモチベーションを上げていく、今後もそのようにしてシーズンに向けて集中していくよ。

レッツラン:彼は他に大きな目標について何か話してましたか?もちろん、室内1マイルのサブ3:50は1つの目標ですが。

ハース:屋外で何個か目標があるよ。アルバカーキでマイルを走る前、彼はマイル以上への距離適正があると思っていた。今年もしエリートの室内5000mがあれば、走らなければと。5000mで13:00は切れると考えているし、それがもう1つの目標だ。彼が走りたいレースに集中して、ハイレベルのレースを経験していく。もっと大きな目標は他にもあるよ。

レッツラン:私の次の質問にヒントを与えてくれました。プロ選手として、彼の1番の大会はどんなレースになると思いますか。

ハース:今それを言うのは難しい。彼はかなりいいスピードの持ち主だが、※ストレングス能力でみても彼は野獣だ。高地で彼が対処できることは、私は長い間見たことがないようなことだった。彼ができることはといえば、高地トレーニングの経験があるレベルの高いマラソン選手と同じようなことができる。

(※ストレングス=神経 、筋系全体の能力、出力)

彼が走れるペース、ロングランであってもファルトレクであっても、実にすばらしい筋出力による対応力を持っている。これが彼を動かす原動力なのだと思う。彼は生まれ持ったスピードがある。特に多くのトラック練習をしてきたわけでもないが、彼にはスピードがある。まだわからないが、5000mや10000mも視野に入れている。1マイルでかなりいい走りができているから、5000mや10000mは難しく聞こえるかもしれないが、5000m以上も彼ならうまく走れると思っている。

レッツラン:トータルスポーツでは多くの選手のマネージメントをしています。彼のポテンシャルは、他の長距離選手と比べてどうですか?

ハース:今まで多くの才能ある選手に出会ってきた。エドの素晴らしい部分は、すごくポジティブなところ、陽気で指導するやりがいのある選手だということだ。そして、すごく謙虚だ。コーチとしての見解だ。フィジカルな部分を言うと、突出した才能の持ち主で、かなりよく鍛えられている。これらのことがすべて組み合わさって、彼は今すごくよく走れているんだ。彼はレースで勝つ方法を見つけだした。それが、私にとっては彼の素晴らしいポイントだ。

 

レッツラン記事

http://www.letsrun.com/news/2018/02/qa-stephen-haas-coaching-edward-cheserek-flagstaff-shooting-sub-350-mile-makes-king-ches-special/

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