【LRCJオリジナルインタビュー記事】スティーブ・ウィリス(NZ中長距離代表コーチ)のコーチング哲学その2

海外に渡るということ、練習・レース・コーチング

アメリカに渡るということ

「実際に自分自身がコロラド大学に留学して、選手として大きく成長できたことは紛れもない事実である。しかし逆に、“選手として成長するためにアメリカに留学しなければならない、アメリカに合宿に行かなければいけない”という考え方は特にする必要はない」

「アメリカに渡って最も競技生活を助けたことは、『多くの競技会があること』『多くのトレーニングパートナーがいること』である。ニュージーランドやオーストラリアはレースの開催地や数がそれほど多くないことや、周りに自分と同じレベルで年間を通してトレーニングを行える選手が少ない。これは中距離選手としては悩ましいところである」

「練習でのハーフマラソンペースはマラソンランナーと、ピュアスピードはスプリンターと行い、国内のみで力をつけていくことは可能である。しかし、そういったスケジュールではややずれが出てくるため、やはり同じ種目で同じくらいの力を持ったトレーニングパートナーがいることはトレーニング計画を進めるうえで重要になってくる」

「さらに、レースに出て同じくらいの力の選手と競り合えるレースが年間に何本もあるというのは、レースが少ない国に比べて有利に働くのは間違いない。一つ言えることは、アメリカは現在多くのレースを開催しているが、ヨーロッパも同じように多く開催している。ただアメリカに固執するのではなく、トレーニングパートナーやレースに恵まれれば、アメリカに限らずどこの国でも同じようにアドバンテージを得ることができる」

「いろんな場所、いろんな選手、いろんなコーチと練習をしてきたが、練習に関して言えばどの練習も非常に似ているか同じといえる。それを無理に海外に行って学ばなければいけないとう必要はない。大切なことは自分に合う練習を確立できるかどうか、自分に合うスケジュールで少しずつステップアップしていけるかどうか、そして故障をせずに良いシーズンを計画的に繰り返していくことが、選手の成長で最も大事なことである」

自国で力をつけるメリットとデメリット

「自国で力をつけていくというメリットはたくさんある。それは周りのことをあまり考えなくていいということ。自分の競技生活に集中できるということ。海外に渡れば、海外の文化に慣れる時間が必要となってくる」

「競技場、練習場所への交通手段も考えなければならない。治療などの情報も新たに聞く必要が出てくる、またその治療方法が合うかどうかもわからない。食べ物や生活習慣が自分にあまり会わないかもしれない。そういった要素を克服する必要がない。そのため競技に集中でき、パフォーマンスを快適に向上させることができる」

「デメリットは、前述したように、(ニュージランドでは)レースが少ない・練習パートナーがいない状況では、自分の狙ったようなパフォーマンスが発揮できないことや、練習に取り組めないこともある」

「海外に渡ってレースや練習をする場合、友人を訪ねるというのは非常に有効な方法である。その場合、自国で行うのと同様に競技に集中できるだけでなくあらゆる問題を解決することにもなるからである」

「逆に海外のレースや練習を転戦していくことは、競技だけでなく様々な障害も克服しながら進んでいくことになるが、それは大きなチャレンジであり、今後の自身の海外でのレースに挑むうえでの素晴らしい経験となり力になる」

世界大会・オリンピックに向けて

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「2020年の東京オリンピックはニュージーランドの中距離にとって、世代交代の時期にあたる。リオオリンピックではニック、※1 ジュリアン、※2 ハーミッシュと3選手がオリンピックを走り、ニックが銅メダルを獲得した。これはニュージーランドの中距離にとって素晴らしいことである。東京オリンピックの時期にはこの選手たちは32歳~37歳となり、年齢的には最後のオリンピックになるかもしれない」

(※1 ジュリアン・マシューズ:ニュージランド選手権1500m優勝1回、自己記録1500m3:36、1マイル3:57)

(※2 ハーミッシュ・カールソン:ニュージランド選手権1500m優勝5回、自己記録1500m3:36、1マイル3:56)

「現在、ジュニア選手で1500mを3:44を記録し、のニュージーランドジュニア記録を更新した選手をはじめ、4名のジュニア選手が世界ユース選手権の標準記録を突破している。こうした選手が初めて世界大会に出場することになるのは東京オリンピックになるかもしれない。そしてその後の2024年のパリオリンピック、2028年のロサンゼルスオリンピックへと続いていくことになる」

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「ニュージーランドの中距離はそれを『キャンペーンプラン』と名付け、現在のトップ選手は2020年の東京オリンピックに向けて最高のパフォーマンスを発揮できるように、ジュニア世代では、多くの選手に記録を伸ばしてもらい、トップ選手のレベルへ引き上げる基礎を作る時期としてそれぞれ違ったアプローチで活動している。そして、それら選手たちの分岐点として2020年に東京オリンピックを迎えることになる」

このように、スティーブが2020年というニュージーランドチームにとっての節目の年を非常に楽しみにしていることが話しているとよく伝わってくる。

スティーブ・ウィリスとニュージーランド

ニュージーランドには過去に多くの素晴らしい中距離ランナーを輩出してきた歴史がある。その中で、伝統的に強い1500mの指導に力を注ぎ、さらに代表コーチとして競技のすそ野を広げていく努力はとても大変なことである。しかしスティーブは今までの経験や成功体験のみに偏らず、自身のコーチング哲学をベースにおいて各選手に対して適切なアプローチを試みる。それが多くの選手の理解を得て、コーチと選手がともに成長していける環境を作り出している。

今の代表選手には代表で最高のパフォーマンスを、若い世代の選手には、代表への道筋と世代間のつながりを持たせることを考え、今現在のパフォーマンス向上もよく考えている。さらに、次の世代の希望になるであろうまだ『走ること』を始めたばかりの子供たちにも常に多くの希望をもってコーチングにあたっている。過去と現在と未来を、自身のコーチングと同じくバランスよく見定めることができる。ここがスティーブ・ウィリスというコーチの強さであり、常に世界的な中長距離ランナーを輩出しているニュージーランドの強さの基礎である。

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リオオリンピックの女子5000m予選2組で転倒してしまった(動画)ニュージーランド代表のニッキ・ハンブリン(左)は女子1500mのニュージーランド記録(4:04.82)保持者である。

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コーチをするエリック(1500m3:37.44)と、ニッキ(リオオリンピック5000m代表)

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前からニック、ハーミッシュ、ティム、筆者、エリック。6マイルのテンポ走:キロ3:05ペース

 

【筆者プロフィール:谷本啓剛】

ニュージーランド・ウェリントン在住

ランニングガイド・RunZ(ラン・ニュージーランド)代表、酒井根走遊会主宰

【RunZ(ラン・ニュージーランド)】https://runnewzealand.wordpress.com/

【酒井根走遊会(オンライン陸上部・駅伝部)】https://ameblo.jp/dashpiro

 

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  3. ピンバック: 【LRCJオリジナルインタビュー記事】ハーミッシュ・カールソン(2018世界室内3000mニュージーランド代表)その2:練習拠点とレース拠点等について – LetsRun.com Japan

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