【ブログ】ケニア人選手の一般的なトレーニング方法と“持久力拡大のアプローチ”について

他の国のランニング文化においては、練習すべてをこなせるだけのペースで走って“練習を完遂させること”が普通であろう。しかし、ケニア人は“練習をすべてこなすこと”に関してはあまり興味を持っていない。それよりは、自分にとって“正しいスピード”“より速いスピード”で走ることが大切なのだ。そのペースで走ることで、練習の半分もこなせなかったとしても、彼らにとってはそれはあまり重要ではないのだ。

ケニアで開催されるレースの、途中棄権者の割合が多い理由も、これで説明がつくだろう。ケニアでのレースを見ると、本当に多くのランナーが途中棄権をするのだ。レース序盤で途中棄権する選手も多くいる。多くの選手が先頭集団と同じ速さで走り、もしくは自分が目指している選手と同じ速さで序盤走りだす。そして、そのペースについていけなくなると、すぐにコースを外れ棄権する

(ケニア人のスタイルとそうでないスタイルの)どちらのアプローチが優れていて、どちらかはダメだと言っているわけではない。ただ、その考えの違いがすごく興味深いと思っている。しかし、このケニア流メソッドは、コーチ、レナート・カノーバの基本的原理である持久力トレーニング(Endurance Training)に一致するところがある。その原理というのは、持久力を拡大していく(Extension of Endurance)ということである。

大まかに言うと、レナートは、与えられたペースで長い間持続させるトレーニングを選手達にやらせる。基本的な考えとしては、すべての選手はすでに目標とするレースで、目標とするペースで走ることができる、ということにある。だから、スピード、それ自体は挑戦でもなんでもない。

彼らにとっての挑戦とは、そのペースでレースの距離への耐性や持久力を手に入れることである。レナートは、走りやすい短い距離から始め、レースが近づくにつれ、その距離を伸ばしていく。同じトレーニングを、※遅いスピードから始め徐々にスピードをあげていく練習法とは逆をいくトレーニングである。

(※例えばレースの1ヶ月前に1000m × 5のメニューを3:10ペースでやっていたのを、レース前の仕上げに入るにつれてレースペースを意識し、1000m × 5のメニューのペースを3:05などに引き上げるようなやり方)

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©2017 SushiMan Photography

トレーニング例:10kmを40:00で走りたいランナーがいるとする。

持久力拡大のアプローチ(The Extension of Endurance approach)は、下記のようなトレーニングを(1)から(5)まで日を追うごとに順に行うことを指す。

1) 500m × 20本 を2:00ペース(リカバリー60秒)
2) 800m × 12本 を3:12ペース(リカバリー60秒)
3) 1000m × 10本 を4:00ペース(リカバリー60秒)
4) 2000m × 5本 を8:00ペース(リカバリー60秒)
5) 3000m × 3本 を12:00ペース(リカバリー60秒)

(※リカバリーを除いた走行距離はほぼ等しく、ペースもほぼ等しい)

もちろんこの例は分かりやすく説明するためのものであるので、実際にはレベルに応じてトレーニングの方法を微調整する必要があるだろう。しかし、このトレーニングの考え方は、レースでの目標に対して“正しいペースで走り、そのペースで走れる距離を伸ばしていく”という考え方である。

(ある一定期間に)1000m × 10本のトレーニングを合計4、5回行うとして、最初は4:10~4:15で練習をこなし、次第にスピードをレースペースに上げていき、インターバルで走る距離自体は大きく変えないというトレーニングとは正反対のトレーニング方法といえる。

レナートのこのアプローチ(持久力の拡大アプローチ)は、ケニア人が本来持っている特性に対するアプローチ(目標とするスピードで走れるところまで走る)によく似ている。ケニア人は、彼らが思う正しいペースで走りたがり、そしてそのペースで少しでも長く走ろうとする

もし、レナートが彼らのトレーニングを直接指導していたら、“そんなに早い段階で脱落しないように”とアドバイスするのではないかと私は思う。そして、インターバルの距離を1000mから500mに減らして、彼らにとって正しいペースでトレーニングをできるように指導するだろう。やがて、500m、600m、700mと距離を伸ばしていって、選手が走りたいスピードで練習をすべて行うことができるようになる。

もしくは、この2つのシステムを組み合わせることもあるかもしれない。1週目はこのトレーニング方法で、翌週は適度なペースで全距離を走る、など。両方の考え方には重なり合う要素がある。もしあなたのトレーニンググループに、あなたより速く走るランナーがいるとしよう。このランナーにどれだけついていくことができるか、最初は60%ぐらいしかついていけないかもしれない。

次の練習では自分の適度なペースで練習すべてをこなし、3週目にもう1度速いグループに参加してみて、今度は65%~70%ぐらいついていけるか試してみるといい。ケニア人の練習方法を見習うと、自分自身の進化に驚くかもしれない

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©2017 SushiMan Photography

【補足】

本文にある“どちらのアプローチが優れていて、どちらかはダメだと言っているわけではない”というところは実に的を得ていますが、“この2つのシステムを組み合わせることもあるかもしれない”という部分に関しては一考の価値があるでしょう。

 

参考:【ブログ】レッツラン・ケニアその1:ンゴング・ケンスウェド高校訪問 + 駿河台大1年生コンビ武者修行の様子など

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