・昨今の年間の競技スケジュールやトレーニング計画について
私の意見では、徐々に段階を踏んでトレーニングをしていれば選手の身体は、どんなことにおいてもレベルを徐々上げる事ができ、これまで不可能だった事を当たり前にすることができる。
その意味から、アスリートにとって最も重要なルールの1つは「既に得たものを失ってはいけない」ということ (積み上げていく過程で基本を失ってはいけない)であり、これはリディアードのトレーニングと現代のトレーニングの大きな違いである。
1960年代の初めに、トップランナーの活動は毎年数カ月でよかった。世界選手権、オリンピックは4年ごとであり、間には地域選手権 (欧州選手権または、コモンウェルスゲームズ)があった。それ以外の大きな大会は存在せず、当時国際レベルのマラソンやロードレースはなく、クロスカントリーだけが発展していった (クロカンがオセアニアにはなかった)。
(※ 編集注、現在はマラソンブームや地元トップ選手の人材不足の影響もあり、欧州の国際クロカン大会は衰退傾向にあるが、80年以上の歴史を持つイタリアのシンクエムリーニ・クロカンを筆頭に世界のトップランナーが集まる大会が数多く存在する)
この年間の競技スケジュールは、アスリートが長期間にわたる基礎トレーニングの準備をすることを可能にするが、普段のトレーニングの強度は、彼らのベストな状態にある、トップレベルの時よりもずっと低い。現在の年間の競技スケジュールでは、最高のランナーの競技活動は1年中続き、最も重要な選択は、すべてのシーズンの期間中に高いレベルのトレーニングを維持することである。
この選択は選手に2つの異なる状況をもたらしている:
a)適切な量と質のトレーニングを継続していけば、もちろん彼らは競技のキャリアにおいて持続的な成長を数年間において続けられる。
トレーニングとは“ある種の刺激に対する身体の答え”であり、刺激とは2つの方向 (拡張と強度)のみであることを忘れてはいけない。近代的なトレーニングの方法論的な指標は、選手のキャリアを通して、高い質のトレーニングの量を増やすことである (それは“質の低いボリューム”ではなく、また“高い質の短い練習”ではない)
b)身体構造の観点から、より多くのエネルギー消費を必要とするが、同時に、強度の高いレベルに対してより多くの適応があり、これは (多くの人が通常考えるとは反対に)故障の可能性を減らす (いうなれば“タフ”になる)。トレーニングに由来する故障は (アクシデント的な故障には関連しない)、正しい準備がなければ高強度のトレーニングに頻繁に起こるからだ。
(例えるなら、たくさんの階段があり、そのすべての階段を飛び越えず、一歩ずつ進まなければならないようなことである。1kmあたりの数秒は異なる階段を表し、1マイルあたり5’00と4’50 では、身体にとっては非常に大きな違いになる)
(編集解説・簡単にまとめると、進化を続けるには年間を通してポイント練習の質と量を増やすしかない。それは主にモーエンが行なっているようなロングインターバルや、ハイペースのロングランの事を指し、低強度で過度に走り込む事ではも無ければ、200m×10のようなショートインターバルでもない。またそれは故障を避けるために少しづつ強度を上げていかなければならない)
また、アメリカ (またはヨーロッパ)とアフリカとでは同じようなトレーニングをすべきではない。すべての選手がアップダウンのあるコースで走り込むとして、ジムでストレングストレーニング (特に耐久性のあるもの)を行うよりも、自重でのコアトレーニングを行う方が効果は高い (フラットな場所で走り込む選手にとっては、それ以上の何かのトレーニングを加えなければならない)。
(※ アフリカでは基本的にマラソン選手がフラットな場所(アップダウンのないコース)で走り込むことはほとんどない = 山に住んでいるため)
(もし、指導者が才能溢れる素晴らしい走りをしている選手を指導することになれば)ヴィヴィアン・チェリヨット (リオオリンピック5000m金メダリスト)やメアリー・ケイタニー (女子マラソン – 女子のみのレースの世界記録保持者)といった、長距離走においてランニングエコノミーが非常に優れている彼女の体重37㎏からみると、(上記の理論に基づいていかないと)スピード能力、その耐久性とエネルギー消費の理想的なバランスを打ち壊すことになる。
(※ 2人ともときよりカノーバが指導する選手)
コーチングは電卓(計算)ではじき出せることではなく、各々の基準で各選手の形態学に基づき、それぞれのトレーニング環境をみて、それぞれに異なる解決策を見つけることである。指導者がはじき出した計算に対しての “理想のプラン”を持つことはできる。しかし、それらを達成させうる要因のすべてをコントロールすることはできない。
アフリカのアスリートを指導するということは、多くのこと (経済面、学業、基本的な教育を受けていない=教養がない、ビザやパスポート、約束を守らない、分析しない…etc)がコントロールできないので、緊急性の高い=その時やるべきことをとっさに管理するということを意味している。
コーチングとは“科学”ではなく“芸術”である。
(ソンドレ・モーエンのトレーニングその④【バレンシアハーフ(59:48)後から福岡国際マラソン(2:05:48)までの6週間のトレーニングメニュー】に続く)
(原文)
http://www.letsrun.com/forum/flat_read.php?thread=8495930&page=5
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【関連記事】
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◎参考:福岡国際マラソン:ノルウェーのソンドレ・モーエンが欧州新記録の2:05:48で優勝し、非アフリカ系ランナー初の2:05台に突入
◎参考:コーチ・カノーバ:福岡国際マラソンのソンドレ・モーエンに関するコメントについて
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ピンバック: ソンドレ・モーエンのトレーニングその①【ハーフ59:48】 – LetsRun.com Japan
福岡マラソンでモーエン選手を知りました!
20キロあたりからテレビで見てたのですが、パッと見1番いいフォームだったので「この人誰だろう?」と気になってました。
凄いポテンシャルの持ち主だったんですね。
若いのでこれからマラソン一本でいくのか、それともトラックの記録を伸ばしてゆくのか楽しみです。
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コーチとともにこれからの方針を決めると思いますが、まずは欧州選手権を目指すのか、ベルリンやシカゴ、ニューヨークなどのマラソンを目指すのかな注目されますね。東京オリンピックではリオオリンピックに続いてマラソンでの出場になると思いますが、かなり手強い存在となりそうです。
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