ソンドレ・モーエンのトレーニングその③【補足の説明について】

◎参考:ソンドレ・モーエンのトレーニングその①【ハーフ59:48】

◎参考:ソンドレ・モーエンのトレーニングその②【練習メニュー詳細】

◎参考:ソンドレ・モーエンのトレーニングその④【バレンシアハーフ(59:48)後から福岡国際マラソン(2:05:48)までの6週間のトレーニングメニュー】

◎参考:福岡国際マラソン:ノルウェーのソンドレ・モーエンが欧州新記録の2:05:48で優勝し、非アフリカ系ランナー初の2:05台に突入

◎参考:コーチ・カノーバ:福岡国際マラソンのソンドレ・モーエンに関するコメントについて

 

(以下、カノーバコーチの書き込みより)

・ドーピングについて (レッツランの掲示板には、一部の欧州選手にドーピング失格者が多い事に厳しい意見を持っているファンが多い)

ソンドレは長い間ノルウェーの反ドーピング機関に協力しており、ケニアでも検査を受けた。WADA (世界アンチドーピング機関)の“居場所通達リスト”入るのは世界トップアスリートに限られているが、国内機関のリストについてはどうなっているのか?これは、人々がケニアについて話すことを拒否したのと同じ問題である。

ケニアのトップ選手はWADAとIAAFによって何回もテストされているが、昨年までケニアの国内の反ドーピング機関は事実上存在していなかった。

(※編集注、ケニアのトップクラスの選手以外はドーピングが比較的容易だった事を示唆している?)

欧州の全ての国では、世界トップ20にランクインしていないアスリートの大部分が、国内の反ドーピング機関によってテストされており、ノルウェーは反ドーピング機関が最も進歩している国の一つである。

 

・カノーバコーチがよく選手に行わせている“80~100m×10の上り坂のスプリントトレーニング”はソンドレも行ったのか。また筋力トレーニングは?

上り坂のスプリント走は週1〜2回行なっている。私達はマラソン選手にウエイトトレーニングは行わせていない。コアと反応性を鍛える一部のジムセッションは行なっている。私はエンデュアランスアスリート (持久系スポーツ)のために、収縮性繊維よりも弾性繊維を鍛える事を好んでいる。

(※編集注、器具を使った筋力トレーニングではなく、バウンディングといったプライオメトリクストレーニングの事を指しているのだと思われる)

 

・マラソンよりも短い距離の種目の記録から予想されるマラソンの想定タイムについてのコメント (レッツラン掲示板にはしばしば計算オタクが現れる)

競技者が同じ期間に全ての種目の自己記録を更新する事ができれば、あなたの計算は完璧だと考えられるが、基本的に自己記録は長年のキャリアにおいて、それぞれ別の年に達成されている。

例えば1500mで3:33の自己記録 (2004年)を持っているエリウド・キプチョゲは、その記録は当時のスピード能力によって達成された記録であるが、現在彼は3:42ぐらいで1500mを走れるだろう。彼が今マラソンで出すことのできる仮の記録 (例えば2:02)はもって、短い距離の種目の想定記録は3:42 – 7:43 – 13:10 – 27:00 – 58:20 (1500m – 3000m – 5000m – 10000m – ハーフ)と考えられる。

短い距離の種目のタイムは、より長い距離の種目の潜在的な可能性について何らかの兆候を示すことはできる。特定のトレーニングはその距離 (種目)のスペシャリストを作り、ある方向へ進むと、反対方向の何かを致命的に失うことを忘れないでほしい。

 

また選手によって、生体力学的作用と、身体構造が異なる事も考慮しなければないらない。例えば5000mと10000mで同じタイムで走る二人の選手がいて、一方は身長180cm・体重70kg、もう一方は165cm・52kgだったとする。大柄なタイプはマラソンペースでの効率が悪く、最も重要なのはマラソンペースでのエネルギー消費を減らすことだ。(通常のハーフマラソンペースの95~96%)

ソンドレについて:彼は現在のトレーニング状況からみて1500mは3:45で走る事ができ、このタイムは彼にとって3000m7:45, 5000m13:10~15, 10000m27:30切りに値する。このタイムで、より長い距離の種目にも適した身体構造やメンタリティを備えているなら、フルマラソン2:06切り、欧州記録 (2:06:35)の更新は2020年までに見る事ができる。これが私が考える彼の将来の最大目標だ。

 

・ソンドレの日常の食生活やストレッチや休養について

まず、休息はトレーニングの一部というのを理解しておく必要がある。

ソンドレは普通の食生活をしている。主にパスタや米、野菜や果物をたくさん。動物性たんぱく質はあまり摂らず (肉や卵)、牛乳だけはよく飲んでいる。

ストレッチについては、ソンドレ (と私が指導している全ての国のアスリート)は頻繁にしていない。あまりに多くのストレッチは時間の無駄というだけでなく、時にはマイナスになることすらある。なぜなら“静的ストレッチ”は反応性を低下させるからだ。彼はモビリティ (流動性)を高めるための“ダイナミックストレッチ”行なっている。

睡眠に関しては、ソンドレは毎日8~9時間の睡眠をとり、昼食の後に午後練習前の短い休憩 (およそ1時間)をとっている。

 

・昨今の年間の競技スケジュールやトレーニング計画について

私の意見では、徐々に段階を踏んでトレーニングをしていれば選手の身体は、どんなことにおいてもレベルを徐々上げる事ができ、これまで不可能だった事を当たり前にすることができる。

その意味から、アスリートにとって最も重要なルールの一つは「既に得たものを失ってはいけない」ということ (積み上げていく過程で基本を失ってはいけない)であり、これはリディアードのトレーニングと現代のトレーニングの大きな違いである。

1960年代の初めに、トップランナーの活動は毎年数カ月でよかった。世界選手権、オリンピックは4年ごとであり、間には地域選手権 (欧州選手権または、英連邦大会=コモンウェルスゲームズ)があった。それ以外の大きな大会は存在せず、当時国際レベルのマラソンやロードレースはなく、クロスカントリー (オセアニアにはなかった)だけが発展していった。

(※編集注、現在はマラソンブームや地元トップ選手の人材不足の影響もあり、欧州の国際クロカン大会は衰退傾向にあるが、80年以上の歴史を持つイタリアのシンクエムリーニ・クロカンを筆頭に世界のトップランナーが集まる大会が数多く存在する)

この年間の競技スケジュールは、アスリートが長期間にわたる基礎トレーニングの準備をすることを可能にするが、普段のトレーニングの強度は、彼らのベストな状態にある、トップレベルの時よりもずっと低い。現在の年間の競技スケジュールでは、最高のランナーの競技活動は一年中続き、最も重要な選択は、すべてのシーズンの期間中に高いレベルのトレーニングを維持することである。

 

この選択は選手に2つの異なる状況をもたらしている:

 

a)適切な量と質のトレーニングを継続していけば、もちろん彼らは競技のキャリアにおいて持続的な成長を数年間において続けられる。

トレーニングとは“ある種の刺激に対する身体の答え”であり、刺激とは2つの方向 (拡張と強度)のみであることを忘れてはいけない。近代的なトレーニングの方法論的な指標は、選手のキャリアを通して、高い質のトレーニングの量を増やすことである (それは“質の低いボリューム”ではなく、また“高い質の短い練習”ではない)

 

b)身体構造の観点から、より多くのエネルギー消費を必要とするが、同時に、強度の高いレベルに対してより多くの適応があり、これは (多くの人が通常考えるとは反対に)故障の可能性を減らす (いうなれば“タフ”になる)。トレーニングに由来する故障 (アクシデント的な故障には関連しない)は、正しい準備がなければ高強度のトレーニングに頻繁に起こるからだ。

(例えるなら、たくさんの階段があり、そのすべての階段を飛び越えず、一歩ずつ進まなければならないようなことである。1kmあたりの数秒は異なる階段を表し、1マイルあたり5’00と4’50 では、身体にとっては非常に大きな違いになる)

 

(編集解説・簡単にまとめると、進化を続けるには年間を通してポイント練習の質と量を増やすしかない。それは主にモーエンが行なっているようなロングインターバルや、ハイペースのロングランの事を指し、低強度で過度に走り込む事ではも無ければ、200m×10のようなショートインターバルでもない。またそれは故障を避けるために少しづつ強度を上げていかなければならない)

 

 

また、アメリカ (またはヨーロッパ)とアフリカとでは同じようなトレーニングをすべきではない。すべての選手がアップダウンのあるコースで走り込むとして、ジムでストレングストレーニング (特に耐久性のあるもの)を行うよりも、自重でのコアトレーニングを行う方が効果は高い (フラットな場所で走り込む選手にとっては、それ以上の何かのトレーニングを加えなければならない)。

(※アフリカでは基本的にマラソン選手がフラットな場所=アップダウンのないコースで走り込むことはほとんどない=山に住んでいるため)

もし、指導者が才能溢れる素晴らしい走りをしている選手を指導することになれば、ヴィヴィアン・チェリヨット (リオオリンピック5000m金メダリスト)やメアリー・ケイタニー (女子マラソン – 女子のみのレースの世界記録保持者)といった、長距離走においてランニングエコノミーが非常に優れている彼女の体重37㎏からみると、スピード能力、その耐久性とエネルギー消費の理想的なバランスを打ち壊すことになる。

(※二人ともカノーバが指導する選手)

コーチングは電卓=計算ではじき出せることではなく、各々の基準で各選手の形態学に基づき、それぞれのトレーニング環境をみて、それぞれに異なる解決策を見つけることである。指導者がはじき出した計算に対しての “理想のプラン”を持つことはできる。しかし、それらを達成させうる要因のすべてをコントロールすることはできない。

アフリカのアスリートを指導するということは、多くのこと (経済面、学業、基本的な教育を受けていない=教養がない、ビザやパスポート、約束を守らない、分析しない…etc)がコントロールできないので、緊急性の高い=その時やるべきことをとっさに管理することを意味している。

コーチングとは“科学”ではなく“芸術”である。

 

(原文)

http://www.letsrun.com/forum/flat_read.php?thread=8495930&page=5

http://www.letsrun.com/forum/flat_read.php?thread=8495930&page=6

http://www.letsrun.com/forum/flat_read.php?thread=8495930&page=7

 

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ソンドレ・モーエンのトレーニングその③【補足の説明について】」への8件のフィードバック

  1. ピンバック: ソンドレ・ モーエンのトレーニングその②【練習メニュー詳細】 – LetsRun.com Japan

  2. ピンバック: ソンドレ・モーエンのトレーニングその①【ハーフ59:48】 – LetsRun.com Japan

  3. SARU

    福岡マラソンでモーエン選手を知りました!
    20キロあたりからテレビで見てたのですが、パッと見1番いいフォームだったので「この人誰だろう?」と気になってました。

    凄いポテンシャルの持ち主だったんですね。
    若いのでこれからマラソン一本でいくのか、それともトラックの記録を伸ばしてゆくのか楽しみです。

    いいね: 1人

    1. Tsukasa Kawarai a.k.a. SUSHI MAN

      コーチとともにこれからの方針を決めると思いますが、まずは欧州選手権を目指すのか、ベルリンやシカゴ、ニューヨークなどのマラソンを目指すのかな注目されますね。東京オリンピックではリオオリンピックに続いてマラソンでの出場になると思いますが、かなり手強い存在となりそうです。

      いいね

  4. ピンバック: コーチ・カノーバ:福岡国際マラソンのソンドレ・モーエンに関するコメントについて – LetsRun.com Japan

  5. ピンバック: ソンドレ・モーエンのトレーニングその④【バレンシアハーフ(59:48)後から福岡国際マラソン(2:05:48)までの6週間のトレーニングメニュー】 – LetsRun.com Japan

  6. ピンバック: 福岡国際マラソン:ノルウェーのソンドレ・モーエンが欧州新記録の2:05:48で優勝し、非アフリカ系ランナー初の2:05台に突入 – LetsRun.com Japan

  7. ピンバック: レナート・カノーバ、日本式マラソントレーニングについて語る – LetsRun.com Japan

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