何て1週間だ。シャレーン・フラナガンによるアメリカ女子40年ぶりのニューヨークシティマラソン優勝。ここではおもにニューヨークシティマラソンについて振り返ってみる。
シャレーン・フラナガンは全力で走り切った
シカゴマラソンでのゲーレン・ラップの優勝の後、我々は彼のラストスパートがマラソンの歴史上で最も速かったかどうかを疑問に思っていた。そしてすぐに、そうではないということをLetsRunのコミュニティが示した。
シャレーン・フラナガンのニューヨークシティマラソンの優勝も同様に、最後の5.2マイル、厳しい上り坂のなかで駆け抜ける姿は印象的であったが、マラソンの歴史上で最も速いラストスパートではなかった。
フラナガンは最後の5.2マイル(約8.4km)=21マイルからゴールまでを26:48で走り、1マイル平均5:08.1(1km平均3:12.5)で走った。ポーラ・ラドクリフがマラソンの世界記録である2:15:25で走った時の1マイル平均は5:09.9(1km平均3:13.7)で、そのレースの最後の12.2km=30kmからゴールまでは1マイル平均5:07.2(1km平均3:12.0)だった。
いずれにせよ、“シャレーン・フラナガン”、“ポーラ・ラドクリフ”、“マラソン”というキーワードを並べることは、フラナガンの偉業を示している。
そして、フラナガンのラストスパートは、ニューヨークシティマラソンの歴史の中で最も速かった。ケイタニーが2:25:07、2:24:25、そして2:24:26で3連覇した2014〜2016年の3年間のレースよりも確かに速かった。しかしながら、ケイタニーのそれらのレースは、フラナガンの今年の優勝タイム(2:26:53)よりも明らかに速い=ラストまでのペースが速かった。
ケイタニーがニューヨークシティマラソンで最も速いラストスパートをかけたのは、2014年に(ドーピング選手の)ジェミマ・スムゴングとの接戦の中でのレースだった。そのレースは非常に風の強く吹いていて、最終的にはケイタニーが3秒差で勝ち、彼女の最後の4マイルは5:10、5:25、5:10、5:09だった。
フラナガンの日曜日のラストスパートは、ラドクリフがニューヨークシティマラソンで3勝した時のそれぞれのレースよりも速かった。
サリー・キピエゴの近況
2017年のニューヨークシティマラソンのレース展望を書いている時、昨年のレースを思い出した。サリー・キピエゴが初めてマラソンを完走(2015年のニューヨークシティマラソンでマラソンデビューを果たしたが、途中棄権)して、2位に入ったレースである。そのレースには我々も驚いた – 彼女はその時すでに妊娠初期であったからだ。今年の7月、キピエゴは“エマ”という女の子を出産した。
エマは最近、ケニアに初めて旅行をして、ケニアの山あいの空気の薄さを初体験し、彼女のおばあちゃんなど、母の家族と会った。
(※キピエゴは2017年1月にアメリカに帰化し、アメリカ人となった。現在はアメリカに住んでいる)
アメリカの市民権を得たキピエゴは、今後どれぐらいで戦線に復帰するだろうか。彼女が今後アメリカのマラソン界をどうリードしていくかに注目している。
今年12回目のロードレースでNYCマラソン3位の大金をゲット:マミトゥ・ダスカ
エチオピアのマミトゥ・ダスカ(34歳)は、今回のニューヨークシティマラソンで14回目のマラソンを終え、ドバイ(2010年)、ヒューストン(2011年)、フランクフルト(2016年)での優勝を含めて、このニューヨークでの3位は、彼女のメジャーなマラソン大会でのキャリアを押し上げた(2009年のマラソンデビューのベルリンマラソンで3位になった)。
ダスカについて我々が興味深く思うのは、2017年の彼女のレース選択である。2016年に3回のマラソン(ドバイ9位、ボストン10位、フランクフルト優勝)を走った後、ダスカは今春のレースからこのニューヨークまでマラソンを走らなかった。しかし、それは彼女が休養を取っていたことを意味するものではない。今年、彼女はアメリカのロードレースを転戦した。
ニューヨークシティマラソンは、ダスカのアメリカでの今年12回目のロードレースだった。短い距離のレースを春先から転戦して、マラソンで良い成績を残して締めくくる。ハリド・ハヌーシが昔そのようなレースの選択をしていたことがあるが、2017年の今となってはそのような選手は稀である。現在までに、2017年でダスカはアメリカのロードレースで$97,000(1000万円以上)を稼いでいる。
彼女は後半戦でニューヨークの$40,000の給料日を迎えたのにもかかわらず、後半($ 46,500)よりも、距離の短いレースを転戦した前半、7月9日まで($50,500)のほうが多く稼いでいるということは注目に値する。完走出来るかも保証されていないマラソンで稼ぐか、短い距離のレースで稼ぐかはあなた次第である。以下がダスカの今年の12回のアメリカでのロードレースの結果である。
1月15日 – アルムコ・ヒューストンハーフマラソン
5位 マミトゥ・ダスカ, 33歳, エチオピア 1:09:01 $2,000 + $3,000(ボーナス)
2月26日 – ワールドベスト10km
2位 マミトゥ・ダスカ, 33歳, エチオピア 31:59 $7,500
3月2日 – クレジット・ユニオン・チェリーブロッサム10マイル
4位 マミトゥ・ダスカ, 33歳, エチオピア 54:45 $1,500
4月1日– クーパー・リバー・ブリッジ・ラン
3位 マミトゥ・ダスカ, 33歳, エチオピア 32:47 $1,500
4月9日 – UAEヘルシー・キドニー10km
1位 マミトゥ・ダスカ, 33歳, エチオピア 31:37 $10,000
4月15日 – オールステート・シュガー・ボール・シティ・クラシック10km
1位 マミトゥ・ダスカ, 33歳, エチオピア 32:19 $6,000
5月7日 – ライラック・ブルームズデイ
2位 マミトゥ・ダスカ, 33歳, エチオピア 40:21 $4,500
5月29日 – ボルダー・ボールダー10km+インタナショナルチームチャレンジ
1位 マミトゥ・ダスカ, 33歳, エチオピア 32:44.9 $3,000 + $1500(ボーナス) + $5,000(チーム)
6月10日 – NYRRニューヨークミニ10km
2位 マミトゥ・ダスカ, 33歳, エチオピア 32:09 $5,000
7月9日 – ウティカ・ボイラーメーカー15km
4位 マミトゥ・ダスカ, 33歳, エチオピア 49:33 $1,500
8月20日 – ニューバランス・ファルマウスロードレース
4位 マミトゥ・ダスカ, 33歳, エチオピア 37:00 $5,000
11月5日 – TCSニューヨークシティマラソン
3位 マミトゥ・ダスカ, 34歳, エチオピア 2:28:08 $40,000
ARRS.netによると、ダスカは生涯で$1,000,000(1億円以上)以上を稼いでおり、その1/4が2010年のドバイマラソンでの優勝賞金の$250,000である。
(※エージェントの取り分や、現地での諸税、祖国に収める諸税などが差し引かれるので、実際に手にするお金は半分程度かそれ以下になる)
ブゼ・ディリバ — トラックキャリアを卒業してアメリカのロードレースを転戦する — 今年12回のアメリカでのレースについて
我々は“賞金稼ぎ”の観点から、なぜアフリカのマラソンランナーがマラソンではなく、より短い距離のレースを転戦するのか、を上に記した。そのことはマラソンランナーだけではなくトラックの選手などの短い距離を走るランナーにとっても同じことが当てはまる。
例 – 23歳のブゼ・ディリバ。 ディリバは2012年の世界ジュニア選手権で5000mで優勝、18歳で5000mを14:53で走った。翌年彼女は14:50に記録を伸ばし、モスクワ世界選手権では19歳にして5000mで5位になった。それ以来、彼女は何をしている?
トラックを引退した? 最近の3年間、彼女は基本的に春〜夏のトラックレースをほとんど無視して、ロードレースにフォーカスした。 今年、彼女はその傾向をさらに進め、基本的にはすべてのトラックレース(1回だけ3000mを走った)を避けて、アメリカのロードレースを転戦した。ダイヤモンド・リーグを転戦していて優勝を争っている場合を除いて、アメリカのロードレースを転戦することは、ダイヤモンド・リーグを転戦するよりも稼げるだろう。
ダスカのように、今年はディリバがアメリカで12回もレースを走った。そして、ニューヨークシティマラソンのダスカのように、ディリバは先週のレースが最大の給料日となった。 EQTピッツバーグ10マイルで優勝し、PRROスーパーボーナスの$10,000を加えて合計$14,000を獲得した。 それは彼女に年間総額$58,750の賞金をもたらした。 以下が彼女の2017年の12レースである。
3月25日 – アザレア・トレイル・ラン10km
2位 ブゼ・ディリバ,23歳, エチオピア 32:49 $2,000
4月2日 –クレジット・ユニオン・チェリーブロッサム10マイル
2位 ブゼ・ディリバ,23歳, エチオピア 53:52 $4,000
4月16日 – B.A.A.5km
1位 ブゼ・ディリバ,23歳, エチオピア 14:54 PB $7,500
5月7日 – ライラック・ブルームズデイ・ラン
1位 ブゼ・ディリバ,23歳, エチオピア 40:19 $7,000
6月2日 – アディダス・ブースト・ボストン・ゲーム(トラック3000m)
1位 ブゼ・ディリバ,23歳, エチオピア 8:45.44(賞金不明)
6月21日 – ベイ・トゥ・ブレイカーズ12km
1位 ブゼ・ディリバ,23歳, エチオピア 39:48 $3,000 + $2,500(ボーナス) + $5,000(チーム)
6月25日– B.A.A.10km
3位 ブゼ・ディリバ,23歳, エチオピア 31:37 PB $3,000
7月9日 – ウティカ・ボイラーメーカー15km
5位 ブゼ・ディリバ,23歳, エチオピア 49:41 $1,250
7月23日 – ワーフ・トゥ・ワーフ6マイル
1位 ブゼ・ディリバ,23歳, エチオピア 31:19 $4,000
8月26日 – HAPクリム10マイル
1位 ブゼ・ディリバ,23歳, エチオピア 51:49 $3,000
10月8日 – B.A.A.ハーフマラソン
4位 ブゼ・ディリバ,23歳, エチオピア 1:13:04 $2,500
11月5日 – EQTピッツバーグ10マイル
1位 ブゼ・ディリバ,23歳, エチオピア 52:12 $14,000
確かに年間で$58,000(600万円以上)をレースで稼ぐのは簡単ではない。我々は、ディリバのような選手がどのようにしてレースを転戦しているのかを疑問に思う。彼女は一体どこに住んでいるのか、どこを拠点にしているのか?(彼女のB.A.Aハーフでの記載を見たところ、我々は彼女の拠点がアルバカーキだと推測する)彼女は一体いつエチオピアに帰っているのか?もしそれを知っていれば↓メール↓を下さい。
robertjohnson@letsrun.com
レッツラン記事