ニューヨーク – 40年ぶりにアメリカの女子選手がニューヨークシティマラソンで優勝を達成。 36歳のシャレーン・フラナガンが23マイル(37km過ぎ=ラスト5km)からのロングスパートを決めて、4連覇を狙ったケニアのメアリー・ケイタニーを引き離し、2017年のTCSニューヨークシティマラソンを※2:26:53のゴールタイムで優勝した。
(前半1:16:18+後半1:10:35、35〜40km:15:57、ラスト2.195km:7:00)
Embed from Getty Images女子のレースは早々にスローペースのレースとなった。15人の先頭集団が中間点を1:16:18で通過した。 20マイル(32km)を過ぎて9人の選手が先頭集団にいた(1:54:39=2:30:17ペース)。しかし、その後の21マイル目は5:26で、それまでのレースの中では最速のラップを刻んだ=ペースが上がり、フラナガン、ケイタニー、エチオピアのマミトゥ・ダスカが対応し、3人の一騎打ちとなった。
しかし、レースはそこから更にヒートアップしていき、 22マイル目は5:09(1km3:13ペース)で、23マイル目は5:08(1km3:12ペース)だった。その23マイル目からフラナガンは独走態勢に持ち込み、セントラルパークの丘の厳しい上りではフラナガンは飛ぶように駆け抜けた。彼女は25マイル目を5:11(1km3:14ペース)、25マイル目を5:04(1km3:10ペース)、26マイル目を5:12(1km3:15ペース)という素晴らしいロングスパートで走り抜けて、40年ぶりの快挙を達成した。
ケイタニーは2:27:54で2位、ダスカは2:28:08で3位に入った。同一年のボストンマラソンとニューヨークシティマラソンの制覇を期待された、ケニアのエドナ・キプラガトは2:29:36で4位になり、アメリカのアリー・キーファーが2:29:39の自己新で5位に入った。キーファーはこのレースに、室内のマラソン世界記録保持者(2:44:40)として出場し、それは今年の2月にニューヨークで記録されたばかりで、その記録は今日までの彼女の自己記録だった。
アメリカのマラソン界にとってこんな素晴らしい1年になるとは…
4月には、ボストンマラソンでゲーレン・ラップが2位に入り、ジョーダン・ハセイが女子の初マラソン全米歴代最高記録の2:23:00で3位に入った。アメリカ人選手が活躍した今年前半のマラソンレースでは恐らく最高のパフォーマンスだった。
その後、8月のロンドン世界選手権でエイミー・クラッグが銅メダルを獲得した。さらに、シカゴマラソンではゲーレン・ラップが優勝、ハセイが全米歴代2位の2:20:57で走った。今日までで、すでにアメリカのマラソン界にとって素晴らしい1年となっていた。
Embed from Getty Imagesしかし、今日フラナガンがそれらのインパクトを全て上回った。ラップのシカゴでの走りは素晴らしかったが、フラナガンは地球最強のマラソンランナーのケイタニーをセントラルパークの丘でねじ伏せたのだ。土曜日の夕方の時点での予想コンテストでは、今回のフラナガンの優勝を予想している人はわずか0.8%だった。
しかし、今日のレースをあなたの脳裏に焼き付けるべきだ。今回のレースはメブ・ケフレジギが優勝した2014年のボストンマラソン以来の、アメリカ人選手による“記憶にも記録にも残る”素晴らしいマラソンだった。
今日フラナガンが勝ったのは運命だったのか?
スポーツは時として“日常の喧騒からの逃避”であり、そこで優勝するということは、話が出来すぎて信じられないぐらいである。
メブ・ケフレジギが、ボストンマラソンで爆破テロが起こった翌年に、長らく達成できていなかったアメリカ人選手の優勝を成し遂げた。
シャレーン・フラナガンは、ニューヨークのウェストサイド・ハイウェイでテロ事件が起こった、たった5日後に、40年間止まっていたニューヨークシティマラソンでのアメリカ人選手としての優勝を達成した。
ヒューストン・アストロズが、ハリケーン・ハービーが直撃した直後に、史上初のワールドシリーズ優勝を成し遂げた。
“先日、ニューヨークで起きたテロ事件の事が心にあったかどうか?”
そう尋ねられたフラナガンは、次のように答えた。
フラナガンのレーツ後のツイート
「スポーツは、人々を安心させて笑顔にさせる“1番の手段”よ。世界中の良くないことも忘れさせてくれるような。このレースの前は、もちろんニューヨークの人々にとって辛い1週間になると思ったわ。その気持ちはとてもわかる」
「私も2013年のボストンマラソンの爆破テロの時に、そこに居合わせていたから。ゴールした後にそのことを考えて、メブが2014年にボストンマラソンで優勝したことは本当に素晴らしいことだったと思った。そして、今度はニューヨークで自分が、メブと同じ存在になれて、本当に素晴らしい気持ちだったわ」
【ニューヨークシティマラソン女子:結果】
順位 | 名前 | 国籍 | 記録 | 1マイル平均 |
1 | Shalane Flanagan | アメリカ | 2:26:53 | 5:37 |
2 | Mary Keitany | ケニア | 2:27:54 | 5:39 |
3 | Mamitu Daska | エチオピア | 2:28:08 | 5:39 |
4 | Edna Kiplagat | ケニア | 2:29:36 | 5:43 |
5 | Allie Kieffer | アメリカ | 2:29:39 | 5:43 |
6 | Sara Dossena | イタリア | 2:29:39 | 5:43 |
7 | Eva Vrabcova | チェコ | 2:29:41 | 5:43 |
8 | Kellyn Taylor | アメリカ | 2:29:56 | 5:44 |
9 | Diane Nukuri | ブルンジ | 2:31:21 | 5:47 |
10 | Stephanie Bruce | アメリカ | 2:31:44 | 5:48 |
11 | Buzunesh Deba | エチオピア | 2:32:01 | 5:48 |
12 | Christelle Daunay | フランス | 2:32:09 | 5:49 |
13 | Aliphine Tuliamuk | アメリカ | 2:33:18 | 5:51 |
14 | Emma Quaglia | イタリア | 2:34:10 | 5:53 |
15 | Serkalem Biset Abrha | エチオピア | 2:34:23 | 5:54 |
16 | Askale Merachi | エチオピア | 2:36:38 | 5:59 |
17 | Adriana Aparecida Da Silva | ブラジル | 2:37:22 | 6:01 |
18 | Jessica Augusto | ポルトガル | 2:37:33 | 6:01 |
19 | Belaynesh Fikadu | アメリカ | 2:39:01 | 6:04 |
20 | Laurie Knowles | アメリカ | 2:40:09 | 6:07 |
21 | Kaoru Nagao | 日本 | 2:44:26 | 6:17 |
22 | Kate Pallardy | アメリカ | 2:44:48 | 6:18 |
23 | Charlotte Karlsson | スウェーデン | 2:45:52 | 6:20 |
24 | Beverly Ramos | プエルトリコ | 2:46:45 | 6:22 |
25 | Manuela Soccol | ベルギー | 2:47:04 | 6:23 |
フラナガンの所属するバウワーマン・トラック・クラブ(BTC)のツイート
アメリカの女子長距離選手による40年ぶりの快挙を伝える各メディア
フラナガンと同じくリオオリンピック女子マラソン全米代表のデジ・リンデンのツイート
フラナガンのコーチであるジェリー・シューマッカーからレース後に祝福される
レッツラン記事
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