Galen Rupp Shatters The American 10,000 Record By Running 26:48.00
ゲーレン・ラップが26:48.00で走り、10000mの全米記録を塗り替える
〜 ラップが男子10000m歴代16位(当時)の記録を出し、ケネニサ・ベケレは2011年シーズン世界最高記録の26:43.16で優勝 〜
2011年9月16日
25歳(当時)のゲーレン・ラップは、ブリュッセルDLの10000mを26:48.00で走り、その1年前の5月にクリス・ソリンスキーが記録した26:59.60の全米記録を更新した。ラップは3位に入り、ケネニサ・ベケレが26:43.16で優勝し、2011年シーズン世界最高記録をたたき出した。
ラップはレース全体を通して先頭集団に位置し、5000mを13:26.63で通過。残り4周で、先頭集団にはまだ11人の選手が残っており、ラップが全米記録を更新するのは、この時点でほぼ確実だった。残り800m、ラップは2番手に順位を上げ、全米新記録はさらに確実となった。ここで先頭集団は3人に絞られる。
ラスト2周、ケネニサ・ベケレが位置を押し上げ、残り550m地点でラップを抜いて2番手に浮上する。ベケレとケニアのルーカス・ロティチがラップを引き離しにかかる。ラスト1周の鐘がなると(この地点でラップのタイムは25:47)、ラップは先頭の2人から約3m後ろを走っており、その差は2人が優勝争いをしているうちに広がっていった。ベケレは26:43.16の1位でフィニッシュし、ロティチは26:43.98の2位でゴールした。
ラップの出した26:48.00というタイムは、男子10000mの歴代記録の中での順位を押し上げる結果となった。26:48.00の記録は、男子10000mにおいて世界歴代16位(当時)であり、同一選手の複数回パフォーマンスを含めると、世界歴代29番目(当時)のタイムとなった。ちなみに、クリス・ソリンスキーが出した本来の全米記録の26:59.60は、男子10000mにおいて世界歴代39位(当時)であり、同一選手の複数回パフォーマンスを含めると、世界歴代81番目(当時)のタイムとなった。
レース後にヨーロッパの放送を観ていると、ベケレが大きく注目されていたが、スタンドでラップがアルベルト・サラザールと抱擁をしている姿が映ったのを逃さなかった。コメンテーターは優勝したベケレにインタビューをし、ベケレは、
「2年ぶりにトラックに復帰するのはとても辛かった」
と、話していた。
「優勝できて素晴らしい気分だ。復帰するのはすごく大変だった。ここに戻ってこれる力を与えてくれた神に感謝したい」
そのようにベケレは述べた。そして、
「本当のケネニサが復活しましたか?」
というコメンテーターの質問に“もちろん”と答えていた。
ラップとサラザールは、全米記録に値する練習をしてきた。このレースはとても面白いレースだったが、なぜ多くの人々がラップを今まで注目してこなかったのかが理解できない。ラップは7月にエチオピアのイマネ・メルガをやぶって、大邱世界選手権の10000mで7位に入った選手だ。十分に27:00を切る素質はあったはずだ。
このような特別な日にネガティブな指摘をしたくはないが、今回のレースのゴールシーンは、大邱世界選手権の5000mを思い出させる。その時も、ラップはラストスパートかけたものの、優勝したファラーに5.28秒差で負けたのだ。このレースも、ベケレに4.74秒差で負けている。
このレースは、モー・ファラーが26:46.57で優勝した2011年のプリフォンテーンクラシックの10000mを思い出させる。ファラーはラスト1000mを2:30.72で走ったが、今回のベケレのラスト1000mは2:29.44だった。
【レース結果】
【ラップタイム】
1000m グレゴリー・ベグネット (フランス) 2:38.95
2000m グレゴリー・ベグネット (フランス) 5:19.46(2:40:51)
3000m エリウド・キプチョゲ (ケニア) 8:03.99(2:44:53)
4000m ジョセフ・キプリモ (ケニア) 10:42.92(2:38:93)
5000m タイタス・ムビスヘイ (ケニア) 13:26.63(2:43:69)
6000m タイタス・ムビスヘイ (ケニア) 16:07.48(2:40:85)
7000m エリウド・キプチョゲ (ケニア) 18:49.09(2:41:61)
8000m エリウド・キプチョゲ (ケニア) 21:30.65(2:41:56)
9000m ルーカス・ロティチ (ケニア) 24:13.72(2:43:07)
10000m ゲーレン・ラップ (アメリカ) 26:48.00 (2:35)
前半5000m13:26+後半5000m13:22
レッツラン記事
http://www.letsrun.com/2011/brussels-2648.php
**********************************************************
Galen Rupp Runs 26:44.36 To Break His American Record
ゲーレン・ラップ、26:44.36で走り、自らの全米記録を更新する
2014年5月31日
Embed from Getty Imagesゲーレン・ラップはラスト800mを1:57という素晴らしいタイムで締めくくり、2014年のプリフォンテーンクラシックの10000mを26:44.36で優勝、自らが持つ26:48.00という全米記録を更新した。レース後のテレビのインタビューで、ゲーレンのコーチであるアルベルト・サラザールは、
「ゲーレンの妻で、双子を妊娠しているケアラが入院していて、ゲーレンは彼女の側にいるために、この1か月のほとんどを病院のベッドで寝ていた」
と、明かした。しかし、サラザールはゲーレンのこの記録を、ある程度は予想していたようだ。レース後のインタビューで、ラップは2週間前のOxyでの5000mのレースで、コリス・バーミンガムに敗退を喫したことに関して、
「気持ちの整理をしてきた」
と、語った。そのことに関しては深くは語らなかったが、
「地元のオレゴンに戻って、Oxyよりもプリフォンテーンクラシックに向けた調整の方がうまくいったので、この素晴らしい走りにつながった」
と、述べた。ラップはOxyでの5000mを13:19で走った。しかし、この10000mのレースでは、後半の5000mを13:18で走った。今夜のレース後、
「勝つためにここに来た。残り300mまでは余力を残しておいて、ラストスパートをかけた。全ては勝つための戦略だ。アルベルトからは“調子が良ければ残り2、3周までは余力を残しておけ”と、言われた」
と、ゲーレンは話した。まさに、ゲーレンはコーチの指示通りの走りをした。
残り850m地点でラップは先頭を奪って、2番手を走っていたポール・タヌイ(モスクワ世界選手権銅メダリスト)が粘っていたが、この後ラップを止めることができる選手はいなかった。
Embed from Getty Images「ここに戻って来れて本当に嬉しい。10000mに向けた練習もうまくいっており、良いタイムが出せるのではないか、と思っていた。すごく嬉しい。来年の北京世界選手権やその後のリオオリンピックに向け、いい走りで記録を残すことができた」
産まれてくる双子の子どもに関しては、
「父親になることが待ち遠しい」
と、述べた。全米新記録と、双子の父親になるということで、おめでとう、ゲーレン。
スティーブ・プレフォンティン×2回
ラップは、スティーブ・プレフォンティン(←必見!!)の39回忌の大会で、全米新記録を出した。アメリカの長距離ファンには理解しがたいかもしれないが、ラップは全米記録を出すために、プリフォンテーンの5000mの自己記録のペースで、その倍の距離を走ったのだ。
プリフォンテーンの5000mの自己記録は13:21.87。もし、彼がそのペースで10000mを走り切ったとすれば、それは26:43.74になる。ラップは、26:44.36で走った。ラップの方、プリ(プリフォンテーンの愛称)の5000m自己記録より平均2秒速いことになる。信じられない。
2週間前の5000mを13:19で走り、今夜は10000mを26:44で走る。信じがたい結果だが、ラップにはちゃんとした理由がある
レース前は、15日前のOxyの5000mを13:19で走った選手が、倍の距離の10000mを同じ速さで走ることをイメージするのは難しいと思っていた。しかし、レース後にラップと話をして、
「Oxyではメンタルの状態が100%ではなかった」
ということがわかった。ラップの妻が双子を妊娠中であることをレース後に明かし、
「そのこともあってOxyでは十分な結果を残せなかった」
と、ほのめかした。
「プライベートでいろんなことがあったんだ。もう1度集中しなおした。調整しなおして休養が必要だったんだ」
と、ラップは述べた。また、
「Oxyの時よりもプリフォンテーンクラシックの時の方が、調整期間や休養期間が、たくさんとれた」
と、付け加えた。妊娠中の妻が待つ地元に戻ってきた安堵感と、レースへの調整が整えば、2週間前のOxyのレースよりも、プリフォンテーンクラシックでのレースのほうが格段にいい結果が出せるのは、説明がつくだろう。
ゲーレン・ラップはスティーブン・サンブに“ビールを奢るべき”だ
10000mで記録を狙うために必要なものは、良いペーサーの存在である。そして、スティーブン・サンブは今夜のレースで、ラップのペーサーとしての役割をほぼ完璧にこなした。ナイキ・オレゴン・プロジェクトのピート・ジュリアンコーチが、レース後にミックスゾーンにやってきて“サンブに祝福の言葉をかけたいから、サンブの居場所を教えてくれ”と、聞きまわっていた。
先頭集団は、最初の20周(8000mまで)を1周64秒前後(ラップの全米記録更新のためには1周平均64.3で走る必要があった)で刻んでいて、サンブはそのペースを、先頭をポール・タヌイに許した8100m近くまで保った。サンブはその後、なんとか先頭集団に付いて、そのままゴールし、見事に26:54.61という自己新記録を出した。34秒も自己記録を更新したのだ。
全米新記録への好アシストをみせたスティーブン・サンブ ©2014 Photo Run / LetsRun
サンブが3週間前にニューヨークで開催されたヘルシー・キドニー10kmで、ロード10kmの世界記録保持者であるレオナルド・コモンを破ったことを考えると、サンブのような能力を持った選手がペースメーカをするのは驚きであった。しかし、8000m過ぎまで26:48ペースで走れる選手を見つけることは難しく、サンブはこの重要な役割を果たすのにはピッタリの選手だったのだ。
もし、サンブが序盤からレースを引っ張る必要性が無かったら、3位だったビダン・カロキ(サンブとは2秒差)や2位のポール・タヌイ(サンブとは5秒差)にも勝っていたかもしれない。ラップももちろん称賛されるべき選手であるが、サンブもそうである。元アリゾナスター(アリゾナ大学で活躍)は素晴らしい走りで、ラップのお膳立てをした。
2位のポール・タヌイ、1位のラップ、3位のビダン・カロキ ©2014 Photo Run / LetsRun
【レース結果】
1 Rupp , Galen USA 26:44.36 全米新記録、北米新記録
2 Tanui , Paul Kipngetich KEN 26:49.41 自己新記録
3 Karoki , Bedan KEN 26:52.36 自己新記録
4 Sambu , Stephen KEN 26:54.61 自己新記録
5 Bett , Emmanuel Kipkemei KEN 27:21.61
6 Kipkemoi , Kenneth Kiprop KEN 27:30.94
7 Elabbassi , El Hassan MAR 27:32.96
8 Medhin , Teklemariam ERI 27:38.83
9 Nebebew , Birhan ETH 27:42.89
10 Toroitich , Timothy UGA 27:43.27
11 Kifle , Goitom ERI 27:43.30
12 Tahri , Bouabdellah FRA 27:57.52
13 Chelanga , Samuel KEN 27:59.74
14 Korir , Leonard KEN 28:01.85
15 Too , Wilson Kiprono KEN 28:03.21
Braun , Aaron USA DNF
Demelash , Yigrem ETH DNF
Kigen , Mike Kipruto KEN DNF
St.Lawrence , Ben AUS DNF
Wolde , Dawit ETH DNF
Gala , Mumin DJI DNS
レッツラン記事
http://www.letsrun.com/news/2014/05/flash-galen-rupp-runs-2644-36-break-american-record/
関連記事
男子10000mアメリカ人選手による26分台の振り返りその1:クリス・ソリンスキー衝撃の10000mデビュー戦 – 人類初の非アフリカ系選手による26分台への到達
ピンバック: (過去記事)男子10000mアメリカ人選手による26分台の振り返りその1:クリス・ソリンスキー衝撃の10000mデビュー戦 – 人類初の非アフリカ系選手による26分台への到達 – LetsRun.com Japan