日曜日に、ここ数年間のうちで最も期待されている大会、BMWベルリンマラソンが開催され、エリウド・キプチョゲ、ウィルソン・キプサング、ケネニサ・ベケレらが出場する。大会主催者は、このビッグ3のインタビューの撮影許可を我々に与えてくれた。下の動画からインタビューの様子を見ることが出来る。キプチョゲのインタビューが一番短く(2分以内)、キプサングが一番長く話した(6分)。彼らのインタビューから、キーとなる箇所を抜粋した。
ケネニサ・ベケレ:「最高のレースになることを祈ってるよ。誰とでも戦えるという、確固たる自信がある」
去年のベルリンマラソンで、世界記録にあと少しのところまで迫ったベケレは、
「強い選手が多く出るレースでは、結果をあらかじめ予想することは不可能であり、レース展開もどうなるかわからない」
と、述べた。しかし、彼自身は今回のレースに大きな希望を抱いている。
「これまでで、最高のレースになることを祈っている」
ベケレのペース戦略/レース戦略
「みんな違うレースの戦略を考えているだろうから、レースをしながら様子を見ていくよ。レース中に何が起こるかは誰もわからないから、自分の調子に従って走るよ。計画としては、ペーサーに付いていって様子を見る。もちろん、もっと重要なことは、レース中に自分の身体の調子に耳を傾け、レース中にどう走るべきか柔軟に考えることだ」
強みと弱みについて聞かれたベケレ
「小さな故障をしていたので、何回かは練習が出来なかった。だから、自分のプラン通りの練習を100%積めたわけではないことが今回の弱点かな。自分の強みは、自分を信じていること。もっと強くなれる、強い選手とも戦える。自分は一番強い、それが私の強い部分だ。誰とでも戦えるという、確固たる自信があるよ」
エリウド・キプチョゲ:「日曜日のレースを本当に楽しみにしている…良い結果は選択肢の1つではなく、絶対に必要なものだ」
キプチョゲは、
「日曜日のレースを本当に楽しみにしている」
という言葉からインタビューを始め、心からレースを楽しみにしていて、興奮していた。しかし、キプチョゲは彼自身の事についてだけ話し、ライバルのことについては語りたがらなかった。
「自分のペースで走るよ。他の選手については語りたくないが、彼らのことはみんな尊重している」
キプチョゲの中では、失敗するという選択肢はない。
「良い結果を残すためにここに来たと言われるが、良い結果は選択肢の1つではなく、絶対に必要なものだ」
“どのぐらいのペースで走れるか?”と聞かれたキプチョゲは、キプチョゲがBreaking2を走ったことを思い出させるように言った。
「思い出してほしい、私は2:00:25の※自己記録を持っているんだ」
(※非公認記録)
また、キプチョゲは今回のレースは大きな賭けであると思っている。
「世界記録を目指してここに来たが、私たち3人はみんな強い。でも優勝出来るのは、たった1人だ」
ウィルソン・キプサング:調子は去年に比べると“相当良い”と述べ、“世界記録が出る確率は80%”だと言った
キプチョゲと同じく、キプサングも日曜日のレースを楽しみにしていた。
「もう1度ここで戦えることを楽しみにしている。自己記録と※大会記録を狙って走る」
(※大会記録=世界記録)
「豪華メンバーが集まるこのレースに招待頂きとても光栄だ。大会に出て優勝して良いタイムで走れることはあるが、他の強くて素晴らしい選手たちと対戦出来る機会はそんなに多くはない。だから、今回はこの強い3選手が出場する、という素晴らしい機会だ。誰もが世界記録を出せるポテンシャルがある。そして、みんなそれを目指して走る。確実に言えるのは、今までのどんなレースよりもタフなレースになるだろう、ということだ」
キプチョゲと違って、キプサングはライバルの事についても語った。キプチョゲの素晴らしさについて聞かれた際には、キプチョゲの“一貫性”と“最初から積極的に走る意思”を称賛した。ベケレについては、ベケレは後半勝負で、最後に巻き返す展開のを得意にしている、とキプサングは語った。
「ベケレは(ペーサーが抜けてから)あまり前に出たがらない。彼は、後ろでタメていて、ゴールに近くになってきてジワジワトとスパートをしてくる。終盤に差を詰めて、追い上げてくるが、時としてそれが※うまくいかない時もある」
(※キプサングは2017年のロンドンマラソンをその例として出した)
「キプチョゲは、もっと一貫して(Breaking2のように)イーブンペースで走る。だから、もしペーサーがペースを保てなくなると、彼にとっては走りづらく感じるかもしれない」
キプチョゲのカギとなる部分は、5月6日に行われたBreaking2のレースから十分に回復しているか、という部分だと述べた。通常の※春のマラソンよりも、遅いタイミングでのイベントだったからだ。
(※4月のパリマラソン、ロンドンマラソン、ボストンマラソンなど)
「もし彼が十分に回復していないようであれば、それは彼にとって大きな壁となる。彼は最近すごいスピードで走っている。でも、彼の調整の出来はわからない。“テスト”みたいな感じだよ。テスト期間中は、勉強して準備をする。勉強したことがテストに出れば、ラッキーだ。そうすれば、テストも合格することができるかもしれない。誰もがベストな準備をしてきたはずだ」
去年のベルリンマラソンで2:03:13で走った時の調子と、今年の調子を聞かれた際、キプサングはとても前向きだった。
「去年と今年の調子を比べると…去年よりは、かなり良い状態だと言える。去年より速いタイムで走れる可能性が十分にある。今年やってきた事が全てがうまくいけば、もっと速く走れるポテンシャルが自分にあると思う。去年より良い記録で走れば、友達のケネニサ・ベケレにも勝てると思う」
世界記録の可能性を聞かれたキプサングは、明確にこう答えた。
「可能性は80%あると思う。90%とは言えないが、80%はある。我々が世界記録を出す可能性は相当高い。世界記録に向けて走ればね。ライバルをやぶるのではなく、世界記録のために走る。だから、もしみんながタイムを狙いにいくとすれば、可能性は80%だ」
世界記録を狙って、かつ優勝も狙いにいくのは、
「とても難しい」
と、キプサングは最後に付け加えた。
「ベケレは昨年のベルリンマラソンで、キプサングに勝とうとして世界記録を逃した」
と、キプサングは語った。
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