2017年8月4日
もし、あなたがウガンダのジョシュア・チェプテゲイについて詳しく知らないのであれば、ファラーが歴史的勝利をしたロンドン世界選手権男子10000m決勝のレース (結果) (動画)で、ファラーを最後まで追い込んだ選手がチェプテゲイだ。(ファラーがトラックを去った)10000mにおいて、ファラーの後継者と言われるのがチェプテゲイだ。

ロンドン世界選手権の前に、チェプテゲイが走った国際的なレースと言えば、彼の故郷であるウガンダのカンパラで開催された2017年の世界クロスカントリー選手権の男子シニアの部10kmだ。チェプテゲイは、地元の大きな声援に後押しされ、ケニアのジョフリー・カムウォロルなどの選手をレースの途中から振り切ろうと、突然ロングスパートをかけた。(2位のカムウォロルと大差をつけて残り数kmを迎えたが…)
しかし、その後チェプテゲイは残り800mで突然止まってしまった。真っ直ぐ走れなくなり、灼熱の中、意識朦朧と、よろめきながらも30位でゴールした。そのレースをまだ見ていないのなら、そしてそれを見るにあたって心の準備が出来ているならば、観るに値するレースだ。
なんと衝撃的だろうか。あなたがもし、我々と同様に直接、この会場で彼を見ていたとしたら、チェプテゲイの根気とその逞しさに感銘を受けることは間違い無い。チェプテゲイは世界最高レベルの選手になる資質を持っている。このロンドン世界選手権での注目点は、彼が“精神的、身体的逆境に、どのように立ち向かうのか”、ということだった。

彼はそれらを完璧に打ち破った。それが答えだった。彼は26:49.94という自己新記録を叩き出し、強豪相手に見事に銀メダルを獲得した。この世界選手権後のインタビューにて、世界クロスカントリー選手権後は自分の殻に閉じこもってしまったという。みんな自分の事を“かわいそうだ”と思っていたから、とチェプテゲイは述べた。
「カンパラ (世界クロカン)は調子は良かったが、運がなかった。そこから立ち直るのに数週間、時間がかかった。人と会う度に、みんな自分の事を“かわいそうだ”と思っていたし、そのことを聞かれる度に気分が悪くなった。だから、しばらくは家で1人で過ごした。そして妻が寄り添ってくれた。それから、妻とマネージャーが支えてくれて、それで自分は世界選手権の舞台まで戻ってこれた。もう以前にのように自分を見失ったりはしない。自分は復活したから、もっともっと上を目指せる」

そして、彼は確かにこの世界選手権で1つ上のレベルに到達した。20歳にして (彼は21歳だと言っているが、まだ正式には21歳にはなっていない)、今回でトラック競技から引退するファラーの後継者としての呼び声高い。その事について聞かれると、彼はこう答えた。
「ハイレが活躍し、そして引退した。ケネニサも活躍し、トラックを去った。次はモー・ファラーが、トラックを去る。誰にでもその時はやってくる。自分にもその時はやってくる」

「次の世界選手権は、今回とは違ったものになると思う」
※(2019年ドーハ世界選手権男子10000mで金メダル獲得)
秘めたる潜在能力
チェプテゲイは、たった4年前「高校卒業の頃から競技を始めた」と語った。彼は2014年のユージン世界ジュニア選手権で早くも頭角を現し、10000mにおいて世界ジュニア選手権の舞台で頂点に君臨した。その後、オランダのスポーツマネジメント会社であるグローバルスポーツと契約をした。
その当時はケニアの※1パトリック・サングの※2指導のもとでトレーニングを積んでいたが、今は彼の地元である“ウガンダのカプチョルワ”という地域で、オランダ人コーチのアディ・ルーターに指導を仰いでいる。
(※1:エリウド・キプチョゲやカムウォロルのコーチ)
(※2:ケニアのカプタガトのグローバルスポーツのキャンプ)
チェプテゲイは、ウガンダの次の世代の若いランナーたちのためにも、ウガンダでトレーニングすることを重要に思っている。
「若い世代の選手を鼓舞するためにも、自分の故郷でトレーニングをする必要がある」
と、彼は語っている
チェプテゲイはスティーブン・キプロティチに影響を受けた1人
2012年のロンドンオリンピックで世界中のアスリートが一度に競い合っていた時、チェプテゲイは15歳とまだ若かった。キプロティチさえも、まだ国際的な活躍はしていなかった時期だ。しかし、そのロンドンオリンピックで、まだ無名だったキプロティチが男子マラソンでウガンダ初の金メダルを獲得したのである。この出来事が、若いチェプテゲイに火をつけた。
Embed from Getty Images「スティーブンが2012年に金メダルを獲った時、私はまだ高校生だった。彼に刺激をもらい、ある日、自分は“チャンピオンになりたい”と思ったんだ。将来、ウガンダは長距離界において強力な選手を多く抱える国となる。確実にそうなる。国も大統領もサポートしてくれる。だから、状況は良い方向へ変わっていくと信じている」

レッツラン記事
ピンバック: 2020年東京五輪に向けてトラックに復帰するモー・ファラーに関する3つの考察 – LetsRun.com Japan