Meet Japan’s Galen Rupp
2014年1月6日
大学1年の11月のハーフマラソンを61:47で走り、日本では一番大きなレース“箱根駅伝”の1区 (21.4km)で以下の成績を残した選手がいる。
大学1年 (2011年)
区間賞 (区間2位と53秒差の62:22)
大学2年 (2012年)
区間賞 (区間2位と23秒差の62:03)
大学4年 (2014年)
区間5位 (区間4位と49秒差の62:14)
※大学3年は違う区間 (3区:区間2位)だったため省略。
これを見て、
「彼の成績は※停滞しているじゃないか。一体この選手のコーチは誰だ?」
(※駅伝は、風向きや風速、気温、天候などのグラウンドコンディションや、集団でのペースなどで記録が変動することがある)
と思うかもしれない。この選手の名前は大迫傑で、彼のコーチは※アルベルト・サラザール (当時)だ。
(※渡辺康幸→アルベルト・サラザール→現在はオレゴン・プロジェクトアシスタントコーチのピート・ジュリアンが彼のメインコーチ)
ちょっと待ってくれ。サラザールがいいコーチではないと言っているわけではない。ただ、上で挙げたことを少し考えていただきたいだけである。
Embed from Getty Imagesトラックにおいて、大迫の記録はまったく停滞していない。彼は19歳の時に5000m13:47と10000m28:35で走っている。大学に進んでからも成長し続けている。
5000m
2011年:13:31.27
2012年:13:33.84
2013年:13:20.80
10000m
2011年:28:42.83
2012年:27:56.94
2013年:27:38.31
(2013年の少し前から、サラザールによるトレーニングを始めている)
Embed from Getty Imagesここで大迫とゲーレン・ラップを比較するのは、なかなか面白いと思う。大迫は大学生活も残り数か月 (当時)。彼らが23歳になる年の1月1日時点の、それぞれの自己記録は以下の通りである (※2人とも5月生まれで1月1日の時点では22歳)。
ゲーレン・ラップ 22歳 1マイル:※4:01.8 5000m:13:30.49 10000m:27:33.48 |
大迫傑 22歳 1500m:3:42.68 5000m:13:20.80 10000m:27:38.31 |
優劣 大迫 大迫 ラップ 総合:大迫 |
(※1500mで3:45相当)
これを見て、大迫がこれまでの常識を覆してゲーレン・ラップのようにトラックで※メダルが取れる選手になれるかどうかを期待できるだろうか?しかし、10000mでは難しいだろう。
(※ロンドンオリンピック10000m銀メダル)
22歳から26歳の間に凄まじい成長を遂げたゲーレン・ラップ、そんな彼に匹敵する選手になるということに期待するのは、やめたほうがいい。日本のファンよ、それを願ってもいいが、どうか期待はしないでほしい。22歳の10000mの選手で、1マイル4:00を切れなかった選手が、26歳で屋内1マイル3:50.92の選手までに進化する、そんな選手がラップ以外にいるだろうか。
(※1500mの通過3:34.78)
大迫にとってさらに厳しい現実を突きつけるとすれば、1500mの日本記録は※3:37.42である。
(※1マイル約3:54、1マイルの日本記録は3:58.89)
10000mのような長い種目においてでさえ、メダル獲得に必要なのはラストのスピードである。大迫はこれから先、そのようなスピードを手に入れられないかもしれないだろうといっても過言ではない (彼はインカレの1500mでは勝てると思うが…)。
しかし、マラソンでは何が起こるかわからない。。
※補足:2014年の箱根駅伝を走り終えた大迫選手について2014年1月6日の記事でこのように掲載された。レッツランの見解として、トラックでラップのように絶対的なスピードを獲得するということやトラックでメダルを獲ることは難しい、
というものであった。トラックでは大迫選手は日本記録を多数更新したが、レッツランの予言通り、ゲーレン・ラップのレベルには引き上げられなかった (それは単にラップが凄すぎる)。
しかし、最後に書いてある通り“マラソンでは何が起こるか分からない”というのはまさにその通りになる可能性がある。現状、リオオリンピックのマラソンで銅メダルを獲得したラップに対して、大迫選手は初マラソンのボストンマラソンで肉薄 (ラップ2:09:58、大迫2:10:28)している。
もちろん、現段階ではマラソンはラップのほうが強いのかもしれないが、今後マラソンにおいてこの順位が逆転するようなことがあるとすれば、日本のゲーレン・ラップが世界のスグル・オーサコとなる瞬間なのである。
レッツラン記事