8月24日にスイスのチューリヒで、ウェルトクラッセチューリヒ (ダイヤモンドリーグチューリヒ大会)が開催された。
男子5000m:史上稀にみる空前絶後のゴール前をファラーが制する
ファラーはラスト1周を52.61 (ラスト200m25.7)でカバーし、13:06.05のタイムで優勝し、リオオリンピック銀メダリストのポール・チェリモをくだした。チェリモは、ロンドン世界選手権王者のムクター・エドリスとの競り合いを制し(同タイム着差あり)2位でフィニッシュした。
※しかし、ゴール前でエドリスが倒れたのはチェリモが押した、とのことで、その後チェリモは失格となった。
エドリスは最後まで優勝を狙おうとゴールラインに必死に飛び込むも、最後は勝利への焦りとチェリモに押されたことでバランスを崩し転倒してしまったものの繰り上がりで2位。2016年の世界屋内選手権3000m王者のヨミフ・ケジェルチャは13:06.18の3位でフィニッシュした。
Embed from Getty Images0.13秒の中に上位4人が一斉にゴールした。
ファラー、チェリモ、エドリス、そしてケジェルチャ。
しかし、この接戦のゴールも驚きではなない。彼らはたった12日前にロンドン世界選手権5000mで戦った世界トップ4の選手なのである。
Embed from Getty Images5000 Metres - Men 1 Farah , Mohamed GBR 13:06.05 2 Edris , Muktar ETH 13:06.09 3 Kejelcha , Yomif ETH 13:06.18 4 Barega , Selemon ETH 13:07.35 5 Ahmed , Mohammed CAN 13:10.26 6 Alamirew , Yenew ETH 13:13.08 7 Rop , Albert Kibichii BRN 13:14.31 8 True , Ben USA 13:17.62 9 Legese , Birhanu ETH 13:24.89 10 Kwemoi , Ronald KEN 13:55.56 Chelimo , Paul Kipkemoi USA DQ Cheboi , Collins KEN DNF Kangogo , Cornelius Kipruto KEN DNF Mechaal , Adel ESP DNF
ファラーの明確な戦略勝ち
ファラーは、得意の勝ちパターンで見事な優勝を収めた。ラスト1周の鐘とともに先頭に出て、ラスト400mを駆け抜けた。ロンドン世界選手権のトップ4の選手が、わずか0.13秒内でひしめき合ったこのレースでは、最後のポジション取りが重要となった。
バックストレッチでケジェルチャが差を詰めてきた時にも、ファラーは再び加速してリードを死守した。その後、ケジェルチャはエドリスに内をすくわれ、少し外に膨らんでしまったため、最終コーナーでケジェルチャとエドリスはファラーの外側を回ることになってしまった。
ファラーがラスト1周を52.61というすさまじいスピードで走っても、ゴール前は今までにない接戦となった。この事から、ファラーを追いかけた3人の選手がいかに強いのかが分かるだろう。ファラーを抜かすために彼らはさらに速いスピードで走らなければならなかったからだ。
しかし、5000mのラスト1周を52.61で走る選手を倒すのはそれだけでは厳しい。それが、さらに外側から余分な距離を走らなければならないとなると、さらに勝つのは困難である。
ファラーはレース後に
Farah said after the race that he wanted to sit on Edris, but once he got to the lead, he knew he could not afford to give it up.
“Tonight, the game plan was just sit on him and make him do a lot of the work,” Farah said. “And at the same time, going into the last lap, do not give anyone an inch. And that’s what I did. At one point, I was like, Oh my god, can I hold this? And I was telling myself: yes you can, yes you can.”
ケジェルチャとエドリスは、もしかしたら今日のレースを後悔しているかもしれない。しかし、ポール・チェリモのラストスパートはピカイチだった (ラスト1周のタイムはチェリモが一番速い)。チェリモはラスト100mで抜け出そうとするほどの動きを見せたが、ファラーとエドリスに前を塞がれてしまった。
ファラー最後のトラックレース。最高の終焉
ファラーは彼のキャリアの中でたくさんの勝利を収めてきた。ホームストレッチで競り合うことはよくあったが、彼のスパートは素晴らしく、ゴールで自らの勝利を祝福する余裕もあるほどだ。しかし、ロンドン世界選手権の5000mと同じく、今回のチューリヒでも、ファラーは最後まで全力で走らなければならなかった。そして、今回彼が求めていた結果を手に入れることができた。
Embed from Getty Images「エドリスとはたくさん話したんだ。僕のキャリアをどう終わらせるか、そしてリベンジをどうやって世界に見せつけるか」
今日の勝利はファラーにとって、さらに特別なものとなった。なぜなら、今日はちょうどアイシャとアマニ、ファラーの双子の娘の誕生日だったのだ。
Embed from Getty Images【レース後インタビュー】
ポール・チェリモがポケットされてなかったら、ポールが勝っていた?
〜ポール・チェリモは失格。2位の賞金20,000ドルも虚しく、手ぶらで帰国〜
ポール・チェリモ、失格。仮にポール・チェリモがエドリスを押し倒していなかったら、彼は3位だったので、3位の賞金の10,000ドルを獲得し損ねた。
動画を見返すと、エドリスはエネルギー切れで、何とかフィニッシュしようと倒れこんだように見える。去年のリオオリンピックの女子400mでもあったが、何がなんでも勝ちたいという強い思いでゴールへタイブする選手もいる。今夜のエドリスもそうだった。エドリスは優勝に向け全力を出したが、ラスト20mで一番キレのある動きだったのはチェリモだった。
残念なことに、ラスト100mを迎えるときのチェリモは一番内側に位置していて、この地点で4位。前にファラーとエドリスがいて壁になっていたので、チェリモは行き場をなくしていた。チェリモはそこから追いすがるも、進路が狭くなったゴール手前で、ファラーとエドリスに向かって手を伸ばしてしまった。
【レース動画 – ハイライト版】
ポール・チェリモ “もっと強い選手にならないといけない。ラスト1周で50秒を切って走らなければ勝てない”「安全上の理由から」US Armyのユニフォームは着れなかった。
※※※
男子1500m
1500 Metres - Men 1 Cheruiyot , Timothy KEN 3:33.93 2 Kiplagat , Silas KEN 3:34.26 3 Manangoi , Elijah Motonei KEN 3:34.65 4 Kiprop , Asbel KEN 3:34.77 5 Simotwo , Charles Cheboi KEN 3:34.93 6 Kibet , Vincent KEN 3:34.96 7 Wightman , Jake GBR 3:35.25 8 Holuša , Jakub CZE 3:35.81 9 Lewandowski , Marcin POL 3:36.02 10 Mikhou , Sadik BRN 3:36.04 11 Birgen , Bethwell Kiprotich KEN 3:38.87 12 Ingebrigtsen , Filip NOR 3:41.36 Kivuva , Jackson Mumbwa KEN DNF Rotich , Andrew Kiptoo KEN DNF
女子3000mSC
3000 Metres Steeplechase - Women 1 Jebet , Ruth BRN 8:55.29 2 Chepkoech , Beatrice KEN 8:59.84 3 Tanui , Norah Jeruto KEN 9:05.31 4 Coburn , Emma USA 9:14.81 5 Jepkemoi , Hyvin Kiyeng KEN 9:14.93 6 Krause , Gesa Felicitas GER 9:15.85 7 Assefa , Sofia ETH 9:16.45 8 Chespol , Celliphine Chepteek KEN 9:17.56 9 Diro , Etenesh ETH 9:20.94 10 Schlumpf , Fabienne SUI 9:28.80 11 Kirui , Purity Cherotich KEN 9:40.89 Gathoni , Ann KEN DNF Sidi Madane , Fadwa MAR DNF Tuigong , Caroline Chepkurui KEN DNF
女子800m:キャスター・セメンヤ20連勝!
800 Metres - Women 1 Semenya , Caster RSA 1:55.84 2 Niyonsaba , Francine BDI 1:56.71 3 Wambui , Margaret Nyairera KEN 1:56.87 4 Alemu , Habitam ETH 1:57.05 5 Hassan , Sifan NED 1:57.12 6 Lipsey , Charlene USA 1:57.99 7 Bishop , Melissa CAN 1:58.30 8 Büchel , Selina SUI 1:59.83 9 Sum , Eunice Jepkoech KEN 2:04.31 Verstegen , Sanne NED DNF
レッツラン記事
ポールチェリモはロンドン世界選手権は5000m銅メダルだったのでは?
レッツランいつも楽しんで読んでいます!
これからも世界の陸上についてよろしくお願いします!
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ありがとうございます。訂正させていただきました。今後ともどうぞ宜しくお願い致します。
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