2017年シーズンの男子1500mで世界ランキング3位、男子3000mで世界ランキング1位に輝き、今後のさらなる活躍が期待されるロナルド・ケモイ(男子1500mU20世界記録保持者)のドーハDL3000m(7:28.73で優勝)前のトレーニングを紹介します。
ケモイは、日本の実業団チームの小森コーポレーションに所属していますが、2017年のニューイヤー駅伝に出場した後、ケニアに帰って2017年のトラックシーズンで世界一を目指す為にレナート・カノーバコーチのプログラムの元でトレーニングを行いました。
Embed from Getty Images(※参考:レナート・カノーバコーチについて – 望月次朗氏の取材内容)
http://www.shot-web.com/news/120410h.html
Embed from Getty Imagesアベル・キルイ(マラソンで世界選手権連覇、ロンドン五輪銀メダル)とカノーバコーチ
レッツランの掲示板で情報発信している事でも有名なカノーバコーチは、ここでもケモイのトレーニング内容や、その目的について説明しています。
(以下、カノーバコーチ本人がレッツランの掲示板書き込んだ内容の日本語訳、※は補足であってカノーバコーチの書き込みではありません)
***********************
ロナルドは1月の初めに、日本からケニアに戻った後トレーニングを始めた。
イテンで彼は、私がいるとき(例えば1月初旬から4月10日まで。カノーバコーチがボストンに行くまでの期間)は私のもとで、私が不在の時はアシスタントコーチであるジョン・リテイ (2006年コモンウェルスゲームズ男子800m銅メダリストのケニア人)の元で、日々トレーニングを積んだ。もちろん、それは私のトレーニングプログラムに沿ってである。その中に2週間を超えるトレーニングプランは、私のプログラムにはない。
(※2週間以上の長いスパンのトレーニングメニューではなく、短いスパンのメニュー、それがカノーバのトレーニングプログラム=その時々で体調や気候に応じて修正を繰り返していく)
選手一人ひとりに沿った、テクニカルな戦略を準備する必要があり、かつ、それぞれの選手の現実的な状況をきちんと把握する (悪天候、家族や金銭の問題、怪我、病気、ビザ問題でナイロビの大使館に行くためにキャンセルになった練習スケジュール…etc)必要がある。
選手が長い期間で到達できる理論的なレベルを見る必要はない。
以下のトレーニングメニューは、2つの基本的な目標に基づいている。
適度な速さ、もしくは速いペースでのロングランをやることで有酸素的能力を高めること、そしてトラックでハイボリュームの中~高強度セッションを行いスピード持久力を鍛えることである。
このプロジェクトでは、私の経験と考え方に基づいて、ロナルドのような“有酸素運動を効率的にできる選手”は、彼の今まで行ってきたトレーニングのタイプとは異なるものも含んだ、あらゆる種類のトレーニングを彼の生活の一部にする必要がある。
ロナルドの週間走行距離は180km~210kmで、状況によって異なる。
一週間のうち同じ曜日に同じトレーニングを繰り返す、古典的なミクロサイクルは使わない。しかし、トレーニングの強度によって、回復にかける時間を変えるなど、綿密なプランを使用したトレーニングプランを採用した。
(※ミクロサイクル:ここでの意味は、例えば、毎週火曜日はトラック、木曜日はファルトレク、土曜日はロングランといった具合にあらかじめ週で決まっている練習のサイクル。ケニアでは、グループ内の大人数の選手を管理するためには、ミクロサイクルの練習スケジュールが主流である)
以下に3月から始まるトレーニングを紹介していく。
(※以下のトレーニングは基本的にはケニアのイテン, 標高2400m前後やエルドレッド , 標高2100m前後の近郊で行っているので平地でのタイムよりも遅い)
3月01日 (水) 6 x 1600m:
4’41″5 – 4’37″1 – 4’37″0 – 4’35″5 – 4’36″0 – 4’36″6 (リカバリー2’30”)
3月06日 (月) 10km走:30’22” (15’13” + 15’09”)
3月08日 (水) 2 x 3000m:8’49″3 – 8’57″0
+ 3 x 2000m:5’56″5 – 5’50″9 – 5’54″2 (リカバリー2’30”)
+ 3 x 1000m:2’53″2 – 2’52″2 – 2’51″6 (リカバリー2′)
3月10日 (金) 10km走:30’39” (午後)
3月12日 (日) 30 x 200m (リカバリー200mjog1’05” / 1’15”) @イテンのタータントラック
27″ – 26″7 – 26″6 – 28″ – 27″ – 27″4 – 26″8 – 27″5 – 27″1 – 27″3
26″8 – 27″3 – 26″9 – 27″3 – 26″5 – 27″5 – 26″8 – 27″ – 26″7 – 27″5
26″5 – 27″9 – 26″2 – 28″ – 25″9 – 27″7 – 25″7 – 28″2 – 26″ – 23″3
この200m × 30本のトレーニングでは、新しいトレーニングパートナーのノア・キプケンボイがペースメイクをした。彼は長い距離をとても得意としていてロナルドよりかは速い。最後の200mは23″3でカバーし、トレーニングの目的が長い距離の持久力を高める事である時でもハイレベルなスピードを維持できる事を示した。
Embed from Getty Images15日の水曜日、ケモイはマラソンランナーのジョフリー・キルイ(2017年のボストン、世界選手権優勝)とアベル・キルイ(2016年のシカゴ優勝)と1日合計41kmの特別な合同練習を一緒に行った。
(※レナート・カノーバはジョフリー・キルイやアベル・キルイの指導もしている)
3月15日 (水) 朝:10km走 32’41” +10km走 30’15”
午後 :10km走 33’40” + 7 x 1000m (トラックで。リカバリー1’30”)
2’56” – 2’58” – 2’55″6 – 2’55” – 2’54″2 – 2’56″3 – 2’51″5
3月18日 (土) 2セット x (10 x 400m) (リカバリー1′, セット間8′)
①:61″ – 64″4 – 63″1 – 65″1 – 62″1 – 63″2 – 62″9 – 62″8 – 63″6 – 63″6 (レーシングシューズ)
②:61″2 – 61″7 – 61″8 – 61″3 – 61″1 – 61″3 – 61″ – 60″ – 59″4 – 55″ (スパイクに履きかえて)
3月21日 (火) 6 x 1000m (リカバリー2’45”) + 4 x 300m (リカバリー30″/38″)
1000m:2’38″1 – 2’37” – 2’39″3 – 2’38″1 – 2’36″3 – 2’37″3
300m:42″8 – 42″3 – 41″ – 41″3 (1000m後のセット間6′)
ロナルドは小森コーポーレーションでのレースの兼ね合いで10日間日本に行き、トレーニングの一環として金栗記念5000mを13’24″42で勝ち、ラスト200mは24″8だった。
次は4月に行ったメインセッションを紹介する。
4月09日 (日) 25 km走 (丘陵地の上り坂で):1’31’40” (3’40″/km)
4月11日 (火) 10 x 1200m (リカバリー2′)
3’23″6 – 3’26″1 – 3’23″1 – 3’24” – 3’24″1 – 3’23″4 – 3’26″3 – 3’25″4 – 3’21″6 – 3’21″4
その6分後に600m:1’22″3
4月13日 (木) 30km走:1 ’40’24” (3’21″/km)
4月15日 (土) 5 x 600m (リカバリー1′ , 1’30”, 2′, 2’30”)
1’33″2 – 1’33″4 – 1’28″5 – 1’27″6 – 1’24″1
4月18日 (火) 午後 : 3 x 2000m (リカバリー3′) + 10 x 400m (リカバリー1′)
2000m:5’40″2 – 5’32″5 – 5’38″9
400m:59″2 – 62″0 – 61″1 – 58″9 – 59″7 – 59″7 – 58″7 – 59″2 – 60″ – 53″1 (セット間5′)
4月20日 (木) 60分間ファルトレク (20 × 1’/1′ ) + (20 × 30″/30″) :合計18,84km
4月27日 (木) 5 x 1200m (リカバリー2’45”) + 5 x 600m (リカバリー2’45”)
1200m:3’15″2 – 3’15″1 – 3’12″3 – 3’14” – 3’13″1
600m:1’25″4 – 1’27″5 – 1’29″2 – 1’28″8 – 1’29″7 (セット間6′, 脚の疲れがかなりあった)
4月29日 (土) : 60分ジョグ (ほどほどのペースで) + 8km走:23’52”
5月01日 (月) (ドーハDL前の最後のポイント練習) 10 x 400m (リカバリー: 2’30”)
55″3 – 54″3 – 55″5 – 54″2 – 54″3 – 54″9 – 55″ – 55″1 – 54″2 – 53″1
少しずつトラックでのスピードは速くなっているが、ある特定のスピード持久力トレーニングにはまだ至っていない。
5月05日 (金) ドーハDL3000m(7:28.73 = 世界歴代22位, この5年で2番目の記録で優勝)
次のレースはプレフォンティン・クラシック(ユージンDL)の1マイルだ。
Embed from Getty Images(※プレフォンティン・クラシックの男子1マイルでもケモイは優勝した)
(原文)Renato Canova – Can you provide any insights to Kwemoi’s training?
http://www.letsrun.com/forum/flat_read.php?thread=8191628