世界トップの3000mSCの選手はハードリングの練習をどのぐらいするのか?前編 – 北京オリンピック金メダリストのブリミン・キプルト「練習したことがない」

ハードルを跳ぶ練習は、一回もしたことがないね

ケニア北西部のエルドレットにあるモイ大学のトラックは、あまり魅力的なトラックではない。赤土のトラックには何のマークもない。レーンもなければ、フィニッシュラインさえもない。3000mSC用の大きなハードルもなく、そもそもハードルや器具をしまうような建物もない。そして、水濠ももちろんない。しかし、3月の早朝に、ケニアで歴史上もっとも活躍した3000mSC選手の一人である、ブリミン・キプロプ・キプルトはモイ大学で練習をしていた。

その朝、エルドレットから車で数十分の少し離れたカプタガトにある彼のトレーニングキャンプで彼をつかまえた。私は、彼が障害の練習をどこでしているのか、とても興味があった。彼は、

「町にもう一つ違うトラックがあって、そこで要請すれば障害が使えるらしいけど、オレは一回も使ったことがないよ」

と言った。だったら、ブリミン、どこで障害の練習をするんだ?

「一回もしたことないよ」

どういう意味だい?これまで一回もしたことないということか?

「障害は、練習したことないよ」

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私は、彼の答えに面喰らった。オリンピックと世界選手権で6つのメダルを獲得した(北京オリンピックでは金メダル)選手が、レース以外では障害の練習をしたことがないだと?そんなこと可能なのか?

自分 (筆者のジョナサン・ガルト=ダートマス大学出身)の大学時代を振り返ると、チームメイトの一人であった※ウィル・ゲーガン 、彼は3000mを7分45秒、5000mを13分17秒というの記録の持ち主であったが、大学3年の時に3000mSCに挑戦したことがあった。

(※ ダートマス大学からオレゴン大学へ編入し、エリック・ジェンキンスエドワード・チェセレクのチームメイトだった。ウィルは2016年の出雲駅伝にアイビーリーグ選抜=ダートマス大学の選手として出場している

彼はレース中に転び、記録は9分24秒だった。その後、3000mSCを二度と走ることはなかった。しかも、ウィルはこのとき障害の練習をしていたのだ!練習もしないで全く新しい競技に挑戦するのは大変なことだろうとブリミンに言った。ブリミンは私を見て、楽しそうに私のひざをたたきながら笑った。

「君にとっては難しいかもしれないが、オレは大丈夫さ」

この種目のオリンピック王者に君臨する、コンセスラス・キプルトの代理人であるオランダ人のマイケル・ボーティングの手がける選手達は、2年前まで障害の練習をしたことがない。

コンセスラス・キプルトは2013年の18歳当時と変わらず、今でも世界のレースでメダルを獲得するが、障害の練習を始めたのはここ数年のことだという。駆け引きのあるレースでは選手とぶつかることが多く、それに手こずってのことだった。しかし、

キプルトはアメリカやヨーロッパのライバル選手たちと比べると障害の練習量は少なく、それはケニア人の3000mSC選手にとっては当然のことだ」

と、ボーティングは言った。

「ケニアのトラックはハードルの練習をするには、きちんとした設備が揃っていない。かつてグローバル・スポーツ・コミュニケーションで一緒に働いていたバーナード・バーマサイ(元世界記録保持者)や、ルーベン・コスゲイ(シドニーオリンピック王者)、そしてブリミン・キプルト、彼らは障害の練習については大体みんな同じだったよ」

「たぶんエヴァン・ジェイガーのような選手がいたら、彼らも練習の必要性を感じたかもしれない。でも、ケニア人がヨーロッパやアメリカの選手と同じように障害の練習をしたら、たぶんアクシデントにつながると思う。彼らは怖いもの知らずで、障害のことなんて気にしていない。もしケニア人選手を、他の国の選手のように障害を跳んで欲しいと思うなら、障害のための練習をして、3000mSCにおいて成功した誰かを連れてくる必要があるだろうね」

 

ジェイガーは、全く正反対のアプローチを利用して、障害へのメンタル部分の恐怖を克服した。

マイケルがそう言っているのはとても面白いと思うよ。僕がハードリングの練習をたくさんする一番の目的は、ハードリングしていることさえも考えないで跳べるようになるためだ。自然に跳ぶってことかな」

と、ジェイガーは語った。

「同じことを2つの違った方法でできる。でも、僕にしてみれば、練習しないよりはした方がいいと思っているし、それでケニア人と同じメンタルを保てる

全米記録保持者でリオオリンピック銀メダリストであるジェイガーは、他のアメリカ人選手と同じく、2012年に初めて3000mSCのレースに出る前には障害の練習をしたという。この競技に慣れるためには4,5回の練習が必要で、そしてスタートからハードリング技術は高かった。

彼は5回目のレースでアメリカ記録を打ち立てた。しかし、彼は常に自分の技術を磨くトレーニングをしている。屋外シーズン(4月から9月)では少なくても週1回、ジェイガーは30~45分間ハードリングのフォームの練習をする、それに加え約2週間ごとに1回は、障害を跳ぶ練習もしている(ジェイガーのレーススケジュールによって練習メニューは変わる)。

ジェイガーのハードリングのコーチであるバウワーマン・トラック・クラブ (BTC)フィジカルコーチパスカル・ドバートは、

「これはバウワーマン・トラック・クラブのメンバーにとっては普通のことだ」

と語った。オリンピックのファイナリスト、マット・ヒューズや、コリーン・クィグリーコートニー・フレリクス、そして8分13秒の記録を持つダン・ヒューリングなどもバウワーマン・トラック・クラブのメンバーだ。ドバート

「ハードルのフォームはすごく重要だと思うよ」

と語った。

「なぜならば、選手たちはハードル選手だ。110mHや400mH、女性なら100mHではなく、ただそれが3000mSCだっただけのことさ」

「もう1つ心配しないといけないことは、もし自分がハードルの跳び方を知らなかったり、自信がなかったら、精神的にストレスが溜まるし、その状態でレースを走るのは良くない」

と、ジェイガーは語った。ジェイガードバートは次の点で意見が一致している。レースが速いペースとなって、集団が縦長になり、それによって視界が良くなれば (つまり集団が団子ににならずに障害のところでゴチャつかないということ)、(ハードリングでアドバンテージがある=ハードリングの良さを活かせる)ジェイガーはケニア人のライバルにより迫ることができる。ドバートは、ジェイガーが現在の8分00秒45という全米記録を出した、2015年のダイヤモンドリーグパリ大会をいい例として出した。

実際、このレースで最後の最後で勝ったのはビレチであったが、ジェイガーは意図的にラスト1周でスピードを落として、(非アフリカ人として初となる)8:00切りの大記録への準備をしていた。しかし、最後の障害で転んでしまった。

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世界トップの3000mSCの選手はハードリングの練習をどのぐらいするのか?前編 – 北京オリンピック金メダリストのブリミン・キプルト「練習したことがない」」への2件のフィードバック

  1. ピンバック: (過去記事)世界トップの3000mSCの選手はハードリングの練習をどのぐらいするのか?後編 – 完璧なハードリングとは、どのようなものか – LetsRun.com Japan

  2. ピンバック: ヘラクレス・モナコ (モナコDL) 男子3000mSC – エヴァン・ジェイガーが非アフリカ人選手として至上初のダイヤモンドリーグでの男子3000mSC制覇!! – LetsRun.com Japan

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